Movie Review 2013
◇Movie Index

相棒シリーズ X DAY('13日本)-Mar 24.2013
[STORY]
東京明和銀行のエンジニア中山(戸次重幸)という男の死体が発見された。伊丹(川原和久)ら捜査一課が捜査を始めるが、サイバー犯罪対策課の岩月(田中圭)も中山をマークしていた。中山はネット上に正体不明のデータを流していたと推測され、このデータが事件の鍵を握っていると踏んだ伊丹と岩月は、いがみ合いながらも“相棒”として一緒に捜査を始める。
監督・橋本一(『探偵はBARにいる』
−◇−◇−◇−
TVドラマ『相棒』の劇場版4作目で、スピンオフでは2作目にあたる。時系列では2012年10月から放映されたSeason11の前であるため、現在の杉下右京(水谷豊)の相棒である甲斐享(成宮寛貴)は登場しない。また、このSeason11の第17話「ビリー」に岩月が登場し、伊丹と再び任務にあたっている(この17話の監督を橋本が担当し、脚本も映画と同じ脚本家の櫻井武晴が執筆している)

前のスピンオフ『鑑識・米沢守の事件簿』よりは面白かったけど、映画じゃなくて2時間スペシャルでもよかったんじゃないかな、という微妙さ。話のスケールは大きいけど映像のスケールは大きくない。大袈裟で陳腐な演出が目立った。見てて分かりやすくというのは理解できるんだけど、銀行で人々がパニックになってる映像に激しく違和感。日本人の民度はそこまで低くないんじゃないかね。バラまかれたお金に人々が群がる映像も古臭いし(インド映画『ボス その男シヴァージ』に同じようなシーンあり)何よりCGが安っぽい。スピンオフだとあんまりお金掛けられないのかな。

また、伊丹と岩月のコンビもそれほどいいと思わなかった。伊丹が荒々しいので冷静な男を持ってきて対比させたんだろうけど、岩月は単に職務に忠実なだけだからな。データしか信じないとか人の気持ちを全く理解しないとか、チャラくて伊丹に言葉が通じないとか、もう少し 極端なところがあってもよかったのでは。2人が相棒らしくなっていくのを見ても盛り上がらなかったなぁ。それより角田“ヒマカ”課長(山西惇)と大河内“ラムネ”監察官(神保悟志)の2人が一緒に歩いてるだけのほうがよっぽども盛り上がったわ(笑)この2人のスピンオフをやってくれるなら嬉しいな。映画じゃなくていいからSPドラマで。
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シュガーマン 奇跡に愛された男('12スウェーデン=イギリス)-Mar 20.2013ヨイ★
[EXPLANATION]
1970年代にアメリカでデビューし、2枚のアルバムを発表したロドリゲス。しかしヒットせず契約を打ち切られる。だが、何故か南アフリカで彼のアルバムが大ヒットし、40万部も売り上げていた。そして彼はライブ中に拳銃自殺をしたという噂が立つほどの伝説的スターになっていた。
監督マリク・ベンジェルール(初監督作)
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第85回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品。
監督がこの映画を製作するきっかけは、世界を旅しているときに南アフリカのレコードショップでロドリゲスのことを教えてくれたことからだったそうだ。この話を映画を見た後で読んで「なるほど、そうだったのか」と理解できたんだけど、映画内ではそういう説明がなくて、最初は話がよく見えなかった。これのどこがアカデミー賞だったのかと不安になってしまった。

だが、ロドリゲスをスカウトした人やレコーディングに携わった人たちの話を聞くあたりから面白くなり、彼が南アフリカでコンサートを開くところで何故か泣いてしまった。観客たちのワクワクした表情、彼が登場した時の熱狂的な歓声、歌いだした時の感激した様子がつぶさに映し出されて、いかに彼が人気があるのかが分かってこっちまで胸が熱くなってしまったのだった。正直歌は私の好みじゃないなぁと思ったけど、あのコンサートに行ったらファンになっちゃいそうだ。

南アフリカでのコンサートを大成功させたロドリゲスは、その後も何度もコンサートをするようになったというので、これで彼もミュージシャンとして稼げるようになって良かったなぁと安堵したのだが、何と稼いだ分のほとんどを周りの人に分け与えてるのだと。何て欲のない人なんだろう。もったいない!でも、彼は歌うことが好きなだけで稼ぎたいわけじゃない。また、これで金持ちになってしまったら、貧しかった当時に作った歌が歌えなくなってしまう、その時の心をずっと持ち続けていたい、そんな風に考えているんじゃないかなと私は想像している。

ロドリゲス本人もこの映画を何度も見ているそうだが、彼の3人の娘が出演しているシーンが一番なのだという。いいお父さんだ。この話を聞くだけでも、彼の人柄の良さを感じることができてまた胸が熱くなってしまった。
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オズ はじまりの戦い('13アメリカ)-Mar 10.2013
[STORY]
マジシャンのオスカー(ジェームズ・フランコ)は女たらしでトラブルが絶えず、その日も逃げている途中で飛び込んだ気球が嵐に巻き込まれ、魔法の国『オズ』へと飛ばされてしまう。そこで彼は西の魔女セオドラ(ミラ・キュニス)と出会い、エメラルド・パレスへやってくる。そしてセオドラの姉で東の魔女エヴァノラ(レイチェル・ワイズ)から助けを求められる。南の魔女グリンダ(ミシェル・ウィリアムズ)がエメラルド・パレスを乗っ取ろうとしているというのだ。オスカーは魔女を倒すことを引き受けてしまうが・・・。
監督サム・ライミ(『スパイダーマン3』
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1939年のミュージカル映画『オズの魔法使』よりも前の出来事で、マジシャンがオズの魔法使いになるまでを描いた作品。『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』もそうだけど、名作映画の前の出来事を描く映画が最近多いなぁ(あ、これもフランコが主演だった)それだけネタがないのかねえ。

最近は3Dで見てもあまり感激しないので本作も2Dで見た。3Dなら綺麗だろうなというシーンはいくつかあったが、内容がそれほどでもなかったのでやっぱり2Dで見てよかったと思う(笑)面白い映画だったら3Dでもう1回見ればいいんだしね。今後もとりあえずは2Dでってことになりそうだ。

簡単に言うとディズニーピクチャーズらしい映画って感じ。可もなく不可もなく、つーかこれサム・ライミが監督しなくても別によかったんじゃない?っていう。『スパイダーマン』シリーズもエンタメ作品だけど、登場人物がみんな心に傷を持っていて、そこが作品に深みを与えていた。でも本作のオスカーはキャラクターに奥行きがない。だらしない男だったオスカーがオズの国の人たちに頼りされるようになり、最後はオズを救うっていう話なわけだが、ダメ男からいい男になるまでの過程が、私から見ると物足りない。また、セオドラがオスカーにたぶらかされ、姉にも騙され悪い魔女になってしまうくだりも中途半端で気の毒なだけで終わってしまった。もしかして『ウィケッド』も映画化するつもりであえて多く描かなかったとか?ならばせっかくミラ・キュニスをキャスティングしたのだから、映画化の時には同じキャストでやってもらいたいな。

オズに登場するキャラクターで陶器の女の子はとっても可愛いかったが、おさるのフィンリーは可愛くない。しかも誰かに似てるって思ってたら『タンタンの冒険』のタンタンじゃねーか(笑)目だけ妙にリアルなのがキモい。彼を可愛くできたらもうちょっと日本で観客増えただろうに。
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愛、アムール('12フランス=ドイツ=オーストリア)-Mar 9.2013
[STORY]
ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)は元音楽教師の夫婦でともに80歳を超えており、たまに娘のイヴ(イザベル・ユペール)が訪ねてくるものの、2人だけで暮らしていた。だがある日、アンヌに病気が見つかり手術をするがうまくいかず半身不随となる。もう入院はしたくないというアンヌのためにジョルジュは自宅で介護を始める。
監督&脚本ミヒャエル・ハネケ(『白いリボン』
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第65回カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞し、第38回セザール賞でも作品賞をはじめ5部門で受賞。そして第85回アカデミー賞では外国語映画賞を受賞した。

いつも衝撃的でラストがどうなるか見えない(ラストを見てもよく分からないってのもある(笑))作品を送り出してくるハネケだが、本作はもう最初のシーンでラストを描いてしまっていて、それが逆に少し驚いた。ストーリーも、日本でも実際起こってニュースになったりすることだし、そう珍しくはないなぁと。それとも海外では衝撃的な話なんだろうか。

でも日本で同じ内容を映画にしたとしたら、もっと汚い部分が多く悲惨で見ていられなかっただろうな。本作は住んでいる家も広くて綺麗だし、介護されているアンヌも 介護しているジョルジュもボロボロにならず、粗相をしても汚く思えず清潔感がある。つらいシーンが続く中でも、家の中に入る光や顔に当たる光にちょっと救われた ような気持ちになる。そういえば『ピアニスト』なんかトイレのシーンでも映像は綺麗だった(笑)そこはこだわりがあるのかもしれない。

それにしても妻が夫を介護するのを見るのは痛ましいと感じないんだけど、逆だとどうして見ていられなくなるのだろうか。私の母もよく自分が父に介護されるのは嫌だと言う。父を介護するのはいいが、自分がそうなったら施設に入りたいのだと(本作のアンヌも自分の手術がうまくいっていれば病院に入ることに抵抗はなかったかもしれない。アンヌにとってもジョルジュにとっても気の毒だった)よく妻に先立たれた夫は後追うように・・・と言われるが、逆だと何故か看取った後で元気になっちゃう妻が多かったりするが(笑)この映画のジョルジュを通して、男の繊細な面や心の弱さが分かったような気がする。
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ジャンゴ 繋がれざる者('12アメリカ)-Mar 2.2013
[STORY]
アメリカ南北戦争の2年前。白人に買われた黒人ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)の元に賞金稼ぎの歯医者キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)が現れる。彼は指名手配されている男たちの顔を知っているジャンゴに協力を求めに来たのだ。2人は順調に仕事をこなし、やがてジャンゴは離ればなれになった妻のブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を救い出そうと決意する。妻を買ったのが農場主のカルヴィン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)と分かると、2人は彼の元へ向かう。
監督&脚本クエンティン・タランティーノ(『イングロリアル・バスターズ』
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第85回アカデミー賞では助演男優賞(ヴァルツ)と脚本賞を受賞した。
その脚本、実はタランティーノが日本で書き始めたっていうインタビューを見たんだけど驚いたなぁ。何でも『イングロリアル・バスターズ』で来日した時にマカロニ・ウェスタンのDVDやサントラを大量に買い込んで(日本は品揃えがいいらしい)思いつき、ホテルの便箋に脚本を書いたんだとか。なんだか嬉しいねえ。また本作での来日で何か思いついたかな。

冒頭からジャンゴがシュルツと出会って2人が酒場に入るあたりのエピソードまでが一番面白かった。シュルツが一体どういう人物なのか、信用していいのか?ってジャンゴも観客も思ってるわけ。そこでようやくシュルツの人となりが分かるんだけど、とにかく魅力的な人物で、助演男優賞も納得の演技だった(予想時は見てなかったので別の人を予想してしまったが、先に見ていたら間違いなく受賞を予想していただろう)タランティーノの前作でも受賞しているが、全く違うキャラなのにどちらも甲乙つけがたい。これを見ちゃうとディカプリオがいくら悪役に挑戦しようが霞んでしまうわな。

残念ながらキャンディの農場に到着してからはジャンゴが中心になるためシュルツの活躍は少なくなる。が、その代わりキャンディの世話をするスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)が全部かっさらっていく(笑)なんか中川家礼二がモノマネしてるみたいなの。というか礼二にモノマネしてほしいわ〜(笑)しかしあんなに笑える演技なのにちょっと怖いんだ。ジャンゴたちの意図をいち早く見抜き、常に監視している姿が不気味。いつ彼がジャンゴたちに襲いかかるのかハラハラしっぱなし。実際彼がラスボスだったな。黒人の敵は黒人だった――というのは衝撃だったがスティーブンの言動は理解できる。彼は白人に従うことで信頼を勝ち得て今の地位を確保した。他の黒人より上に立っていなければ自分の身が守れないと思っているし、悪い黒人がいたら自分にも白人たちの敵意が向けられてしまうのではないかと恐れている。だからジャンゴを見てすぐに見抜いたんだよね。現代でも、いじめられっ子の子がさらに弱い子を見つけたらいじめっ子になるって話はよく聞く。そういうところは奴隷制度があった時代と変わらないのかもしれない。
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