Movie Review 2003
◇Movie Index

“アイデンティティー”('03アメリカ)-Oct 26.2003
[STORY]
嵐の中、女優の運転手エド(ジョン・キューザック)は道に立っていた女性を轢いてしまった。慌てて病院へ連れて行こうとするが、雨のせいで道は塞がり電話も通じない。そこで辿り着いたのは一軒のモーテル。同じように足止めを食らった人々が集まってくるが、1人、また1人と何者かに殺されていく。
監督ジェームズ・マンゴールド(『17歳のカルテ』
−◇−◇−◇−
上映前に“この結末を誰にも話さないで下さい”という配給会社からのメッセージが出るんだけど、これやめてほしいな。逆にネタバレされてるみたいでものすごくイヤだ。
(まぁでも私は昔、上映前に行ったトイレで偶然思いっきりネタバレ話を耳にしてしまったことがあるけどね)

そんなわけで身構えて見てしまったが、普通に騙されたね(笑)相変わらず安上がりだ。最初から堂々と情報が提示されているのに見事に引っかかり、人が殺されるシーンは怖くてたまらなかったし、どんでん返しにポカーンと口を開けて呆然。うーんビックリした。見ててずっと似てるなぁと思ったのは、ビル・パクストン監督主演の『フレイルティー/妄執』という映画。この映画を楽しめた人には『“アイデンティティー”』も楽しめると思う。上映時間が90分と短いため、無駄なシーンが全くなく考えるヒマを与えないところもいいのだろう。

というわけで私は十分にこの映画を楽しんだと言えるけど、嫌いな人は嫌いだろうな。フェアじゃないとか反則だとか怒る人がいても仕方ないと思う。ワタシ的にはフェアだと思うし反則ではないと思うのだけれど。何でもアリの映画ではあるが、一応すべて説明がつくしね。ただモーテルに集まる男女の特徴や性格をもっとはっきり見せて欲しかったな。
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死ぬまでにしたい10のこと('02スペイン=カナダ)-Oct 25.2003
[STORY]
夫と2人の子供とともにトレーラーに暮らす23歳のアン(サラ・ポーリー)は、夜間の清掃作業の仕事をし、帰りにホテル勤めの 母親を乗せて家に帰る、そんな毎日を送っていた。しかしある時、腹痛で倒れたアンは医者からガンで余命2〜3ヶ月だと宣告される。 アンはこのことを誰にも言わないと決めた。そして死ぬまでにしたいことをノートに書き出していった。
監督イザベル・コヘット(『あなたに言えなかったこと』)
−◇−◇−◇−
エグゼクティブ・プロデューサーに『トーク・トゥー・ハー』のペドロ・アルモドバル。その作品に出演したレオノール・ワトリングも本作に出演している。

自分の余命が決まっていたら?まずは何度も検査をするだろう。そして本当に死ぬことが分かったら泣きまくり、今までの人生を後悔してはまた泣くだろう。それに疲れたら前向きになろうと努力するだろう。やりたいことをやろう、でもできるだけ綺麗に死ねるようにいろんな物は捨てて、常にいい服着てよう、とかやっぱりそういうことも考えてしまうなぁ(笑)そしてフト気が緩んだ時にまた泣き、やりたいことを達成できたらまた泣いてしまいそう。

映画はそんな泣くシーンを外し、できるだけ淡々と主人公アンを描いていく。死に対する恐れや、抵抗する素振りすら見せない。わざとだと分かっていても、やっぱりそこは描くべきだったんじゃないかなぁ。そこがスッパリ抜け落ちているから、アンに対して全く心を動かされることがなかった。死ぬということ、それはどんな人間でも一度は考えたことがあり、どんな人間にも必ず訪れるもの。それをモロにテーマにしているくせに、何だか自分とは遠い話のように思えてしまった。

さらに許せないのは、自分が死ぬということを誰にも言わないこと。私も昔、そういう風に死ねたらいいなぁと思ったこともある。でも今は、それはやっぱり良くないことだと思っている。誰彼かまわずに教えろとは言わないが、大事な人にはちゃんと伝えるべき。自分はそりゃ後悔しないだろうさ。でも残された人はどうなる?きついことを書いてしまうが、死ぬ人はそれまでよ。でも残された人はこれから先も生きていかなきゃならない。大事な人が何も言わずに逝ってしまったら、裏切られたような気持ちになるだろう。そして何もしてやれなかったことをずっと後悔し続けるのだ。本当に残された人のことを想うのならば、メッセージテープなんかよりも、生きている間に一緒にやりたいことをやったほうがいい(っていうかあんな大量にテープを押し付けられた医者が可哀相だぞ)

というわけで久々にムカムカする映画だったが(笑)反面教師として(?)自分こそは“いい死に方”をしたいなぁと思った。
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この世の外へ クラブ進駐軍('03日本)-Oct 23.2003
[STORY]
1945年。終戦を迎えた日本に米軍が次々と基地を作っていった。その進駐軍相手にジャズ演奏をする日本人がギャラ目当てに殺到していた。サックス奏者だった広岡(萩原聖人)は、平山(松岡俊介)や偶然一緒になったド素人の池島(オダギリジョー)らとともにバンドを組む。しかし演奏は下手くそで、アメリカ兵ラッセル(シェー・ウィガム)に馬鹿にされる。
監督・阪本順治(『KT』
−◇−◇−◇−
2004年2月公開予定。少し早く試写会で見てきました。

辛く苦しい時代でありながら、前半は笑えるシーンがたくさん入ってて すんなり入り込めた。ここは真面目にやっても良かったのでは?と思うところまで笑いを取りに行ってて、 大阪人のサービス精神を見せられたような感じ。個人的には (演技はいつもと同じだけど)漣ちゃんで和ませてもらいました。哀川先生はちょっとクドかったな。

進駐軍相手のジャズバンドを組む5人の若者の姿がそれぞれ悩みや苦しみを抱えながら、最初は金儲けのために始めたジャズに本気で取り組んでいく姿を中心に、強かに生きる子供たちやパンパンと呼ばれた娼婦たち、そしてアメリカ兵のこともきちんと描かれていて手抜は感じられない。一応主役は広岡になるのかな。ただ個人的にどーしても萩原聖人の顔というか、いつもムカついてそうな表情をしてるのが好きになれないので、彼を中心に見ることができなかった。「ちょっとそこまで行ってくる」のシーンは好きだったけど、あとは本当にダメでした。かといって他のメンバーも弱くてねえ。結局、見てる間ずっと真ん中がぽっかり空いたような状態だったな(自分のせいだが)ただしトランペッターの浅川を演じたMITCHは本職だけあって、ステージの上ではダントツに目立ってカッコ良かった。演奏してる時の腰の入りが違うぜ(笑)

ところでスコットランド生まれのピーター・ミュランがなぜアメリカ兵を?と思ったんだけど、この人、顔の造りがどことなくブッシュに似てませんか(ブッシュ父がイギリス国王の末裔らしいから、同じ系統でも不思議じゃないか)それで起用したわけではもちろん・・・ないよね。
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インファナル・アフェア('02香港)-Oct 18.2003オススメ★
[STORY]
ヤン(トニー・レオン)はウォン警視に見込まれ、マフィアへの潜入捜査官を10年も続けている。現在はサムというマフィアの下で情報を手に入れていた。そのサムには香港警察へ潜入させているラウ(アンディ・ラウ)という手下がいて、警察の内部情報を手に入れていた。ある時、麻薬取引の失敗により警察は内部に裏切り者がいることを、そしてマフィアは手下に潜入捜査官がいることをお互いに知るのだった。
監督アンドリュー・ラウ(『風雲 ストームライダーズ』)
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香港フィルムアワードで7部門を受賞し、ハリウッドが史上最高額でリメイク権を獲得したという(主演はブラッド・ピットの予定)大ヒット作品。出演者はもちろん、視覚効果にクリストファー・ドイル、編集には『レイン』のダニー・パンと豪華なスタッフが名を連ねている。また香港ではすでにパート2が上映されており、こちらは10代のヤンとラウの物語だとか。そしてパート3も決定しているらしい。

今までトニー・レオンが出演した映画は何本か見てるけど、好きでも嫌いでもなく演技についても良いとも悪いとも思わない(『HERO』なんかはどっちかっていうとダメな部類)悪く言えば心にほとんど引っかからない人だった。でもでもでも、今回のヤン役はマジでかっこいいー!
基本的に受身な役が多いせいか煮え切らない顔ばかり印象にあるんだけど、今回の役もやはり受身な役ではあるものの、ふとした瞬間に爆発してしまいそうな危うさを持った顔をしているのだ。さらにある場面では、私が今まで見たことがないすごい表情を見せてくれる。この顔には本当にやられた。

トニー・レオンのそんな顔を引き出したのはウォン警視役のアンソニー・ウォン。彼もまた良かった。最初見た時はゴルゴ13かと思ったけどね、顔もすんげえ濃くて(すまん)ヤンとのやりとりは警察の上司と部下という関係以上の、まるで親子のような雰囲気も漂わせていて、この2人のシーンはラウとヤンのシーンよりも印象深い。続編ではウォンとサムが物語の中心にくるらしいので、こちらも楽しみだ。

細かいことにこだわると「スパイをあぶり出すならまずPCや通信記録を調べろよ」とか「そんな意味なく屋上で会話するな」なんてツッコミどころも多い。シチュエーションやビジュアルを重視してるからだろうが、そういうところがいちいち気になってしまう人は合わないだろう。
私は見てる間は全く気にならなかったんだけど、見終わって「そういえば・・・」という感じ。もうヤンがいつバレてしまうのかドキドキしっぱなしで、ウォンとサムのやりとりにハラハラし通しで忙しかったです(笑)ただ不満なのは女性キャストがいまいちだったことと、ラストがちょっと納得できない纏め方だったこと。原題である『無間道』の意味に沿ったラストではあったけど、それにしてもなぁ・・・。どうやら別バージョンのラストもあるらしいので、そっちがDVDに入っていたら見てみたいな。
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恋は邪魔者('03アメリカ)-Oct 18.2003
[STORY]
1962年アメリカ。『恋は邪魔者』という本を書いたバーバラ・ノヴァク(レニー・ゼルウィガー)宣伝のためにニューヨークへやってきた。編集者ヴィッキーは男性誌のスター記者キャッチャー・ブロック(ユアン・マクレガー)にバーバラの記事を書かせて宣伝しようと考えていた。しかしキャッチャーは女性たちのデートを優先し、バーバラを3度もすっぽかす。怒ったバーバラはTVで宣伝することを思いついて見事ベストセラーを勝ち取り、キャッチャーを名指しで非難した。慌てたキャッチャーは別人を装い彼女に近づく。
監督ペイトン・リード(『チアーズ!』
−◇−◇−◇−
60年代のファッションと音楽、モダンなインテリアで楽しませつつ、『ムーラン・ルージュ』や『シカゴ』のような歌とダンスあり、『オースティン・パワーズ』のようなエッチなギャグあり、橋田壽賀子ドラマ張りの長台詞あり・・・そんな色んなものを詰め込んだ映画って感じでした。もっと普通の可愛らしいラブストーリーだと思ってたんだけどなぁ。そういうちょっと変わったところが面白かったりもしたけど、トータルで見ると軸になるストーリーがいまいちだったと思う。

バーバラとキャッチャーの恋の駆け引き。ここでもっとワクワクさせたりキュンとさせて欲しかったんだけど、ただ楽しいなぁで流れていき(それも悪くはないけどさ)そしてクライマックスで思わず「なぬ?!」と声を上げそうな展開に。そこから何か釈然としないというか、キャッチャーの言動がよく分からないまま終わってしまった。彼に聞いてみたい。(ここからネタバレ)バーバラの意図が分かった上でもやっぱり彼女と結婚したいって、どうして思ったの?(ここまで)私にはちっとも分からなかったよ。その後のバーバラのエレベーターのシーンなんてお洒落で小粋な(笑)シチュエーションだったけど、そんなところにこだわる前に、もう少し話を練りなさい。と言いたくなった。

また、メインストーリーの脇では、男性誌社長ピーターと『恋は邪魔者』編集者ヴィッキーの恋も同時にちょこちょこ描かれるんだけど、こっちもあまり魅力的に描かれていない。ピーターがどうしてヴィッキーを好きになったのか分からなかったし、ヴィッキーは・・・彼を好きになった?主役たちの話を食うくらいの展開を見せてほしかった。

表面的なお洒落さだけが見どころの映画であるならば、レニーやユアンじゃなくても良かったはずでは・・・。
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