Movie Review 2012
◇Movie Index

大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]('12日本)-Dec 23.2012
[STORY]
5代将軍となった綱吉(菅野美穂)は側室の伝兵衛(要潤)との間に一女をもうけ、綱吉の父・桂昌院(西田敏行)は自分の孫が将軍家を繋いでいくことに満足していた。一方、自分の立場が危うくなった正室の信平(宮藤官九郎)は、京から公家出身の右衛門佐(堺雅人)を呼び寄せ側室にし、裏から操ろうとするが、右衛門佐は自分が35歳を過ぎており側室にはなれないと辞退する。その代わりに大奥総取締の地位を希望し、右衛門佐を気に入った綱吉はこれを了承する。
監督・金子文紀(『大奥』
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原作は、よしながふみの同名漫画。2010年に原作1巻の8代将軍・吉宗の時代が描かれたが、2巻以降は女将軍と大奥が誕生する3代家光の時代に遡る。このエピソードは2012年10月〜12月にTBSで放映された 『大奥 誕生[有功・家光篇]』(全10回)で放映された。本作はその30年後、5代・綱吉の時代を描いた作品である。
主演の堺はドラマで家光の側室・万里小路有功を、映画では大奥総取締役・右衛門佐をそれぞれ演じている。

前作『大奥』はあんまりよくなかったけど、あの話は原作でもそれほど面白くないのでしょうがない部分もあった。有功と家光から本気出した!って感じで読み応えあったからね。これを映画ではなくドラマでじっくり見せたのはよかったと思う。
ただ、有功役は堺が演じるには老けすぎなんだけど、所作はしっかりしてるし右衛門佐の年齢には合ってるからしょうがない(この2人は似ているという設定のため2役演じることになったのだろう)とか、家光も多部ではイメージが違うんだけど、最初の見た目が少年ってところは合ってたからなぁ、といろいろ細かい不満はあったが、麻生祐未が演じた春日局が原作以上の存在感で(笑)淡々となりがちな部分も盛り上げていた。映画でも桂昌院を演じた西田が生臭坊主を面白く演じて盛り上げた。そういえば『大奥』もベテランがよかったんだけど、中心的人物ではなかったからヌルくなってしまったのかもしれない。

原作含めての感想になってしまうが、日本の皇室や武家がなぜ男系で続いてきたか、この家光篇と綱吉編を見てよく分かった。言葉は悪いけど、女系だと子孫を繁栄させるには効率が悪いんだ。男ならぶっちゃけ1か月30人以上子作りできるけど、女はそうはいかない。特に江戸時代なら今よりも出産時には危険が伴うし、出産可能な期間も短かっただろう。とにかく子をできるだけ多く産む、それが何よりも大事な仕事なのだ。好きな相手とは子を作れなかった家光、とにかく世継ぎを産まなければならなかった綱吉。男女逆転になって一番面白い話になった2人だったが、1人の女の人生としてはつらかったろう。

原作は15代まで続けるらしいが、映画はどうなるか。家重の代も面白いんだけどね。原作では家斉をどうするのか(何せ子どもが50人以上いたという人)こちらも期待だ。
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シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜('12フランス)-Dec 22.2012
[STORY]
天才的な味覚を持ちながら、頑固で完璧主義者のためレストランを次々とクビになったジャッキー(ミカエル・ユーン)は、妊娠した婚約者のためにシェフを辞めて老人ホームのペンキ塗りの仕事を始める。一方、超有名シェフでテレビの料理番組にも出演しているアレクサンドル(ジャン・レノ)は、時代遅れの料理をいつまでも作るなとオーナーから批判され、次の審査会で三つ星を失ったら店を辞めるよう宣告されていた。そんな時、アレクサンドルは自分のレシピを忠実に再現したジャッキーと出会い、彼を助手として雇うが・・・。
監督&脚本ダニエル・コーエン(『Une Vie de prince』)
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料理が登場する映画は毎回楽しみにしてるんだけど、本作は料理映画好きだけじゃなく日本人必見、かもしれない(笑)日本のホテルの名前が登場したり、アレクサンドルの弟子に日本人が出てきたり、サムライ&ゲイシャも登場。ここで劇場内爆笑だったんだけど、これ本国でウケたのかなぁ。フランスの公式サイト予告だとその場面が使われてるんだが。でも日本の公式サイトではそこが使われてない。そのシーンを入れると客足が悪くなるという判断か?!(笑)

監督はフランス国内の有名シェフやレストランを取材して脚本を書いたというが、今のフランス料理界の現状ってどうなってるんだろう。映画のようにエル・ブリ(『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』)の分子ガストロノミー料理がフランスで持て囃されてるのかね。映画ではそれを憂いてかすげーディスってる(笑)でも伝統的な料理も古臭いと多少貶しているんだよね。新しいものにすぐ飛びつくのもダメ、古いものに固執するのもダメ、常に自分で考えて成長しなさいっていうことを主張しているのかもしれない。

ジャッキーは味覚の天才だけど完璧主義者。だからレストランで働きだしても客とトラブルを起こしてしまう。でもこれは主張の激しいフランスならでは。私はジャッキーの言うことが正しいところもあるなぁと思って見てた。だって彼は美味しいものを食べてほしいだけで他意なんてない。日本だったら、シェフがそう言うならその通りにしますっていうお客さんのほうが多いと思う。今の日本って特にカリスマシェフってやつに弱いし(笑)ただ、彼の場合はシェフというより、いわゆる“料理バカ”ってやつなので、料理以前に人として信用されないといけなかった。そこもよく描かれていたと思う。

ただせっかく料理の映画なんだから、料理の映像はもうちょっとしっかり見せてほしかったな。特に三ツ星審査員向けの料理は。伝統も大事にしつつ、こっそり青いゼリーみたいなのを使ってるところがニクイ!と思ったので、丁寧に見せても良かったのでは。監督はそれよりも美人を撮るほうに集中していたかもしれない(笑)ジャッキーの恋人ベアトリス(ラファエル・アゴゲ)も、アレクサンドルの娘アマンディーヌ(サロメ・ステヴナン)、ベアトリスの実家近くにあるレストランのオーナー、キャロル(レベッカ・ミゲール)みんなそれぞれ美しくて眼福。あ、ミツコさんもおキレイでした(笑)
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ホビット 思いがけない冒険('12ニュージーランド=アメリカ)-Dec 20.2012オモシロイ★
[STORY]
指輪戦争の60年前、若きホビットのビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)は魔法使いのガンダルフ(イアン・マッケラン)から、邪竜スマウグによって奪われたドワーフの祖国エレボールを取り戻す旅に誘われる。断るビルボだったが、家にやってきたドワーフ王トーリン・オーケンシールド(リチャード・アーミテッジ)ら13人のドワーフたちのペースに乗せられ一緒に旅に出るが、数々の困難が待ち受けていた。
監督&脚本ピーター・ジャクソン(『ラブリーボーン』
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原作はJ・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』と、一部『指輪物語』「追補編」のエピソードが加えられている。『ロード・オブ・ザ・リング』『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(以下『指輪』)より60年も前の物語である。映画は本作と『ホビット スマウグの荒らし場』『ホビット ゆきて帰りし物語』の三部作として公開予定。

大好きなシリーズなので今回はHFR3Dという高画質版で見た。確かに綺麗だったけど、いいことばかりじゃないね。岩なんてセットだって丸分かり(苦笑)ある程度の画質のほうが人物と風景などがいい具合に溶け込んで違和感なく見られるだろうなと思った。でも今後もHFR版での上映があればやっぱりそっちを選択するだろう(同じ金額ならね)

本当は『ホビット』→『指輪』の順番で製作したかっただろうし、見るほうだってそっちのほうがベストだったと思うが『ホビット』を先に企画していたら絶対に通らないだろうなぁと見終わってまず感じた。だってオッサンたちとグロい魔物しか出てこないんだぜ(笑)『指輪』ではアルウェン(リヴ・タイラー)を多めに登場させて原作ファンの怒りを買ったが、映画としては華も必要だと興行側が考えてもやむを得ない部分があったと思う。でも『指輪』の三部作が大成功したことで、本作はほぼ原作通りオッサンだらけの冒険活劇を作ることができたわけだ。そうなると『指輪』が先で良かったのかもしれない。

『指輪』は私にとって中毒性がある映画だったけど(何度も劇場行きましたからね)『ホビット』は面白かったんだけど2度3度という映画でなかったな。同じ主人公でも、重い責任を負わされたフロドと巻き込まれるような形で参加したビルボとでは、フロドのほうが感情移入しやすいし、フロドの旅の仲間はいろんな種族がいてその中でのドラマもたくさんあった。ビルボの仲間は同じ目的を持つドワーフしかいなくて、トーリン以外のドワーフは今のところ十把一絡げという感じ。戦いでも、敵に追い詰められたところで何かしらの助けが入るというパターンが繰り返されるのもちょっとね。「追補編」から詳細を引っ張ってきて物語に厚みを持たせるという工夫をしているが、元の原作が『指輪』よりも子ども向けだから物語の深さに違いがあるのは当然だろう。パート2や3ではエルフやドワーフだけじゃなく人間も加わり複雑な展開になるはずなので、そこを楽しみにしたい。

しかしトーリン役のアーミテッジはカッコよかったなぁ。声に重厚感があって素敵。劇中で彼が歌うシーンのセクシーボイスにうっとりだったので、エンディングで同じ歌を歌う軽〜い声に思わず「誰だよお前」って言いたくなりました(笑)ニール・フィンという人らしいが、どうせならアーミテッジにそのまま歌ってもらいたかったわ。
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フランケンウィニー('12アメリカ)-Dec 15.2012
[STORY]
ヴィクター(声:チャーリー・ターハン)と飼い犬のブルテリア、スパーキーは大の仲良し。いつも一緒だった。しかしある日、スパーキーは交通事故で死んでしまう。悲しみに暮れるヴィクターだったが、科学の授業でジクルスキ先生(声:マーティン・ランドー)から筋肉が電気で動くことを教わり、ヴィクターはスパーキーを墓から掘り起こして強い電気を流した。するとスパーキーは生き返り、元気に走り回った。
監督ティム・バートン(『ダーク・シャドウ』
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1984年にバートンが監督した実写短編『フランケンウィニー』のセルフリメイクで、ストップモーションアニメで製作。3D版もあったが私は2Dで鑑賞。モノクロだから3Dで見てもあんまり飛び出してきたり奥行きを感じたりしないんじゃないかなと思って。結果、2Dで見て何の問題もなし。「ああ、ここは飛び出して見えるんだろうな」っていうポイントはよく分かった。

キャラクターは『ティム・バートンのコープスブライド』と同じようにデフォルメされていて、ほぼ全員がブキミ(笑)でもスパーキーは生きていた時より復活して縫い目いっぱいになってからのほうがすげー可愛いの。生きてる時は単にヴィクターに懐いてる飼い犬って感じだったのに、復活してからは心から 慕っていてヴィクターとの絆がより深まっているように見えてキュンとさせられる。スパーキーのキャラクターをあえてそうしたのか、それとも私が単に感じただけなのかは分からないが。見る前までは「スパーキーちょっとキモい」って思ってたのに(ごめん)鑑賞後に思わずグッズに手が伸びてました(笑)

『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』も『コープスブライド』も、一見キモいのに実は可愛かったり切なかったりという作品だ。見た目を可愛くするんじゃなくて(いや、彼の中では最高に可愛いのかも)ストップモーションアニメという難しい技術の中で可愛らしい動きやいじらしさを表現する、これって簡単にやってるけどすっごく難しいことだと思う。でも映画を見てるとストーリーに夢中になって難しいことをしてるなんて全く考えない。難しいなんて気付かせず自然に見せる、そこがさらに凄いところだ。CGアニメも嫌いじゃないけど、こういう作品も定期的に見たいものだ。

劇中では子どもたちがさまざまな生き物を生き返らせてしまい大パニックになるんだけど、その中にガメラらしきものが登場する。本作の登場人物にトシアキっていう子が出てくるんだけど(ちょこっとだけ日本語も喋る)ひょっとして長年ガメラシリーズを監督してきた湯浅憲明の名前をちょっと変えたのかもしれない。他にもパニック映画のオマージュと思われるシーンがいくつかあって、それを見つけるのも面白いだろう(私はあんまり古い映画は分からなかったけど)
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ボス その男シヴァージ('07インド)-Dec 9.2012
[STORY]
アメリカで大成功して帰国したシヴァージ(ラジニカーント)は、南インドのチェンナイに無料の病院や学校を建設しようと計画する。しかし既に病院を経営しているアーディセーシャン(スマン)に邪魔され、病院の建設はなかなか進まない。一方、そろそろ身を固めないといけないシヴァージだったが、最近の現代的な女性は好みではなく、なかなかいい出会いがない。そんな時、寺院でタミル(シュリヤー・サラン)という古風な女性を見かけ一目惚れする。
監督シャンカール(『ロボット』
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日本での公開は『ロボット』よりも後になったが、作られたのは2007年で『ロボット』よりも前。『ボス』と『ロボット』は監督のシャンカール、主演のラジニカーント、音楽のA.R.ラフマーンは両作品ともに携わっている。
ラジニが演じたシヴァージは、インドの伝説的俳優シヴァージ・ガネーシャンの一生をモチーフにした作品だそう。ちなみにラジニの本名はシヴァージ・ラーオ・ガエクワドである。

『ロボット』は短縮バージョンだったので物足りなかったけど、本作はフルバージョンを見ることができたのでおなかいっぱい。やっぱりインド映画はこれくらいボリュームがないと見た気がしないや(笑)『ロボット』ではカットが多かったので音楽もあまり印象が残ってないんだけど、本作ではシヴァージが登場するたびに流れるお決まりの音楽が流れ、まさに「スーパー☆スターがキター!」って盛り上がる。おそらくインドで上映された時には音楽のたびに大騒ぎだったに違いない。ダンスもフルに堪能。太ましいおっさんダンサーたちがお腹にランジの顔をペイントしえ踊るのは衝撃だったが。

しかしストーリーはかなり無茶。主人公がやることも無茶。シヴァージ・ガネーシャンの人生を元にと言うが、こんなとんでもな人だったの?スーパー☆スターがこんな役やっていいのっていうくらいヒドイ。無料の学校を建設したいが邪魔が入り、賄賂を議員や役人に渡さないと審査が通らないと言われ、築いた財産をつぎ込んでいく。一目惚れした相手には何度断られてもしつこくアタックしてストーカーのように追い回す。家にまで押しかけて家族にまで迷惑をかける。タミルも家族も本気で嫌がってそうに見えちゃった。今までラジニが演じた主人公は田舎者だけど実直で正義感が強く、悪に対してだけ暴力で対抗した高潔さがカッコよかったし、女性のほうから好かれる男だった。けれど本作もロボットの主人公も身勝手さのほうが目立ってしまってあまり好きになれなかった。これが若い男ならまだ「若いから青くてもしょうがない」で納得できたかもしれないけど、若作りしたオッサンの身勝手さは単に横暴なだけに見える。劇中でシヴァージが古風な女性を見つけるのに苦労していたけど、昔堅気の男も今のインドではいないのかな。寂しいなぁ。
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