Movie Review 2005
◇Movie Index

運命じゃない人('04日本)-Jul 16.2005スバラシイ★
[STORY]
婚約を破棄した真紀(霧島れいか)は1人悲しみに暮れながらレストランでお茶を飲んでいた。サラリーマンの宮田(中村靖日)は彼女のためにマンションを購入したが、その彼女が出て行ってしまい落ち込んでいる。そんな宮田を心配した親友の神田(山中聡)は、近くにいた真紀に声を掛ける。宮田は泊まる場所がない真紀を自分のマンションへ連れてくるが、そこにあゆみ(板谷由夏)がやってくる。あゆみの身勝手さに怒った真紀は出て行ってしまい、宮田は慌てて追いかける。宮田は勇気を出して真紀に電話番号を聞く――。しかし宮田の知らないところで、ヤクザの浅井(山下規介)が神田とあゆみの行方を追っていた。
監督&脚本・内田けんじ(自主制作『WEEKEND BLUES』)
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第14回ぴあフィルムフェスティバルのスカラシップ(製作援助)作品。2005年カンヌ国際映画祭の批評家週間にてフランス作家協会賞、最優秀ヤング批評家賞、最優秀ドイツ批評家賞、鉄道賞(金のレール賞)を受賞した。

久しぶりにすっごく面白い映画を見た。すごい私好み。こんな映画が関東でたった1館しかやらないなんて何てもったいないんだろう。カンヌでウケたということだけど、これは国籍問わず楽しめると思う。ホントに良くできた映画だ。制作費にお金を掛けなくても、脚本がしっかりしていれば面白い映画が作れるんだよね。見に行ける人は絶対見てほしい。こういう映画にお金を使ってほしい。私は思わずご祝儀としてノベライズを購入してしまった。こちらは映画では知ることができない登場人物たちのバックグラウンドが分かるスグレモノ(笑)山ちゃんイイ仕事してるなぁ〜。

何しろ無駄なシーンが1つもなく、メインの登場人物たちの後ろで何かやってるのとか何かが横切ったりするのもちゃんと伏線になっている。前半で違和感があっても後半を見ると納得できて不自然じゃない。ばら撒いたものを全て丁寧に拾っていく作業を見ていくのって、何て気持ちがいいんだろう!(笑)
宮田と真紀が出会う前半は純愛物語、後半は2000万円という大金をめぐって人々が交錯するクライムサスペンスっぽい話と1本で二度楽しめる上に、後半の物語は文字通り、前半の物語の見えないところで起こっていたという驚きも味わえるのだ。すごい構成力!画面を二分割して見てみたい気もする。

見終わってからも感心することばかり。例えば(ネタバレ)宮田だけは一切ヤクザとも2000万円とも関わらずに終わる。真紀でさえお金に触っているわけで、宮田だけ違う星に住んでいるというセリフは、こういうことも意味しているのかなと思った。
浅井はニセ金の中の数万は失ったけど、神田の100万円とあゆみという稼ぐ女、そしてタダで仕事をしてくれる神田を手に入れたわけね。スゲー。
神田はあれだけ一晩がんばったにもかかわらず散々な目に遭い、今後浅井から仕事をタダで引き受けるよう脅されているわけだが、真紀がお金を持って戻ってきたのをおそらく目にするだろう。そしてニセの金だということも知るだろう。それを浅井に告げてこの件はチャラ(逆に脅しはしないでしょう)いやむしろ神田が別の仕事でヤバくなった時に助けてもらえるかもしれない。彼にもいいことがあってほしいよ。
(ここまで)

宮田役の中村靖日がまるでCGキャラみたいで(失礼)『少林サッカー』ホー・マンファイとイイ勝負だなー、と思っていたら、舞台挨拶でやっぱり監督にCGみたいと言われていた(笑)映像でもCGっぽかったけど、実物のほうがもっとCGみたいだった。それってすごくない?(←語尾を上げて読んでね)
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宇宙戦争('05アメリカ)-Jul 9.2005
[STORY]
アメリカ東部の町。レイ(トム・クルーズ)は別れた妻との間の息子ロビー(ジャスティン・チャットウィン)と娘のレイチェル(ダコタ・ファニング)を預かり、自宅で過ごしていた。すると嵐のような風が吹き、雷が何度も同じ場所に落ちた。レイが落雷のあった場所に行ってみると、地面が突如隆起して中から巨大なマシーンが現れ、人々を襲いはじめた。レイはその場から逃げ出し、子供たちを連れて別れた妻がいるボストンへ向かう。
監督スティーブン・スピルバーグ(『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
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原作はH・G・ウェルズの同名小説(読んでません)で、1953年に公開された映画のリメイク(見てません)モーガン・フリーマンがナレーションを担当している。

原作もオリジナル映画も知らないので『インデペンデンス・デイ』みたいな映画かと想像してたんだけど、アメリカNO.1な映画じゃなく(どちらかというと大阪NO.1(笑)な映画)現実と絡めた反戦映画でもなく、ただ家族を守りながら必死に逃げるというシンプルな作品だった。トム君も正義感溢れるヒーローじゃない。基本はダメ父で、最後まで子供を守り抜くけれど素晴らしい父親に成長したとは言えない微妙な感じで、いつものオーラや熱さがなくて私は良かったと思う。ただ、この家族は運が良すぎる!(笑)うまく助かりすぎ!

落雷を人々がぼうっと突っ立って眺めるシーンがまずリアルだなぁと思った。宇宙人が襲来したなんて誰も知らないわけで、だから落ちた場所にも平気で見に行くし、地面が盛り上がっても逃げ足が遅い。見てるこっちだけがハラハラして「野次馬してないで早く逃げて!」と焦ってしまう(笑)
また、全世界的にやられているんだろうけど、カメラはずっとレイたち家族だけを追い続ける。見終わってから気付いたけど、俯瞰で捉えた映像がなく、ほぼ人間の目線の位置からの映像しかなかったんじゃないかな。ズームもしないし人の目が見える範囲しか映さない。普通の映画ならトライポットからの視点で逃げ惑う人々を映しそうだし、飛行機が落ちたシーンは上から見たカットを入れそうなのに、この映画では下から見上げるシーンばかり。だから余計に人間が無力でちっぽけなものであると感じさせられる。特に印象的だったのは、踏み切りが下りて電車が通過するのを人々が呆然と見守るシーン。あれにはやられました。
TVやラジオの情報もほとんど入らず、民衆を励ます大統領の声明も流れず(笑)噂のような話しか伝わらない。こういうときに人間が知ることができる情報はこんなもんだ、ということなんだろうか。怖いな・・・。だけどどうせなら宇宙人も出さないでほしかったよ。見た目がお約束すぎるアレだし(笑)トライポットの不気味さだけで良かったのに。

出さなくても良かったのに・・・はティム・ロビンス演じるオギルビーもそう。レイと彼が対立し、ついにレイが行動を起こしてしまうシーンに説得力がない。それまでも車を勝手に盗んだりと他人を蹴散らしてでも助かろうとするシーンがあるんだから、わざわざまたそんなシーン入れなくてもいいのに。息子ロビーとの諍いもあそこまで盛り上げておきながら最後に拍子抜けさせられる。ストーリーははあくまでもレイ中心だから彼がそれまで何をしていたかは説明がなくてもいい。だけどロビーの決意の結果があれなの?せめて彼が勇敢に戦っているところにレイたちが出くわす、なら理解できるのだが。でも一番運がいいのはロビー、あんたかもしれない(笑)

ラストは賛否両論だろうけど、私はあれで構わないと思っている。それまでの展開を見ればじゅうぶん納得できる。逆に『インデペンデンス・デイ』みたいな展開になっていたら許せなかっただろうな。
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逆境ナイン('05日本)-Jul 7.2005
[STORY]
全力学園野球部のキャプテン不屈闘志(玉山鉄二)は、いきなり校長(藤岡弘、)から野球部の廃部を突きつけられる。そこで不屈は甲子園に出場すると約束するが、チームはまだ一度も勝ったことがなかった。しかも彼らには次々と逆境が襲い掛かってくる。果たして甲子園出場は実現するのか・・・!
監督・羽住英一郎(『海猿』)
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原作は島本和彦の同名漫画(読んでません)本人も決勝戦の解説者として出演している。制作は『スペース・トラベラース』なども手掛けたROBOT

予告を見て『少林サッカー』『下妻物語』みたいな作品だったらいいなぁと思って見に行ったんだけど、『少林』との共通点は出演者の顔が似てる(おデブのFWを演じたリン・ゾーソォンと、本作のキャッチャーを演じた柴田将士がソックリ!)というところ、『下妻』の共通点はジャスコが出てくるところ(しかもこちらも田舎の代名詞みたいな使われ方。三重といえばジャスコなんだけどさ)でも面白さはその2作品には及ばなかった。

どこがいけないのか考えてみたんだけど、CGを使いすぎ、しかもパッと見せることができる映像をいちいち勿体つけて見せるせいでテンポが悪くなってるんだと思った。こういうところは15秒で視聴者を画面に釘付けにさせるCM製作出身者のほうが上手いかも。また、同じようなCGが繰り返されると、最初はビックリしても慣れてしまうとやっぱり飽きる。“自業自得”と“それはそれ、これはこれ”は違う見せ方にしてほしかった。逆にCGを使ってない、砂浜で戯れる不屈とマネージャーに校長が加わるところが一番面白かった。だからCGでド派手にしなくたって、じゅうぶん面白くできるんだよね。あとファーストシーンの、校庭に草が転がっていく(西部劇でよく見るアレだ)シーンも個人的にツボ。上映期間がかぶることを前提としたのか偶然か分からないけど『スターウォーズ』や『宇宙戦争』ネタもタイムリーで笑ってしまった。

タマテツには全く期待してなかったんだけど、ものすごく下らないシーンでも迷いのない演技をしていて好感度アップ。野球部顧問を演じたココリコ田中は最初のインパクトは凄かったが、思ったより出番が少なくて残念。毎試合、偉大なる先人の言葉が何故か勝利に結びついてしまう――という展開を期待していたので物足りなかった。せっかくいいキャラクターだったのに。

でもこの手のバカバカしい映画は好きなのでまた作ってほしいな。続編でもいいぞ(でももう劇場では見ないかも←おい)
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迷宮の女('03フランス)-Jul 7.2005
[STORY]
パリで不可解な殺人事件が起こり、クロード(シルヴィー・テステュー)という女が逮捕された。しかし彼女は事件の記憶がなく、デダルやテゼ、アリアンヌといった名前の、性別も年齢も違う別の人格が現れるのだった。彼女は病気なのか、それとも嘘をついているのか?心理カウンセラーのブレナック(ランベール・ウィルソン)が彼女をカウンセリングすることになる。
監督&脚本ルネ・マンゾール(『奥サマは魔女』)
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フレンチミステリって悪いけどダメなのが多いけど(特に本格モノね)本作のような心理ミステリ、 叙述ミステリは悪くないと思う。見ていてここは作中のルールから外れてないか?とか、これはフェアじゃないのでは?という ところもあるんだけど、許せる範囲で頑張ってると思った。小説ならもっと簡単に読者をミスリードできるけど、この手の作品を 映像で見せるのは難しいよね。

構造は少し前に上映したあるアメリカ映画のフランス版という感じ。こちらを見たならそのアメリカ映画も見てほしいけど、最初から分かってるネタを見ても・・・という感じですが(笑)
というわけで見たい人だけ見て下さい→(ネタバレ)『“アイデンティティー”』(ここまで)それを見た時の感想はこちらへ。

ところどころで「おや?」と思うセリフがいくつかあるので、途中ですぐに気付く人は気付くと思う。私も片方(ネタバレ)ブレナックがクロード(ここまで)はすぐに分かった。鍵や薬のところでね。そんでもって得意気になってたんだけど、もう一方のほう(ネタバレ)マチアスもクロード(ここまで)は実は分かりませんでした。特殊な能力があるのだとばかり・・・。やっぱり騙される安上がりな自分(笑)

ただ、観客を騙すところばかり力が入りすぎてて、クロードの人格が分かれてしまった理由については意外性がなく、あまり面白くなかった。ここにも驚くような原因があればもっと印象的な作品になったと思う。でもエンドクレジットの映像は面白かったし、ウィルソンの演技も良かった。なるほど、傍から見るとこうなっていたわけか。これを見てからもう一度本編を見るとちょっと笑っちゃうかもね。

最後にもう1つネタバレ(ここから)原題は『DEDALES』ダイダロスなんだけど、邦題の『迷宮の女』って、タイトルからしてミスリードしてるんだよね。ホントは女じゃないんだから。(ここまで)なんかズルイなぁ。
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Dear フランキー('04イギリス)-Jul 2.2005
[STORY]
リジー(エミリー・モーティマー)は暴力を振るう夫から逃げるため、難聴の息子フランキー(ジャック・マケルホーン)とリジーの母とともに引越しを繰り返している。しかし真実をフランキーに告げることはできず、父親は船乗りで世界中を旅しているので会えないのだと教え、月に2度リジーは父親のフリをしてフランキーに手紙を出すのだった。そんなある時、リジーが適当に決めたはずの船が実際に町にやってくることになった。父親に会えると信じるフランキーのため、リジーは父親のフリをしてくれる男を捜しはじめる。
監督ショーナ・オーバック(長編初)
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2004年第57回カンヌ映画祭《ある視点》部門正式出品作品。

予告を見た時にはピンとこなかったんだけど、新聞や雑誌でやたらと評判がいいので見てみた。うーん、いいシーンはいっぱいあるんだけど、演出の問題なのかなぁ、心を揺さぶられるほどでもなく涙腺緩みそうになるけど泣くほどでもなく、見ながら何度となく「惜しい!」と心の中で悔しがった作品だった。プロデューサーたちは『コーリャ愛のプラハ』のような映画を作りたくて本作を製作したらしいが、あの映画でも子供がほとんど喋らず(言葉が通じなかったから)表情やしぐさで気持ちを表現してたけど、その撮り方や描写や構成がどれも素晴らしかった。本作はそれがどれも惜しかった。フランキーの演技はコーリャに負けないくらい良かったので残念でならない。

例えばリジーが適当につけた名前の船が本当に港にやってくるというところ。ここは偶然か神様のいたずらか?みたいな取っ掛かりの大事なシーンなんだからこちらをグッと引き込んでほしかったんだけど、モタモタしてて入り込みにくい。水切り遊びをやるシーンの見せ方も良くなかった。最初のシーンではバックに橋か何かの黒いものが邪魔をして投げた石がどこに落ちるのか全然見えなかったし、最後にフランキーが1人で石を投げるところもカメラの位置が悪いと思った。

でも喋るのが嫌いなフランキーが喋るシーンではグッときたし、フランキーが難聴になってしまった理由を聞いた時のジェラルド・バトラー演じる“ストレンジャー”の一瞬の表情とか、いいとこもたくさんあるのだ。町の風景や人々の服装はくすんだ色をしているけど、心の温かさは伝わるし、お年寄りから子供までが楽しめる会合(?)があるのも羨ましい。
気になるのは今後のことなのだが、リジーたちはこの地に留まるだろうけど、あっちの進展はないような・・・というかあってほしくはないなあ。あれは一時の夢のような出来事だった――であってほしいと思う。続編は作らないだろうけど。

あと余談だけど、本作のラストカットと少し前に見た『モン・アンジュ』のラストカットが同じだった。桟橋ブーム?(なんだそれ)
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