Movie Review 2007
◇Movie Index

めがね('07日本)-Sep 24.2007
[STORY]
春。南国の小さな町の小さな宿“ハマダ”に大きなトランクを持ったタエコ(小林聡美)がやってきた。宿の主人ユージ(光石研)はさっそくみんなで一緒に夕食を取ろうと言うが、1人になりたいタエコは断ってしまう。翌朝、部屋で寝ていたタエコの枕元に常連客のサクラ(もたいまさこ)が座っており体操に誘われる。その後も教師のハルナ(市川実日子)が客でもないのに朝晩の食事をしにきたり、タエコにとっては気に入らないことばかり。とうとう我慢できなくなり宿を替えようとするが・・・。
監督&脚本・荻上直子(『かもめ食堂』
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『かもめ食堂』のキャスト・スタッフがふたたび集結し、南国を舞台に新たな物語を作り出した。

日常生活から抜け出し、のんびりした場所で休暇を楽しみまた日常へ戻っていく。取り立てて大きな事件は起こらないが、ほんの少しだけ自分の中の何かが変わる。こういう映画や小説やマンガは大好きだけど、本作は少々それが押し付けがましく鼻についてしまった。

タエコが訪れる町には2軒の宿がある。最初に泊まる“ハマダ”と薬師丸ひろ子がオーナーを演じる“マリンパレス”だ。“マリンパレス”は宿泊客に農作業に勤しむことを強要するとんでもない宿なのだが、私から見れば“ハマダ”もそう変わりはない。ユージやサクラにとったらみんなで食事をするのは当たり前かもしれないが、初めて泊まりに来た者がいきなりみんなで一緒に食事というのはきつい。疲れを癒しに来たはずなのにかえって気疲れしてしまう。タエコが誘いを断ってしまうのもしょうがない。まぁタエコも頑なすぎるとは思ったけど。

タエコが観光したいと言えばユージとサクラは不思議そうな顔をし、かき氷の代金を払うと言えばまた不思議そうな顔をする。こういうところもイヤだった。観光するのもお金を払うのもそれこそ自由じゃない。「自由に過ごして下さいね、でもその過ごし方ってどうなのかしら?本当に自由なのかしら?」と言われているよう。誘導されているようだ。この宿、サクラがいない時期はどんな雰囲気なのか逆に気になるわ〜。
お好きにどうぞと放っておかれて最初はそれを楽しむが、だんだんユージやサクラが気になりだし、自然と輪の中に入っていくという設定だったすごく好きな映画になったかもしれない。

途方に暮れたタエコをサクラが自転車で迎えに行くところと、ビールを飲まないかと誘うところは押し付けがましさがなく、さりげなくて良い。あと音楽はいいのでサントラは買い(フラッシュ金子といえば『すいか』繋がり)
今回も食べ物はふんだんに出てくるがやはり綺麗すぎて焼肉以外はいまいち。全体的に食べ物に汁気というか瑞々しさがないのね。伊勢海老を割った瞬間に湯気がボワッと出たら最高だったろうに。
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ファンタスティック・フォー:銀河の危機('07アメリカ)-Sep 23.2007
[STORY]
“ファンタスティック・フォー”のリード(ヨアン・グリフィズ)とスー(ジェシカ・アルバ)の結婚式を間近に控えたある時、地球に彗星のような光が飛来し、世界各地に異常気象を発生させていた。そして2人の挙式当日、その光がやってきて会場をめちゃくちゃにしてしまう。光を追いかけたジョニー(クリス・エヴァンス)は、それが銀色のサーブボードに乗った人間のようなものだと報告する。“シルバーサーファー”と名付けられた光が現れた星は8日以内に滅びることが分かり、何とか阻止しようとするが・・・。
監督ティム・ストーリー(『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』
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2005年に公開された『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』の続編。

冒頭でいきなり日本の駿河湾が出てきて(バックには大きな富士山)ビックリ。そしてラストは場所は中国っぽいが女性たちが着物を着て登場(中には浴衣の人も)これにもビックリ。そんな映画でした。←そこで終わらせてどうする

前作ではベン(マイケル・チクリス)の苦悩に時間を割いていたが、今回はジョニー。お調子者だけどスーパーヒーローでなおかつ爽やかなイケメンなので女の子にモテまくりだけど、遊びじゃなくて心から信頼し合える恋人が欲しいと、リードとスー、ベンとアリシア(ケリー・ワシントン)というカップルを見ていて寂しさを垣間見せる。あとはスーが結婚して普通の暮らしをしたいのに、マスコミに騒がれたり何かあれば助けに行かなきゃいけないと嘆いたりする。それらは特殊能力を持ってない人でも共感できる悩みだし、他のヒーローもののような暗さがない。前作のベンはつらそうだったけど今は子供に人気で恋人もいて幸せだし、カラッとした明るさがこの映画のいいところだ。まぁ軽すぎるといえば軽すぎるんだけど。

シルバーサーファーは、予告では地球を滅ぼす張本人のように見えるんだけど、実は彼は悪い人じゃない(byみうらじゅん)逆に好きになってしまいました。イケメンでスタイルもいいし(笑)私はこのキャラクターはフルCGだと思ってたんだけど、見終わった後で調べてみたら、俳優のダグ・ジョーンズが特殊メイクとシルバーの着ぐるみで演じたんだそうだ。だから好きになっちゃったのかも。何か色気があったんだもん。CGに惚れるなんて私って・・・と思ってたから。ああ良かった(笑)アメコミと同じく、シルバーサーファーが主人公の映画も見てみたいなぁ。

次があるとすれば、リードとスーの子供たちの登場でしょう。『Mr.インクレディブル』実写版でいいじゃない。
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プラネット・テラー in グラインドハウス('07アメリカ)-Sep 22.2007
[STORY]
テキサス州の田舎町。アメリカ軍の基地で生物化学兵器のガスが流出し、それを浴びた人々が次々とゾンビになってしまった。ゴーゴーダンサーのチェリー(ローズ・マッゴーワン)は、別れた恋人エル・レイ(フレディ・ロドリゲス)と再会するも途中でゾンビに襲われ右脚を喰いちぎられてしまう。だが悲しんでいる場合ではなかった。チェリーは足の代わりにマシンガンを装着し、ゾンビやアメリカ軍と戦うことになる。
監督&脚本ロバート・ロドリゲス(『シン・シティ』
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アメリカでかつて流行した、B級映画ばかり上映する映画館“グラインドハウス”を甦らせようとクエンティン・タランティーノとともに製作した。『グラインドハウス』は本作と『デス・プルーフ』にフェイクの予告編4本を合わせた191分。『プラネット・テラー in グラインドハウス』はは本編のほかにロドリゲスが監督したフェイク予告編『マチェーテ』も見ることができる。
『デス・プルーフ』と両方に出演しているのはローズ・マッゴーワン、タランティーノ、そしてマーリー・シェルトンは唯一同じ役で出演している。

本編前の『マチェーテ』の主演はダニー・トレホ、その兄にチーチ・マリン、宿敵に『プラネット・テラー』にも出演しているジェフ・フェイヒーという豪華キャスト。殺し屋が罠に嵌まり命を落としそうになるが復讐のため立ち上がるという、ド派手アクションに笑いあり涙ありお色気ありと内容まで豪華(笑)これ本編見たーい!と思わせる素晴らしい予告編だった。

この予告編で気分が盛り上がったのか本編も楽しめた。本当はグロいのがすごい苦手なので、これを見るのはすごく迷っていたんだけど、やっぱり両方見ないと落ち着かないという気持ちが勝ち、見てみることにしたのだ。結果としてやっぱり見て良かった。確かにグロいところもあるんだけど、リアルじゃなくてわざと手作り感を出している。人がゾンビに食い殺されるシーンでの、手足の千切れ具合なんか笑ってしまうほどチープだ。そのくせチェリーが義足代わりにテーブルの足やマシンガンを装着して歩いている映像は、本当に足がない人のよう。知らない人が見たらびっくりするだろう。CGを使うところと手作りなところが徹底してるわ。

登場人物もみな魅力的に描かれている。チェリーはセクシーさと逞しさを兼ね備えた最強のヒロインで、謎の経歴を持つエル・レイ(消失したフィルムに彼の正体が明かされている)はセリフがいちいちカッコイイ。バーベキューソース作りに命を懸けるJT(ジェフ・フェイヒー)と弟のヘイグ保安官(見てる最中マイケル・ビーンって分からなかった!)の最後の会話も粋で泣かせる。ブルース・ウィリスもちゃんとゾンビになるし、みんな本気でB級映画を作ってるのよ。そこがいい。

私は“グラインドハウス”で上映されていたという映画がどういうものだったのか知らないけど、『デス・プルーフ』と本作だったら本作のほうが“グラインドハウス”っぽい映画なんじゃないだろうか。あ、『マチェーテ』もね。ただ、どっちが面白かったかというとやっぱり『デス・プルーフ』かな(笑)
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ミス・ポター('06イギリス=アメリカ)-Sep 15.2007カワイイ★
[STORY]
1902年ロンドン。裕福な家庭に育ったビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)は、自分の描いた絵本を世に送り出したいと出版社を訪れる。経営者の兄弟は三番目の弟ノーマン(ユアン・マクレガー)に彼女の本を任せてみることに。そして出版された本『ピーターラビットのおはなし』はたちまちベストセラーになる。本はシリーズ化され、ビアトリクスとノーマンは次第に惹かれ合うようになる。2人は結婚の約束をするが、ビアトリクスの両親は大反対する。
監督クリス・ヌーナン(『ベイブ』)
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世界中で愛されている『ピーターラビット』の原作者ビアトリクス・ポターの半生を描いた作品で、彼女がナショナル・トラストに寄付したイングランドの湖水地方での撮影も行われているが、いくつか事実と違うところがあるらしい。また、彼女が描いたキャラクターたちが時々アニメになって動くシーンがある。

この時代のイギリスの話が大好きなので、これももちろん気に入った。実際のビアトリクスはもっと波乱に満ちた人生だったようだが、映画ではピーターラビットが誕生して有名になるエピソードとノーマンとの恋がメインで、他はサラリと触れるだけで上映時間もたった91分と短い。正直もっと見せて!と思う。この食い足りなさが逆にもう一度見たいと思わせるのかもしれない。劇場には行かないけどDVDでもう一度見たい。カットしたシーンとかないのかなぁ。

キャラクターたちがアニメになって動くところがまず可愛くて和んでしまうし、ビアトリクスとノーマンが常に照れまくって酸欠状態になりながら会話するところもめちゃくちゃ可愛い。2人ともイイ歳だし(笑)すでに別の映画(『恋は邪魔者』)で共演済みなのに、初々しく見えるんだからさすが。でもワタシ的にはノーマンよりウィリアム・ヒーリス(ロイド・オーウェン)だし、彼の少年時代の子(ジャスティン・マクドナルド)がいい。彼と少女時代のビアトリクス(ルーシー・ボイントン)が話をするシーンは、これぞ運命の出会いという感じでキュンとなる。この少女時代のエピソードももっと見たいんだなぁ。ホント食い足りない(笑)

一番感動するのは、ノーマンがビアトリクスのために歌うところ。そしてビアトリクスからノーマンへ宛てた歌はエンド・クレジットに流れる曲、ケイティ・メルアが歌う『ダンスを教えて』の歌詞になっていて、読みながら思わず涙がこぼれてしまった。上に書いたように物足りなさはたくさんあるんだけど、エンドクレジットで感動させてくれる映画もなかなかないので、やっぱりいい映画だったと思う。
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題名のない子守唄('06イタリア)-Sep 15.2007
[STORY]
北イタリアのトリエステにウクライナ出身のイレーナ(クセニア・ラパポルト)という女が1人やってくる。彼女はある家族に近づこうとしていた。それは貴金属商を営むアダケルという家族。イレーナは彼らの向かいにアパートを借り、アダケル家のメイドと親しくなり、隙を見て合鍵まで作ってしまう。そしてついにアダケル家のメイドになることに成功する。
監督&脚本ジュゼッペ・トルナトーレ(『海の上のピアニスト』
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イタリアのアカデミー賞と言われるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で、作品賞・監督賞・主演女優賞・音楽賞・撮影賞の5部門を受賞した。

ある目的を持ってトリエステにやってきた主人公イレーナ。映画の冒頭では彼女の目的が全く分からないが、タイトルが『子守唄』なので観客はアダケル家の子供が目的だろうと薄々感づいている。そして予想通り、イレーヌは犯罪行為をしてまでアダケル家に近づいていく。彼女の行動には嫌悪感を催すものの、時々挿入される彼女の過酷な過去が明らかになるにつれて、そんな思いは吹き飛び、ひたすら彼女を応援するようになってしまう。だが、結果的に彼女の行為は何の罪もないアダケル家を崩壊させてしまった(彼女が来る前から壊れていた部分はあるけども)だが諸悪の根源は“黒カビ”だからなぁ。奴の適当な一言がきっかけで大事件になってしまうのだから本当に酷い男!あの時点から既にこうなる運命だと決まっていたのかなぁ・・・。

途中何度か泣かされ最後も泣いてしまったし、主演のラパポルトの文字通り体当たりの演技は本当に素晴らしかったけど、あまりにも壮絶な話なので素直にいい映画だった!とはちょっと言いにくい。ラストは一応いい終わり方なんだけど、思い出すのはショッキングなシーンばかり。思い出すたびに落ち込んで、いいシーンを思い出そうとしても思い出せなくなっている。イレーナのトラウマを観客にも植えつけたのかしら(泣)音楽や効果音などでショッキングな映像をさらに盛り上げようと演出が大げさに感じた部分も気になったな。見て良かったとは思うけど、これは一度でじゅうぶんだ。はぁ〜。
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