Movie Review 2003
◇Movie Index

閉ざされた森('03アメリカ=カナダ)-Sep 14.2003
[STORY]
パマナにある米軍基地より訓練に出かけた7人の兵士が森で消息を絶った。17時間後、3名が発見されるが、なぜか味方同士で撃ち合いをしており、1人が殺され2人が救助された。ジュリー・オズボーン大尉(コニー・ニールセン)がこの事件の捜査に当たることになったが、撃った兵士は黙秘を貫き一向に進展しない。そこで呼ばれたのは、元レンジャーで現在は麻薬取締局捜査官のトム・ハーディ(ジョン・トラボルタ)だった。彼の尋問により兵士は口を開くが・・・。
監督ジョン・マクティアナン(『ダイ・ハード』)
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嵐の森で起きた謎の事件。二転三転する生存者の証言と、ほんのわずかな手がかりから新事実をつきとめていく捜査官──てな内容のサスペンス。こういうどんでん返しいっぱいの話が好きな人なら楽しめる映画だけど、綺麗にピッタリと謎が補完される映画ではないから、完璧を求める人には向かないと思う。

見ている最中は次々と覆される事実に驚いちゃって深く考えないんだけど、あとで思い返すと「じゃあ、あの時のあの人物の行動って・・・意味ないんじゃねーの?」なんて疑問が続々と出てきてしまう。それも本当は意味があるのかもしれないが、映画の中では特に説明されない。その疑問を解明しようと考えるのも楽しむ1つの手だろう。でもこんなのどんでん返しのためのフェイクに過ぎないだろ!って怒る人も理解できる。えー、私は半分考えて半分放棄しています(笑)今は。劇場にまた行くほどハマりはしなかったけど、DVDが出たら落ち着いてもう一度見てみたいかな(最近そんな映画ばっかりだ)

しかしこのタイトルこそフェイクだろうよ。このタイトルと予告CMを見て、サスペンススリラーなのかと大いに期待して見に行ったんだけど、ラストシーンを見て思わず「どこが『閉ざされた森』なのよ」と思いっきり突っ込んだね、心の中で。原題の『BASIC』のほうがしっくりくる。でも『BASIC』っていうタイトルで公開されたら見に行かなかったかもしれないなぁ。CMの作り方もうまいし、配給会社の勝利ですな。

そうそう、この映画の最初と最後の曲に『ボレロ』が使われている。どういう意図で使われてるのか分からないが、個人的には『ファム・ファタール』と続けて見ることをお薦めする(笑)
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レボリューション6('02ドイツ=アメリカ)-Aug 30.2003
[STORY]
ドイツ、ベルリン。15年前、6人の男女が政府に抵抗して爆弾を作り、ある建物に仕掛けた。その後ドイツは統一され、爆弾のことを忘れた仲間たちはバラバラになった。残っているのはティム(ティル・シュヴァイガー)と車椅子のホッテ2人だけ。そんなある時、仕掛けた爆弾が突如爆破し、警察が捜査を始めた。警察はホッテから活動のフィルムを押収し、警察の倉庫へ保管した。ティムたちはそれを取り戻そうと、かつての仲間たちに連絡を取る。
監督グレゴー・シュニッツラー(ミュージックビデオ制作を経てメジャーデビュー)
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初日の1回目に見に行ったので、石井克人と塩田時敏のトークショーも見たんだけど、これがもうグダグダではっきり言ってタダじゃなければ見る価値のないものだった。ステージに上がる前に喋ることくらい決めておきなよ〜って声を掛けたくなったほど、この映画についての感想を言わないの(苦笑)ただ面白かっただけじゃ素人でも言えるわ。まぁ石井さんがタランティーノの『キル・ビル』のアニメを担当したって話を聞けたからいいか(いや、いくない)

んーでも映画の感想ねぇ・・・確かに言いにくい。石井さんもオープニングの映像だけ誉めてたけど、ホントそこくらいしかなかったね。その映像を見てこれはイケるかも?なんて思ったんだけど、本編は小さくまとまり過ぎでちっとも乗れず。警察相手にかつてのアナーキストたちが昔を思い出して大活劇を繰り広げるのかと思ったけど、みんな大人になりすぎたということなんだろうか?警察もフィルムを押収したならすぐに確認作業を始めればいいのに、倉庫に仕舞いっぱなしなのが納得できない。彼らのことがいつバレてしまうのか?警察が問題のフィルムをいつ手にしてしまうのか?っていうドキドキ感がないわけ。お約束でいいから、バレそうになる瞬間に危機一髪で回避するっていう展開にして欲しかった。

しばらくすれば見たことすら忘れてしまいそうな映画だったけど(かなり辛口)印象的だった3つを挙げとく。

 ◆ティル・シュヴァイガーがエンケン(遠藤憲一)似のいい男(でもティルというキャラクターはいまいち)
 ◆マイクが着てた“I Love Bill Gates”のTシャツ
 ◆子持ちのネレのセリフ「何でも4年でダメになってしまうの」

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アダプテーション('02アメリカ)-Aug 30.2003
[STORY]
『マルコビッチの穴』で一躍有名脚本家になってしまったチャーリー・カウフマン(ニコラス・ケイジ)は、スーザン・オーリアン(メリル・ストリープ)が書いた『蘭に魅せられた男』の脚色を依頼される。 フロリダで蘭を不法採取し栽培しているジョン・ラロシュ(クリス・クーパー)の物語だ。しかし書き始めたもののすぐに行き詰まってしまう。そんな時、双子のドナルド(ニコラス・ケイジ)もまた脚本家になるべく執筆を始めていた。
監督スパイク・ジョーンズ(『マルコビッチの穴』
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第75回アカデミー賞4部門ノミネートし、助演男優賞をクリス・クーパーが受賞した。

『マルコビッチ』のような派手な奇抜さはないけど、個人的には『マルコビッチ』よりもよくできた脚本だなぁと感心した。脚本が書けないチャーリーの話と『蘭に魅せられた男』の中の話、この2つが次第に絡み合い、単なる劇中劇ではなくなっていく。さらに随所に伏線が張られていたり、あるセリフが後の展開とリンクしていたりと飽きさせない。結末も全然読めなかった上に、想像してなかった展開にハラハラしてしまった。

チャーリーが書きたい話からどんどん外れていって、彼が書きたくない方向へ向かっていくところ、ここが一番面白い。シニカルだけど嫌味じゃないのは、共感できる部分が多いからだと思う。ハリウッドのお約束映画もそれはそれでいいけれど、ただ悩んでるだけで何にも成長しない映画をハリウッドで作ったっていいと思うのよね。蘭の花だけを追いかけた映画を見てみたかったぞ。あ、でもドナルドが書いた脚本にも興味津々(笑)ぜひ映画化してもらいたいもんだ。

脚本を誉めたけど、これを映像化して映画に仕上げた監督もすごい。ファンタジーを思わせるような空想シーンがあるかと思えば、事故のシーンはドキッとするくらいリアルだったり、シーンによってガラリと印象が変わってしまう。これを編集するの大変だったと思うよ。チャーリーのシーンと『蘭』のシーンを交互に見せながらそれを1本に纏めていく。途中でちょっと違和感のある繋ぎもあったけど、それがチャーリーの苦悩ともマッチしてたかも。
もちろん出演者たちも良かった。失礼だけど、こういう映画にメリル・ストリープが出るとは思わなかったな。しかも意外な役で驚いた。キャスティングした人も本人も、その意外なところに賭けたのかもしれない。クリス・クーパーよりも私は印象に残った。

ただラストにもうひと捻りが欲しかったな(あれもひょっとしたら皮肉ってるのかもしれないが)エンドクレジットが捻りといえば捻りだが・・・。
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10日間で上手に男をフル方法('03アメリカ)-Aug 24.2003
[STORY]
全米NO.1の発行部数を誇る女性誌の記者アンディ(ケイト・ハドソン)は、ひょんなことから男が嫌がる行為を調査して記事を書く担当になってしまった。締切日までの10日間で実験台の男を探さなくてはならないアンディは、パーティー会場でベン(マシュー・マコノヒー)という男から声を掛けられる。ターゲットを見つけたアンディは大喜びするが、実はベンも仕事を得るためにアンディを誘ったのだった。
監督ドナルド・ペトリ(『デンジャラス・ビューティー』)
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可愛いラブストーリーは大好きなんだけど、予告が好感触すぎたのか、本編は期待したほどでもなかった。もちろんアンディが嫌われようとベンの邪魔をしまくるところは爆笑したけど、切なさが足りなかったなぁ。

アンディは男にフラれるような行為はするが、本当にフラれなくても記事さえ書ければいいわけよ。それじゃあ全然キュンとならないでしょ。嫌われなきゃいけないのに、本当に相手を好きになってしまった。これ以上彼に嫌われたくない。でもあと何日かで本当にサヨナラしなきゃいけない。別れなくないのに・・・とかさ。まぁ雑誌の記事を書くだけで引き裂かれる恋ってのはありえないか(苦笑)うーん、じゃあベンが仕事をゲットした途端にアンディをフってしまうとか。それじゃあベンがヤな奴になっちゃう?でも彼がアンディからされてきたことは、恋人からじゃなくても普通に嫌がらせに近いぞ(笑)

それからアンディが仕事のために男を騙すっていうシチュエーションは納得できたけど、ベンが仕事を得るための賭けするシーンは、もうちょっと何とかならなかったのかな。強引過ぎて下手な流れだった。ていうか(ネタバレ)ベンってダイヤモンドの会社の夫人に気に入られてたみたいじゃない。わざわざ賭けなんてしなくても、夫人に気に入られれば良かったんじゃないの?(笑)(ここまで)それ言ったらおしまい?
さらにお互いの使命が一気にバレてしまうシーンも良くなかった。ラブコメディとしては定番の喧嘩シーンであそこまで見ててテンションが下がったのもないな。いつもなら「あーあ、とうとうバレちゃった」と思いながらもニヤニヤが止まらないのに、ちっとも笑えずに辛かった。あの時の2人が醜く見えたせいだろう。言い合うシーンはどんなに酷い罵り合いでも、同時に面白くて可愛く見えないといけないのにね。あれは演出が酷い!

ケイト・ハドソンは可愛いしコメディセンスも抜群だと思う。ただ表情のバリエーションが少ないかな。このセリフを言われたらきっとこういう顔するぞ、っていうのがだんだん読めてしまって、もうちょっとのところで鼻につくと思うところだった。でも時々すごくナチュラルなイイ顔する時があるのよね。そういう顔がもっと自然に出るようになったらいいな。
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ファム・ファタール('02フランス=アメリカ)-Aug 23.2003オススメ★
[STORY]
カンヌ映画祭の会場でモデルのヴェロニカ(リエ・ラスムッセン)が纏う総額1000万ドルの純金とダイヤでできたビスチェに注目が集まっていた。そして、それを狙う強盗団がいた。実行犯のロール(レベッカ・ローミン=ステイモス)はヴェロニカの気を引き、見事に彼女からビスチェを脱がせることに成功する。しかし仲間の失敗により非常事態が発生。ロールは仲間を裏切り、宝石を持って逃げ出すが・・・。
監督&脚本ブライアン・デ・パルマ(『ミッション・トゥ・マーズ』
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カンヌ映画祭の会場でロケを行い、蛇のビスチェはショパールがこの映画のために制作した本物!『イースト/ウエスト 遥かなる祖国』のレジス・ヴァルニエ監督と主演のサンドリーヌ・ボネールが本人役で出演。またレベッカの夫ジョン・ステイモスも声で出演している。

すっばらしい!サイコー!(←素晴らしい、最高、とは違うニュアンスで読んでね)デ・パルマ作品は半分も見てないので(数えたら7本だった)「これぞデ・パルマだ!」なんて誉め方はできないんだけど・・・あ、でも過去のあの作品とやってることは同じじゃない(笑)というシーンがあって、その過去の映画を見てたから、今回の映画も「やった!」って喜べたのかも。これが初めてだったら怒ってたかもしれない。オススメ★って付けたけど、観客を選ぶ映画だと思う。アメリカでは第25回スティンカーズ最悪映画賞(ラズベリー賞みたいなもの)にノミネートされ、ずいぶん酷評されたようだ。

今時、こんな話が映画になるわけがない!っていうストーリーなんだけど、でも何故かグイグイ引きこまれてしまう映画だった。むしろ感激してしまったほど。それはウケ狙いでも何でもなく、ただ純粋に素晴らしい映画になるって信じて撮ったというのが伝わるからだろうか。“天然”はやっぱり最強だな(笑)と思う今日この頃(なんだそれ)

上に書いたように本物づくしなのに、なぜか音楽は本物の『ボレロ』を使わずに、坂本龍一に無理やり『ボレロ』にそっくりな曲『ボレリッシュ』を作らせている。この曲がまた気持ち悪いの(←誉め言葉)『ボレロ』になりそうでならないところが狂わされてるようで、この映画にピッタリなのだ。そしてやる気なさそうなバンデラスの演技やら、意味のないローミン=ステイモスのストリップシーンやら、本当は意味があるのかもしれないバスルームの虫やら、何も隠れちゃいないビスチェも何もかもを引きたてている。豪華なのにチープ感がたまらない。ある意味とてもバランスのいい映画だ。なんかもう誉め言葉しか見つからんな(笑)DVD出たら買うかも。デ・パルマの音声解説を是非聞いてみたい。
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