1.弁護士・司法書士・行政書士のどの専門家に頼んだら良いのか
まず、そもそもあなたの事件が、内容証明郵便を出す必要のある事件なのかどうかという問題があります。
もしかしたら、普通の手紙を出せば済む話なのかもしれません。あるいは、内容証明郵便を出しても無駄だったり、内容証明郵便を出したら相手が腹を立て、逆に問題がこじれる性質のものかもしれません。
その辺りのことを理解していないと、せっかく専門家に頼んでも期待はずれに終わることになるでしょう。
ですから、弁護士・行政書士・公的機関の無料相談等を利用するなどして、まずは誰かに相談してみることから始めることです。あなたは、自分で調べて、内容証明郵便を出さなければいけないとか、内容証明郵便を出せば解決すると思い込んでいるだけかもしれません。
次に、内容証明郵便の作成・発送だけを頼むのか、それとも事件をトータルで頼むのかという点も、きちんと考えを整理しておかなければいけません。
例えば、行政書士に依頼すれば、内容証明郵便の代書と発送をしてくれます。しかし、行政書士は弁護士や認定司法書士と異なり、あなたの代理人となって相手方との交渉までは行ってくれません。行政書士は書面の作成と相談が仕事なので、それ以上の関与と行動を
専門家に求めるのであれば、それは弁護士か認定司法書士に頼んだ方が良いということになります。
また、行政書士は裁判には関与できませんので、内容証明を出した後で期待どおりの結果が得られなかった場合には、引き続き裁判手続きを検討しようと最初から考えるのであれば、依頼する専門家は弁護士か認定司法書士ということになるでしょう。
このように、何でもかんでも内容証明を出せば良いというものでもありませんし、相手の性格にもよりますが、行政書士からの内容証明を受け取った相手が、それに対抗して弁護士に依頼するような場合もあります。
専門家にはどこまでやってもらいたいのか、また、自分は相手方とどこまで戦うつもりなのか、それをきちんと検討して、弁護士・司法書士・行政書士のどの専門家に頼むのかを決めることです。
【参考】
・行政書士の中には、内容証明を業務として行っていない事務所、内容証明の代書のみを業務とする事務所、内容証明の作成から示談書・公正証書の作成など、書面の作成を通して事件をトータル的にサポートする事務所があります。
・司法書士の中には、不動産登記、会社・法人登記を専門とし、内容証明や裁判手続きを業務として行っていない事務所があります。
なお、内容証明だけを専門家へ頼めば支払う料金は安く済みますが、事件をトータルで頼めば高くなります。
2.どこの地域の専門家に頼んだら良いのか
例えば、あなたが東京に住んでいる場合に、九州の行政書士に頼んで内容証明を出した場合の相手の印象を考えてみてください。その内容証明を受け取った相手はどう思うでしょうか。
これが、クーリングオフのように契約解除の証拠を残すために内容証明郵便を出す場合は、全国どこの行政書士に頼んでも何の問題もありません。
東京の人が九州の行政書士に頼んでも、きちんと契約は解除されます。
しかし、金を払えと要求するような内容証明郵便の場合は、相手がそれに応じるか否かという問題が必ず起こります。その際相手は、九州からの手紙を見て、「何で九州なんだ?」と、思うでしょう。
今ではインターネットが普及して、全国どこからでも色んな地域の専門家に依頼できますが、それを受け取った相手も、そんなことは簡単に見抜いてしまいます。「九州なんて遠いし、放っておけばいいや。」相手にこう思われたら
専門家に頼んだメリットは何もありませんよね。そうならないためには、自分の住所地の行政書士に頼んだ方が良い場合もあるということです。内容証明を出した行政書士が、請求人の近所の場合の方が、相手の受ける緊張感が強い場合もあるということです。
3.弁護士・司法書士・行政書士の記名・職印を記載すべきか否か
あえて専門家の記名・職印を記載せずに、内容証明の起案・代書のみを依頼し、自分の住所地から自分で発送するという方法もあります。
例えば、2で説明したように遠方の行政書士に頼んだ場合に、あえて行政書士の記名・職印を記載しないようにする方法もあります。
また、いきなり専門家が登場することで、相手が警戒心を抱き、心を閉ざしてしまう場合があります。急に連絡が取れなくなったり、証拠隠滅に動くかもしれません。それよりも、まだ専門家には相談していないふりをして、自分で作ったと思わせるような素人丸出しの文章の方が
相手が油断し、ぼろを出す場合もあります。そこで、それを期待して専門家の記名押印をはずすという戦略もあります。特に、事件の証拠が乏しい場合は、相手から証拠を引き出すために油断させておいた方が得策でしょう。 |