Movie Review 2012
◇Movie Index

マリーゴールド・ホテルで会いましょう('12イギリス)-Oct 21.2012
[STORY]
夫を亡くしたイヴリン(ジュディ・デンチ)は、夫に借金があったことを知る。返済のために家を売り、インドにある高級リゾートホテルで生活しようと旅立つ。ホテルには彼女のほかに、幼い頃にインドに住んでいたグラハム(トム・ウィルキンソン)や、足の手術とリハビリのためにやってきたミュリエル(マギー・スミス)など、さまざまな境遇の英国人男女が向かうが、到着したホテルはボロボロだった。
監督ジョン・マッデン(『恋に落ちたシェイクスピア』
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原作はデボラ・モガーの同名小説。
第25回東京国際映画祭の特別招待作品として上映され、私はそこで鑑賞した。

日本でもセカンドライフを物価の安い海外で――と、タイやマレーシアでリタイアした人たちが年金で生活をするのが流行っているというニュースを見たことがある。しかし安いとはいってもやっぱり途上国。インフラは不十分だし治安も良くはない。食も生活スタイルも全然違うから、自分の国でどうしても暮らしていけない人か、よほどその国が気に入ったか順応性のある人じゃないと生活していくのは大変だろう。

本作でも、目的があって行く者や期待を持って行く者は少数派で、だいたいの人はお金の問題でインドへ旅立つ。歳取ってから新しい土地に行くのは特にキツイ。だから最初はイヤイヤ行った人たちに同情した。でも次第に慣れてホテルから町へ出かけていく人たちがいる中で、頑なに拒否する人に対してはワガママだなぁと思うようになってしまった。だってホテルの従業員はみんな優しくて、少しでも楽しんでもらおうって人たちばかりだし、他の英国人たちにも悪い人はいない(そこがちょっと綺麗に描き過ぎかなと思ったが)閉じ篭らずにちょっとでもいい面を見つけてみればいいのに、ってイライラしてしまった。だけど見終わった後で、私が登場人物の中で一番誰に近いかというと、その拒否しまくった人だなということに気が付いた。同族嫌悪ってやつだったのかなぁ(笑)見てる間でも、この人の気持ちをもっと分かってあげるべきだったなぁと、フィクションだけど後で反省してしまった。

主人公のイヴリンは、他の登場人物がみんなそれぞれ個性的でアクが強いのに比べて控え目。今まで働いたことがなかったという奥様だったが、インドに来て初めて仕事をすることになる。思わず頼りたくなるような、悩み相談したくなるような、どっしりした安定感のある女性で、将来こういうオバチャンになれたらいいなぁと憧れてしまった。口うるさいババアだったミュリエルが世話焼きババア(笑)に変わっていくところもすごくよかった。こういう女性もいいよなぁ。私ももっと柔軟性を身に着けて、輪から外れる人間にならないよう頑張ろう(笑)
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桃さんのしあわせ('11中国=香港)-Oct 21.2012
[STORY]
メイドの桃さん(ディニー・イップ)は60年間4代にわたって、梁家に仕えている。現在は家族のほとんどがアメリカに移住したため、長男で香港映画プロデューサーのロジャー(アンディ・ラウ)のためだけに働いていた。だがある時、脳卒中で倒れてしまう。桃さんはメイドを辞めることを決め、ロジャーは彼女を老人ホームに入れ、時間を見つけては見舞いに訪ねるのだった。
監督アン・ホイ(『女人、四十』)
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本作の企画に賛同したアンディ・ラウは、共同プロデューサーとなりノーギャラで出演した。また、ツイ・ハークやサモ・ハン・キンポーが本人役で出演している。
第68回ヴェネチア国際映画祭で上映され、ディニー・イップが女優賞を受賞した。

梁家は香港が返還されたのを機に家族がみなアメリカに移住してしまい、香港映画のプロデューサーであロジャーだけが残った。その彼の世話をしていたのが桃(タオ)さんだったという経緯がある。そりゃロジャーが恩返しで世話をするしかないよね。しかし、ロジャーの稼ぎがあまり良くないのか、移住した家族がケチなのか、施設のみすぼらしいこと。個室といっても仕切りがあるだけなので音が丸聞こえ。それとも香港の介護施設がみんなこんな感じで、桃さんが入ったところはまだいいほうなのだろうか。

ロジャーは仕事をこなしながら、暇を見つけて桃さんを訪ねる。桃さんも次第に施設の人たちと交流するようになる。施設にどれくらいの期間入っていたのか明確には分からないんだけど、季節が変わったり周りの人たちが亡くなったり、そして桃さん自身が徐々に衰えていくのでかなり時が進んでいると分かる。最初は身体に麻痺が残ったがしっかりしていた桃さんが、表情をなくし反応できないまでになる。その姿がリアルすぎて、亡くなったうちのおばあちゃんを思い出しちゃった。

淡々としすぎて、もうちょっとだけベタなところがあってもよかったかなーと思った。邦画みたいに死を描いて泣かせようとしないところはよかったけどね。
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推理作家ポー 最期の5日間('12アメリカ)-Oct 14.2012
[STORY]
1849年アメリカ、ボルティモア。とあるアパートで母娘が密室で殺される事件が起こる。現場を見たフィールズ警視(ルーク、・エヴァンス)は、作家エドガー・アラン・ポー(ジョン・キューザック)の小説を参考にした作品だと見抜く。やがて次々とポーの小説を模した事件が起こり、ついにポーの恋人エミリー(アリス・イヴ)が誘拐されてしまう。
監督ジェイムズ・マクティーグ(『Vフォー・ヴェンデッタ』
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原題の『The Raven(大鴉)』はポーが1845年に発表した物語詩で、劇中でポーが朗読する場面もある。

私はポーの小説は『モルグ街の殺人』しか読んだことはない。なので、劇中にポーの作品になぞらえた殺人事件が起きるんだけど『モルグ』以外のはさっぱり分からなかった。『落とし穴と振り子』や『赤死病の仮面』『マリー・ロジェの謎』が使われているというが、分からなくてすいません。でもストーリーは細かいツッコミドコロが多々あるものの(多々かよ)ちゃんと実際のポーの死亡時の様子に合わせてあるところがよかった。でもその死亡するまでの経緯にちょっと無理があって笑ってしまったんだけど。

こういう時代のアクションミステリというと『ヴィドック』を思い出してしまって(あの映画も実在のフランスの探偵フランソワ・ヴィドックが主人公の映画で、彼の回想録はポーにも影響を与えたというから繋がりはあるんだな)じゃあ犯人はもしかしてあの人?(この人→フィールズ警視。出番が多くてポーの近くにいつもいるので)なんて思いながら見ていたので、必要以上にドキドキしてしまった。犯人が分かって「あれ?」ってなってしまったけど(笑)『ヴィドック』を見てなかったら、もしかしたらこんなにドキドキはしなかったかもしれない(それもどうなんだ)

ラストは『ディパーテッド』を思い出しちゃった。「あーそのパターンなんだ」と思っていたら今度はエンドクレジットでサイコ・サスペンス映画の主題歌(Unkleの『Burn My Shadow』)みたいなのが流れてきて「あれ?そっちのパターン?」みたいな(笑)見終わった後はなんかチグハグな映画だったなぁと思ったけど、キューザックはこういうサウペンスがすごく似合うし、エヴァンスはかっこよかったので(ゲイだけど)まぁよしとする(いいんか)
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最終目的地('08アメリカ)-Oct 7.2012
[STORY]
イラン出身でアメリカで教師をしているオマー(オマー・ラザギ)は、論文を書くために自殺した作家ユルス・グントの伝記を書こうとしていた。だが、作家の未亡人キャロライン(ローラ・リニー)と、愛人のアーデン(シャルロット・ゲンズブール)が許可せず、書くことができなくなった。そこでユルスの屋敷があるウルグアイへやってくる。屋敷には彼女たちのほかにユルスの兄アダム(アンソニー・ホプキンス)と彼のパートナーのピート(真田広之)も住んでおり、アダムは伝記を公認する代わりにある提案をオマーに持ちかけてくる。
監督ジェームズ・アイヴォリー(『金色の嘘』
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原作はピーター・キャメロンの2002年に発表された同名小説。
真田広之が演じたピートは原作ではタイ人だが、アイヴォリーが『上海の伯爵夫人』で起用した真田を気に入り撮影中に直々にオファー、日本人役に書き換えたという。

アイヴォリーの映画は好きでよく見てるけど、前作の『上海』は興味が沸かなくて見てなかった。本作は何故見たかというとやっぱりミーハーな気持ちからかな。だってホプキンスと真田広之がゲイカップルですよ。キスとかしちゃうんだよ、すげーじゃないっすか(笑)悪いけど2人が出てくるたびにニヤニヤして見てました。真田は全裸に半裸に大活躍(?)公私ともにパートナーだったイスマイル・マーチャントを亡くしたアイヴォリーだけど、まだまだ枯れてませんな。そんな下衆の極みな目で見てた私ですが(笑)ピートというキャラクターは純粋に良かったと思う。ユルスの家の人間はみんな違う方向を向いているんだけど、ピートは日本人特有の空気を察する男で、控え目だけどバラバラな彼らの間をうまく繋ぐ役割を担っていた。

そのピートのパートナーであるアダムはマイペース。母屋に本妻と愛人が一緒にいても我関せず。でもキャロラインのことは気にかけている。ピートはパートナーだけど息子みたいな存在でもあり、アダムの前だと子どもっぽくなるピートもかわいい(おっさんだけど)

そしてキャロラインとオマーの恋人ディアドラ(アレクサンドラ・マリア・ララ)は、2人とも甘えたい気持ちや弱さをプライドで覆い隠したキャラで、見ていてちょっと切なくなった。2人とも人を寄せ付けない雰囲気を纏った美人で魅力的だったし。
だが、メインであるオマーとアーデンがもの足りない。確かにディアドラみたいな女と一緒にいると自分が無能に思えるよね、逃げ道がないっていうか。でも逃げた先の相手がカッサカサだなんて(おい)もうちょっと綺麗な人なら盛り上がれたのになぁ。もうこの2人は好きにしろやーと思ってたんだけど、最後にオマーたちではなく、キャロラインとディアドラを登場させたのには驚いた。もしかしてオマーがメインだと思っていたのは私の勘違いで、キャロラインとディアドラがこのストーリーのメインだった?彼女たちの最終目的地はもうちょっと先にあるんだろうな。
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エージェント・マロリー('12アメリカ)-Sep 30.2012
[STORY]
マロリー・ケイン(ジーナ・カラーノ)はフリーのスパイ。元恋人で民間軍事企業を経営するケネス(ユアン・マクレガー)から人質救出の依頼を受ける。アーロン(チャニング・テイタム)ら工作員らとバルセロナで人質を救出し、スペイン政府関係者のロドリゴ(アントニオ・バンデラス)に引き渡す。その直後に今度はケネスから新たな任務を依頼され、ダブリンへ。ポール(マイケル・ファスベンダー)という男と夫婦になりすましてあるパーティーへ行くが、マロリーはこのミッションに疑いを持っていた。
監督スティーブン・ソダーバーグ(『チェ 39歳 別れの手紙』
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ジーナ・カラーノはアメリカで大人気の総合格闘家だそうで、本作の前にも映画に出演しているが主演は初。
私はこの人ぜんぜん知らなかったんだけど、人気があるっていうの分かるわ。汚い恰好もドレス姿も両方似合う。異性からはセクシーに見えるし、同性からはカッコイイと憧れられるタイプ。それに美人だけど、ただ美人ってだけじゃなくて、なんていうか目が離せない感じ。存在感がすごい。

アクションシーンももちろん凄い。私もあの太ももに挟まれたい、なんて思ったくらい(←ヘンタイ)最近のアクションはワイヤー使ったりCG使ったりなのでスピード感はハンパない。でも何をやっているのか目が追い付かない時がある。本作はそれらに比べると早さはないけど、これくらいが本来の人間の動きなんだろうな。動きにしっかり追い付けたし、彼女の体幹の素晴らしさがよく分かった。

そんなマロリーがいろんな男相手に戦うんだけど、相手が上背のあるムッキムキの人だとウソっぽく見えちゃうからだろうか?彼女とあまり体型の変わらない人が多いなと思った(チャニング・テイタムくらいかデカイのは)でもジェダイ・マスターの面影がすっかり消えたユアン・マクレガーと互角に戦ってるシーンはちょっと笑える。ガチなら10秒でKOなんじゃね?(笑)これならアントニオ・バンデラスと戦うシーンが見たかった。というか、続編やって戦ってくれないかなぁ。

でも続編をやるならストーリーはもっと面白くしてほしい。話そのものはあんまり面白くなかったんで(笑)マロリー本人はとても魅力的なので、これから彼女がどうなるのか見守りたいし、もっと大きな相手や他の女性格闘家との死闘も見てみたいと思った。
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