内容証明は、証拠を残すためや心理的圧迫を与えるために使われますが、それが逆に自分にとって不利益となる場合があります。
それでは、内容証明を出してはいけない場合を説明しましょう。
(1) 相手を怒らせてはまずい場合、今後もつきあいを続ける相手の場合
内容証明郵便は、宣戦布告の意味合いがあります。普通の手紙と違い、自分の強い決意・態度を相手に示すことになります。仮に、自分にその気がなくても、内容証明郵便をもらった相手はそのように感じ取ります。そのため、場合によっては相手が感情を害し、問題解決どころか、逆に悪化してしまうこともあります。ですから、相手が怒って問題がこじれてしまいそうな場合には、内容証明郵便を出さない方が良いということになるでしょう。
具体的には、次のような場合には注意が必要です。
①話し合いで解決できそうな場合
②誠意のある相手
③友人・知人・親戚
④会社、学校、近所の人
⑤取引先
例えば、慰謝料を払ってもらう約束をしていたところ、相手が給料日まで待ってくれと言ってきたという場合に、「先日お約束した慰謝料を直ちにお支払いください」と内容証明郵便を送ることが果たして良いことなのかどうかです。相手は慰謝料を払うつもりでいたが、本当にすぐに金の準備ができなかっただけかもしれません。それなのにこのような内容証明郵便をもらったら、突然頭に血がのぼって、「こんな手紙送りやがって、絶対に払ってやるものか!」と、態度を急変させてしまうかもしれないのです。(もちろん、相手の逃げ口上の場合もあるので、相手を見極めた判断が必要です。)
親しい間柄や今後もつきあいを続ける相手の場合も同様です。友人・知人・親戚、会社・学校・近所の人、仕事の取引先に内容証明郵便を送るというのは、今後の付き合いに影響が出るでしょう。そういう場合は、話し合いで解決を図るなど、慎重に考えた方が良いということになります。
もちろん、そんなの気にしない人や絶交しても構わないと思っている相手であれば、内容証明郵便を出しても問題ないでしょうが。
(2) 相手に証拠を握られてはまずい場合
内容証明郵便は、証拠を残すために出すというのが本来の目的ですが、自分の証拠になるということは、相手の証拠にもなるということを忘れてはいけません。
例えば、慰謝料100万円を払う約束をしたとしましょう。しかも、口約束で念書などいっさい書かなかったとしましょう。そして、後日、100万円という金額に納得がいかないと思って、「先日、100万円の慰謝料を支払うとお約束しましたが、50万円にしてください。」と、内容証明郵便を送ったらどうなるでしょうか。元々慰謝料100万円で合意したという証拠はどこにもなかったのに、相手に証拠をプレゼントしてしまったわけです。内容証明郵便を送らなければ、話し合いで50万円にできたかもしれません。しかし、証拠を握った相手は強気になって、頑として100万円を要求してくるということになりかねないのです。
また、たとえ内容証明郵便を送る場合でも、自分にとって不利なことはご丁寧にも書かないことです。自分にとって不利な内容は、相手に証拠として利用される恐れがあります。