Movie Review 2008
◇Movie Index

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!('07イギリス=フランス)-Jul 13.2008
[STORY]
ロンドンで優秀な警察官として働くニコラス・エンジェル(サイモン・ペグ)だったが、署内で反感を買い、田舎町サンドフォードの警察署に左遷されてしまう。さっそく初日から町の住人たちを逮捕しまくるが、その中の1人ダニー(ニック・フロスト)は警察官だった。2人は無理矢理コンビを組まされ、毎日パトロールに出ることに。そんな中、町の住人たちの不審な死が相次ぐ。おかしいと思ったニコラスたちは独自に捜査に乗り出す。
監督&脚本エドガー・ライト(『ショーン・オブ・ザ・デッド』)
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タイトルの“ファズ(Fuzz)”とは警察官の俗語のこと。主演のサイモン・ペグは監督とともに本作の脚本を手がけている。

日本では公開が危ぶまれた作品だが、ファンの有志が署名運動をして劇場公開を実現させた作品。それは良かったんだけどサブタイトルの『俺たち』って・・・全く関係ない映画なのに勝手にシリーズ化でしょうか(笑)まぁ『俺たちフィギュアスケーター』とちょっと似たところがなくもないんだけど、でもああいうクドい笑いの取り方はしないし能天気でもない。ちょっと毒を含んでいるし、かなり真面目に作ってると感じた。だからおかしくて笑いが止まらない、というんじゃないのよね。そこはちょっと想像とは違っちゃった。署名活動になるほどの映画って・・・!という妙な期待をしちゃったせいでもあるが。でもアクションシーンは最初バカにしてたけど思ったよりも迫力があって驚いた。カメラワークが雑なところがかえっていい味が出ていて、私はそこが好きになった。

出演者は豪華というのは知っていたけど、こんな役を(ゴメン!)楽しそうに演じるなんて!とこちらも驚いた。オスカー受賞のジム・ブロードベント、4代目ジェームズ・ボンドのティモシー・ダルトン、タコ海賊のビル・ナイ、そしてケイト・ブランシェットにピーター・ジャクソンもカメオ出演している(PJは私は分かりませんでした)特にダルトンには本当にびっくり。いつのまにかどっしりした見た目にも引いてしまったが、最後は見ちゃいけないものを見ちゃったような気分になった(あぁ)『ロケッティア』の悪役とかけっこう好きだったのになぁ(あぁ)

それはさておき、ゾンビ映画ってあまり得意ではないんだけど『ショーン・オブ・ザ・デッド』も早急に見なくては!と思わせてくれた映画だった。
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告発のとき('07アメリカ)-Jul 5.2008
[STORY]
2004年。ハンク(トミー・リー・ジョーンズ)のもとに、息子マイクが所属するアメリカ軍から電話が入る。イラクから帰還したマイクが休暇から戻らないというのだ。ハンクは息子の行方を捜すために基地へ向かう。同じ隊にいた仲間たちは心当たりがないらしく、軍警察のカークランダー(ジェイソン・パトリック)は情報を教えてくれない。ハンクも軍警察にいたから内部事情は分かる。そこで彼は地元警察に相談するが、女性刑事のエミリー(シャーリーズ・セロン)から軍警察の仕事だと断られてしまう。そんな時、マイクが焼死体が発見されたという知らせが届く。
監督ポール・ハギス(『クラッシュ』
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実話を元にしたという作品で原題は『In the Valley of ELah(エラの谷)』エラの谷とは旧約聖書でダビデ王がゴリアテを倒した場所。劇中では、ハンクがエミリーの息子デイヴィッドに、名前の由来となったダビデ王の物語を聞かせている。
日本ではエラの谷というタイトルじゃピンとこないのは分かるので変えるのは構わないけど、タイトルに『告発』がつく映画はけっこうあるし、印象に残りにくいタイトルになっちゃったなぁと思った。私もタイトル見て「何だっけこれ?」と思っちゃったし(笑)この監督の前作でも同じことを書いたけど、これは偶然か?(笑)
トミー・リー・ジョーンズが第80回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされた。

やっぱりポール・ハギスはいい脚本を書く人だと思った。『クラッシュ』ももちろんだけど『父親たちの星条旗』もよかったし。本作も殺人事件を軸に、そこから時間を前後させながら真実を浮かび上がらせていく。そして完全な善人がいないというのも特徴かな。だからリアルだし共感できるんだけど。ちょっとネタバレになるかもだけど、私はマイクがアメリカ軍の公表できない秘密を知ってしまったせいで殺されてしまい、ハンクが代わりに“告発”する映画だと予想していた。つまりマイクやハンクは正義を貫くキャラクターなのかと思っちゃってたのね。その時はハギス脚本だということを忘れて“アメリカ映画”として考えてたから。でも実際は全然違った。ストーリーは重たかったけど、いい意味で裏切られた。

マイクが失踪したという連絡がハンクに入るところから物語は始まるが、マイクがイラクで使っていた携帯電話の動画をハンクが見ていくことで、イラクで何があったのかが徐々に明らかになる構成になっている。戦闘中にこんなに携帯って使えるかなぁ?という疑問もなくはなかったけど、最初は意味が理解できなかった会話や映像が後になって「こういうことだったのか」と分かるところが特に上手いと思った。マイクの悪口やあだ名も伏線になってたわけね。映像が粗かったので流し見てたけどもっと集中して見ておけばよかったな。

かつて軍警察に所属し、息子2人とも軍人となったハンク。シーツの整え方や服のシワの伸ばし方など、軍人時代に叩き込まれた習慣をしつこいほどに観客に見せることで、彼のアメリカに対する愛国心と忠誠心が伝わってくる。だが、息子を亡くして日を追うごとにシーツは乱れ、最後はその愛国心が揺らいでしまう。ハンクのその姿勢がマイクを死に至らしめたとも言えるからだ。特にハンクとマイクの電話のシーンは胸が痛くなってしまった。自分がもし親だったら同じように言ってしまいそうだ・・・。

事件が軍警察から再び地元警察に戻ってくるところや、犯人が自供するところはちょっともたついてて演出としてあまり上手くないと感じた。だからマイクが殺された理由を知っても「んん?」となったし、なぜ40箇所以上も刺されたのかについては最後まで分からないまま。そのあたり、もうちょっと犯人側のほうも掘り下げて描いてくれたら良かったのにと思った。

現在のアメリカの状況、抱える問題や苦悩、それらを一方的に批判するのではなく、どの立場の人間が見てもどこか共感できる箇所を作り、なおかつサスペンスっぽく仕上げたところに凄さを感じた。
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インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国('08アメリカ)-Jun 29.2008
[STORY]
1957年アメリカ。女諜報員イリーナ・スパルコ(ケイト・ブランシェット)率いるソ連の工作員が米軍基地を襲撃する。彼らは宇宙の神秘を解き明かす力を秘めているというクリスタル・スカルを探し求めていたのだ。そしてスパルコは発掘中のインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)を捕え、クリスタル・スカルを探すよう命じる。だがインディはスキを見て逃げ出し、考古学教授として赴任している大学へと舞い戻る。すると彼の前にマット(シャイア・ラブーフ)という青年が現れ、クリスタル・スカルに関する手紙を見せるのだった。
監督スティーヴン・スピルバーグ(『宇宙戦争』
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シリーズ4作目。3作目の『最後の聖戦』から19年後の物語で、第2次世界大戦後となり敵はナチスからソ連になった。1作目『失われたアーク』に登場したマリオン(カレン・アレン)が再び登場。過去のシリーズを見てなくても大丈夫だけど、1作目と3作目は見ておいたほうがいいだろう。

パラマウントのマークから実写へ変わるところでまず大喜びし、フェドーラ帽を見せ、インディの影を見せ、そして本人登場!いつもの音楽も心地良く、とにかくファンを喜ばせようというサービスたっぷりの映画だった。過去作品を絡めた小ネタもたくさん仕込んであるようで、それを探すために見ちゃう人もいるだろう。私は復習しなかったので全然分からなかったけど。

それにしても『ナショナル・トレジャー』とか『ハムナプトラ』とか、古代遺跡が出てくる作品が後からいろいろ出てきたけれど、やっぱり本シリーズとはちょっと違うのよね。セットの作り方が上手いのか、撮り方が上手いのか、他の作品みたいなニセモノっぽさをさほど感じさせない。さすがにスカルさんたちはアレだったけど、階段がなくなっていってしまうところは本気でドキドキしてしまい、後から自分で「映画なのに〜」と苦笑いしてしまったほど。逆に車で滝を下るところは「ディズニーの新しいアトラクションになるなぁこれ」と冷静に見てしまったのだが(笑)

ハリソン・フォードは、見てるこっちが65歳ということを意識してしまっているせいか、アクションシーンを見るたびに別の意味でハラハラしたり(笑)全盛期よりはキレがないかなーなんて思ってしまったりと、ちょっと先入観が強すぎたみたい。でもやっぱりこのシリーズは彼じゃないとダメ。ラブーフを見て、悪いけど特にそう思った。ラストシーンで「まさか今後はコイツが?!」となったが、そうじゃないことをアピールしてくれて本当によかった。私は実はこのシーンが一番好きです(笑)

1つ気になったのは、核実験のところ。アメリカ人ってやっぱり核兵器について簡単に考えすぎだと思う。いくら映画でもそんなわけあるかーい!以前『ブロークン・アロー』を見た時も同じように思って、あの時はムカッときたけど今回はただ呆然。あれ絶対被爆してるって。なんかやだなぁ・・・。
あと個人的に虫がたくさん出てくるところは本当にダメだった。夢に見たほどでした。喩えではなくマジで!!映画を見て2日後、家に虫がたくさん湧いてきちゃって一生懸命掃除機で吸い取ろうとするけど追いつかないという怖ろしい夢でした。『キング・コング』の時もそうだったけど、虫だけはカンベンして下さい(泣)
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西の魔女が死んだ('08日本)-Jun 21.2008
[STORY]
まい(高橋真悠)は中学生になって1ヵ月で登校拒否になってしまう。困ったママ(りょう)は山で暮らすおばあちゃん(サチ・パーカー)にまいを預けることにする。おばあちゃんはイギリス人で、日本人の夫に先立たれてからは一人暮らしをしている。まいは、そんなおばあちゃんから不思議な話を聞く。おばあちゃんの家系は代々魔女で、おばあちゃんのおばあちゃんは不思議な力で人を救ったこともあるという。自分にもその血が流れていると教えられたまいは、魔女修行を始める。
監督&脚本・長崎俊一(『死国』
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原作は梨木香歩の同名小説。おばあちゃんを演じたサチ・パーカーはシャーリー・マクレーンの娘で、日本人の血は入っていないが本名はサチコ。親日家の両親が名付け、2歳から12歳まで日本に住んでいたという。

原作は知っていたけど未読で、どういうストーリーなのかも知らなかったんだけど、予告でターシャ・テューダー的な田舎暮らしのシーンと、おばあちゃんの風貌を見て惹かれてしまった。何度かうるうるっときたけど、おそらく原作が素晴らしく、原作を読んだほうが感動するのだろうと思った(なのでこれから読んで、内容の感想はそっちで書こうかと)やっぱりこういうちょっと童話のような話を実写で見ると、どうしてもわざとらしく見えてしまうところがあるんだよね。フレンドリーな郵便屋さん(高橋克実)とか物分かりのいいお父さん(大森南朋)とか、見ててこそばゆくなっちゃって。だからおばあちゃんを日本人女優がイギリス人に見えるようなメイクをして演じなくて本当に良かったと思った。彼女だからあの格好であの家に住んでても違和感がないのだ。いいキャスティングだった。
それと比べちゃうと、まい役の子がどうみても日本人なのがね。ハーフやクォーターの子を起用しちゃうと、扱いにくくて学校をドロップアウトした子という雰囲気が出にくいのかもしれないが。ま、父方のおじいちゃんが麿赤兒だからそっちの血のほうが濃かったということにしときましょう(それ違うから)

おばあちゃんの家と庭は予告で見た通りよかったけど、森や野の風景は期待していたより美しく見えなかった。野いちご畑にしても山道にしても。特にまいのお気に入りの場所は「ここのどこが?」と突っ込みを入れたくなってしまった。どこがどうよかったのだろう。ただ、ぼわーっとした広場にしか見えなかったんだけど。もう少し日差しが強く、木漏れ日が降り注ぐような日なら良く見えたのかもしれないが。あとジャム作りなどももっと楽しそうに見せることができたと思う(余談だけど、いきなり煮るんじゃなくて先に砂糖をいちごにまぶしておくといいんだけどな)
こっそり書くけど、今まで監督した作品とは全然傾向が違うし、本当は自然の風景とかスローライフとか全然興味ないんだろうな・・・と感じてしまいました。
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ザ・マジックアワー('08日本)-Jun 17.2008
[STORY]
古い町並みの守加護町。ギャングのボス天塩(西田敏行)の愛人マリ(深津絵里)に手を出してしまった備後(妻夫木聡)は天塩に捕まり殺されそうになる。何とか逃れようと備後は幻の殺し屋“デラ富樫”と知り合いだから連れてくると約束してしまった。だがそれはもちろんウソで本当はデラ富樫など知るわけもなく、探し回るが手がかりすらない。そこでニセモノを用意することを思いつく。映画監督になりすました備後は無名の役者である村田(佐藤浩市)を騙し、映画の撮影と称して彼に殺し屋“デラ富樫”を演じさせることにする。
脚本と監督・三谷幸喜(『THE 有頂天ホテル』
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タイトルの『マジックアワー』とは、太陽が沈んで完全に光がなくなる前のわずかな時間のことで、写真や映画の専門用語だそう(私は初めて知りました)

豪華キャストのそれぞれの見せ場を作ることばかりに腐心してしまった前作と比べると、今回も遊びや小ネタが多くて決して見事な脚本とは言えないが、前作よりはストーリーが重視になっていると感じた。デラ富樫を演じる村田とギャングたちの会話は三谷の真骨頂という感じだし、 昔の映画への愛も感じた。『黒い十人の女』のパロディを挿入して、市川崑が映画監督役で出演してくれたのも感激だっただろう(撮影時期を知らなかったので、私は最初そっくりさんだと思ってました)

ただ、前作は最後の最後まで引っ張ってようやく盛り上がって、テンションが高いところで終わったから、満足度は低いものの割合スッキリした気持ちで劇場を出ることができた。でも本作はちょうど解決して「ふうっ」と一息ついちゃった後でもう1つクライマックスが来てしまったので、再びテンションを上げることができず、このシーンが私には完全に蛇足に思えてしまった。個人的にあの人の正体とか全然興味なかったってのもあるが(だめじゃん)息をつかせずにそのままのテンポでバンバン見せちゃえばよかったのに。しかも期待していたよりショボくて(あれはああいうものだけど)完全に白けてしまった。あーあ、ってところでエンドクレジット。一番最後に打ち上げ失敗の花火を見せられた気分になった。

「この人またこういう役かぁ」なワンパターンキャスティングが多い三谷映画だが、今回は地味ながらイイ仕事をする役に伊吹吾郎を配したのが意外性があって面白かった。最近はTV番組『環境野郎Dチーム』で人気らしいけど、私は『水戸黄門』のイメージしかなく他の役で演技するところを見たことがなかったせいもあるが、備後の無茶な頼みをきちんとこなす鹿間という男に興味を持ってしまった。見てる途中で、鹿間がひょっとして・・・?なんて思ったこともあったし、彼のバックグラウンドを知りたくなってしまった(笑)
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