Movie Review 2004
◇Movie Index

モーターサイクル・ダイアリーズ('04イギリス=アメリカ)-Oct 10.2004オススメ★
[STORY]
1952年アルゼンチン。23歳の医学生エルネスト(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、7歳年上の友人アルベルト(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)とともに南米大陸を巡るバイク旅行に出る。喘息持ちのエルネストは途中で何度も発作に襲われるが、貧しい人々に出会ったり、ハンセン病患者たちのいる病院で研修を受けるうち、彼の中で何かが変わってゆく。
監督ウォルター・サレス(『セントラル・ステーション』
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キューバの革命家チェ・ゲバラの『モーターサイクル南米旅行日記』を元に、ロバート・レッドフォードが製作総指揮、2004年サンダンス映画祭、カンヌ国際映画祭で上映。アルベルトを演じたロドリゴ・デ・ラ・セルナはゲバラの実の“はとこ”だそうだ。

革命家としてのゲバラにはシンパシーを感じないんだけど、本作の青年エルネストにはマジ惚れ(笑)イイ男過ぎる。というか男というより人として素晴らしい。この時の彼は革命家としての片鱗などまるでなく、若者らしい悩みや苦労を抱えた普通の青年だ。ただし頭にバカがつくほどの正直者。まぁそれだけなら世の中にいるだろう。彼のすごいところは、正直ゆえにおかしいと思ったことは怯むことなく素直に口にし、行動に移せるところ。やろうと思ってもついやりすごしてしまう人が多い中で(それは私だ!)歴史に名を残す人というのは、こういうところが違うのかなーと考えてみたり。かといって彼にとっては特別なことではなく、そこに気負いは感じられない。そこがまたスゴイのだが。

エルネストの相棒アルベルトはお調子者で嘘も方便と考える陽気な男で、生真面目なエルネストとは正反対だけどお互いにない部分を補っていていいコンビだ。途中で喧嘩もするし、女に目がないし、エルネストが恋人から預かった15ドルを使おうと何度もせがむシツコイ奴(笑)だ。でもエルネストが喘息の発作で倒れれば献身的に看病するし、病院で働いている時は誠実だし、旅の足を引っ張るようなダメな男じゃない。彼は彼でイイ男なのだ。だから見ていて気持ちがいい。

サレス監督の『セントラル・ステーション』もすごく好きな作品なんだけど、つらいシーンをことさら強調して描くことはせず、ここからどうなるの?!っていうシーンの次には案外あっさり目的に到着していたりする(笑)よく言えば省略が上手く、悪く言えば都合の悪いところは描かないという。ものすごく重苦しい映画も嫌いじゃないけれど、私にはこれくらいがちょうどいい。どこまでも続く長い道のりと広い空。そこを旅する若者2人。これでじゅうぶん。その劇中の音楽とエンディングの歌も良かったので、サントラ買うかな。

ガエル・ガルシア・ベルナルはまさにハマり役。彼が30歳過ぎたときにまたゲバラ役をやってくれないかなーと思ってるんだけど、いかがでしょう。もちろんベニチオ・デル・トロのゲバラも楽しみなんだけどね。
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インファナル・アフェア 無間序曲('03香港)-Sep 29.2004
[STORY]
1991年香港。マフィアのボスが暗殺され、部下たちの犯行ではないかと警察が動きはじめる。実は部下の1人サム(エリック・ツァン)の妻マリー(カリーナ・ラウ)が、サムに内緒で子分のラウ(エディソン・チャン)にやらせた犯行だった。それを知らないサムは、ラウを警察学校へ潜入させ情報を得ようと企む。一方、ウォン警部(アンソニー・ウォン)もまた、ボスの私生児と分かって警察学校を退学になったヤン(ショーン・ユー)をマフィアに潜入させる。
監督アンドリュー・ラウ(『インファナル・アフェア』
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パート2であるが、前作の11年前、ラウとヤンが潜入を始めるきっかけから描かれる。そしてパート3ではパート1のその後が描かれているそうだ。

本作はトニー・レオンとアンディ・ラウは出演していないので、前作でのトニー・レオンのやられてしまった私としてはそれほど期待してなかったんだけど、かなり楽しめた。前作のような潜入がバレてしまうのか?!というハラハラ感はないけれど(バレたら続きがないわけですから)他にも潜入者がいたり、マフィアのボスと部下たちの駆け引きがあったりと、いろんなところで騙され、緊張感を強いられた。また、サムがあんなに情の厚い男だと思わなかったし、ウォン警部の深い悲しみと復讐心も知ることができて、これでまたパート1を見たら違った感想を持ちそう。

それに若いヤンを演じたショーン・ユーがたまにトニー・レオンに似た表情を見せたりするので、そこにオオッ!と前のめりになったりね(笑)彼はトニー・レオンに繋がる演技をしっかりしていたと思います。もうね、彼が潜入捜査官になると決意するときの「善人でありたい」という一言で泣きそうになったさ。
逆にエディソン・チャンはアンディ・ラウと繋がらなかったんだなー。まず顔のカタチが違うでしょう(笑)面長じゃなくてもう少しエラの張った我の強い顔の人でないと。それにギラギラしたような目ヂカラがない。それなのに行動が大胆で、役柄と顔が合ってないっすよ。彼でなくちゃいけなかったのかなぁ。

ただ、ものすごくガッカリしたこともある。なぜマフィアのボスについていたヤンが、サムの手下となったのか?それが思いっきりスルーされていたのだ。私が一番気になってたことなのに!だってヤンがボスと血縁関係にあるなら、ヤンを手下になんかせずに殺すはずでしょう。いつ裏切るか分からないんだし。それを内緒にしたのかな?もしそうなら、その説明をウォン警部のモノローグでも何でもいいから一言入れるべき。パート3で何かフォローが・・・ないだろうな(笑)
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SURVIVE STYLE 5+('04日本)-Sep 26.2004
[STORY]
ある夜、石垣(浅野忠信)は妻を殺して埋めた。しかし家に戻ると妻は蘇ってくる。石垣は何度も妻を殺すがそのたびに蘇ってくる。耐え切れなくなった石垣は通訳を連れたロンドンから来た殺し屋(ヴィニー・ジョーンズ)に依頼を頼む。
CMプランナーの洋子(小泉今日子)は恋人の催眠術師の青山(阿部寛)に殺意を抱き、殺し屋に依頼を頼む。青山は客席にいたサラリーマンの小林(岸辺一徳)に催眠術をかけている最中にロンドンの殺し屋に殺されてしまう。
鳥になる催眠術をかけられたままの小林に、家族は病院に連れていくがなすすべがない。その小林家に空き巣に入った津田、森下、Jの3人は、部屋を物色している最中に家族が戻ってきてしまい急いで隠れるが、鳥真似をする小林に驚く。
監督・関口現(長編初。『BUS☆PANIC!!!』
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企画・原案・脚本はCMプランナーでもある多田琢。ショートフィルム『BUS☆PANIC!!!』でも彼が脚本を担当。また劇中で流れるCMのうちの1本は石井克人が演出している。

一見、何の関係もない5つのエピソードが少しずつ絡み合っていく展開で、関口&多田が担当した数々のCM作品の常連たちがキャストを占める。また、ジョーンズが出演しているだけあって『ロック、ストック&トゥースモーキング・バレルズ』のような演出も見られる。
・・・というわけで、出始めの頃には面白かった彼らの作品も、今となっては新鮮さも驚きもない映像と演出で、つまらなくはないけどそれほど面白いもんでもない、まぁこんなもんだろ、っていう中途半端な作品であった。いい加減この手のものも飽きてきたんだな。CMプランナーの人たちはそろそろこの次の段階を考えなくてはいけないんじゃないだろうか。

ただ内容はゼロってわけでもなく、アクシデントがあった時にそれを受け入れて生きていけるか?とか、邪魔だと思っていたものが失って初めて大切なものだと分かるとか、本当の自分を隠すな、とか様々な意味が込められている。パッと見の奇抜な印象でそれが見えにくくなっているけど、落ち着いて本質を見極めろということだ。特に石垣夫妻のパートと小林一家のパートは軸がしっかりしていてメッセージがちゃんと伝わる。そんな風に解釈するとなかなかいい映画じゃーん、なんて思ってしまうんだけど、でもそれ以前にやっぱり面白くないわけで(笑)

でもジョーンズの通訳を演じた荒川良々は面白かったです。途中噛みながら必死で通訳してる姿がおかしくて、ジョーンズよりもつい彼に目が行ってしまうのだ。単に下手くそともいうんだが・・・ズルイ人だ。それとJAI WEST可愛すぎ。まつ毛くるんくるんのソフトマッチョな乙女(なんだそりゃ)今まではそれほど好きじゃなかったけど、ちょっと好きになりました。
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モンスター('03アメリカ)-Sep 25.2004
[STORY]
1986年フロリダ。娼婦としての生活に疲れたアイリーン(シャーリーズ・セロン)は自殺を考えていた。しかし残ったお金でビールを 飲もうと入ったバーでレズビアンのセルビー(クリスティーナ・リッチ)と出会い、彼女の純粋さに惹かれ2人で一緒に暮らそうとする。 しかし生活のための金が必要だったため、アイリーンは再び客を取るが、男から暴力をふるわれ、持っていた銃で射殺してしまう。
監督&脚本パティ・ジェンキンス(長編デビュー)
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主演のセロンは第76回アカデミー賞の主演女優賞をはじめ数々の賞に輝き、また本作の製作も担当した。
7人を殺害したとして2002年に処刑されたアイリーン・ウォーノスをモデルにした作品。映画では恋人の名前がセルビーだが実際はティリア・ムーアという女性で、彼女からは映画化の許可を得られなかったため、名前が変えられたのだそうだ。

ヒラリー・スワンクが主演女優賞を受賞した『ボーイズ・ドント・クライ』と同じ匂いのする映画だなぁと見る前に感じていて(実際見てみたらかなり違いましたが)あと思い出したのはニコール・キッドマンが同じように特殊メイクで実在の人物を演じた『めぐりあう時間たち』。両者ともワタシ的には期待したほどの演技ではなかったので、本作もまた美人女優が思ったよりも頑張ったから受賞したのねーくらいにしか思ってなかったのだけれど・・・本当に申し訳ありませんでした。この映画でのセロンは本当に凄かった!本物のアイリーンは写真だけしか見てないけど本当にそっくり!体型と顔、喋り方歩き方、ここまで変えることができるんだ。見ている間、一秒たりとも彼女がセロンだということを思い出すことはなかった。そこにいたのは紛れもなくリーという女性だった。

とにかく彼女の存在感に圧倒されてしまってそれだけで満足しそうになってしまったが、ストーリー進行や構成はあんまりいいとは思わなかったなぁ。アイリーンはその生い立ちからして凄まじいんだけど、それがほんの少しの回想シーンや会話だけで語られてしまって、今の彼女とうまく結びついてないように感じた。それに監督自身が彼女に肩入れしてしまったのか、彼女は人殺しだけど被害者でもあるのだ!と強く主張しすぎたような気もする。その割にはセルビーの設定が甘いんだよね。劣等感を持った優等生という感じで、夢見がちで悪いことは最初から見えないものとして捉えていて、リーの犯した罪を見ないフリをしているようみえてしまった。そこが余計ムカついたわけだが(笑)実際のティリアという女性はアイリーンとともに強盗もしてたようだし、もっとしたたかな女に仕立てて、2人の関係をシビアにしても良かったのでは。

実際のアイリーンや事件については『シリアル・キラー アイリーン「モンスター」と呼ばれた女』というドキュメンタリーがあるそうなので、レンタルであれば見てみたい。
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バイオハザードU アポカリプス('04アメリカ)-Sep 20.2004
[STORY]
アンプレラ社の地下研究所“ハイブ”から脱出したアリス(ミラ・ジョヴォビッチ)は研究員たちによって眠らされる。彼女が目を覚ました時、外ではすでに地下から蔓延したウイルスによってアンデッドと化した人々が感染していない人々を襲っていた。アリスは停職中の特殊部隊員ジル(シエンナ・ギロリー)たちとともにラクーンシティの外に出ようと試みるが、社員らによって街は封鎖され、4時間後には核爆弾によって街ごと破壊されることを知る。そんな時、街の外にいる科学者から、まだ中に取り残されている娘を助け出してくれれば脱出方法を教えると依頼される。
監督アレクサンダー・ウィット(『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』で撮影・助監督)
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前作『バイオハザード』から36時間後を描いた続編。前作の監督だったポール・W・S・アンダーソンは今回は製作と脚本を担当。すでにパート3も予定されている。

前作は“ハイブ”のコンピューターの恐ろしさが面白かったので、本作のようなガンアクション中心だといまいちドキドキ感が少ない。しかも屋外でのシーンって見てても緊張しないもんだね。学校や教会でのシーンは相変わらず怖かったので、やっぱりあの逃げ場のない閉塞感がたまらなく怖いのだろう。

目覚めたアリスが向かうところ敵なしになってるのも怖さ半減。前作では彼女のアクションが少ないの不満と書いたので、アクションの数からいったら大満足だし、敵をバタバタとなぎ倒していく様は見ていて気持ちがいいけど、ここまで強いとね。それに一番の強敵と戦うシーンではカメラが人物に寄り過ぎな上にカット割が細かく、どんな風に戦っているのかちっとも分からず、ひどいもんだった。いろいろ工夫してみたけど、こうやって誤魔化すしかなかったんだろうなぁ。相手は下半身がほとんど動かないような状態だし、アリスのキックやパンチは迫力がない。結局、武器で戦うようになってまた見られるアクションになっていたので、素手のところはカットして、最初から武器を持たせれば良かったんでは。

というわけで1作目と比べるとどうしても落ちてしまう(実は一番良かったのは化粧品のCMと間違えるほどの劇場予告だろう)でも次回作はやっぱり楽しみ。多分3作目はまたガラリと作風を変えてくると思うんだ。本作でようやくウイルスのことが分かったので、次はアンブレラ社のこととアリス自身の謎が分かるはず。それとまたゲームキャラが登場するのかどうか。そしてイアン・グレンはラスボスなのか?!(ラスボスて)と期待でいっぱいだ。
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