Movie Review 2011
◇Movie Index

ニューイヤーズ・イブ('11アメリカ)-Dec 30.2011
[STORY]
大晦日のニューヨーク。タイムズスクエアでのカウントダウンイベントを取り仕切るクレア(ヒラリー・スワンク)にトラブルが発生する。勝ち組ビジネスマンのサム(ジョシュ・デュアメル)は去年の大晦日に出会った女性が忘れられない。25年間、仕事ばかりしてきたイングリッド(ミシェル・ファイファー)は突然会社を辞め、今年の目標リストを達成しようと配達人のポール(ザック・エフロン)に協力を頼む。出産を控えたテス(ジェシカ・ビール)は、新年1人目の子を産むと賞金が出るという話を聞き、出産を早めようとする。大晦日に浮かれるのが大嫌いな漫画家のランディ(アシュトン・カッチャー)は、出掛けようとしていたエリーズ(リー・ミッシェル)とエレベーターに閉じ込められてしまう。大きなパーティの料理を任されたシェフのローラ(キャサリン・ハイグル)は、元恋人のロックスター、ジェンセン(ジョン・ボン・ジョヴィ)と再会する。末期ガンで入院しているスタン(ロバート・デ・ニーロ)に看護師のエイミー(ハル・ベリー)は優しく気遣う。15歳のヘイリー(アビゲイル・ブレスリン)は気になる男の子とカウントダウンを見に行く約束をするが、母キム(サラ・ジェシカ・パーカー)に反対され、家で過ごすことになるが・・・。
監督ゲイリー・マーシャル(『バレンタインデー』)
−◇−◇−◇−
2010年の映画『バレンタインデー』の監督、脚本、音楽などが同じスタッフによる作品。ジェシカ・ビール、アシュトン・カッチャー、ヘクター・エリゾンドは『バレンタインデー』にも出演している(演じている役柄は違う)サラ・ジェシカ・パーカーとマシュー・ブロデリックは夫婦で出演しているが、同じシーンでの出演はない。また、NYのブルームバーグ市長が本人役で出演している。

『バレンタインデー』は見てないんだけど、本作はNYのカウントダウンイベントっていうのがどのように行われているのか気になったので見てみた。タイムズスクエアでの様子は毎年新年のニュースでやるから知ってはいたけど、ボール・ドロップというのを設置してるのは知らなかったわ。1904年からやってるということは、ずいぶん昔からなんだね。タイムズスクエアといえば日清のカップヌードルの広告っていう印象が強かったんだけど、今回見てみたらそれがない。後で調べてみたら日清の広告は2006年までで、2007年からは東芝が広告を出しているということも分かった。なかなか勉強になったな(笑)

大きく分けて8つのエピソードが大晦日に同時進行し、それぞれの登場人物が他のエピソードと合流したりもする。正直言ってどれもそれほど面白くはなかった。悪いけど2組の夫婦が出産競争する話なんてどこが面白いのかと(スマン)サムの忘れられない女性が分かった時にも個人的にはすんごいガッカリしました(イヤな予感はしてたんだが)良かったのは仕事を終えたエイミーのエピソード、これにはウルッときた。それとTVドラマ『Glee』のレイチェル(リア・ミシェルのことね)はやっぱり歌が上手くて聞き惚れた。あ、でも一番面白かったのはエンドクレジットのおふざけ&NG集だったわ(笑)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル('11アメリカ)-Dec 25.2011
[STORY]
モスクワの刑務所に収監されていたイーサン・ハント(トム・クルーズ)はIMF(米国極秘諜報機関)チームの手引きで脱獄を果たす。そんな彼に新たな任務が舞い込む。それは核によるテロを目論む“コバルト”が核兵器発射制御装置を盗むためにロシアのクレムリンに潜入するのを阻止する任務だった。だが任務は失敗し、装置は盗まれ、クレムリンが爆破されてしまう。アメリカ政府は関与を否定するため“ゴースト・プロトコル”を発令。イーサンたちはIMFの登録を抹消されてしまう。
監督ブラッド・バード(『レミーのおいしいレストラン』
−◇−◇−◇−
『ミッション・インポッシブル』、『M:I-2』『M:i:III』から続くシリーズ4作目。ブラッド・バード初の実写監督作。前作で終わりかと思ったけどやっぱり続きありましたか。パート3の監督だったJ・J・エイブラムスが本作では製作に回っている。そのせいか、今までのM:Iシリーズは、毎回イーサンが主役で登場するだけの、それぞれ独立したアクション映画でシリーズ物って感じじゃなかったんだけど、パート3と本作はちゃんと続き物としてストーリーが作られているし、トム君だけが目立つんじゃないくて、チームとしてミッションを遂行していくところがいい。続けるならエイブラムスには今後もこのシリーズに関わっていってほしいな。

前作は中盤までが面白くて後半はグダグダだったけど、本作は最後まで面白かった。3作目に登場したベンジー(サイモン・ペグ)が本作では本格的にイーサンのチームに加わりコミカルに動き回り、生真面目なブラント(ジェレミー・レナー)とともにトム君のギラギラ感をいい具合に薄めている。まぁトム君が歳取ったってのもあるけど。そういえば前作の感想で、パート4をやる頃にはトム君50歳になっちゃうかも?と書いたけどギリだったね(笑)ちょっとだけどなる前でよかった。

しかし相変わらずアメリカ以外の国ではよく暴れること(苦笑)クレムリンは爆破するわ、ドバイが誇る世界一のビル、ブルジュ・ハリファも窓ガラスが割られるわエレベーターは操作されるわ、ロシアやドバイの人が見たらムッとしないかね。もし完成したばかりの東京スカイツリーが壊されたら、私だったらいい気分しないもん(ゴジラに破壊されるなら許せるが(笑))超有名観光地だから舞台に使われているだけかもしれないが、なんか世界一なのが気に入らないので壊してやる!って意図があるんじゃないかと勘繰ってしまったのは私だけだろうか。

ドバイでイーサンが敵を追いかける時に砂嵐が起き、敵が見えたり霞んだりするシーンは、まるでゴーストを追いかけているような演出で、ここはすごく上手いと思った。ラストもまた同じようなシーンがあるんだけど、ここに上手く繋げているし。しっかし、この敵のヘンドリクス(ミカエル・ニクヴィスト)は無駄に強すぎだろ〜(笑)ホントに物理学者か?!彼はヒロシマとナガサキには原爆が落とされたけど、そこから復興を遂げたことを例に挙げ、アメリカも核兵器による浄化が必要だと主張する。確かに戦争での破壊もあったけど、自然災害のほうが多いんですが。それに復興させたのは進化した人類でもない。こんな極論を唱えるから狂ってるんだろうが、日本が引き合いに出されたのは居心地が悪かった。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

永遠の僕たち('11アメリカ)-Dec 23.2011
[STORY]
交通事故で両親を失い、自身も臨死体験した少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)は、赤の他人の葬式に紛れ込み、遺体を見たり遺族の言葉を聞いたりするのが好きになってしまっていた。そんな時、葬儀屋に見咎められたイーノックはアナベル(ミア・ワシコウスカ)という女の子に助けられる。彼女は余命3ヶ月で、もうすぐ死ぬのだという。彼女に心を開いたイーノックは、彼だけが見えるという特攻隊員の幽霊ヒロシ(加瀬亮)を紹介する。
監督ガス・ヴァン・サント(『パラノイドパーク』
−◇−◇−◇−
原作はジェイソン・リュウの舞台劇“Of Winter and Water Birds”を自ら脚本家したもの。第64回カンヌ国際映画祭では「ある視点」部門で上位された。
主演のヘンリー・ホッパーは、2010年に亡くなった俳優デニス・ホッパーの4番目の妻との間にできた息子で、本作はデニス・ホッパーに捧げられている。

死に興味を持つようになった少年と、余命わずかの少女との恋を描いた作品。この2人がとにかく可愛いの。2人とも顔にクセがなく、色白で金髪でお人形さんみたいに美しく、ファッションも言動もすべて可愛く見えるように作ってるって感じ。正直言っちゃうけど話は深くない。死について掘り下げてるとかない。10代の少年少女の、みずみずしさとイタさと儚さを見せられてるだけというか。自分がこの子たちと同年代だったら何か感じられたかもしれないが、そんなのとうの昔になった今じゃ「可愛い子たちに萌え」くらいの感想しかない(笑)

可愛いといえば、ヒロシを演じた加瀬亮も本作の中では可愛らしく、主演の2人より15歳くらい年上とは思えなかった。海外の人が年齢聞いたらびっくりするかもね(笑)彼は演技がすごく上手いわけではないんだけど、作品の空気を理解して溶け込むのが上手く、作品の中で決して悪目立ちしないんだよね。だからどんな映画に出ても馴染むみたい。邦画にはそれこそ飽きるほど出演していて、その時にはこんなこと強く感じたことなかったけど、海外の作品にたった1人の日本人として出演しているのを見て、彼がいろんな作品に起用される理由が分かったような気がする。

ミア・ワシコウスカは『アリス・イン・ワンダーランド』を見た時には下手だなぁと思ってたけど、本作では経験の浅いヘンリー・ホッパーをリードするような演技をしていて頼もしく、成長を見守ってきたオカンみたいな気持ちになったわ(笑)そしてホッパーは美少年!と思ったけどよく見るとやっぱりお父さんに似てる。んで、お父さんの若い頃の写真を思わずIMDb検索しちゃったよ(笑)お父さんみたいな怪演は歳取ってからでいいので、綺麗なうちは美しさで売っとくれ(笑)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

灼熱の魂('10カナダ=フランス)-Dec 23.2011スゴイ★
[STORY]
中東系カナダ人女性ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)が亡くなり、公証人のルベルから双子の姉ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)と弟シモン(マキシム・ゴーデット)に遺言が伝えられた。それは父と兄を見つけ出し、それぞれに母からの手紙を渡してほしいというものだった。父は死んだと知らされ、兄の存在など知る由もなかった2人だが、意を決してジャンヌは母の故郷へと旅立ち、母の数奇な運命を知ることになる。
監督&脚本ドゥニ・ヴィルヌーヴ(『渦 Maestrom』
−◇−◇−◇−
原作はレバノン生まれでカナダ在住の劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲『焼け焦げるたましい』(日本でも2009年に上演されている)
第83回アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた(この年に受賞したのが『未来を生きる君たちへ』

『未来を生きる君たちへ』もよかったけど、こちらも圧倒された。『未来〜』も重かったけど鑑賞後は前向きな気持ちになれるのに対して、こちらはひたすら重くて疲労感が残る。『題名のない子守唄』にちょっと似てるかな。女性が拷問されるのを見たくない人にはおすすめできないし、見るとしても気力と体力がある時がいいと思う。

ネタバレ事項がありそうだったのでほとんど知識を入れずに見たため、ナワルが生まれた国が分からず(映画の中では地名は出るが国名は出ない)事情も最初はよく理解できなかったが、どうやらキリスト教信者とイスラム教信者とが対立して殺し合いをしているということが分かっていく。ナワルはクリスチャンだが、イスラム教信者の恋人ができたことで一族から反対され、そこから運命が狂っていく。

後で調べて分かったのだが、ナワルがいたのはやはり原作者の出身地レバノンで、実際に1975年ころから宗教対立による内戦が起きていた。内戦は17年ほど続き、おそらくナワルは終結後にカナダにやってきたのだろう。レバノンの歴史を知っている人が見ると、当時その地であったこととナワルの数奇な運命とがリンクしていることにすぐ気が付くようになっているのだろう。

ナワルが取る行動は理解しがたい部分が多くてずっと共感できずにいた。けれど真相が明らかになり、双子の父と兄に宛てた手紙の内容を知った時にはフィクションだということを忘れ、思わず天を仰いでしまった。そして手紙が読まれている間はボロボロ泣き、この手紙を遺した彼女を尊敬した。遺された者たちにとってナワルの遺言は知りたくなかった内容だと思う(特に双子は気の毒すぎる)でも自分に対してのけじめ、手紙の相手に対してのけじめ、そして今も不毛な争いが絶えない世界に対して、憎しみを連鎖させてはいけないと伝えたかったのだろう。

偶然にしては出来過ぎだろ〜といえばそれまでだけど(それで冷めちゃう人もいると思う)偶然じゃなくて必然だったのだろう、ナワルにとっては。憎しみから復讐をしてしまった彼女に対して、これが神が与えし試練だったのかもしれない。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

リアル・スティール('11アメリカ)-Dec 17.2011イイ★
[STORY]
人間に代わってロボットが格闘技をする近未来。ボクサーだったチャーリー・ケントン(ヒュー・ジャックマン)も、今はロボットで戦う日々を送っていた。そんな時、離婚した妻が亡くなりチャーリーは夏の間だけ11歳の息子マックス(ダコタ・ゴヨ)を預かることになる。マックスがゴミ置き場で旧式のロボット“ATOM”を発見する。“ATOM”に戦いを覚えさせたマックスは、チャーリーに試合に出たい言い出す。
監督ショーン・レヴィ(『ナイト・ミュージアム』)
−◇−◇−◇−
原作はリチャード・マシスンの同名小説(旧題は『四角い墓場』)
元ボクサーのシュガー・レイ・レナードがアドバイザーを務めている。

人間の代わりにロボットがボクシングをして感動できるの?と実は懐疑的だった私だが、感動しましたよ(笑)思ったよりもずっといい作品だった。前半は主人公がクズすぎて、好きなはずのヒュー・ジャックマン本人まで嫌いになりそうだったんだけど(マジで)息子がゴミ処理場でATOMを拾ってくるあたりから俄然面白くなる。この息子マックスが単にヒネただけの子じゃなくて、ゲーマーでメカに詳しくダンスも上手い。肝の据わった大物っぷりを発揮し、親父も形無しになっていくところが特に面白い。チャーリーも息子が言うことが正しいと分かると、徐々に彼の思う通りにさせていく。まずは親友というか同士のような関係になり、そこからいろいろあって本当の親子になっていく。いきなり親子になるんじゃなくて、一旦そういうステップを踏ませているところが上手いなと感じた。

もう1つ上手いと思ったのはATOMの存在の描き方。このロボットは模倣機能がついていて、相手の動きを真似することはできるが心があるわけじゃない。でも時折、ATOMに人格があるんじゃないか、マックスを見守っているんじゃないかって思わせるような、そんな目線を送っているというか映し方をするのね。ここが絶妙なのよ。冒頭の、チャーリーが運転するトラックのガラスに遊園地のネオンが映り込むシーンも、彼の寂しさをより引き立てるような映像で、思い返せばこのシーンでちょっと鳥肌が立ったんだった。やはり映画のファーストシーンて重要だわ。

あと嬉しかったのは、ちょいちょい日本リスペクトなところがあったこと。あるロボットのボディに超悪男子って書いてあったり、マックスが「日本製が最高さ」と言ったり日本語喋ったり、最後のシーンで彼が着ているTシャツの文字は必見。映画のロボットよりかなりちっちゃいけど、日本のROBO-ONEの動画なんて海外の人がかなり見ているようだし、参考にしたところもあったりするかも?ただ、ATOMの由来は『鉄腕アトム』ではないそうだ。
home