Movie Review 2005
◇Movie Index

ポビーとディンガン('05イギリス=オーストラリア)-Nov 26.2005
[STORY]
オパール採掘を夢見てオーストラリアの田舎町にやってきたウィリアムソン一家。しかし家族にはいま悩みがあった。それは9歳の娘ケリーアン(サファイア・ボイス)がポビーとディンガンという空想の友達とばかり遊んでいること。そんなある時、ポビーとディンガンがいなくなったとケリーアンが騒ぎ出し、心配のあまり病気になってしまった。そこで11歳の兄アシュモル(クリスチャン・ベイヤース)は妹のためにポビーとディンガンを探しはじめる。
監督ピーター・カッタネオ(『ラッキー・ブレイク』
−◇−◇−◇−
原作はベン・ライスの同名小説で、映画では製作総指揮と脚本も担当した。

最後にジーンとはきたけど、全体的にピリッとした演出がなく印象に残るシーンのない作品だった。子役の演技も思ったほど良くなくて(初出演にしては立派だが)可愛らしさだけで引っ張る力もなかった。それにポビーとディンガンについて、結局は大人目線での描き方しかしていないと感じた。上から見下ろしてる嫌な感じはではないんだけど、子供の遊びを大人たちがバカにせず、きちんと向き合って対処しました、に見えた。信じてなかった大人たちもビックリするような、もっとミラクルな話にしちゃいけなかったのかなぁ。原作を読んでないので何とも言えないが・・・。

――と気になったので、パラパラとだけど読んでみました。
小説はアシュモルの視点で書かれた話で、いなくなったポビーとディンガンを町のみんなも探してあげたりするのね。小説というより童話みたいだったけど、そもそもポビーとディンガンという“見えない友達”の話だからね。一方、映画はアシュモル中心に描いてはいるけど彼の視点には立っていないし現実的なストーリー展開だ。そのくせアシュモルが見つけるオパールがしっかり磨かれたものだったのに萎える(原作では磨く前の原石なのに)原作と同じにしろとは言わないけど、原作の良さを損ねてしまったらイカンなぁ。

だけど映画もいいところはあった。 (ここからネタバレ)原作ではケリーアンは死んでしまったが、映画はケリーアンがアシュモルにお礼を言うところで終わっていて、私は原作を読むまでは彼女が気持ちの踏ん切りがついて病気が治るんだと思ってた。製作者たちも最後をどうするか迷ったかもしれない。いや、ひょっとしたら原作者が小説を書く時点で迷ったことだったのかも。だから映画ではもう1つの結末にしたのでは?なんて感じました。原作では死んでしまっても納得できる書き方だったけど、映画でこの通りだったらものすごくガッカリしたに違いない。だからあそこで終わってくれてよかった。(ここまで)

『フル・モンティ』の監督だから面白いに違いないって期待して見に行った。だからソコソコの出来でもガッカリ度は高い。次回作に期待だ。
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イン・ハー・シューズ('05アメリカ)-Nov 23.2005イイ★
[STORY]
抜群のプロポーションと美貌を武器に生きてきたマギー(キャメロン・ディアス)は学歴もなく定職もない。一方、姉のローズ(トニ・コレット)は弁護士だが容姿にコンプレックスがあり、派手なメイクや服には挑戦できないが靴をコレクションするのが趣味。そんなある時、マギーは実家を追い出されてローズのところに転がり込む。恋人ができたばかりのローズは邪魔されたくないと思いながらも妹を受け入れるが、恋人がマギーと寝ているところを目撃してしまい、彼女を叩き出す。行くあてのないマギーは祖母エマ(シャーリー・マクレーン)のいるフロリダへ向かう。
監督カーティス・ハンソン(『8Mile』
−◇−◇−◇−
原作はジェニファー・ウェイナーの同名小説。製作にリドリー・スコット、製作総指揮にトニー・スコット(スコット・フリー・プロダクションズという兄弟の会社がこの映画を製作している)

自分も姉の立場なので(下は弟だけど)最初は姉ローズの気持ちに共感しマギーの奔放さに腹が立ったが、マギーが学習障害のために働くのが困難だったり続かなかったりしていることが分かるにつれて、彼女の苛立ちや淋しさも分かるようになった。そんなマギーが病院で元大学教授と出会い、成長していくところがとてもいい。本作は全体的に上手い脚本だけど、特に教授との会話は素晴らしい。マギーが本を「読むのが遅いの」と言えば、教授は「私は聞くのが遅いんだ」と言って最後まできっちり読ませる。そして褒めて自信をつけさせていくところに感動し、ボロボロ泣きました。いい人に出会えてよかったね。
また祖母エラから姉妹の母親の死について聞くシーンでは、母が2人をとても愛していたこと、そして母親が亡くなってからは2人が支え合って生きてきたということを互いに再確認する。ここも良かった。

でも女性の描写はすごく丁寧なのに、男性の人物設定は安易というか甘いと感じた。傷ついたローズにすかさずサイモン(マーク・フォイアスタイン)みたいな男が彼女を癒してくれるというのは出来すぎじゃないかしら。見た目はマニアっぽい風変わりな人だったからまだ良かったけど(寿司屋で割り箸のケバケバをしごいているのがものすごく怪しかった!)これがゴージャスなイケメン(笑)だったらウソ臭くて見てられなかったかもしれない。エラに恋するルイスもソツがなくて感じが良すぎる。老女たちは強烈なのに。
それと上に書いた母親の死について話すシーンでは父親のことが全く出てこなかったのが気になった。いくら父が再婚してるとはいえ娘たちのことはちゃんと愛してるわけだし、父と娘もちゃんと話し合ってほしかったな。エラと父の和解だけでは物足りなかった。

と不満もあるけど、最後までうるうるさせられ、前向きな気持ちになれる結末のいい映画だった。何度見ても良さそう。
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マダムと奇人と殺人と('04フランス=ベルギー=ルクセンブルク)-Nov 19.2005
[STORY]
ベルギーのブリュッセル。墓地で女性の死体が次々と発見される事件が起き、レオン警視(ミシェル・ブラン)が捜査を始めるが一向に進展しない。そんなある時タレ込み電話があり、被害者の女性たちはみな下宿付きのビストロ“突然死”の宿泊客だったと教えられる。“突然死”の従業員や客は店の評判を気にして喋ろうとしなかったが、オカマのイルマ(ディディエ・ブフレドン)が昔つきあっていた女性との間に生まれた娘が行方不明になり、同じ事件ではないかと警視に相談する。
監督&脚本ナディーヌ・モンフィス(長編監督初)
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原作はモンフィスの小説「レオン警視」シリーズの中の『MADAME EDOUARD(マダム・エドワール)』で、彼女は他に30作以上も小説を発表している人気作家でもあるそうだ。またテクニカルコーディネートにジャン=ピエール・ジュネが参加している。

出てくる人物がみな強烈で、その凄さばかりばかりを描写しまくって事件の話の進みが遅いので、ミステリーといってもバカミステリとかメタ・ミステリな映画で、犯人が登場しなかったり事件が解決しないまま終わってしまうのではと覚悟しながら見た。でもちゃんと犯人は出てきたし、動機も納得できるものだったのでホッとした。といっても出てきた犯人を見て「伏線張ってたっけ?」という感じだったが(笑)

殺された女性たちの死体が画家の墓のところで見つかったり、彼女たちがみな美術を専攻しているという共通点が見つかったりと、この殺人は美術に関係する事件だという事実が浮かび上がってくる。同時に、ベルギーの画家ルネ・マグリットの描いた作品によく似た絵画が店に出てきたり、彼がよく描いた帽子を被った男にそっくりな男が劇中に何度も登場する。遊びというかオマージュのつもりだったんでしょうが、実はワタクシ、この男が犯人なんだとずっと思っておりました(笑)私だけかしら。ひょっとすると観客がそう思い込むように騙すように作られた部分もあったのでは?(なんてね)勘のいい人はすぐにマグリットだと気付いたんだろうなぁ。

ストーリーの中心は殺人事件だけど、イルマと娘マリーのこともしっかり描かれるんだと思ってた。それなのに「え、こんだけ?」と驚くくらいあっさり終了。父親がオカマになっていたということを知って衝撃を受けたり拒否したりとかそういうシーンは一切なし。普通に受け入れたようで友人に父親を紹介してたし、ひょっとすると一番の変わり者はマリーなのかも(笑)
本当はマリーが泣いたり拒んだりするシーンも撮影したけど湿っぽいのは作品に合わないと判断してカットしたのかもしれない。そうだとしたら正しい選択だけど、カットしすぎたと思う。ま、これは想像ですけどね。

エンドクレジット後にオマケ映像あり。見そびれても問題はないけど、ある登場人物のサービスショットになっています(笑)
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ソウ2('05アメリカ)-Nov 6.2005
[STORY]
刑事エリック(ドニー・ウォールバーグ)の情報屋だった男が殺された。犯人は世間を騒がせているジグソウの仕業だった。現場のヒントからジグソウのアジトを突き止めたエリックだったが、捕まったジグソウから新たなゲームを提示される。それはエリックの息子ダニエルと7人の男女が館に閉じ込められていて、2時間以内にゲームに勝たないと毒ガスで死んでしまうというものだった。
監督ダーレン・リン・バウズマン(本作でメジャーデビュー)
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『ソウ』の続編だが、もともとは監督のバウズマンは自分が執筆した『ソウ』とは関係ないオリジナル脚本で、彼が『ソウ』のカメラマンに撮影してもらいたいと脚本を見せたところ、カメラマンはその脚本に圧倒され『ソウ』のプロデューサーに見せた。するとプロデューサーがこれは『ソウ2』になる!ということで1作目の脚本家リー・ワネルとともに脚本をリライトし本作が完成した。1作目の監督だったジェームズ・ワンは今回は製作総指揮を担当している。

前作より登場人物や場面が多くなったせいか、まとまりのない部分も目立つけどパート2にしては出来がいいし、パート1より緊張感があって疲れました。8人が閉じ込められているシーンはもちろんだけど、ジグソウのアジトも何が仕掛けられているか分からない恐怖があって気を抜くヒマがなかった。それに文字通り出血大サービスで残虐シーンに眉間のシワが寄りまくって、終わった後に頭が痛くなってしまった。

パート1のオチには正直「うっそ〜ん!(笑)」となってしまったので、今回のオチ(ジグソウと話をしていれば息子に会えた)のほうが「うわ、やられたー!」と素直に脱帽。ちゃんとジグソウは言ってたんだよね。あまりにも簡単すぎてガックリきてしまった。もうバカバカー!見終わった後に“短気は損気”という言葉が浮かびました。
不満だったのはそのあまりにも“短気は損気”なところ。閉じ込められた8人にしてもエリックにしても、もう少し冷静に考えるシーンを作ってほしかった。彼らがキレて話をストップさせたりグチャグチャにすることで脚本のマズイところを誤魔化しているように見えたんだよね。パート1の良かったところは閉じ込められた2人がちゃんと協力しあってたところだったので、本作の仲間割れな展開を見て安直だなぁと思ってしまった。どうでもいいけどエリックのキレ方はラッセル・クロウみたいでした(笑)

さて、製作が予定されているパート3について予想してみる。
(ネタバレ)パート2は2つのゲームに2人の犯人がいた。となるとパート3は3つのゲームに犯人が3人ということになるんじゃないだろうか。ジョン、アマンダ、そして3人目はパート1のゴードン。情報屋マイケルの目の手術をしたのはおそらくゴードンだろう。彼もまたジョンに心酔し3人目のジグソウとしてゲームを仕掛ける・・・と見せかけてジョンに復讐するようなドンデン返しなオチが用意されていたら、予想通りでも嬉しいかも。(ここまで)何にしてもパート3までで終わってほしいな。ダラダラ続けてほしくはない。
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ブラザーズ・グリム('05アメリカ)-Nov 3.2005
[STORY]
19世紀フランス統治下のドイツ。ウィル(マット・デイモン)とジェイコブ(ヒース・レジャー)のグリム兄弟は、魔物を退治しては賞金を稼いでいた。しかしそれは兄弟と仲間が仕組んだ芝居だったのだ。それに気付いたフランスの将軍ドゥラトンブ(ジョナサン・プライス)は、2人を捕らえて処刑されたくなければマルバデンの森で起きている少女失踪事件を解決せよと命じる。
監督テリー・ギリアム(『ラスベガスをやっつけろ』
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グリム兄弟の伝記映画・・・ではなく、グリム童話誕生秘話(と言っていいのか?)を強引に絡ませたCGたっぷりのアクションアドベンチャー。“この物語はフィクションである”ということをハッキリさせるためか、実際のグリム兄弟とは兄と弟の名前が逆になっている(実際は兄がジェイコブで弟がウィル)

あんまり期待してなかったけど、やっぱりあんまり面白くなかった。設定は面白いしこういう話は好きなんだけどね。
ドイツ各地で知識を生かし魔物を退治する・・・と思いきや、実は魔物をネタにしてお金を稼ぐ詐欺兄弟という設定。そんな2人が本物の魔物退治を命じられてしまうというストーリー。ところどころでグリム童話の「赤ずきん」「シンデラレラ」「ヘンゼルとグレーテル」などのモチーフも使われる。
役者だってジョナサン・プライスが出てるのが嬉しいし、ピーター・ストーメアがイタリア訛りの英語(『アルマゲドン』ではロシア訛りだった)を喋り芸達者ぶりを見せてくれている。モニカ・ベルッチも美しい。主役の2人だって、超現実的だった兄が本物の魔力を見て信じるようになったり(カエルのシーンが好き)もともと信じていた弟は本物に大興奮したりして可愛らしい。

だけどその役者たちの会話シーンは演技が邪魔し合い、テンポも悪くなってストレスを感じてしまったし、少女失踪事件もまとまりのなさに疲れてしまった。少しずつ事件の全貌が明らかになるんじゃなくて、ドーンと塔が立っていて、狼がワーッと襲ってきて虫がドバーッと出たり大雑把。時々出てくる童話モチーフは事件の解決に繋がらない単なる画にすぎないところにもがっかり(むしろ童話の残酷な部分を出してくるんじゃないかと期待してたのに)森か村のシーンばかりで意外と変化が少ないのも単調で面白くない理由だと思った。

ひょっとしたら、たくさんシーンを撮ったけど2時間以内にまとめるためにカットしまくった結果かもしれない!・・・と、ギリアムは好きなので良いように解釈してみる。
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