Movie Review 2010
◇Movie Index

ヤギと男と男と壁と('09アメリカ=イギリス)-Aug 14.2010
[STORY]
2003年アメリカ。地方紙の記者ボブ(ユアン・マクレガー)は、妻が他の男の元へ行ってしまったのをきっかけにイラク戦争の取材をしようと思いつく。そしてイラク入国のため待機していたクウェートでリン(ジョージ・クルーニー)という不思議な男と出会う。リンはかつてアメリカ軍の超能力特殊部隊に所属していたという。その部隊の隊長ビル(ジェフ・ブリッジス)からあらゆる訓練を受けてリンは才能あるエスパーとなるが、それに嫉妬したラリー(ケヴィン・スペイシー)という男に騙され、ビルは除隊させられリンもまた隊を去ったという。リンに興味を持ったボブは彼に同行させてほしいと頼む。
監督グラント・ヘスロヴ(初監督作)
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原作はジョン・ロンスンのノンフィクション『実録・アメリカ超能力部隊』
原題は『The Men Who Stare at Goats(ヤギを見つめる男)』で、邦題はお笑い芸人の千原ジュニアがCS番組の企画で付けた。

監督のヘスロヴは俳優として『ダンテズ・ピーク』などに出演。その後、ジョージ・クルーニーと映画製作会社Smoke Houseを設立し、『かけひきは、恋のはじまり』などを製作している。

出演者が豪華な割に日本での宣伝が少ないし上映館数も少ない。きっと相当つまんないんだろうなぁと思いつつも、久々にスペイシーが見られる映画だし・・・ということで見てみたけど、やっぱつまんなかった(笑)

スペイシーはこの手の話や役柄がお好みそうだから出演したんだろうけど(実際かなり楽しそうだった)あとはクルーニーのためなら、と受けたんじゃないかと邪推。じゃなきゃこんな豪華なキャストは揃わなかったんじゃないかなぁ。スティーヴン・ラングやロバート・パトリックといったTHE軍人顔の役者も出演していて、これだけのキャストがいるならもっと別の戦争映画が見たかった・・・と思ってしまうほどもったいない。ただ、ボブ役のマクレガーだけはこれはもう彼しかいない。何しろ『スターウォーズ』に出演していた人ですから、ね(見れば分かります)

コメディにしては全然笑えないし(訓練のところくらい)イラク戦争批判にしては中途半端だし皮肉も効いてない。私がアホなだけかもしれないけど何を伝えたいのか分からなかった。唯一これは!と思ったのは、イラクの市街地を移動中に警備員同士が撃ち合いを始めてしまい、市民まで巻き込んでしまうところ。実際こんなケースがたくさんあったんだろうな。そこだけはリアルに見えてゾッとした。・・・感想が短いけど、まあそんなもんです。
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ルンバ!/アイスバーグ!('08ベルギー/'05ベルギー)-Aug 11.2010
[STORY]
ブリュッセル近郊のファストフード店で働くフィオナ(フィオナ・ゴードン)は、ある晩1人で店の片付けをしている途中で冷凍室に閉じ込められてしまう。次の日発見されて助かるが、それ以来、本物の氷山を見たくてたまらなくなり、夫と子供を置いてついに1人で旅に出てしまう。夫ジュリアン(ドミニク・アベル)は彼女を連れ戻そうとするが・・・。――『アイスバーグ!』
ブリュッセル近郊の小学校でドム(ドミニク・アベル)とフィオナ(フィオナ・ゴードン)の夫婦は教師として働いていた。2人の趣味はダンスで、休みの日にはいつも踊っていた。そんなある週末、ダンス大会に出場してルンバを踊り優勝する。だが、その帰り道で交通事故に遭い、ドムは記憶喪失となり、フィオナは片足をなくしてしまう。――『ルンバ!』
監督&脚本ドミニク・アベル、フィオナ・ゴードン、ブルーノ・ロミ(『WALKING ON THE WILD SIDE』)
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本業は道化師のドミニク・アベルとフィオナ・ゴードン夫妻による、監督・脚本・主演映画。同じく道化師のブルーノ・ロミが共同監督を務めている。ロミも『ルンバ!』でパン好きの強盗、『アイスバーグ!』でパブの主人役で出演している。また、『ルンバ!』で自殺願望のある男、『アイスバーグ!』で船長を演じたフィリップ・マルツも道化師である。

実は公開前日までこの映画の存在すら知らなかった。それが金曜日の新聞の夕刊に映画の批評が載っていたのを読んで俄然興味を持ったのがきっかけだった。道化師のカップルが監督した、セリフがほとんどなく身体で面白さを表現した映画。そういう珍しい映画が大好きな私はさっそく見に行ってきた。

事前に読んだあらすじを読むとどちらの作品もコメディっぽいのだが、それなのに何故かR-18指定になってて見る前は少し不安だった。ひょっとするととんでもないバイオレンスシーンか、むちゃくちゃエロイシーンがあるのでは?と。そしたら『アイスバーグ!』にありましたよ。ボカシなしのシーンが。一言で言うと「お前は小学生か!(爆笑)」っていう感想です(いや、幼稚園児か?『クレヨンしんちゃん』みたいなネタだし)確かにこれは身体で面白さを表現してるわ。観客にも一番ウケてたし。これをボカシにしたら全く面白さが伝わらないから、それでR-18で手を打ったか。いや、一昔前ならボカシ入れたかもしれないな。それでアベルたちから抗議されてかえって話題の映画になっちゃったかもしれない。

どちらの作品も思いつかないようなところへ話が転がっていくのが新鮮だった。ベルギー映画自体、見るのは初めてだったけど、どちらかというと北欧の映画っぽいなと思った。服やインテリアの彩色がフィンランド映画みたい。そういえば間の取り方や、トボけた雰囲気を出しながら話がどんどん悲惨な方向へ進んでいく『ルンバ!』はアキ・カウリスマキ映画っぽいかも。映画としては『ルンバ!』のほうが出来がいいと思うんだけど『アイスバーグ!』のほうを先に見たせいか、フィオナが冷凍庫に閉じ込められたところからもう驚きの連続で、どうなるどうなる?と思ってたら、いつのまにか丸く収まってた(笑)不思議さとインパクトでは『アイスバーグ!』のほうが忘れがたい映画だった。

今も新しい映画を作っているみたいなので、日本で公開されるなら見続けていきたいな。
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係長 青島俊作 THE MOBILE 事件は取調室で起きている!('10日本)-Aug 10.2010
[STORY]
係長となった青島(織田裕二)は「居酒屋達磨」で同じ日の同じ夜に起きた会社員殴打事件と社長痴漢事件と中国人集団スリの3つの事件を担当することになってしまった。容疑者・被害者・目撃者それぞれ1人ずつを取調室に呼び、話を聞いていくが、彼らの言い分は曖昧だったり食い違っていたりして、なかなか全容が見えてこないのだった。そうこうするうちに容疑者の拘留期限が迫っていた――。
監督・長瀬国博 (TVドラマ『弁護士 灰島秀樹』等の監督補)
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『踊る大捜査線 THE MOVIE3』公開前の2010年6月1日よりNTTドコモの動画で無料配信されたオリジナル作品。1話が約7分の短編12話で構成されており『MOVIE3』の少し前に起きた事件を描いており、ラストは『MOVIE3』へ繋がるようになっている。劇場では1週間限定でレイトショー公開された。

私の携帯はドコモなので動画は見れるんだけど、携帯で動画を見るのがあまり好きじゃないし、動画を見ないで映画を見ても話は通じるということだったので、さっさと映画を見てしまった。でも1週間限定とはいえ劇場でやるなら見てしまおう、値段も1000円だし、と思ってネットでチケットを購入して劇場に行ってみたところ、ほぼ満席!私のような考えの人が多いのか、ドコモ以外の携帯の契約者が多いのか分からないけど、こんなに人気だとはさすがと言うべきか、いや驚いた。

「事件は取調室で起きている!」のタイトル通り、舞台はだいたい取調室の中で、たまに青島たちのデスクが出てくる程度。事件が起きた居酒屋は外観だけで店内は出てこないし、事件そのものを見せるシーンもない。青島が事件の容疑者や目撃者から証言を聞くことで事件当日に何があったのか分かっていくようになっている。だがその証言が合わないことで謎が深まっていくという展開。そこに『踊る』独特のテンポとユーモアと小ネタが挿入されている。
携帯の画面で見ることが前提なので、上半身のアップが多く動きが少ないので、長編映画だったらクドイと感じただろう。5分程度でもちょっと飽きるところがあったんだけどね(苦笑)

ただ、これを見て『THE MOVIE3』への繋がりが分かったし、映画よりも先に見ていたら、ワンさん(滝藤賢一)ほか部下たちと青島がまだきちんとコミュニケーションが取れておらず微妙な関係というのも理解できていて、より映画を楽しめたと思う。

ついでにNintendoDSのゲーム『踊る大捜査線 THE GAME 潜水艦に潜入せよ!』の感想も。
このゲームはもともと『踊る大捜査線 THE MOVIE2』のストーリーとして使われる予定だったらしいがそれがボツになり、『THE MOVIE』と『THE MOVIE2』の間に発生した事件という位置付けになった話。湾岸署内で男性が殺された事件に始まり、海上自衛隊の潜水艦に青島が潜入捜査するという大掛かりなストーリーになっている。

推理アドベンチャーのように選択肢を選んで捜査していくわけではなく、途中で挿入されるパズルなどのミニゲームを解いて進めていくもので、ぶっちゃけゲームとしたら全然面白くない(おい)でも、こちらもなぜ湾岸署が引越しをすることになったのか、新しい湾岸署のセキュリティがなぜこんなに厳重になったのか、それらの理由が分かったりするので、大ファンならばやって損はないだろう。
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借りぐらしのアリエッティ('10日本)-Aug 1.2010
[STORY]
心臓病の手術を控えた12歳の少年・翔(声:神木隆之介)は、祖母の貞子(声:竹下景子)が暮らす郊外の古い屋敷で1週間過ごすことになった。だが到着したその日、庭に何かがいるのを発見する。それは14歳の小人の少女アリエッティ(声:志田未来)だった。アリエッティは両親と屋敷の床下に家を作り、屋敷の人間が使っている日用品をほんの少しずつ借りてきて暮らしていた。そして初めてアリエッティが借りに出かけた夜、翔に姿を見られてしまう。
監督・米林宏昌(初監督作)
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原作はメアリー・ノートンの『床下の小人たち』で、宮崎駿は今回企画と脚本に回っている。
監督の米林は『ゲド戦記』で作画監督補を務め、短編アニメの演出を手がけているが、長編映画では初監督となる。また、『千と千尋の神隠し』に登場するカオナシのモデルであるという。

最近のジブリアニメは微妙なストーリー展開に不可解なラスト、そしてへったくそな声優モドキの起用と観客が求めるものとは違うものを提供し続けてきた(それでも公開されれば必ず見ちゃうこっちもこっちだけど) ただ今回は宮崎が監督でないし、新人ならば無茶苦茶なことはしないんじゃないか、ということで多少の期待を持って見てみた。

予想通り、素直なストーリーでラストも納得できるものだった。違和感のある声優もいなかったしアニメーションも美しい。けどワガママを言うようだが、これはこれで素直すぎて物足りない。一言で言うと「無難な出来」の映画だった。自分の今やれることを考えて、畳めないほど風呂敷を広げるのはやめようとセーブしてしまったのかもしれないが(ハヤオなんて畳む気がはなからないからな(笑))それでも宮崎吾朗の『ゲド』よりよっぽども良かったけどね。単にストーリーをなぞるだけじゃなくて、随所にこだわりが見えるし。特にアリエッティの父ポッド(声:三浦友和)が手馴れた様子で借りをするシーンなんて、ハヤオを彷彿とさせる細かい描写をしていて、リアリティがある。

ただやっぱりスケールは小さいし平板なんだよね。小さい人が主人公の話だから狭い範囲での話になるのは当たり前なんだけど、小さい人から見た人間世界がいかに大きいかが描かれていない。俯瞰での映像ばっかりで迫力がないのだ。これがハヤオなら、アリエッティが初めて借りをするシーンで釘の階段に足を滑らせたり、巨大な虫や鼠に遭遇して怯えたり(それをポッドが何かグッズを使って敵を撹乱させて素早く娘を逃がして「お父さんスゴイ!」と目を輝かせたりね)人間から見たらちっぽけな世界かもしれないが、その中で大冒険させまくっただろう。小さい人の小さくて慎ましやかで、でもゆったりと楽しそうな生活はなかなか上手く描けていたので、今後の課題だろうな(偉そうですまん)

ジブリもいつまでもハヤオに頼ってばかりはいられないから、新しい人がどんどん出てくるのはいいことだ。今後もハヤオの良いところを盗み(あの絵の動かし方はやはりスゴイ)良くないところはスルーして(最近の話の作り方はヒドイ)いい作品を作ってもらいたい。ジブリらしさを捨てたほうがいいという人もいるが、ディズニーアニメが誰が作っても基本のテイストが変わらないように、ジブリアニメも基本のテイストは大事にしてほしいと思う。
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ソルト('10アメリカ)-Aug 1.2010
[STORY]
北朝鮮にスパイ容疑で拘束されたイヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)は、恋人マイク(アウグスト・ディール)や同僚ウィンター(リーヴ・シュレイバー)らの尽力によって解放され、その後イヴリンとマイクは結婚する。
3年後、CIA本部にロシアから逃亡してきたという男がやってくる。尋問することになった分析官のイヴリンにその男は、アメリカ副大統領の葬儀のためにやってくるロシア大統領を暗殺する計画があることを告白。そしてその暗殺者の名はイヴリン・ソルトであると告発した。彼女はこれは罠だと訴えるが聞き入れられず、このままでは夫の命も危ないと思ったイヴリンは本部から逃亡する。
監督フィリップ・ノイス(『ボーン・コレクター』
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元々はトム・クルーズ主演で『エドウィン・A・ソルト』のタイトルで製作するはずだったのが、クルーズが降板してしまったため、主人公を女性に変更してアンジェリーナ・ジョリーが主演に決まった映画。
脚本が『リベリオン』のカート・ウィマーで、主人公ソルトのヴィジュアルが『ウルトラヴァイオレット』にちょっと似ているし、観客が騙されるタイプのストーリーだということで見てみた。

カート・ウィマーは圧倒的に強い主人公が好きだそうで、『リベリオン』のプレストンやヴァイオレットと同じく、本作のソルトも戦うとエライ強い。冒頭、北朝鮮で拷問を受けるシーンは痛々しかったが、それ以降は敵をバタバタと倒していくのでハラハラするよりスカッとしてしまった。特に追っ手から逃げる場面では、橋から落下したり爆走するトラックの荷台から荷台へ飛び移ったりとアクション満載で、もう凄すぎて笑うしかないって感じ。

そんなテンポのいいアクション満載のせいか、彼女は長い間ずっと過酷な境遇にあり、生まれた時と結婚していたほんの数年しか平穏な生活を送っていないという孤独で壮絶な人生を歩んできたわけなんだけど、そういう悲しい部分や、彼女の弱さがあまり描かれなかったのがちょっと物足りない。ベタベタしつこくする必要はないんだけど、もう少し切ない気持ちにさせてほしかった。

映画の最後で“この映画はフィクションです”と出るんだけど、わざわざ書かなくても分かるのに何で?とその時は疑問だったんだけど、よくよく考えるとこの映画とんでもない映画だった。だってこれアメリカの警備能力が低い上に、内部にはスパイがいっぱいいます、っていうお話なんだもん。そりゃ但し書きしないとダメだわ(笑)続編アリな終わり方だったけど製作されるんだろうか。今度はロシアに乗り込んで養成所を壊滅させる復讐話なら面白いかも。
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