Movie Review 2011
◇Movie Index

探偵はBARにいる('11日本)-Sep 11.2011オモシロイ★
[STORY]
札幌のススキノのBARを拠点にしている探偵(大泉洋)の元に、ある時コンドウキョウコと名乗る女から電話が掛かってくる。簡単な依頼に安請け合いするが危うく殺されそうになってしまう。その後もキョウコから奇妙な依頼が入る。いつしか彼女の狙いは何なのか知りたくなり、助手の高田(松田龍平)とともに調査を始める。するとキョウコは2年前の火事で死んでいることが分かり、父親の霧島(西田敏行)も1年前に殺されていた。そして霧島の元妻である沙織(小雪)が事件の鍵を握っていた。
監督・橋本一(『茶々 天涯の貴妃』)
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原作は東直己のススキノ探偵シリーズ(現在11作出版)の2作目『バーにかかってきた電話』
原作の1作目が『探偵はバーにいる』というタイトルだが、こちらは原作ではない。主人公の探偵に名前はない。

探偵小説は大好きなんだけど、どちらかというと複雑なトリックやアリバイを崩していくような話が好みで、ハードボイルドはあまり好きではない。だから本作の原作シリーズはもちろん知っていたけど(タイトルを見て一度は手に取った)苦手なハードボイルドの上にヤクザまで絡むとなると・・・というわけで敬遠していた小説だ。でも映画の予告は面白そうだったし、ちょっとトボけた洋ちゃんの演技は好きなので(逆にレイトンの吹替みたいなシリアスなのはあんまり)見てみた。

スタイリッシュな探偵モノではなく、どこか野暮ったく泥臭く作ってある映画だった。ちょうど龍平の父ちゃんが探偵やってた時代のような懐かしさすらある。特に探偵行きつけの喫茶店と従業員・峰子(安藤玉恵)が出てくるところは猥雑で昭和って感じ。アクションシーンでの音楽もわざと古臭くしてるみたい。探偵も知力より体力と行動力重視。雪の中に生き埋めにされたり、ヤクザからボッコボコにされたりする。暴力シーンはけっこう激しいし鮮血もドバドバ(だからPG12なのか)やっぱりヤクザは嫌だなぁと思いつつも、洋ちゃんの普段は飄々と、そして時には熱いところが魅力的で、何とか事件を解決してもらいたくなる。原作と違うキャラかもしれないが、私はこれハマリ役だと思う。助手の常に他人事無関心な高田とのコンビも面白くて、私もBARに行きたくなってしまった。この感想でも常々書いているが、映画の世界に入りたくなる映画っていうのはいい映画だな。BARカウンターの、彼らの席から2、3席空いたところに座って、開拓おかきをつまみにまずビール。最後はちょっと度数の高いお酒。〆はラーメン横丁まで繰り出すか(笑)

続編の製作が決まったようでまずはめでたい。ただ、原作の出来にばらつきがあるみたいなので、順番通りでなくていいので、面白い原作での映画化をお願いしたい。
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くまのプーさん('11アメリカ)-Sep 6.2011
[STORY]
100エーカーの森で暮らすくまのプー(声:竹本敏彰)は、はちみつが大好き。家のはちみつがなくなったために森へ出かける。するとロバのイーヨー(声:石田太郎)が尻尾を無くしたと悲しんでいた。そこでみんなでイーヨーにぴったりな新しい尻尾を見つけてあげるコンテストが開かれることになった。一番の者にはちみつがプレンゼントされることになり、プーはがぜん張り切るのだが・・・。
監督スティーヴン・J・アンダーソン(『ルイスと未来泥棒』)
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ウォルト・ディズニー生誕110周年記念作品の2Dアニメーション。原作はA・A・ミルンの童話で、本作はその中から5つの話が使われている。同時上映の短編『ネッシーの涙』も入れて上映時間69分なので、長編じゃなくて中編アニメと言うべきか。

プーさんを見るのは子どもの頃以来。たぶん一番最初の作品で、それも今はうろ覚え。プーさん以外の動物キャラクターもすっかり忘れてたわ。今回は何故か見る気になって見てみた。プーさんてやっぱ可愛いわ。ちょっとイラッとくるけど(笑)

現在のディズニー長編アニメってかなり派手な色彩で動きもダイナミックで、クライマックスでは敵と戦ったり逃げ回ったりする大掛かりなアクションシーンがあるが、本作はちょっとした派手な動きはあるものの、全体的にはほのぼの。相変わらずエンドクレジットが凝っていて、ラストにちょこっとオマケがあるので最後まで楽しめた。登場人物たちはみんなのんびりしてて(正直書くとちょっとおつむが足りない)なかなか話が進まない上にいつの間にか脱線して違う方向に話が進んでしまったりする。それがイヤな人はイライラさせられるかも。そういう人はツッコミ入れながら見ると楽しいだろう(たぶん)

私はストーリーにはイライラはしなかったけれど(童話ってそういうものだし)プーさんが「はちみつはちみつ」ってそればっかり言いまくるところにちょっとイラッときました(笑)それがプーさんだからと言われればそれまでなんだけど。あと上だけ着たシャツを下に引っ張るところもちょっとイラッときます。あたしホントはプーさん嫌いなのかなぁ(笑)可愛いんだけどなぁ。でもプーさんに限らず癒し系キャラっていわれる人やキャラクターって、時々イラッとくるものが多い気がするので、そういうものなんだろう。今までディズニーグッズを見てもプーさんはスルーしていたけど、次は真っ先にプーさんを探してしまいそう。
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あしたのパスタはアルデンテ('10イタリア)-Sep 4.2011
[STORY]
ローマで暮らすカントーネ家の次男トンマーゾ(リッカルド・スカマルチョ)は、実家の老舗パスタ会社を継ぐ長男アントニオ(アレッサンドロ・プレツィオージ)の社長就任を祝うため南イタリアのレッチェに帰ってくる。トンマーゾは家族にある秘密を告白することに決めていた。その前に兄には言っておこうと、家業を継ぐ気はなく小説家を目指していること、そして自分がゲイだということを伝えておいた。だが、夕食の最中にアントニオが自分はゲイだと宣言してしまう。父は怒りのあまりアントニオを勘当し、トンマーゾが代わりにならなければならなくなった。そして共同経営者のアルバ(ニコール・グリマウド)と一緒にパスタ工場の運営に当たるハメになる。
監督フェルザン・オズペテク(『ラスト・ハーレム』)
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第60回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で上映され、日本ではイタリア映画祭2011で『アルデンテな男たち』のタイトルで上映された。本国イタリアでは140万人を動員したという。

映画祭で見たかったんだけどチケット発売日を失念していて、気がついた時にはもう売り切れ。一般公開すると知ってホッとしたものだ。公開前の予告も面白そうだったし、これは期待していい映画なんじゃないかと楽しみにしていた。けど、今回はちょっと勘が外れたみたい。確かに面白いところもたくさんあったけど、全体的には面白味に欠けた。最後はみんなでダンスして終わりってのも結論を有耶無耶にされたようであまり納得できない。これがイタリア的なのかもしれないが。

でもイタリア映画に限らずだけど、コメディのゲイネタってやっぱ面白い。トンマーゾが家族にカミングアウトしようと兄に相談したら、兄が先にカミングアウトしちゃったというストーリーなんだけど、兄は単に工場で働くのが嫌になって自分もゲイだと嘘をついたのかと思っていたらホントだったという(笑)ここでまず爆笑。その後、ちょっとストーリーが落ち着いてきた、というかダレてきたかなというところで、トンマーゾのゲイ友たち投入(笑)どう見てもゲイ丸出しなのに、そうじゃないフリしたり誤魔化したりするシーンは笑いが止まらなかった。

思い返してみると、トンマーゾ以外の登場人物にはみんなどこかしら好感が持てたんだよね。アントニオはカミングアウトして出てっちゃったけどそれまでは工場でちゃんと働いていて、トンマーゾは自由を謳歌していた。自分も長女なせいか長男の我慢や責任感ってすごく共感できるんだわ。共同経営者のアルバも仕事はバリバリだけどそれ以外では不器用で素直になれない性格。トンマーゾのことを好きになるが、彼がゲイなことを知っているため気持ちを抑えている。そんなアルバがいじらしくて、最初は気が強くて怖いと思ってたけど可愛いところもあるんだなぁと思っていたら、ゲイのくせにトンマーゾの奴め!でもそれで2人が親しい間柄になるのはそれはそれでいいじゃん、と思っているところにゲイの恋人登場。まぁそううまくはいかないか。ただ、トンマーゾは自分からこうする!という意思が弱いんだよね。相手に流されやすく、アプローチがあってから行動するタイプ。だから主人公に設定されたというのは分かるんだけど、最後くらいはビシッと決めてほしかったと思う。それに他の登場人物はチャーミングなところが1つでもあったのに(頑固親父や無愛想な家政婦ですら可愛いと思うところがあった)トンマーゾだけはそういうところが私には感じられなかったのも、映画をいまいちと感じてしまった理由だ。ついでに顔も苦手でした・・・ごめんね(笑)
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ゴーストライター('10フランス=ドイツ=イギリス)-Aug 28.2011オモシロイ★
[STORY]
イギリスの元首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を執筆することになったゴーストライター(ユアン・マクレガー)が、ラングが滞在するアメリカ東海岸の孤島へやってきた。前のゴーストライターはフェリーから転落死しており、その後任となったのだ。島には彼の妻ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)や、ラングの愛人らしき秘書のアメリア(キム・キャトラル)らも滞在していた。そんな時、ラングが在任中にテロ容疑者を違法にCIAに引渡して拷問に加担したとして、国際刑事裁判所に告発されてしまう。
監督&脚本ロマン・ポランスキー(『オリバー・ツイスト』
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原作はイギリスの作家ロバート・ハリスの同名小説で、ハリス自身も映画の脚本をポランスキーと共同で書いている。
第60回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で上映され、監督賞を受賞した。そのほかヨーロッパ映画賞やセザール賞でも監督賞や脚色賞を受賞している。

最初は現代の話じゃなくて30〜40年くらい前の話かと思ったほどレトロな雰囲気で、『シャッターアイランド』の島のようなミステリアスな島も登場する。だが、ゴーストライターが依頼主の屋敷に到着したところで一転、屋敷は最新のセキュリティで護られており、これが現代の映画だったのかと気がつく。しかもイギリスの前首相がテロの容疑者を違法にCIAに引き渡していたという、なんともリアルな事態が起こる。古典的ミステリを期待していた私はここでちょっとガッカリしたのだが、前のライターが事故死した謎のほうは、古い写真や原稿などが手がかりとして使われ、古めかしくて私好み。かと思えば、カーナビが事件を導いたりと、古いものと新しいものを上手く混在させたミステリだった。

ゴーストライターを演じたマクレガーの演技が意外と軽く、雰囲気や内容とはそぐわない感じがしたのだが、そんな彼が真相に近づくにつれてシリアスになっていくのを見て、 これはこれでアリ、というかむしろ緩急がついて上手いなと感心してしまった(危険な目に遭っても警戒心が薄いのが気になったが) 最初から神妙にガチガチの演技をする人もいるけど、それだと見てるほうが疲れちゃうんだよね。 軽妙な演技の時はこちらも一息つけるし、そのあとの畳み掛けるような展開も活きてくる。特にラストは面白かった! これラストはあれよね(ここからネタバレ)「私はゴーストです」って言ったのがホントになっちゃったっていう文字通り捨て身のギャグでオチを作った(おい)ってことでいいのよね? (ここまで)

もう1つ、映画の内容とは関係なく面白いなと思ったのは、監督のポランスキーがすげーアメリカ嫌いなんだなってこと。本作ににじみ出ています(笑)映画を見てから調べて知ったんだけど、ちょうどこの映画の撮影を終えた頃にスイスで、例のアメリカでの淫行容疑で逮捕されちゃったのね。逮捕されたことは知ってたけど、この映画の製作期間だとは思わなかったわ。刑務所でスタッフに指示を出して映画を完成させたらしいけど、映画を撮っていた時には、ここまであからさまに憎しみをぶつけていたのだろうか。そこが知りたくなった。
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うさぎドロップ('11日本)-Aug 21.2011
[STORY]
河地ダイキチ(松山ケンイチ)は27歳の独身サラリーマン。ある日、祖父の葬式で、祖父に鹿賀りん(芦田愛菜)という6歳の女の子の隠し子がいることが発覚する。しかも母親が誰か分からず、親戚は誰も引き取ろうとしない。業を煮やしたダイキチは、思わず自分が引き取ると宣言してしまう。しかし残業アリの職場で働きながら、りんを保育園に送り迎えする毎日はダイキチにもりんにも大変なことだった。
監督SABU(『蟹工船』)
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原作は宇仁田ゆみの同名漫画。漫画はりんが幼児期の第1部と、高校生に成長した第2部に分けられているが、映画は第1部のみで、登場人物の設定やストーリーも変えられている。

原作漫画を読んでいたので映画に行ったんだけど、映画は芦田愛菜ありきの企画って感じだったので期待はしないでおいた。漫画の通りでも面白くはないから、ある程度の改変はしょうがないと思ってたし・・・でもダンスはないわ(キッパリ)原作に全くないどころか映画のストーリーにも全く関係がない、はっきり言って無駄無駄無駄ァ!こんなシーンを入れるくらいなら、最初のダイキチとりんが初めて出会って家に連れて帰るまでをもっと丁寧に描け!と腹が立った。漫画ではここがとても丁寧なのでダイキチがりんを引き取るということに納得できたのに、映画ではそこまでの説得力がないまま進んでしまった。

そういえば、漫画はロリ・ペドっぽくならないよう慎重に、気を使って描いているなぁと思ったんだった。一歩間違えれば犯罪な物語になりそうな題材なのに、りんを特別可愛く描かず(萌えとかナシ)ダイキチをひたすら不器用でまっすぐで健全な男にして(恋愛対象は大人の女性)本当の親子でもありそうな問題や悩みを取り上げることで成功した作品だ。映画のダイキチは少し線が細いが、同じく不器用で一生懸命でがむしゃらで、りんを抱えて走る姿など意外とハマっていた。勢いで連れて帰ってきちゃって後で後悔するところや、りんの母親と連絡を取ろうとするところはコミカルで、漫画では見ることができないテンポのよさがあり面白かった。それなのに何であんなダンスシーンなんか入れたんだか。ダンスの練習も相当させられたみたいで、2人が気の毒になったわ。

りんのほうは、もう最初から私は諦めていた。原作のりんとは全く違ったからね。ホント言うと違う女の子で見たかった。芦田愛菜がいくら演技が上手いと言われようが、あれは人なつっこすぎる。ダイキチとすぐ仲良くなってるんだもん。それと本人はそのつもりはないんだろうけど、周りが可愛いことさせよう、泣かせちゃおう、って必死(笑)邦画のこういうところがスゲー嫌いなんだ。子どもたちが勝手に保育園を抜け出して大人たちが必死に探し回るというクライマックスも、まるでよくあるテレビドラマの最終回じゃないか。ダンスさせるとかヘンなところにこだわりがあるくせに、こんな陳腐なパターンを選択するなんて、何を考えているのかさっぱり分からん。

まぁいろいろ文句ばかり書いてしまったが、原作も第2部はアレだからなぁ(ぶつぶつ)
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