Movie Review 2010
◇Movie Index

相棒-劇場版II- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜('10日本)-Dec 26.2010
[STORY]
警視庁本部内で、警視総監以下、幹部12名を人質に取った籠城事件が発生する。特命係の杉下右京(水谷豊)と神戸尊(及川光博)は犯人が元刑事の八重樫(小澤征悦)であることを突き止めるが、機動隊の強行突入により八重樫は射殺され、動機が不明なまま事件は終了する。納得がいかない杉下たちは独自に調査を開始するが・・・。
監督・和泉聖治(『相棒-劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』)
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テレビ朝日のドラマ『相棒』の劇場版第2作。映画1作目は杉下右京の相棒が寺脇康文演じる亀山薫だったが、本作ではseason7からレギュラーとなった及川光博が相棒となっている。
本作の事件はドラマのseason8とseason9の間に起きたことになっており、season9の第9話(2010年12月22日放映)の直後に事件は起きる。

実は私、ドラマシリーズをちゃんと見始めたのは亀山が卒業となるseason7から。それまでは放映日の水曜に必ず用事があったのと、ごくたまに見た時の亀山の熱血漢なところが苦手で・・・。それに頭脳派と肉体派っていう分かりやすいコンビよりも、“頭脳派だけど融通がきかない潔癖症”と“ソツなく空気を読むクセ者”というちょっとヒネってある今のコンビのほうが面白いなぁと思っているので、season7からはずっと継続して見ている。ちなみに映画のパート1と『鑑識・米沢守の事件簿』はテレビ放映で見た。

前作は3万人のマラソンランナーが命の危険に晒されるという大きな事件だった。それと比べるとだいぶ規模がちっちゃいと感じてしまう。本作も爆破シーンなどあるけど前作ほど予算がかけられてないのがパッと見でも分かる。上映時間2時間あるし、最後に衝撃的なシーンがあるからテレビで放映するには勿体無いといえば勿体無いけど、もうちょっと派手な展開があってもよかったのではないかな。篭城事件は緊張感があってテンポも良くて面白かったけど、終結した後からはいつものドラマな相棒になっちゃったんで、流れに上手く乗れず気持ちが緩んじゃった。こっちは最初から警視庁と警察庁のイザコザが原因と分かっているし、犯人もだいたいの目星がついてたから、何かまどろっこしいなぁと思ってしまって。ドラマだとゆったりでもいいんだけど、映画館で見る場合は他に邪魔するものがないから映画に集中するしかない、だからもう少し早い展開を望んでしまうのだ。

ドラマseason9に入ってからあの人の出番がないかと思ったらそういうことだったのね。何かある、とは思ってたけど情報入れないように注意してたので映画見て正直びっくりした。でもこの展開ってどうなのかしら?私は所謂“にわかファン”だけど、こういうやり方で退場させるのにはちょっと納得いかない。ちゃんと杉下と正面向き合ってケリつけるべきだったんじゃないないのかねえ。その後も「え?ここで終わり?」って戸惑うようなラストだったし、ひょっとして次の映画やseason9の終盤に繋げるつもりか?(だとしたら何だかなぁ)
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白いリボン('09ドイツ=オーストリア=フランス=イタリア)-Dec 23.2010オモシロイ★
[STORY]
1913年北ドイツの小さな村。帰宅途中のドクター(ライナー・ボック)が何者かのいたずらによって落馬し大怪我をし入院する。その翌日には男爵家の古い納屋の床が抜け、小作人の妻が命を落とす。母の死に納得できない小作人の息子は、男爵家の畑のキャベツを切り刻む。そしてその夜、男爵家の長男が行方不明になり、暴行され逆さ吊りにされた姿で発見される。次々と起こる不可解な事件に村人たちは不信感を募らせる。教会の牧師(ブルクハルト・クライスナー)は息子と娘の不審な行動を叱り、“純心”の象徴である白いリボンを腕に巻かせるが・・・。
監督&脚本ミヒャエル・ハネケ(『隠された記憶』
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第62回カンヌ国際映画祭でパルムドール受賞。第82回アカデミー賞は外国語映画賞と撮影賞にノミネートされた(このとき外国語映画賞を受賞したのは『瞳の奥の秘密』

物語は1914年6月のサラエボ事件が起きた時までが描かれる。その後ドイツがどうなったかというと、第一次大戦で膨大な賠償金を課せられ、大量の軍人が失業し社会が不安定となる(本作の語り手も兵役後は仕立て屋となる)1932年頃からナチスが台頭し、第二次大戦が1939年から始まり1945年に終結。そんな激動の時代へ突入する前触れのような事件が小さな村で次々と起こっていく。

ミヒャエル・ハネケ映画といえば、人が嫌だと思うところを突いてくるイヤラシイ監督(褒め言葉です)なので、本作も覚悟して見に行ったんだけど、確かに見てる間はずっとゾワゾワさせられる話ではあったけども、自分に突き刺さるような感じはなく、終始傍観者として見ることができた。後味も悪くない。時代が違うからなのかな?あとモノローグが入ったり、映像がモノクロだったせいもあるかも。

モノクロといってもカラー撮影したものをモノクロに処理したものなので、昔の映画のような暗くてよく見えないというものではなく、夜の映像でも非常にクリアでどの映像を切り取ってもポストカードにしたくなるほど美しい。映像だけでも飽きない。さらにストーリーも次々と不穏な事件が起き、一体どこでケリがつくのか分からないので逆に気持ちが急いてしまい、2時間以上の上映時間もあっという間だった。

結果から言うと、何1つ解決しないまま映画は終わる。私はいつもならこの手の映画に説明を求めるタイプなんだけど(不条理映画は好きじゃない)この映画はわざわざ説明がなくてもいいというか、何となく“察する”ことができ、納得できた。その見せ方が上手くて感心した。

表向きは男爵家の支配の下で村人たちは真面目に働き、休日には村人全員が教会に通う統制の取れた村。最初は厳しい大人たちに不満を持つ子どもたちがストレスからいたずらをしたのかと思ったんだけど、徐々に「あれ?これは違うんじゃないか?」と思い始めた。大怪我したドクターは単なる被害者かと思ったけど、退院後に助産婦(ズザンネ・ロータ)へ吐いた暴言や、その後の行動・・・歪んでるのは大人のほうじゃないか。許しがたい・・・と思いつつも、ドクターのその暴言があまりにもストレートで、逆に面白くなってしまい笑い出しそうになった。ここまで正直だと怒る気にもなれない(笑)こういうところがこの監督の面白いところなんだろうな。

ここからは私が勝手に最初の事件について想像したことを書きます。(ネタバレ)ドクターが実の娘にしていることを、牧師の子どもたちは知ってたんじゃないかと思う。それをやめさせたくて針金を仕掛けた。だが、ここまで大騒ぎになるとは思わず、子どもたちは苦悩した。その異変に気付いた牧師は子どもたちを糾弾するが、その理由を言えるはずがない。あの男の子のキッとした表情のまま涙を流すシーンを見ると、単なるイタズラとは思えないんだよね。忘れられない表情だったわ。(ここまで)深読みしすぎかな。やはり理由などない行動だったんだろうか。そして彼らが20代、30代を迎える頃、ナチズムが蔓延する・・・?

純真で無垢な心を持つための白いリボン。それが醜い心によるものなら、その後の行動を見ても全く効果がないし、上のネタバレに書いたような理由があるのだとしたら、そもそも巻いた意味がない。そんな白いリボンをタイトルに持ってきたこと――見終わっていろいろ考えながらまたゾワゾワした。
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チェブラーシカ/くまのがっこう ジャッキーとケイティ('10日本)-Dec 19.2010
[STORY]
山の上の学校の寄宿舎で暮らす12匹のくまの子どもたち。11匹は男の子で、一番年下のジャッキー(声:松浦愛弓)は女の子。ある日、ジャッキーはケイティという女の子のくまと出会う。2人はすぐに仲良くなるが、ケイティは病弱で一緒に遊べなくなってしまう。―『くまのがっこう ジャッキーとケイティ』 監督・児玉徹朗

動物園でワニとして働くゲーナ(声:ウラジミール・フェラポントフ)は、ある日、淋しくなって友達を募集するポスターを作って町に貼り出す。一方、果物屋のおじさんがオレンジの箱を開けると、中に見たこともない動物が眠っていた。何度起こしてもばったり倒れてしまうことから、おじさんは“チェブラーシカ”と名づける。壊れた電話ボックスで暮らし始めたチェブラーシカ(声:ラリーサ・ブロフマン)は、1人でいるのが淋しくなり町へでる。そこでゲーナの友達募集を知ったチェブラーシカは彼の家を訪ねることにする。―『チェブラーシカ』 監督・中村誠
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まずは『くまのがっこう』の感想から。
原作はあいはらひろゆき(文)あだちなみ(絵)による絵本で、2010年2月の時点で15作シリーズが刊行されている。バンダイキャラクター研究所が開発したオリジナルキャラクターで、キャラクターグッズも数多く販売されている。

絵本は知ってたけど読んだことはなくて、絵を見てもそれほど可愛いとは思ってなかったんだけど、アニメは色使いがパステル調で綺麗だし、動きが滑らかですごく可愛い。というか、これだけ 軽やかに見えるアニメを見るのは私は初めてかも。ジャッキーたちが暮らす寄宿舎や、ケイティのパン屋さんなどに配置された小物などディティールも凝っていて、アニメだけならいつまで見ても飽きない感じ。 これでストーリーがもっと面白ければ・・・子どもなら楽しいと思うんだけど、大人が見るには何というか(笑)そんなアニメだった。

そして『チェブラーシカ』の感想。
原作はロシアの児童文学作家エドゥアルド・ウスペンスキーの絵本。1969年にロマン・カチャーノフ監督によって映画化されており(『チェブラーシカ』)日本では2001年に公開され大ヒット。その後、テレビ東京にて『チェブラーシカ あれれ?』のタイトルでアニメ化された。本作は日本人監督による人形アニメで、旧作第1話の『こんにちはチェブラーシカ』のリメイクと、新作となる『チェブラーシカとサーカス』『シャバクリャクの相談所』の合計3つのストーリーで構成されている。日本語吹替版のキャストは、チェブラーシカ、ゲーナ、シャパクリャクが『チェブラーシカ あれれ?』のキャストと同じ。

吹替のチェブラーシカは活発で元気な男の子って感じでちょっと違和感があったんだけど、ほとんどの劇場が日本語吹替版での上映だったので、吹替でもいいか、と思ってた。でもTOHOシネマズ六本木ではロシア語版のスケジュールがちょうど合ったのでロシア語版で見ることができた。後で知ったんだけど、日本語版は上映時間が91分でロシア語版は108分と長いのね。ちょっと得した気分だ。ロシア語のチェブラーシカはおっとりした口調で、1969年版のチェブラーシカと印象が変わることなく楽しめた。

といっても10年くらい前に見たっきりなのでストーリーをけっこう忘れていて(てへ)ほぼ初見みたいな感じでした。動物園でワニとして働く間はゲーナは服を脱ぎ、仕事が終わると服を着て帰るという設定に衝撃を受けたり、老婆なのにシャパクリャクのフットワークの軽さにビックリしたりと、そこだけ抜き出すとトンデモなアニメなんだけど(笑)そんなトンデモに驚きつつも、あまりの動きの良さにこれがコマ撮りであることをすっかり忘れて楽しんでしまった。よく考えればサーカスのシーンなんて相当大変だっただろうに。いや、観客が舞台裏など気にせずどっぷりこの世界に浸れたというのは逆に凄いことだ。旧作のような寂しさや暗に体制を批判するような箇所は皆無で、そこが旧作との大きな違いだけれど、日本人がそれをやる必要はなし。日本人のチェブラーシカに対する「カワイイ!」や「萌え〜」ってやつを存分に見せてもらいました。
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