Movie Review 2006
◇Movie Index

ローズ・イン・タイドランド('05イギリス=カナダ)-Jul 15.2006
[STORY]
『不思議の国のアリス』が大好きな10歳のジェライザ=ローズ(ジョデル・フェルランド)は、ロックシンガーのパパ(ジェフ・ブリッジス)とママ(ジェニファー・ティリー)の世話をしている。しかしある日、ママがクスリのやりすぎで死んでしまう。パパはジェライザ=ローズを連れて生まれ故郷へやってくる。パパは早速クスリでトリップしてしまったので、彼女は1人で外で遊びはじめるが・・・。
監督テリー・ギリアム(『ブラザーズ・グリム』
−◇−◇−◇−
原作はミッチ・カリンの『タイドランド』で、ギリアムのファンだったカリンが本書の帯文をギリアムに書いてもらおうと送ったところ、彼が気に入り映画化が決まったらしい。

映画に登場するパパの故郷は、私の好きな画家アンドリュー・ワイエスの『クリスティーナの世界』をイメージしたらしい。確かに風景や家がとてもよく似ていて嬉しくなったけど、内容は嬉しくなかったなー(笑)なんつーか、怖かったです。怖いというのは、この演じているジョデルちゃんがどこまで理解してこの役を演じてたのかな、と。R-15だったから子供が見たらヤバイシーンがあるんだろうと予想はついてたけど、大丈夫なのかしら?これ。ジョデルちゃんは撮影後にカウンセリングを受けたりしたのかなぁとか、そういう心配をしてしまった。

そんなわけで最初からなかなか物語に集中できず、次にパパがトリップした後ジェライザ=ローズの1人芝居みたいなのが続くのを見て、今度は「ジョデル・・・恐ろしい子!(白目)」な状態に。スゴイねこの子は。将来どんな風になるのか楽しみだけど、早熟すぎて途中でドロップアウトしそう・・・などと余計なお世話なことまで考えてしまって、さらに集中できずドツボにハマる。ダメじゃん(笑)他の人物が出てきてからようやく軌道に乗れたけど、せっかく映画を見に来てるのに自分は何バカなことばかり考えてるんだと責めたくなった。

ファンタジックなシーンがあったりクレイジーな人々が登場するが、よく見れば極めて冷静で現実を描いている作品だと思った。しょうもない両親に育てられ、友達がいないので人形の頭で遊ぶジェライザ=ローズは(本人は何の違和感もないのだろうが)傍から見れば普通じゃない生活を送っている。しかし見知らぬ土地にやってきて1人ぼっちになり、見知らぬ人と出会い、最後は普通の世界へと辿り着き、彼女の旅は終わりを告げる。ジェライザ=ローズが大事にしていた人形の頭を失くしたり壊してしまったりして、全部なくしてしまうところなんて、ちゃんと計算して演出してるのがよく分かる。

ただ、ラストの彼女を見ていると何故か不安になってしまう。おそらくマトモな大人たちに育てられ、傍から見ればマトモで幸福な生活をしているんだろう。しかしそういう生活が彼女にとって本当に幸せなのか?めちゃくちゃでも彼女らしさを失わないほうが幸せなのでは?なんて考えてしまうわけ。さらに、人形の頭がなくなっても彼女の中にはまだ人形の人格が残っていて、時々それが出てしまって大人たちを困らせ病院送りになってしまうかも・・・できるだけ早くカウンセリングを受けたほうが・・・ってハッ!私のほうがジョデル(現実)とジェライザ=ローズ(虚構)の区別がつかなくなってないか?(笑)

ま、冗談はさておき、同じ童話を素材にした作品でも『グリム』とでは本気度が違うのがよく分かる作品でした。けれどワタシ的には『ブラジル』とか『12モンキーズ』のような作品のほうがやっぱり好きだな。
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ゆれる('06日本)-Jul 13.2006
[STORY]
カメラマンの猛(オダギリジョー)は母の一周忌で帰郷する。実家は父と兄の稔(香川照之)の2人暮らしでガソリンスタンドを経営している。店は今、幼馴染の智恵子もアルバイトで働いていて、稔が智恵子のことを好きだと知りながら、猛は彼女を抱いてしまう。翌日、兄弟と智恵子の3人で渓谷へ遊びに行くが、智恵子が吊橋から落ち、橋の上には混乱する稔がいた。そして稔は自分が殺したと自白する。
監督&脚本・西川美和(『蛇イチゴ』)
−◇−◇−◇−
2006年第59回カンヌ国際映画祭・監督週間正式出品作品。

前評判がとてもいい映画だったので期待しすぎてしまったらしい。自分には心に響かない作品だった。予告で見た時には、もっとグッとくると思ってたんだけどな。

どこがどう、と説明するのが難しいんだけど・・・まず、自分は兄弟の心の動きよりも事件そのもののほうに気を取られすぎてしまったことが理由その1。本作はミステリ映画ではないから真相が明らかになることは重要ではないと分かっていても、橋で何があったか、猛がいた位置から橋が見えるのか、などを検証するシーンが挿入されているので、気にするなと言われても無理(というか、気にならないとしたらかえって映画にハマってないことになるんでは)
また、橋の上の出来事は劇中で何度かフラッシュバックするんだけど、落ちてしまうシーンでは智恵子の手を掴むが、突き落としたシーンでは手を掴む行為がない。“手を掴む”というのが重要なのに、それがないフラッシュバックに違和感があった。あれはミステリ映画じゃないとしても、アンフェアな映像なんじゃないだろうか。

そうじゃなくて、猛は稔が智恵子の手を掴むところをしっかり目撃していたのを前提にし、「落ちそうになったのを助けられなかった事故だった」のか「助けるふりをしてわざと助けなかった」のかを焦点にしたほうが良かったのでは。一見同じように見える場面だが、猛が見た場面と稔がいた場所からでは違って見えるという映像にすれば、兄の言うことを信じるのか、それとも自分の見たものを信じるのか、という“ゆれる”弟の心が表現できたのでは。人間の記憶の曖昧さや、先入観の危うさも表現できたと思うし、これなら真相が明らかにならずとも気にならなかったかもしれない。兄弟の本音が次第に剥き出しになっていくところが面白かっただけに、事件をごちゃごちゃ描きすぎたのが惜しかった。

何気ないシーンにも意味を持たせセリフなしでもその場を説明できてしまう演出は、上手いと感心してしまうところもあれば鬱陶しく感じるところもあり、法事で膳を片付ける兄を醒めた目で見る猛のシーンは、最初の兄弟の関係を一瞬で表現していて素晴らしかった。このシーンを見た時点では、この映画は期待できる!と思ったんだけどね。逆に智恵子と寝た猛が帰るまでのシーンは、セリフは少ないんだけど小道具などで演出しすぎて鬱陶しかった。そこまでしなくても分かるのに。そういう技巧に走ったところが役者の演技を殺いでしまい、胸に迫らない、グッとこなかった理由その2となった。

とはいえ、香川の演技は良かった。素朴で真面目で責任感の強い兄、なんだけど最初見た時からどこか空々しくて無理してて嫌らしさが滲み出ていて、悪い人じゃないんだろうけど・・・という人物をリアルに作り上げていた。それと比べちゃうとオダギリのほうはシーンによってバラつきがあり、特に7年後の猛は7年という歳月を通過した人に見えずいまいちだった。7年間いろいろあったんだろうなぁと感じさせる稔の顔を見てしまうと余計にね。

しかし監督2作目の人の作品にこれだけ注文つけてしまうということは、それだけ惜しいところまでよく出来ているということだ。あんまりヒドイと書く気が起こらないもんね(笑)久々にたくさん書いてしまったということは、いい映画だったのかも。
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美しい人('06アメリカ)-Jul 13.2006イイ★
[STORY]
刑務所に服役しているサンドラ(エルピディア・カリーロ)は模範囚を目指しているが、娘との面会で激昂してしまう。
ダイアナ(ロビン・ライト・ペン)はスーパーマーケットで、偶然昔の恋人ダミアンに再会する。
ホリー(リサ・ゲイ・ハミルトン)は父と喧嘩して家を出ていたが、ある日、妹と父が暮らす家へ突然現れる。
友人夫婦の家に招かれたソニア(ホリー・ハンター)と夫は、友人の目の前で喧嘩してしまう。
サマンサ(アマンダ・セイフライド)は病気で車椅子の生活になった父と、介護に疲れた母の橋渡しをしている。
元夫アンドリューの妻の葬儀に参列したローナ(エイミー・ブレナマン)は、居心地の悪さから帰ろうとするがアンドリューに呼び止められる。
サマンサの母親ルース(シシー・スペイセク)は娘の先生ヘンリーと不倫しようとモーテルへ来るが、サンドラの逮捕を目にする。
乳ガンの手術を控えるカミール(キャシー・ベイカー)は興奮して夫リチャードに怒りをぶつける。
マギー(グレン・クローズ)と娘のマリー(ダコタ・ファニング)は墓参りにやってくる。
監督&脚本ロドリゴ・ガルシア(『彼女を見ればわかること』
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エグゼクティブ・プロデューサーに『21グラム』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。2005年のロカルノ国際映画祭では最優秀作品賞のほか、最優秀主演女優賞を9人の女優たち全員が受賞した。
また、本作は1話がワンシーン・ワンカットで10分間長回しで撮影されている。

前作『彼女の恋からわかること』はいまいちだったし、またこういう映画か〜、と正直全く期待してなくて、でも見なければ後悔しそうだなと思って見に行った。やっぱり行って良かった。
前作と同じくデジカメ撮影で、なおかつワンカットのため手持ちだったのかな?映像はやはり綺麗ではないし、時々ブレるのが気になったけど、その分リアルに見えたしストーリーがどれもとても素晴らしかった。

物語を10分かけて説明するのではなく、1人の女性の人生の一部を10分間切り取ったという作品。たった10分でここまで見せることができるんだ!とまず驚いた。女性たちの過去に何があったのかはもちろん、この先どうなってしまうんだろう?というところで終わるエピソードも多く、ついその先を想像してしまう。
また前々作と同じく、あるエピソードで主役だった女性が別のエピソードで脇役として登場することもあり、さらに想像力が広がるのだ。例えばホリーのエピソードでは、彼女は情緒不安定で落ち着きがなかったが、カミールのエピソードで看護士として登場する時には落ち着いて有能で、しっかり働いている。果たしてこの時のホリーは父と会う前だったのか?それとも父と和解した後だったのか?できれば後者であって欲しいなぁ、なんて想像しながら見てしまうわけ。他にもそういう楽しみ方ができるエピソードがたくさんあり、前々作以上に奥深い作品に仕上がっていると感じた。

実は、最後のエピソードだけはちょっと変わっているのだが、私は映画を見たた後でも理解できていなかった。家に帰って公式ページを見て初めて気が付いたのだ。それまでの作品がリアルに見えるものばかりだったので、これも同じだと思って見ていたせいかもしれないと言い訳しつつ、単に理解力がなかっただけですね(泣)
(ここからネタバレ)私はこのお墓が娘マリーのではなく、夫だった人のだとずっと思ってたわけ。最後マギー1人が帰っていくシーンがあるけど、娘は先に走ってっちゃったんだなーって。バカですね。よく考えてみれば、夫の墓なら娘だって分かってたはず。それに最初この2人を見た時、祖母と孫だと思ってたのよ。つまり娘はあの年で死んでしまい、マギーだけが年を取ったということなのだ。あーん、私のバカバカ。しかも1人だけで墓参りに来ていたってことは、マギーはたぶん娘を亡くしてから夫と別れたんだろうね・・・(指輪もしてなかったし)(ここまで)
このエピソードだけ、記憶を消してもう一度新鮮な気持ちで見たいわー。また同じ過ちを犯しそうだけど(笑)これから見る方はご注意下さい。ただ、公式ページを先に読んでしまうと面白くないかも。
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M:i:III('06アメリカ)-Jul 1.2006
[STORY]
スパイ組織IMFのエージェントだったイーサン・ハント(トム・クルーズ)は現役を引退し教官となり、ジュリア(ミシェル・モナハン)という女性と出会い婚約する。しかし、教え子が捜査中に捕らえられているとの知らせを聞いて、復帰を決意。しかしこれには闇ブローカーのディヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)が絡んでおり、イーサンはおろかジュリアも危険にさらされてしまう。
監督J・J・エイブラムス(TVドラマ『LOST』など)
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『ミッション:インポッシブル(1996年)』『M:I-2(2000年)』に続くシリーズ3作目。 トム君の私生活を反映したかのようなラストで、これでシリーズ終了してもいいでしょう、という感じだったけどパート4はあるのか?!(あったとしたらまた5、6年後?ってトム君50歳になっちゃうよ)

パート2があまりにも“別物”だったせいか、本作は原点に戻ったみたい。ファーストシーンがいきなりイーサンの大ピンチで、そこから時間を戻して本編が始まるのがまず良い。そして教え子を救うミッションと、バチカンでディヴィアンをハメるミッションでのスパイアイテム使いとチームワークの良さに、ワクワクしながら楽しんだ。やっぱりスパイ大作戦はこうでなくちゃ。

チームの中にはあのジョナサン・リース・マイヤーズもいて、驚いたことに彼がすごくカワイイのだ。あのジョナサン・リース・マイヤーズがだ!(笑)今までの彼からしたらありえない(私の中で)のだが、トム君主演のハリウッド作品の脇役となると可愛くなっちゃうのかしらね。一番下っ端で、まだ大きな仕事を任せてもらえず不貞腐れ気味の坊やという、お決まりのキャラクターに普通にハマっていました・・・あえて注目しないと目立たない役だったけど。でも普通はもう少し若い子がやらないかな?こういう役って。

その後、上海に行ってからははっきり言ってグダグダ。肝心のミッションの一番大事なところが省かれていたし、ファーストシーンの大ピンチの続きも「なにこれ?」と目が点になる内容。ドンデン返しで驚かせるのはいいけど、そこまでする必要あったの?とツッコミを入れたくなったし、フィリップ・シーモア・ホフマン好きの自分にとっては彼のワルっぷりが薄まってしまったようで残念だった。トム君映画に多くを求めてはいけないと分かってるんだけど・・・。まぁフィリップ・シーモア・ホフマンもトム君と共演したからオスカー受賞できたわけだからいいか(それは違)
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ウルトラヴァイオレット('06アメリカ)-Jun 24.2006
[STORY]
近未来。新種のウィルスが発見され、感染した人間は超人的な能力を持つようになった。彼らを恐れた政府は“ファージ”と呼び、彼らを絶滅させる作戦を決行する。ファージたちは地下組織を結成し、政府が開発したという最終兵器を奪い取ろうと殺し屋のヴァイオレット(ミラ・ジョヴォヴィッチ)を研究所に送り込む。彼女はかつて感染した夫と子供を殺され、政府に復讐しようと誓っていた。しかし奪った兵器が9歳の少年と知り彼を殺せなくなってしまった。そして政府と組織の両方から追われる立場となってしまう。
監督&脚本カート・ウィマー(『リベリオン』
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原作はアメコミ・・・ではなくカート・ウィマーのオリジナルだそう。オープニングでコミックの映像が次々と出てくるので騙されてしまった。日本版みたいな画もあったし、ヴァイオレットが『攻殻機動隊』の草薙素子に似てるのもありました。

アメリカでの評判があまり良くなかったようなので期待しすぎちゃいけないと思いつつも、あの『リベリオン』のガン=カタみたいなアクションが再び!と思うとやっぱりワクワクしちゃうわけで、ヴァイオレットが最終兵器を奪うところまでは面白かった。ミラはこういう役をやるために生まれてきたような顔とスタイルでうっとりしてしまう。アメコミの絵から抜け出てきたみたい。これで巨乳なら完璧なんだが(笑)でも動きは思ったよりも良くなかったな。足を開いたまま膝を折って銃を撃つ時の動きなんてもっさりしててキレがなく、あれれ?という感じ。コスチューム重視で動きにくかったのかなぁ。

ストーリーも『リベリオン』とほぼ同じなんだけど話がちょっと分かりにくく、人間対“ファージ”(ヴァンパイア)の戦いという構図も古いと思った。でも前作と同じくラブシーンはゼロなんだけど、ほのかに愛を描くところがやっぱりいいな。“ファージ”の研究をしているガース(ウィリアム・フィクトナー)のヴァイオレットへの愛が切なかった。逆に軸である『グロリア』をベースにしたというヴァイオレットと少年のやりとりにはあまり感動できなかったな。公園のシーンは良かったけどね。

面白いと思ったのは、ブラック・シノワという集団が出てくるんだけど、彼らは政府側でもファージ側でもない立場の組織で、その都度自分たちに利のあるほうを選んで生き延びてきたようだ。さすが中国人は逞しい。未来の話であってもじゅうぶん想像がつくからおそろしい(笑)

次回はまたガン=カタが見たいけど『リベリオン』はあれで完結してる話なので、無理に広げようとするとおかしな作品になりそう。ガン=カタ誕生の話とか、そっちに広げたほうが面白いものができそうだ。
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