Movie Review 2010
◇Movie Index

大奥('10日本)-Oct 1.2010
[STORY]
江戸時代。若い男が高熱を出し、真っ赤な発疹ができて死ぬ奇病が大流行する。凄まじい勢いで男の人口が減ったことから子種を持つ宝として大切に育てられ、女があらゆる仕事についていた。江戸の将軍もまた女子で受け継がれており、大奥には男子ばかり3000人が仕えていると言われていた。
旗本の長男・水野祐之進(二宮和也)は幼馴染みのお信(堀北真希)が好きだったが、薬種問屋跡取り娘とは身分違いのため結婚はできず、それならば大奥へ奉公へ上がることを決意する。
大奥では7代将軍家継が幼くして死去し、8代には紀州から吉宗(柴咲コウ)が就いたが、吉宗は質素倹約を推し進め、大奥にもなかなか足を運ばなかった。
監督・金子文紀(『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』)
−◇−◇−◇−
原作はよしながふみの同名漫画。彼女の漫画は『西洋骨董洋菓子店』や『きのう何食べた?』など食べ物系の漫画が好きなんだけど、本作は1巻が出た時に読んだけれど、それほど面白くないなぁと思ってそれ以降は放置していた。それから数年後、ふと気がつけば5巻まで出ていて(最近6巻が出たけど)吉宗の時代から遡って、大奥ができた経緯が描かれていると知ってまた読み始めたところ、2巻からの家光と有功の話がめちゃくちゃ面白い(というか切なすぎる)やっぱよしながふみは只者じゃなかったわ。

映画は私が面白くないなぁと思った吉宗と水野の話なので、最初は見るのをためらっていた。でも予告の柴咲がハマってそうだったのと、男たちが黒い裃で跪いているシーンがなかなか良さそうだったので見てみることにした。ただ、水野役が二宮っていうのがね・・・。でもこの時代の男は今より発育が良くなかっただろうから実際これくらい小柄で当たり前だろう、なんて一応自分を納得させておいた。

・・・発育どうこうの前に児ポ法に引っかかりそうなレベルでした(ははは)水野が上半身裸になるシーンが最初のほうにあるんだけど、小柄でも引き締まった筋肉質なら許せたが、もろに幼児体型(少年ですらない)で、見ちゃってすいません、って気持ちにさせられた。最初にそんなもん見せられたもんだから、そのあとどんなに水野がかっこいいセリフを吐いてもあの裸がチラついて、彼については何もかも諦めた。柴咲も原作の吉宗ほど聡明で鋭くはなかったが、間部(菊川怜)を一蹴するところがいい。

一番ハマってたのは加納久通を演じた和久井映見だろう。出番はそれほど多くはなかったが、おっとりだが腰の据わった豪傑ぶりがよく出ていた。それから水野と同じく原作の見た目からはかけ離れている杉下を演じた阿部サダヲも、最初は何でこの人がこの役を?むしろ佐々木蔵之介がこっちでは?なんて思ってたけど、最後は全く違和感がなくなった。笑うシーンなんて上手いじゃないか。御伽坊主の浅野和之もさすが。若い男がたくさん登場する映画だから、それだけ演技のできない若い役者が大勢出てくるわけで(TBSのアナウンサーも混じってたし)そんな中だからこそベテランや上手い役者が際立って見えた。

『君に届け』は原作をヘンに変えていてイライラさせられたが、本作はその点ではイラつくことがほとんどなく、原作と違うところがあっでも許容範囲。ただ、全体的に明るい雰囲気で、水野が「ここは暗い」「心が暗いのだ」というほど暗くない。むしろ悪習はびこる大奥に変革をもたらした新将軍と、一本気な若者が幸せを掴む大団円の物語って感じで、見終わったあとにスッキリしてしまう。席を立つ時に思わず「はっ!これでよかったのか?」と我に返っちゃったんだけど(笑)本当はもっと深い話なのに、単なるキワモノ大奥って思われたらかなり残念だ。なのでこの映画を見て原作に興味を持って読んでくれたら嬉しいな。
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君に届け('10日本)-Sep 26.2010
[STORY]
その見た目から“貞子”と呼ばれ、クラスメイトたちに敬遠されている黒沼爽子(多部未華子)は、高校の入学式の朝、明るく爽やかな風早翔太(三浦春馬)と出会う。爽子はクラスの人気者の風早に憧れるようになり、風早もまたいつもひたむきで一生懸命な爽子を気にかけるようになる。そして千鶴(蓮佛美沙子)とあやね(夏菜)とも親しく接してもらえるようになるが、2人にまつわる悪い話を爽子が流していると噂されてしまう。
監督&脚本・熊澤尚人(『虹の女神 Rainbow Song』
−◇−◇−◇−
原作は椎名軽穂の同名漫画。今まであまり少女漫画って読んでなかったんだけど、最近友達に薦められていろいろ読んでいて、これもそのうちの1作。キュンとするよーと言われて読み始めたけど、確かにいい漫画だった。特に2巻は涙なしには読めなかったな。ただの恋愛漫画じゃなくて友情を育んでいくところがいい。爽子がまたすごい健気で可愛いんだわ。風早は爽やかすぎて、こんなやつ実際にはいないだろーって感じで実はそんなにいいと思ってないんだけど(それを言ったら爽子みたいな女の子もイマドキいないだろうが)

キャストについてはほぼイメージ通りだったけど、風早と教師のピン(ARATA)はちょっと違うかな?と思ってた。特にARATAは無理じゃない?と。私はもともと桐谷健太をイメージして読んでたし。実際見てみて、やっぱりARATAはちょっと無理があったけど、三浦春馬の風早にはキュンときちゃいました(笑)自然な爽やかさでわざとらしくないし、一途でまっすぐな性格って感じがよく出てた。爽子との関係がうまくいかずに悶々とするところも上手くハマってた。爽子を演じた多部未華子も、ファンの人には悪いけどちょうどいいブサ加減というか(ごめんよ)私は原作の爽子も美人とは思ってないんでピッタリだと思った。この役を綺麗な女の子が演じてたら爽子のキャラに説得力がないでしょ。一生懸命が空回りしそうな顔してるのよ〜(そこがいい)怯えたような声がまた可愛いし。髪をアップにしてジャージ着た姿は漫画そのままだった。

ただストーリーは原作のいいところを悪いほうに変えていて、特に最初の爽子と風早が出会う重要なシーンは、何でこんな風に変えてしまったのか?原作通りにすると何か問題でもあるんですか?!と熊澤(もう呼び捨て)を正座させて問い詰めたくなった。桜を見て微笑む爽子は可愛いけどさ、ちゃんと2人が見つめあう演出をしろよと。私が好きな2巻のくだりはやっぱりちょっと泣けたけど、女子3人が抱き合うシーンが何であんな場所なんでしょうか?映画だから場所がトイレじゃ・・・ってことだろうけど逆に背景が気になりすぎて、一瞬人物たちに目が行かなくなってしまった。
すべて原作通りにしろとは言わないが、余計なオリジナルエピソード(爽子のお父さんがシンバル奏者とか)を入れるくらいなら原作のエピソードを入れてくれー。そう思ったファンは私だけではあるまい。
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ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士('09スウェーデン=デンマーク=ドイツ)-Sep 19.2010
[STORY]
ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)によって助け出されたリスベット(ノオミ・ラパス)だったが、ザラチェンコを利用してきた秘密組織は精神科医テレボリアンと共謀し、リスベットを精神病院送りにしようとしていた。また、暴露記事を掲載予定の『ミレニアム』に対して妨害を始めるのだった。
傷が回復したリスベットはザラチェンコ殺害未遂で収監され、ミカエルは彼女のために妹であり弁護士でもあるアニカに弁護を依頼する。そして裁判が始まった――。
監督ダニエル・アルフレッドソン(『ミレニアム2 火と戯れる女』
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『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』『ミレニアム2 火と戯れる女』に続く三部作の3作目。原作は 原作はスティーグ・ラーソンの同名小説。パート1はそれだけで一応ストーリーは完結していたが、パート3はパート2からの続きとなっている。
瀕死の重傷を負ったリスベットが傷害で逮捕され(パート2を一部始終見ていた観客にとっては何で?!となるが、リスベットが先に襲ってきたと証言されたら証明のしようがないからなぁ)怪我の回復後、裁判が始まる。

ミカエルはリスベットを全面的にバックアップしようと証拠を集め、リスベットの自伝を雑誌に掲載しようとし、弁護士の妹アニカ(妹はパート1から出てるけど弁護士って知らなかったわ)をリスベットの担当弁護士にする。と、これだけ書くとミカエルはすごく動いているようにみえるが、実際に映像で見てみるといまいち動きが悪くてイライライした。雑誌を発行させまいと組織があの手この手でミカエルたちを脅迫、妨害する。それに対して危機感が足りなさ過ぎる。命の危険があってようやく重い腰を上げたようにしか見えない。行動力のあるリスベットと比べると遜色ありまくりだ。そのせいか展開まで生ぬるく感じてしまった。

裁判も前半は検事と医師テレポリアン(アンデシュ・アルボム・ローゼンダール)が責め続け、後半はアニカとリスベットが反撃に出る。それはいいんだけど、例の切り札は観客がパート1から知ってるものなので、出すのが遅いよーと、やっぱりもどかしくなっちゃったし。場面の切り替えが早かったパート2に比べて本作は病院と裁判所のシーンが多かったこともあって単調に映ってしまった。だから全体的にテンポを上げてほしかったな。あとこれは原作が作者死亡によって三作目で終わってしまったからだろうけど、ミカエルとリスベットの関係も中途半端で不満が残った。

ところでリスベットのフラッシュバックの1つで気になったことがあるんだけど(ここからネタバレ)テレボリアンが少女だったリスベットを拘束してベットのそばに立つシーンがあったんだけど、これってやっぱりリスベットにいたずらをしてたっていうことを、この映像から伝えたかったんだよね?だとしたら本当に許せないな。有罪にして刑務所にぶち込んで大きいお友達に可愛がってもらえ!(ここまで)
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ミレニアム2 火と戯れる女('09スウェーデン=デンマーク=ドイツ)-Sep 14.2010
[STORY]
ハッカーのリスベット(ノオミ・ラパス)の協力で事件を解決し、ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)は見事ジャーナリストとして復帰を果たす。そのミカエルたちが発行する雑誌『ミレニアム』では少女売春組織の告発記事を掲載しようとしていたが、その組織を追っていた記者の2人が殺されてしまう。現場にはリスベットの指紋がついた銃が残されていたことから、彼女は指名手配されてしまう。
監督ダニエル・アルフレッドソン(TVドラマ『刑事マルティン・ベック』)
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原作はスティーグ・ラーソンの同名小説。3部作の2作目にあたる。前作は『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
1作目ではハリエット・ヴァンゲル失踪事件をミカエルとリスベットが追うストーリーがメインで、時折リスベットの過去がフラッシュバックで挿入されて本作へと続く伏線が張られていた。本作ではリスベットの出生の秘密が明らかになり、新たな事件も起こる。

1作目の禍々しさと比べると本作は迫力不足。監督が変わったせいか、当初は映画ではなくテレビドラマとして企画されたからか分からないけど全体的に抑えられている。ニーダーマン(ミカエル・スプレイツ)の存在なんてもっと怖くできたはずなのに。あとザラ(ゲオルギー・ステイコフ)の特殊メイクはもうちょっとどうにかならなかったのかなぁ・・・というレベル。こういうの見ちゃうとハリウッドの技術ってやっぱ凄いんだなと思わざるを得ない。

リスベットとミカエルそれぞれ別の事件に巻き込まれていたのが途中で1つに繋がっていく展開なんだけど、2人がちゃんと顔を合わせるのはホントに最後の最後。1作目を既に見てて2人の関係性を分かってるから面白く見られたけど、いったいいつ顔を合わせるの?!と途中まではイライラした。見ていくうちに「ああ、これは最後なんだろうな」って分かったけど。リスベットの行動力は本当にカッコイイ。でも1人で何もかもやろうとして、危なっかしくてハラハラしどおしだった。ちょっとは人を頼れよ、と何度も思ったけど、彼女の生い立ちを知って頼らない理由を理解した。確かにそんな目に遭い続けていたら誰も信じられないよなぁ・・・。

リスベットはパート1を見た限りではセリフで言われるほど背が低いとは思えなかったんだけど、本作でパーカーにジーンズ、スニーカー姿を見て、あ、小柄なんだと気がついた。パーカーのフードかぶって歩いてる姿は男の子みたい。今まではゴツい厚底ブーツに髪を立ててたから小さく見えなかっただけだったんだ。小さな体で1人立ち向かっていく姿にやられた。ストーリーは1作目のほうが面白かったけど、リスベットは本作のほうが魅力的だった。
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バイオハザードIV アフターライフ('10アメリカ)-Sep 14.2010
[STORY]
東京にもアンデッドが現れ、その地下ではアンブレラ社の施設で研究が続けられていた。アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)はクローンたちとともに施設を破壊していくが、アンブレラの幹部ウェスカー(ショーン・ロバーツ)には逃げられてしまう。半年後、アリスはクレア(アリ・ラーター)たちがいるアラスカへ降り立つが、身体にデバイスを取り付けられて凶暴になったクレアに襲い掛かられる。アリスはクレアを助けるが、以前の記憶を失っていた。アリスはクレアを連れてロサンジェルスに飛び立ち、アンデッドに包囲された刑務所に逃げ遅れた生存者たちがいることを見つける。そしてその地下にはクレアの兄だというクリス(ウェントワース・ミラー)がいた・・・。
監督&脚本ポール・W・S・アンダーソン(『バイオハザード』
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『バイオハザードU アポカリプス』『バイオハザードIII』では脚本と製作に回っていたアンダーソンが再び監督に復帰。
渋谷のスクランブル交差点でウイルス感染した日本人を中島美嘉が演じている。

すでに地球は壊滅状態なのに、アンブレラ社は一体どうしたいの?っていうパート4。収拾つかないよね、これ。それなのにいまだに実験とかアホかと(苦笑)私ももう見るのやめればいいんだろうけど、謎を残したままだったり、次に繋がる直前でエンドクレジットだったりにモヤモヤさせられ、結局製作側の策略に乗っかってしまっている。まぁ上映時間も短いし(これが毎回120分以上だったらうんざりしてやめてたと思う)作品を重ねるごとに怖さもなくなってきて(それはそれでどうかと思うが)『ソウ』シリーズをリタイアした私だが、こっちは大丈夫そうだ。今回は東京が舞台なのも興味深かったし、フル3Dというのも楽しみだった。

そして本編ですが、えと、3Dになってかえって迫力がなくなってました・・・(笑)技術的にしょうがないんだろうけど、アクションシーンがとにかくスローばっかり。火花が飛び散ったりするところはペカペカしててかえって立体感がない。唯一「おおっ」と思ったのは、ウェスカーがサングラスを外して投げるところ。私の目の前までサングラスが迫ってきて、これぞ3D!だった。でもこれ予告でさんざん見せられてたから新鮮味はゼロ。初めて見るシーンであってほしかったよ。

ラストがこれまたホントに中途半端なところで終わってしまったし、アリスどころかクレアとクリスもなのっ?!という新たな謎も加わったので、やっぱり続きを見なきゃいけなくなったが(いや別に義務じゃないけどさ)次回も3Dでやるならば、今より技術が向上してスピード感のある映像になっていたらいいなと思う。
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