Movie Review 2013
◇Movie Index

危険なプロット('12フランス)-Oct 26.2013
[STORY]
高校の国語教師ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)は生徒たちに週末の出来事を作文にする課題を出す。どれも拙い文章だとジェルマンは妻のジャンヌ(クリスティン・スコット・トーマス)に愚痴るが、その中にクロード(エルンスト・ウンハウアー)という生徒が書いた作文が目に留まる。それは週末に同級生の家に行き、友人の家族について細かく描写しているものだった。ジェルマンは次第にその文才に魅了されていく。
監督&脚本フランソワ・オゾン(『しあわせの雨傘』
−◇−◇−◇−
原作はスペインの作家フアン・マヨルガによる舞台劇『『El chico de la ultima fila』

オゾンが2003年に監督した『スイミング・プール』は中年女性VS若い女の子だったが、本作は中年男性VS若い男の子となっており、まるで対になっているような作品だなと思った。『スイミング』では中年女性のほうが存在感を放ち女の子を圧倒していたが、本作では男の子のほうがオッサンを翻弄しており、その違いも面白い。どちらかしか見てない人は両方見てみるといいだろう。

国語(フランス語ね)教師が1人の学生が書いた作文を読み、夢中になっていくというストーリー。生意気な文章だ!って言いながらもう最初からジェルマンは惹き込まれてしまっているんだよね。ジャンヌは時々クロードの作文のおかしなところを指摘するが、ジェルマンは聞き入れなくなるまでに。確かに最初は本当に体験した出来事を書いているようにみえた。しかし徐々にあやしい映像や出来事が挿入されていき、どこまでが真実なのか分からなくなっていく。でもクロードが書いた文章以外のところは真実なんだろうなぁと思ってた。けれど一番最後のシーンを見て、果たしてそれすらも本当なのか分からなくなりゾクッとした。

本作も面白かったんだけど『スイミング』と比べると、ジェルマンのほうがクロードにやられっぱなしで物足りなさがあった。もう少し立場が逆転するところがあればもっと面白かったんじゃないかな。それとクロードを演じたウンハウアーは、10代半ばでここまで演じられるなんて「恐ろしい子!(白目)」と思ったんだけど、後から実年齢が撮影時でも20歳超えてたと聞いて、それならまぁそんなもんか、と思ってしまった。ごめんね(笑)
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トランス('13イギリス)-Oct 14.2013
[STORY]
オークションハウスで働くサイモン(ジェームズ・マカヴォイ)は、強盗のフランク(ヴァンサン・カッセル)から絵画を守ろうとして頭を殴られる。病院を退院したサイモンはフランクに拉致され、絵画のある場所を教えるよう脅される。実はフランクが盗んだはずの絵画がなくなっていたのだ。だがサイモンには事件当時の記憶がなく思い出せずにいた。そこで催眠療法によって記憶を呼び覚まさせようと催眠療法士のエリザベス(ロザリオ・ドーソン)の元にサイモンを向かわせる。
監督ダニー・ボイル(『スラムドッグ$ミリオネア』
−◇−◇−◇−
脚本は『シャロウ・グレイヴ』の脚本も手掛けたジョン・ホッジ。そういえばボイルのクライム・サスペンスって久々だなぁと思っていたら同じ脚本家だったんだね。

一言で言うと“トランス万能説”(元ネタは“ダンス万能説”ですよ(笑))
あまりにも出来過ぎ!全部催眠に頼り過ぎだろう。これじゃ超能力と変わらんぞ。ずるい〜。

だけど見せ方はやっぱり上手いんだよね。ストーリーは意外なところに転がっていって「あれ?なんかおかしくない?」と思っているうちに次の新しい展開がやってくるという。 最初はサイモンが主役なのかと思っていたら、いつのまにかそうじゃなくなってたり。映像でも時々ぼんやりとソフトフォーカスにしたり、音楽もちょっと眠くなりそうなリズムを刻んでいて、最後のほうはぼうっとしてしまった。
何より素晴らしかったのはロザリオ・ドーソン!声と話し方は実際に催眠療法士からレクチャーを受けたのだろうか。今までの役ではあんなにいい声だと気が付かなかった。落ち着きのある、あのまろやかな声は私でもクラッときてしまいそう(ボイルもクラッときちゃったみたいね。もう別れちゃったけど)荒唐無稽なストーリーに多少説得力を持たせていたと思う。
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ウォーム・ボディーズ('13アメリカ)-Oct 6.2013
[STORY]
原因不明の感染症によりゾンビが増え、人間とは隔離されていた。いつからかゾンビになってしまったR(ニコラス・ホルト)は、ボランティアで物資を探しにゾンビエリアにやってきた人間のジュリー(テリーサ・パーマー)に恋をしてしまう。Rはほかのゾンビたちから襲われないようジュリーを自分の隠れ家に連れて帰る。やがてRはジュリーと親しくなるうちに人間の心を取り戻していく。
監督&脚本ジョナサン・レヴィン(『(500)日のサマー』
−◇−◇−◇−
原作はアイザック・マリオンの小説『ウォーム・ボディーズ ゾンビRの物語』

監督が『(500)日のサマー』の人ということで、男性主人公の描写は秀逸。モノローグは面白かったし、ゾンビ同士の会話シーンで爆笑してしまった。何よりRがキュート。ゾンビ映画は好きじゃないけど(『バイオハザード』しか見てない)これはゾンビ映画の名作になるのでは!とワクワクしていた。

でもジュリーが出てきたあたりから「あれれ?」だった。彼女のRに対する態度や行動、恋人を失った後だというのにガツガツしてるところだとか、ちょっとずつ違和感が出てきてしまった。あとゾンビが誕生するに至った経緯だとか、人間の世界がどうなっているのか、ガイコツって何なのよ?など、Rから見た描写とはいっても曖昧でモヤっとするなぁと。

でも、後から知ったんだけどこの原作ってティーン向けの小説なんだね。『トワイライト』シリーズとかと同じ。それで納得したわ。『トワイライト』もヒロインの性格が好きになれなかったし、ヴァンパイアの世界の設定も漫画っぽくて、全体的に幼稚だった。本作もラストは綺麗に纏まってはいたけど、甘いなぁ、大丈夫かなぁとちょっと心配になってしまうものだった。よく似てる。どちらもストーリーのメインは恋愛であって、ゾンビやヴァンパイアは恋愛の障害に使われているだけなんだよね。だから設定や世界観にいくつか納得できない部分があっても、恋愛映画のオマケと思うしかない。

最後に1つ。“ただしイケメンに限る”ってゾンビにも当てはまるんだな(笑)
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パッション('12ドイツ=フランス)-Oct 4.2013
[STORY]
広告会社で働くイザベル(ノオミ・ラパス)は、いいアイデアを思いつき上司のクリスティーヌ(レイチェル・マクアダムス)に認められる。だが、クリスティーヌはイザベルの功績を自分のものとして横取りしてしまう。納得いかないイザベルは助手のダニ(カロリーネ・ヘルフルト)とともにクリスティーヌに黙って仕事をすすめる。
監督&脚本ブライアン・デ・パルマ(『ブラック・ダリア』
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2010年のフランス映画『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』(日本では一般上映されずビデオスルー)のリメイク。監督はアラン・コルノーで、イザベルをリュディヴィーヌ・サニエ、クリスティンを クリスティン・スコット・トーマスが演じた。オリジナル脚本を手がけたナタリー・カルテールは本作の脚本にも協力している。

オリジナルのほうは見てないんだけど、本作はまぎれもなくデ・パルマ映画!って感じだった。途中で画面が2分割されるシーンが出てくれば『殺しのドレス』か?!と思い、主人公が危機的状況で「ハッ」と目が覚めるシーンが出てくれば『ファム・ファタール』か?!と思ったりと、過去の自分の作品のオマージュなんだろうかと思うような手法を使っている。その意図がワンパターンな演出しかできないからなのか、ファンサービスと取ったらいいのかよく分からないけど、デ・パルマ映画なんてファンしか見ないからなぁ(暴言)初めて見る人にとっては何じゃこりゃな映画かもしれない。上に書いた『殺しのドレス』も『ファム・ファタール』も私は大好きなんだけど、本作は見せ方がちょっとクドくてあまり面白さは感じなかった。ハラハラドキドキはしたけれどね。

本作に登場する3人の女性のセクシーな部分、別の意味でのいやらしい部分、そして美しさは存分に見せていたと思う。3人のファッションの違いも面白かった。服はダニのが好みだったけど、ジュエリーはクリスティーヌのがどれも素敵でうっとり。エンドクレジットでブランド名を読むのも楽しかった(笑)
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ウルヴァリン: SAMURAI('13アメリカ=オーストラリア)-Oct 1.2013
[STORY]
1945年、長崎で日本軍の捕虜となっていたローガン(ヒュー・ジャックマン)は、原爆から将校の矢志田を救う――。
現在、ローガンはカナダの山奥で1人孤独に暮らし、死んだジーン(ファムケ・ヤンセン)の夢ばかりみて苦しんでいた。そんな時、ユキオ(福島リラ)という日本人の女が現れ、かつて助けた矢志田に会ってほしいと頼まれる。
監督ジェームズ・マンゴールド(『“アイデンティティー”』
−◇−◇−◇−
原作はクリス・クレアモントとフランク・ミラーによるコミック『Wolverine』で、この中からいくつかのエピソードを抜粋して1つの物語に作り上げたようだ。原作のウルヴァリンは何度も日本を訪れており、ヤクザやミュータント、怪獣なんかとも戦っているらしく、マリコ(TAO)とユキオは原作ではそれぞれ違うエピソードで登場している。
映画は日本でも撮影が行われ、芝公園の増上寺や広島県の福山駅、鞆の浦がロケ地として使われた。

『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』の続きではなく、『X-MEN:ファイナル ディシジョン』の後になるのかな(新シリーズなのできちんと繋げているのか分からないが)今までの作品とは違ってあまりミュータントが登場せず、ヤクザやニンジャ、ロボットなどが敵というのが日本らしいが(笑)真の敵はローガンの不老不死とジーンの亡霊ということで、番外編って感じかな。

日本が舞台というのは嬉しいんだけど、最近の日本が舞台の映画ってそれほどトンデモなものはなくて(わざとトンデモに作ってるのもあるけど)かなり違和感なく見ることができる。でも本作は「んん?」と思うシチューエーションやシーンがたくさんあって、実在する場所で撮影しているせいか、増上寺から上野駅まで走ったのか?とか、上野から新幹線で南には行けんだろーとか(上野じゃなくて品川駅なら増上寺からの移動も新幹線も自然だったのにな)そういうことがいちいち気になってしまった。
それから、これ映画のミステイクってやつじゃないのか?というシーンあって、ストーリーに集中できなかった(ローガンとマリコが2人で食事をするシーンで、ローガンがご飯に箸を突き立てマリコがそれを抜くシーン)

新幹線でのアクションはハラハラする面白さだったが、そのほかのアクションもいまいち。せっかく真田広之(マリコの父)が出てるのにもったいないなぁと思うような役柄とアクションだった。でもユキオを演じた福島は美人じゃないけど個性的で存在感もあり、シンゲンとのアクションでもちゃんと動けていてカッコよかった。次回作にちょっとでもいいから出てほしいなと思ったよ。

しかし見終わって、まぁこんもんか〜とぼんやりエンドクレジットを見ていたら、途中で次回作の予告らしき映像が!本編よりもこっちのほうがX-MENシリーズファンにとって一番豪華でワクワクしちゃうシーンじゃないか!複雑な気分だったけど、新シリーズになってからいまいちが続くも次は期待せざるを得ない。
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