Movie Review 2013
◇Movie Index

サイド・エフェクト('13アメリカ)-Sep 28.2013
[STORY]
インサイダー取引で逮捕され投獄されたマーティン(チャニング・テイタム)の妻エミリー(ルーニー・マーラ)は鬱病になり、マーティンが出所後に自殺未遂を起こしてしまう。彼女の担当になった精神科医のジョナサン(ジュード・ロウ)は新薬を処方するが、副作用で夢遊病を発症するようになる。そしてある時、夢遊病状態でマーティンを殺してしまう。処方したジョナサンは他の医師から疎まれ、マスコミに責任を追及されてしまうのだが・・・。
監督スティーヴン・ソダーバーグ(『マジック・マイク』
−◇−◇−◇−
ソダーバーグが監督した『インフォーマント!』や『コンテイジョン』の脚本を手がけたスコット・Z・バーンズが再びソダーバーグ映画の脚本と製作を担当。主要キャストもまたマーラ以外はソダーバーグ作品に出演済である。
タイトルの『Side Effects』の意味は“副作用”

最近続けてソダーバーグの映画を見て感じたのは、どんなジャンルの映画を撮ってもテンションが変わらないってこと。すべて見てるわけじゃないけど(上に書いた2本は見てない)『チェ』でも『マジック・マイク』でも本作でも雰囲気を変えたりしない。アクションでもサスペンスでも盛り上げる気がないんじゃないかっていうくらい冷静で、どんな映画でもいっつも空は黄色いし(笑)盛り上がってる場面は役者自身が盛り上げてるんだろうなっていう(笑)『オーシャンズ』とか。そこがソダーバーグの良さでもあるし物足りなさでもあった。

でもこの映画に関しては、その変わらないテンションがすごく効果的だなと思った。後から思い返せばストーリー自体はよくあるパターンだと思うんだけど、あまりにも淡々と進んでいくので話がどう転がっていくのか全然読めず、なにこれサスペンス?社会派ドラマ?それとも?って混乱しまくり。他の監督だったら最初からガッツリ雰囲気を作って見せていくだろう。見てるほうだってその雰囲気を感じ取りながら、ある程度予測をつけながら見てしまう。でもそういう慣れってあんまりよくないのかなぁ、今後は慣れを捨てて映画を見るようにしたいと思った。

なんて反省文みたいになっちゃったけど(笑)内容は簡単に言うと「倍返しだ!」(←2013年の流行語)な映画でした。途中のムカムカがまるで嘘みたいになる。でも最後はおとなしく収まりすぎなんじゃないかなぁ。(ちょいネタバレ)出て行ったジョナサンの妻子とまたヨリを戻すなんて。ここはコブつきじゃない若くて美人の女性と新たに出会ってくれたほうが、よりスカッとできただろうな。(ここまで)どうせなら全員に対して「ざまぁ♪」な感じにしてほしかった。
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スーサイド・ショップ('12フランス=ベルギー=カナダ)-Sep 23.2013
[STORY]
トゥヴァシュ一家は父ミシマ(声:ベルナール・アラヌ)と母ルクレス(声:イザベル・スパッド)、そして長女マリリンと長男ヴァンサンの4人で老舗の自殺用品専門店を営んでいた。そんな一家に末っ子のアランが誕生する。陰気な家族と比べてアランは陽気で明るい少年に成長し、店にやってきた客の自殺を食い止めたり、家族の心を少しずつ変えていくのだった。
監督&脚本パトリス・ルコント(『ぼくの大切なともだち』
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原作はフランスの作家ジャン・トゥーレの『自殺用品専門店』でルコント初の3Dアニメーション作品。

ルコントといえば切ない恋を描いた文芸作品のような映画からアクションやコメディなど、さまざまなジャンルを手掛けてきたがどれも実写だったから、アニメは門外漢だと思ってた。今回アニメの監督をするといっても総監督みたいなもので、アニメそのものは専門の人が手掛けてるんじゃないの〜って。でも実は映画監督になる前にバンド・デシネ(フランス・ベルギーの漫画誌)で漫画を描いていたそうだ。この映画を見に行った劇場でルコントのサイン色紙が飾ってあったんだけど、本作のキャラクターも一緒に手書きで描かれていて、思わず「絵、かけるんだ!」って驚いてしまった。大変失礼しました。ごめんなさい。

実はこの作品、以前実写での監督を最初は依頼されたそうだが、内容が内容だけに断ったらしい。これはアニメで正解だ。自殺シーンが多いので、実写だとコメディタッチでもかなりエグくなってしまうだろう(ジャン=ピエール・ジュネならまた違った上手いブラックコメディに仕上げそうだが)アニメだったらいくらでもデフォルメできるし、パッと場面の転換もできる。実写だとエグいシーンの後の切り替えが難しそう。アニメでだってエグイなぁと思うシーンがあったしね。

トゥヴァシュ家の名前はみな自殺した有名人の名前がつけられているそうで、主人のミシマはもちろん三島由紀夫だ。フランスで三島作品は人気があるそうだが、割腹自殺を遂げたというのも衝撃的だったのかなと、アニメの中のミシマが鉢巻して日本刀を振り回している姿を見てふと感じた。

そんな一家にアランという根っからの陽気な男の子が誕生する。アランは自殺しようとする人を止めたり、家族の考え方を変化させたりと大きな影響を及ぼしていく。特に姉マリリンへのプレゼントはよかったな。母ルクレスもミシマもアランによって大きく変わるが、欲を言えば兄ヴィンセントにも直接変わるきっかけを作るエピソードがあればよかったな。

途中で歌が挿入されるミュージカルのような映画だったが、その歌がどれもあまり印象に残らないメロディばかりで、歌ってる最中もただ歌詞を読むだけになってしまった。しいて挙げればオープニングで歌われる歌と、マリリンが踊る時の音楽くらいかな(これは歌じゃないけど)歌の最中の映像にも、もう少し工夫があるとよかったな。
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劇場版ATARU THE FIRST LOVE&THE LAST KILL('13日本)-Sep 14.2013
[STORY]
ニューヨーク。FBIの組織SBP―サヴァン・プログラム・ブランチが爆破され、東京でも同じ手口の事件が起きる。チョコザイことアタル(中居正広)とともにSBPの訓練生だったマドカ(堀北真希)が、コンピューターウィルス“WIZARD”を使って行ったものだった。だが、警視庁の管理官である星(松雪泰子)は真犯人がチョコザイではないかと疑い、彼を拘束する。疑いを晴らすために舞子(栗山千明)と沢(北村一輝)はマドカを追う。
監督・木村ひさし(TVドラマ版『ATARU』のチーフ・ディレクターで映画初監督)
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2012年4月からテレビ放映された連続ドラマの劇場版で、本作は連続ドラマ終了後の2013年1月に続編のスペシャルドラマとして放映された『ATARU スペシャル〜ニューヨークからの挑戦状!!〜』から続いている物語。

連ドラは毎週見ていたし、プロデューサーの植田博樹が『SPEC』のプロデューサーでもあったため、ドラマでも映画でもちょいちょいSPECネタがあった(当麻と瀬文らしき2人の後ろ姿を見かけた)他にもSPECに似た部分があるのだが、全体的にこちらは ヒューマンドラマっぽい後味。ドラマは基本1話完結型で、チョコザイの出生と舞子の母(奥貫薫)の死についてが全編にわたって大きな謎となっていた。毎週起こる事件ではCASE01が一番面白かったけどあとはそうでもなくて、スペシャルに至っては「これホントに続きを映画化するの?」って疑問だった。

で、やっぱり映画じゃなくてスペシャルドラマでも十分な内容だった。映画らしく見えるところは海外ロケくらい?映像はスケールの大きさを全く感じない、テレビドラマ撮ってる演出家の作品という感じ。そして邦画にありがちな、私の嫌いな泣かせよう演出の多さにやはりうんざり。マドカのキャラクターはスペシャルドラマでの不気味さがなくなり、泣かせるための可哀想な子になっちゃって残念。

またチョコザイについても、今までの彼は自分の気持ちを普通の人のように伝えることができないため、短いセンテンスで伝えたり、ジェスチャーしたりモノで指し示したりして伝えていた。そこがこの作品のいいところだったし、その演技をする中居もよかった。なのに本作では「お前そんなに喋れんのかよ」ってツッコミ入れたくなるほど自分で喋ってて(笑)それを見て何だかスーッと冷めてしまった。今まで見てきたのは何だったのかと。

ラストが綺麗に終わったのはよかったかな。また連ドラ化できそうではあるけど、私としてはこれで終わりでいいんじゃないかなと思う。
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マン・オブ・スティール('13アメリカ)-Sep 13.2013
[STORY]
地球の遥か彼方にあるクリプトン星は、過剰な資源の採掘により崩壊の危機を迎えていた。だが議会はまったく動かず、ゾッド将軍(マイケル・シャノン)はクーデターを起こすも失敗し投獄される。科学者のジョー=エル(ラッセル・クロウ)は生まれたばかりの息子カル=エルだけは生かそうと地球に送る。
地球に辿り着いたカル=エルはカンザスでジョナサン(ケビン・コスナー)とマーサ(ダイアン・レイン)のケント夫妻によってクラークと名付けられ育てられる。成長したクラーク(ヘンリー・カヴィル)は自分の特殊な能力を隠すように世界中を旅していた。
監督ザック・スナイダー(『300<スリーハンドレッド>』
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1978年から続いている『スーパーマン』シリーズ(2006年の『スーパーマン リターンズ』まで)とは繋がりのない、新たに1から作ったシリーズの1作目で生涯を描くシリーズになるという。今までスーパーマン役はアメリカ人しか演じてこなかったが、カヴィルは初のアメリカ人以外(イギリス人)のスーパーマンとなった。

『ダークナイト』のクリストファー・ノーランが原案と政策を担当しているせいか、タイトルもそのものズバリではなく“鋼鉄の男”と彼の異名になっている。また、コスチュームも随分変わった。あの明るい色使いではなくなりトーンを落とし、青はタイトル通り鉄紺色。質感も鎖帷子みたいな薄い鎧のようになった。そして一番の違いはあの赤パンツと黄色いベルトがなくなったこと。クリストファー・リーヴが着てた時は何とも思わなかったのに、ブランドン・ラウスが着てるのを見て変態っぽいと思っちゃったんだよね(透視しまくる役だったし)だからまたスーパーマンが映画化されると最初に聞いた時には「今度は誰があの衣装を?」と心配になったのだが、映像を見て思わずホッとしてしまった(笑)映像も意図的なのか上半身と膝下はアップになるけど、その間はあまりアップにしてなかったように思う。

ストーリーは地球にやってきたカル=エルが成長し、地球を侵略しようとする同じクリプトン星人と戦うことになる。スーパーマンシリーズでおなじみの宿敵レックス・ルーサーは登場しない。育ての父ジョナサンとの思い出や、特殊な力を持つゆえの苦悩はとても丁寧に描かれていて、幼いクラークがマントをつけて遊んでいる姿に目を細めるジョナサンのシーンが特によかった。だが、戦いのシーンは単調に感じてしまった。クリプトン星人同士の戦いは力が拮抗していてなかなか勝負がつかないのは分かるけど、最後のほうは激しすぎて疲れたし飽きた(苦笑)長くても戦い方に工夫があればよかったんだけど。

同じスパイダーマンでもトビー・マグワイアの『スパイダーマン』とアンドリュー・ガーフィールドの『アメイジング・スパイダーマン』で随分印象が変わったが(マグワイアのほうがやっぱり上手い)本作でもヘンリー・カヴィルとブランドン・ラウスで随分差がついちゃったなと感じた(クリストファー・リーヴは殿堂入りだけど)ストーリーや衣装での差もあるけど、やっぱり演技力って大事だなって思った。でもロイス・レイン役は、演技力からしたら本作のエイミー・アダムスのほうが上だけど、クラークとの釣り合いを考えるとケイト・ボスワースのほうがよかったな。アダムスには可愛らしさがなかった。残念。
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大統領の料理人('12フランス)-Sep 7.2013
[STORY]
ミッテラン大統領(ジャン・ドルメッソン)の希望により、プライベートシェフが雇われることになった。指名されたのはオルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)。彼女は大統領官邸があるエリゼ宮殿唯一の女性シェフとなっただが、エリゼ宮の厨房は彼女を歓迎せず、与えられたのは小さな厨房と若い助手が1人だけ。それでも大統領に温かみのある家庭料理を食べてもらおうと工夫を重ねる。
監督&脚本クリスチャン・ヴァンサン(『恋愛小説ができるまで』)
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フランスの大統領ミッテラン(在任期間1986年〜1995年)のプライベートの料理人を1988年から2年間務め、その後は自ら希望して南極調査隊のシェフを務めたというダニエル・デルプシュをモデルに作られた映画。
これは映画化したくなるのも分かる。ちょうど公開日に日本のテレビ番組に登場したのを見たが、映画のカトリーヌ・フロとはあまり似ていなかった。でも同じようにネックレスをジャラジャラつけてて笑った。あれが彼女のトレードマークなのかな。

フロとデルプシュが似てなくても問題ないが、ミッテランとドルメッソンが全然似てなかったのが私としてはマイナス。在任期間が長かったし、フランスの大統領といえばこの人!と印象深かったから、もう少し似てる人はいなかったのかなと。ドルメッソンは本職が俳優じゃなくて小説家らしく、フランス本国では有名で「彼がミッテランを演じるなんて!」と驚かれ話題になったかもしれないが、こっちはそんなの知らないからね。オルタンスとミッテランが2人で会話をしていても、相手が大統領に全然見えなくて、なかなか入り込めなかった。
逆にフロは似てなくてもよかった。やっぱりこの人好きだなぁ。親しみやすくて可愛らしく、いい意味で色気がないから大勢の男性の中に1人混じっていても仕事仲間や友人という間柄以上のものに見えないのもこの役に合ってると思った。

現在の舞台を南極にして、過去のエピソードとして大統領のシェフだったことを振り返っていくという構成は悪くないが、どちらのエピソードもブツ切りになってしまって、この続きは?と思うところが多かった。本物のエリゼ宮で撮影したり、料理もとてもおいしそうだっただけに残念だ。
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