Movie Review 2013
◇Movie Index

タイピスト!('12フランス)-Aug 24.2013オモシロイ★
[STORY]
1950年代フランス。田舎からやってきたローズ(デボラ・フランソワ)は、ルイ(ロマン・デュリス)が経営する保険会社の秘書の採用試験を受ける。1本指で素早く打つ彼女のタイプに驚いたルイは採用するが、仕事が全くできないため秘書としては諦め、タイプライターの早打ち選手として彼女を鍛えて大会に出場させようとする。
監督&脚本レジス・ロワンサル(『Rendez-vous avec Jane』)
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過去に実際に開催されていたというタイプライター早打ち大会の映像や資料、出場者などへの取材を元に作られたオリジナル作品。

一言で言うと“スポ根ラブコメ”でした。田舎から出てきたイモ臭いドジな女の子の唯一の特技、タイプの早打ち(最初は1本指打ち!)に目をつけた上司とともに、一緒に世界チャンピオンを目指すというというストーリー。すべての指を使う打ち方に変えるよう指導されたり(キーの色とマニキュアの色を合わせて練習するっていうのは上手いやり方な上にオシャレ!こういうところにフランス映画のセンスの良さを感じるわ)本を読まされたり、体力作りもやらされる。とにかく頑張る主人公に共感を覚えずにいられない。また、純朴なところを残しつつも、洗練されたファッションにも目覚めてどんどん綺麗になっていくところは思わず応援したくなってしまう。対するルイはローズに厳しく、好みじゃないだの愛してないだの色々言いつつも彼女に惹かれていく役どころ。ローズはタイプ以外は全く仕事ができないのでルイがイラつくのも分かる。でも欠点だらけでも愛さずにいられないっていうところにキュンキュンさせられる(笑)まるでロマンス小説みたいなシチュエーションなんだけど、だがそこがいい。

恋と競技会とのバランスもよかったし、ローズの父親の行動には思わず涙。はたまた新しいタイプライターが発明される瞬間があったり、さりげなくアメリカをディスってるところもあって(笑)思い返せば意外と盛りだくさんな内容だった。何より最後にガッツポーツと拍手を一緒にしたくなるっていうのがいいね。清々しくて可愛くて素敵な映画だった。
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ペーパーボーイ 真夏の引力('12アメリカ)-Aug 17.2013
[STORY]
1969年フロリダ州モート郡。水泳選手だったジャック(ザック・エフロン)は、大学を中退して父が経営する新聞社の配達員をしていた。ある日、大手の新聞社に勤める兄ウォード(マシュー・マコノヒー)が、同僚の黒人記者とともに帰郷する。4年前にこの地で起きた保安官殺害事件を記事にするためで、保安官を殺した罪で死刑が決まっているヒラリー(ジョン・キューザック)には冤罪の可能性があり、獄中のヒラリーと文通し婚約までしたシャーロット(ニコール・キッドマン)からの依頼だった。
監督&脚本リー・ダニエルズ(『プレシャス』
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原作はピート・デクスターの同名小説で、監督のダニエルズとともに脚本も手掛けている。

最初に書いちゃうけど、胸糞悪い映画だった。自由の国アメリカの裏の部分、排他的で差別も偏見も根強くあるコミュニティで起きた事件をきっかけに、事件に関わった人々の人生が狂っていくというストーリー。『ミスティック・リバー』を見た時のことを急に思い出した。あれと似てるかな。

『プレシャス』では醜悪な部分をぼかして描いていたが、本作ではそこまで見せなくても、というところまでしっかりと、イヤだなぁと思うほど見せられた。キューザックもキッドマンもよくあそこまで演じたと思うよ。マコノヒーも『マジック・マイク』に引き続き身体を張ってて、偶然とはいえ自分のチョイスに驚いたわ(笑)

一見のどかで、人々がのんびりと暮らしているように見える町。だが、町から外れたところにはジメジメとした沼地で貧しい暮らしをしている人々がいる。ジャックたちが事件に関わるようになってから夏の明るい陽射しは鬱陶しく感じていくし、広い土地なのに閉塞感を覚えるようになっていった。気が付くと自分もジワジワと嫌な汗をかいていて、何て嫌な映画だろうと思いながらも夢中になっていた。もう二度と見たいと思わないけど、見て後悔する映画ではなかった。

ただ、原作あり映画によくある説明不足というか、読んでる人ならすぐに分かるんだろうけど、人間関係や事件の経緯や背景が理解し難かった。あと主役のジャックはいまいち存在感がなかったな。彼の周りのキャラクターが濃すぎたってこともあるし、事件後に消えるようにいなくなってしまうので、より印象が薄くなってしまったようだ。私は最後にもう一度彼の顔をしっかり見たかった。
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マジック・マイク('12アメリカ)-Aug 16.2013
[STORY]
働く意欲がない若者アダム(アレックス・ペティファー)は、ある日マイク(チャニング・テイタム)という男と出会う。彼に連れられるまま行った先は何と男性ストリップの劇場で、マイクはそこのセンターダンサーだった。マイクに言われるままアダムも舞台に立ち、服を脱ぎ捨てて拍手喝さいを浴びる。アダムにも才能があると確信したマイクは彼を雇うが、真面目なアダムの姉ブルック(コディ・ホーン)は反対する。
監督スティーヴン・ソダーバーグ(『エージェント・マロリー』
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主演のチャニング・テイタムが18歳でストリッパーとして働いていた時のエピソードを元に描いた作品で、その時の経験をソダーバーグに話したことから映画化されることになったという。

私が彼の存在をちゃんと認識したのは同じくソダーバーグの『エージェント・マロリー』で(その前の出演作品も見てたけど特に記憶になし)その後の作品を見ても軍人系の役ばっかりやってるアクション俳優だと思ってた。だから本作で踊るといっても、鍛えた肉体を見せるための簡単なダンスだと高をくくっていたのだった。

それが!いや本当にごめんなさい(平身低頭)すげー踊れる人だったんだね。初主演がダンサー役だったことも後から知ったけど、びっくりしたわ。しかしダンスがすごすぎて服を脱いでもキャー!なんて全然思わなかった(笑)脱ぐ行為が振付の1つみたいだったし、出し惜しみなんかしないでパッパと脱いじゃうんだもん。演技だと思うけど、マイクのストリップは「これ仕事です」って割り切ってやってるだけに見えた。
それと比べるとダラス(マシュー・マコノヒー)のストリップは、ダンスの技術はマイクに全く及ばないんだけど、とにかく女の子たちを興奮させようっていうサービス精神が旺盛、かつ自分も楽しんじゃうショーだった。この2人を見比べるだけでも見た甲斐があったな。

見終わって、最後までアダムのどこにストリッパーの才能があったのかさっぱり分からなかった(笑)ダンスシーンはショボかったし、どう見ても最初からヤバいことに手を染めそう悪ガキだったじゃん。マイクは人を見る目がないなぁって。アダムを引き入れたのは自分だからという責任感からか、マイクはアダムの尻拭いをするんだけど、アダム自身がもうちょっと痛い目を見たほうがよかったんじゃないかな。そこが少しモヤモヤした。
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パシフィック・リム('13アメリカ)-Aug 13.2013
[STORY]
太平洋の深海から突如巨大な生物が出現し“怪獣”と名付けられた。怪獣は大都市を襲撃し、人類は滅亡の危機を迎えようとしていた。そこで巨大ロボット“イェーガー”を開発するが、1人で操縦するのはパイロットの体力が持たないため、2人のパイロットが動きや心をシンクロさせて操縦しなければならず、親子や兄弟でパートナーを組むことが多かった。ローリー(チャーリー・ハナム)も兄とともにイェーガーを操縦していたが、怪獣との戦いで兄を失い、パイロットを辞めてしまう。だが、環太平洋防衛軍の司令官スタッカー(イドリス・エルバ)からの依頼で復帰を決意する。そして、日本人研究者の森マコ(菊地凛子)とコンビを組むことになる。
監督&脚本ギレルモ・デル・トロ(『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』
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脚本家トラヴィス・ビーチャムの原案を監督のデル・トロと共同で脚本化した。また、本作のストーリーの前を描いた『Pacific Rim Tales from Year Zero』というコミックも出版されている(こちらは洋書のみ)

怪獣は映画の中でも“kaiju”と発音されており、怪獣を倒すための大型ロボットの名称イェーガーは“狩人”という意味のドイツ語。そのイェーガーもアメリカ、オーストラリア、ロシア、中国(過去には日本のも)と国際色豊か。今までは世界的な問題をアメリカ一国だけで解決しちゃう映画が多かったけど、世界が一致団結するほうがワクワク感が高まるなぁと思った。

今回初めてIMAXの3Dで見た。見るなら絶対3Dで!という評判を聞いていたのだけど、今まで見た3Dは思ったよりも飛び出してこなくて不満だった。じゃあ今回はIMAXで見てみるか!と奮発(しかも座席もグレードアップ)すんごい飛び出して見えるシーンとそうでないシーンがあって、全部が飛び出すようにすると逆に効果が薄れてしまうのか?ものすごい迫力!とまでは感じなかった。でもローリーが壁の建設のために高いところにいるシーンではクラクラしたし、イェーガーがソードを振り回すところの飛び出しには思わず避けてしまったので、やっぱり3Dで見て良かったのかもしれない。

ストーリーはもうちょっと何とかならなかったのかな、と思う。アメリカ至上主義な話じゃないところは新鮮味があったけど、怪獣が宇宙からの侵略者っていう設定は新鮮味ないよね。原子力万能説もどうなんだと。あと怪獣の脳から行動を読み取るシーンは斬新!と一瞬思ったんだけど、ふと『インディペンデンス・デイ』で捕えた宇宙人と会話して奴らの意図が分かるシーンとそんなに変わらないことに気が付いた(笑)やっぱりこういうパターンしかないのかねぇ。

登場人物は菊地凛子はアクションとか頑張ってるのは分かったし応援したいけど、やっぱり演技はいまいちだし声の酷さが致命的。あと、主役のチャーリー・ハナムって全然魅力がないんだな。どんな顔だったかすぐ忘れちゃうくらい(失礼)デル・トロ常連のロン・パールマンと、イドリス・エルバの演技に少し救われたが(ちょっと泣いたぜ)

それから靄で怪獣がよく見えない、距離が近すぎて動きがよく分からない、というのは『GODZILLA』『トランスフォーマー』で思った不満だったが、それはこの映画でも同様にあった。でもそれがテクニックなんだろうな。よく見えないから不気味だし、距離が近いほうがより速く感じる。ということで納得したが、その怪獣と戦うイェーガーの構造はできたら詳細に、ヲタ監督らしくじっくり見せてくれてもよかったんじゃないかな。中国のクリムゾン・タイフーンなんか出番が少なくてもったいなかった。

しかしテーマ曲とともにヘリがイェーガーを海まで運んでくるシーンは、なんというかもう本当に堪りませんでした!「アガる!」って言葉は今まで使ったことなかったけど、この時は「アガるわ〜!」って思いながら見ていました(笑)
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ローン・レンジャー('12アメリカ)-Aug 10.2013
[STORY]
極悪人ブッチ・キャベンディッシュ(ウィリアム・フィクトナー)の裁判のため、検事のジョン・リード(アーミー・ハマー)が故郷に帰ってきた。だが、ブッチは護送中に逃げ出し、一緒にいた先住民のトント(ジョニー・デップ)だけしか捕らえることができなかった。ジョンの兄らテキサス・レンジャーとともにジョンはブッチを追いかけるが、罠に嵌り全員殺されてしまう。そこへ脱獄したトントがやってきてジョンを聖なる力で甦らせる。ジョンは白馬シルバーにまたがり、白いテンガロンハットと黒いマスクのローン・レンジャーとなり、トントとともにブッチを追いかける。 監督ゴア・ヴァービンスキー(『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』
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原作はジョージ・W・トレンドルとフラン・ストライカーの西部劇で1933年にラジオドラマ化され、その後アメコミやテレビドラマにもなり、映画化もされている。
私は今までのドラマも映画も全く見ていないが“キモサベ”と「インディアン嘘つかない」だけは記憶にある、という程度だった。

リメイクではあるけど、ディズニー映画が『パイレーツ・オブ・カリビアン』の後釜的作品として出してきたという感じ。変人デップと若手イケメン、不死身の宿敵が登場してアクションに次ぐアクション。と海から大陸に場所を移しただけの定型作品だ。『パイレーツ』はディズニーランドのアトラクション、カリブの海賊を元に作られたもので、本作は別にアトラクションを謳ってはいないんだけど、全編ほぼビッグサンダーマウンテンだった(笑)今の若い人には『ローン・レンジャー』のリメイクを謳うよりも、ビッグサンダーの映画化って言ったほうがヒットしたかもしれない(笑)カリブの海賊にジャック・スパロウ人形が加わったように、ビッグサンダーにもトント人形を置いてみたらどうだろうか。

ワンパターン作品でも『パイレーツ』はまだ魅力のある作品だった。デップはあの演技でもたまにカッコ良かったところが女性ファンを虜にしたが、本作では白塗りでほぼ顔が分からない(笑)オーランド・ブルームは当時勢いがあって『パイレーツ』で大人気になったが、アーミー・ハマーはイケメンでも何かが足りない。声もくぐもってるし、基本マスク着用だからこれまた顔分からんという(笑)続編を作ろうと思えば作れそうな、ブッチも死んだか分からなくしてあって様子見な作りになっていたけど微妙だな。機関車アクションは面白かったので、デップが白塗りをやめて、魅力的な女性キャラクターが出てきてローン・レンジャーと恋するような展開を作れば何とかなるかも。
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