Movie Review 2002
◇Movie Index

見えない嘘('01フランス)〔公開未定〕-Jun 22.2002
[STORY]
1993年。ジャン=クロード・ロマン(ダニエル・オートゥイユ)は両親と妻子を殺して自殺しようとしたが死にきれず逮捕された。彼は18年間に渡って自分は医師であると家族や友人を騙し続け、その発覚を恐れての犯行であったという・・・。
監督ニコール・ガルシア(『ヴァンドーム広場』)
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フランス映画祭上映作品。2002年カンヌ映画祭出品。フランス国内でもまだ一般公開されておらず、日本でも公開未定。
原作はエマニュエル・カレールの『嘘をついた男』で、彼の作品はすでに映画化(本のタイトルは『冬の少年』映画の題名は『ニコラ』)されている。

最初から最後まで空気が重苦しかった。まるでジャン=クロードにかかった重圧をそのまま体験してるような感じ。だから見てる間じゅうずっと「早く終わりにして!」って思っていた。120分の映画だったけど150分くらいに感じたな(笑)ファーストシーンですでに家族は死んでいて、そこから回想するかたちになってるんだけど、終わりが見えてこなくて溜息つきたくてしょうがなかった。

自分が医師だと周りを騙していた、ということは知ってたけれど、まさか全く働かずに18年も暮らしていたとは知らなかった。医者ではないけどちゃんと働いて収入もあったと思ってたのね。それなのに(絶句)そりゃあ疲れるよね。彼はこの18年間で安眠できた日はあったんだろうか。寝てるシーンが多いんだけど、嘘がばれてしまった時のことが常に脳裏にあって、頭をからっぽにできないんだろう。なぜ彼はそんな嘘の人生を選んでしまったのか?

彼が何を考えていたのか、私は映画から見つけることはできなかったんだけど(家族を殺そうとするなんて分かりたくもなけどね)彼が嘘をつく時、嘘に思えないような言い方するのね。というか本当のことも嘘も言い方は同じ。あとで「ああ、これは嘘だったんだ」って分かるくらい自然なの(見てるうちにだんだん嘘のパターンも見えてくるけど)しかも自分が嘘をついたという自覚もなさそうだし、自分の都合のいいように記憶さえも改ざんしてる?心理学は勉強してないので分からないが、自己防衛本能というやつなんでしょうか。

映像は女性らしい繊細さと細心の注意が払われているのが感じ取れたが、事件後の関係者の証言シーンの挿入の仕方があまりよくないと思った。ちょっと分かりづらい。
ダニエル・オートゥイユはハマり役。夏に公開される『メルシィ!人生』でも目立たなくて何を考えてるのか分からない男を演じていて、演技はほぼ同じなのだけれど、これだけガラリと違った作品になるんだからスゴイ。できれば両方見比べてみてほしい。
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トロワ・ゼロ〜サッカー狂時代('02フランス)〔公開未定〕-Jun 21.2002
[STORY]
刑務所でのサッカー試合でティボールという移民がすごいプレーをした。それを見ていたマニュ(サミュエル・ル・ビアン)は出所後にエージェントになりたいと彼に申し出る。そしてマニュは元トップエージェントのコロナ(ジェラール・ランヴァン)に助けを求めるが・・・。
監督ファビアン・オンテニエンテ(『JET SET』)
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フランス映画祭上映作品。公開は今のところ未定のよう。

『少林サッカー』のようなサッカープレイを見せる映画ではなく、サッカービジネスを主に描いた作品。主役は選手ではなく選手のマネジメントするエージェントたちで、まさに舞台裏の頭脳プレイ合戦。彼らによって選手たちは駒のようにいろんなサッカーチームに移籍させられる。いや、駒というより株みたいなものかな。いかに選手を高い金額で他チームに売るかっていうのが大事で、選手たちは人間扱いされてない。選手たち自身もサッカーが楽しいからやっているのではなく、お金や地位を得るためにやっているだけ。映画はそんな状況も皮肉っている。

でもちょっと『少林サッカー』に似てるところもある。昔はエージェントとして羽振りがよかったが、ライバルのエージェントに騙されて八百長事件に巻き込まれ(そのときの試合のスコアが3-0←トロワ・ゼロ)隠居状態になってしまった男が、1人の天才選手の出現により、再びこの世界に戻ってきてライバル(演じるはジェラール・ダルモン)を出し抜くという。ね、似てるでしょ?(笑)でもさすがジェラール・ランヴァンなので出し抜き方はとってもスマート(本物もすごいカッコ良かった)。取られた3点を1点ずつ相手にお返ししていきます。
あ、もう1つ似てるところがあった。コロナの妹(『アメリ』で神経質なタバコ売りジョルジェットを演じたイザベル・ナンティ)が女子サッカーチームのキーパーをやってるんだけど、試合で彼女にボールがぶつかるシーン、この時のボールがCGなんすよ。まるであの映画を見てるような瞬間だった。

スピーディーな展開で飽きることはないけれど、早すぎてついていくのが大変だった。エージェントの仕組みとかよく分からないからね。また、コロナがライバルに仕掛ける罠がワタシ的には巧妙すぎたのか、どうなるのか全然読めなくて、ついていくのがやっとだった。ちょっと読めると面白いだろうになぁ。もう1回見ると楽しめるのかもしれない。

それにしてもフランスのスタジアムシーンは恐かった。みんな客席で発煙筒焚いてるのよ?持ち込みOKなんでしょうか。
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ぼくのパパは、きみのパパ('02フランス)〔公開未定〕-Jun 21.2002
[STORY]
妻と3人の息子と暮らすトム(セルジ・ロペス)の前に、突然昔の恋人ヴィルジニー(シルヴィー・テステュー)が現れた。彼女にはトムとの間にできた娘がいるが、借金があるため養護施設に預けられているという。そして、彼に娘を預かって欲しいと頼んできた。
監督&脚本&出演マニュエル・ポワリエ(『ニノの空』)
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フランス映画祭上映作品。公開は今のところ未定のよう。

この映画を選んだ理由はセルジ・ロペスが出演していたから。『ハリー、見知らぬ友人』で得体の知れない不気味なハリーを演じていた人が、今度はごく普通の人ということで、どんな演技をするのか気になったのだ。・・・ホントに普通のパパでした(笑)もうちょっと個性があるといいなぁとは思ったけれど、あの普通さが逆にいいのかな。ハリーの不気味さは一体どこへ?

まず冒頭に流れる歌がこの映画のテーマを表しているように思えた。詳しい歌詞は忘れちゃったんだけど、“すでに手にしているものに対しては、あるのが当たり前だから何も感じない。だからまず一度自分から奪って欲しい。そうすればもっと深く愛することができる”みたいな歌だったのね。この話はそこまで激しくはないけれど、平凡な家族生活に少々物足りなさを感じていた男が、新しい家族が増えたことで改めて家族と向き合い、日々の生活や人生そのものを楽しめるようになったというお話。

小さなエピソードの積み重ねることで少しずつストーリーが進んでいくものなので、普段スピーディーな映画を見慣れている人には少々かったるく感じるかもしれない。でも丁寧に撮られているし、喧嘩しようが酔っ払おうが包む空気が暖かいのでほのぼのさせられる。一番のほのぼのは子供だけどね。トムの息子3人の性格付けがバッチリでナイスキャスティングです(笑)長男は大人しくて、次男がきかん坊、三男がかわいらしい。まるで本当の家族みたいで良かったなあ。
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UNloved('01日本)-Jun 15.2002
[STORY]
影山光子(森口瑤子)は、市役所勤めの一人暮らし。自分に嘘をついてまで無理をしたりするのを嫌い、今の生活に満足していた。だから起業家の勝野(仲村トオル)と知り合い、一緒に暮らそうと持ちかけられても、光子はそれを断った。そして勝野とも終わった。しかしある日、同じアパートの下川(松岡俊介)と付き合うようになって初めて、光子は自分らしくいられると思った。けれど下川は光子が勝野と別れてなぜ自分と付き合うのか理解できないのだった・・・。
監督&脚本・万田邦敏(『宇宙貨物船レムナント6』)
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2001年カンヌ国際映画祭レイル・ド−ル賞及びエキュメニック新人賞受賞。脚本は監督の妻・万田珠実との共同執筆。主に男性パートを万田邦敏が、女性パートを万田珠実が担当したそうだ。

会話の妙が楽しめる邦画が好きなので(『アベック・モン・マリ』とか最近では『ハッシュ!』)これもきっとそういう映画なのだろうと期待して、また脚本を夫婦で書いたということにも興味があったので見に行ったんだけど・・・でもごめんね、見ながら「何じゃこりゃ」って思いました(あああ)

登場人物が、特に光子・勝野・下川のセリフ回しが一本調子で、演技というより、まるで台本の読み合わせを見せられているようだったからだ。わざとこういう演出なんだろうけど、見てて自分がどんどん冷めていくのが分かった。おまけにセリフも机上でこねくり回したようなものばかりでリアルじゃないし、光子の発する言葉は会話になってるようでなってない。恋人に対して自分の価値観を相手に強要する物言いに唖然。自分らしさばかりを強調し、相手の言葉なんて聞いちゃいないし、相手が何を考えているのかも考えてない。相手の反論さえ許さない。「おい、ちょっと待て」と2人の間に入りたくなるほどイライラした。忍耐力がなければ見れない、と思った。

仲村トオルもセリフ言う時に腹に力込めすぎ(最近の邦画ではめずらしくセリフが聞き取れるのはいいことだけど)劇場の音響のせいかもしれないけど、時々彼のセリフのところで声が割れるような感じさえして、こっちの腹まで響いたよ(笑)さらに川井憲次の音楽も仰々しい。この人の音楽は好きなんだけど、この映画に合ってないと思った。ホントにもう見てるだけなのに体力消耗しました(笑)

光子の、仕事に対して向上心がないところは自分とちょっと被るところがあって、なかなか痛いところ突いてくるなぁと惹き込まれそうになったけどね。あと雨が降ってるかどうか確認するのに、ベランダから手を出すシーンは良かったな。これ自分もよくやるので。結局、自分に近しいところしかいいと思わなかったっていうのがナンですな(うーむ)

最後にこれば暴言かもしれないけど、あの演技とはいえない演技で賞を取れるっていうのが何だかなぁ。日本語が分からないから(字幕で見たから)良かった、とか?(やべっ)
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銀杏のベッド('96韓国)-Jun 15.2002
[STORY]
画家のスヒョン(ハン・ソッキュ)はある日、路地裏を歩いていて空からベッドが落ちてくる夢を見た。翌日、夢で見た路地裏を歩いてみると、銀杏の木で作られたベッドが捨てられていた。何かを感じた彼はそれを家に運び込むが、それから不可解な出来事が起きはじめる。
監督&脚本カン・ジュギュ(『シュリ』
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日本でも大ヒットした『シュリ』の原点と言われる作品で、私も本作に関しては内容よりもそっち(監督と主演の名前)に惹かれて見に行った。ちなみに本作の続編は2000年の東京国際映画祭でも上映された『燃ゆる月』で、カン・ジュギュは製作総指揮。出演は『シュリ』のキム・ユンジンや『ペパーミント・キャンディー』のソル・ギョングが出演している。

ストーリーに関しては、特に目新しさはない。スヒョンが拾ったベッドには古代韓国の宮廷で起こった悲恋と関係しており、スヒョンは宮廷楽士の生まれ変わりであることが分かる。楽士とその国の姫が恋に落ちるが、姫に恋した隣国の将軍が2人の仲を引き裂き、楽士はスヒョンとして生まれ変わるが、姫と将軍はそのまま生き長らえ(生霊か?)将軍は再びスヒョンを殺そうとするのだ。そこに助けに入るのが姫!何百年もの時を越えて楽士と姫が再び廻り逢ったのだ・・・。
これだけ書くと随分ロマンチックな話だし、日本で作るならもっとベタベタで甘くなるだろう。でもこれがけっこうグロいのね(笑)特殊メイクや特撮(CGとは言えない)も駆使しているし、出血も多量(笑)しかも現在スヒョンにはちゃんと恋人もいるので、スヒョンと姫のシーンもいまいち盛り上がらない。1時間半もない映画だけれど、途中で飽きてしまったり。

でも、原点なのが分かるところがいくつかあったのでよしとする。ここぞ!というときのカメラワークはダイナミックでやっぱり惹きつけられる。ハン・ソッキュがキョロキョロするシーンのカメラなんか「『シュリ』と同じじゃん」てなところもあったけど、キレがよくて私は好き。
それと敵役が憎みきれないところがいいのね。『シュリ』の北朝鮮工作員も同情できる存在だったけど、本作の将軍もよくよく見るととても一途な人なのよ。一途すぎてストーカーになっちゃってるけど(笑) 姫への愛が嫉妬へ、そして憎しみへと変わるが、どんなに憎んでも仕方がないことも分かっている。かなり切ない人です。っていうか、ぶっちゃけ彼のほうがスヒョンより長髪似合っててカッコ良く見えたんですが(笑)いや、むしろ長髪のハン・ソッキュがイケてなさすぎ(泣)
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