Movie Review 2008
◇Movie Index

旅するジーンズと19歳の旅立ち('08アメリカ)-Aug 10.2008
[STORY]
避妊に失敗して妊娠したかもしれないと悩むティビー(アンバー・タンブリン)、裏方として舞台に参加したはずなのに何故か主役を演じることになってしまったカルメン(アメリカ・フェレーラ)、母の自殺から立ち直れずにいるブリジット(ブレイク・ライヴリー)、ギリシャで出会った運命の恋人の裏切で傷ついたリーナ(アレクシス・ブレデル)19歳になった4人がそれぞれの場所で夏を過ごし、ジーンズは1週間ごとに彼女たちの間を行き来していくが・・・。
監督サナー・ハムリ(『Something New』)
−◇−◇−◇−
前作『旅するジーンズと16歳の夏』から3年後の続編。原作はアン・ブラッシェアーズの『トラベリング・パンツ』シリーズ。前作は1冊目のみを映画化したようだけど(未読なので詳しく知らない)本作は残り3冊を纏めて1本の映画にしちゃったみたい。やっぱり3本作るのは難しかったのかな。冒頭で17歳、18歳の彼女たちを駆け足で見せていくので、ついていくのが大変だった。

3年前はアンバー・タンブリンとアレクシス・ブレデルのほうが知名度あったけど、今はアメリカ・フェレーラとブレイク・ライヴリーのほうが有名になってしまった(2人ともTVドラマでブレイクなのが一緒)映画を見てても、この2人の肌のハリツヤがいいし表情も生き生きしててすごくいい。逆にタンブリンとブレデルはちょっとくすんじゃったかなぁ。おまけにリーナの恋人コスタス(マイケル・ラディ)も前作よりしょぼくれて見えてしまって・・・。そのかわり新恋人のレオ(ジェシー・ウィリアムズ)がイケメン過ぎ!絵のモデル役だったから身体を鍛えたのかもしれないけどスタイルも完璧で、しかも全裸になるんですよ奥さん!(←誰だよお前)いやー彼はこれから大注目だわ。

前作ではティビーとカルメンのエピソードがよかったと書いたけど、今回はブリジットのエピソードがよかった。まだ母の死のことを引きずっているブリジットが祖母に会いに行くというエピソードで、前作では彼女の行動が理解できず悲しみもあまり伝わらなかったんだけど(どうして死んでしまったのか詳細がよく分からなかったせいでもあるが)今回はその深さがよく分かった。それとティビーが出産に立ち会うところもよかったな。人が死ぬということ、そして新しい命が生まれてくるということ、彼女はそれを経験して人との絆の大切さを知っていくのだ。

カルメンのエピソードは『ガラスの仮面』とか舞台が好きな人には面白く見れるお話。分かりやすいサクセスストーリーで、いわゆる“おいしい役どころ”だった。
そしてリーナのエピソードは過程が駆け足のせいか、あっちの男がダメならこっち、みたいな軽さしか感じなかった(イケメンをゲットしやがって〜という嫉妬などではありません、決して)コスタスに対しても最後まで私には誠実さが見えなくてね・・・だって妊娠させるような行為をしたってことだろーが。その時点でダメじゃないのか?!ま、この2人はもうどうでもいいです(おい)

とはいえ、ラストシーンを見て、この2作で終わりなのかと思うとちょっと寂しい気持ちになった。3部作で見たかったなぁ。
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スカイ・クロラ The Sky Crawlers('08日本)-Aug 2.2008
[STORY]
“ショーとしての戦争”がビジネスとなっている世界。ロストック社の戦闘機パイロット函南優一(声:加瀬亮)はヨーロッパの前線基地に配属される。彼は大人にならず戦闘で死なない限り生き続ける“キルドレ”だった。基地の女性司令官の草薙水素(声:菊地凛子)もまた“キルドレ”で、その謎めいたところに優一は惹かれていく。そんな中、ラウテルン社の“ティーチャー”と呼ばれるのパイロットによってロストック社の戦闘機が何機も落とされていた。優一は“ティーチャー”を撃ち落したいと思うようになる。
監督・押井守(『イノセンス』
−◇−◇−◇−
原作は森博嗣の同名小説(この小説はシリーズ化されていて6冊刊行)私は別のシリーズは読んだことがあるけど、このシリーズは未読。

キャラクターのデザインはあまり好みではないけれど、ストーリーや演出、醸し出す雰囲気が自分の好みにピッタリだった。どうしてもダメなところ1点を除いてはほぼ完璧なのに、その1点のせいでのせいで絶賛できないのが悔しいくらい。
・・・その1点とは草薙水素を演じた菊地凛子。ひどかったなぁ。英語で叫んだところではおもわず「えええええ?!」って声出しそうになっちゃった。キャラクターの顔とも合ってないし、どこがどう良くて起用したのか聞いてみたいくらいだ。

『イノセンス』のような難解さはなく、むしろ親切すぎるくらい。でも決して薄っぺらではなかった。各キャラクターの仕草、目線、間、漂う空気、それらすべてが物語を作り上げていて、息苦しくなるほど。例えば最後のほうであることが判明するんだけど、最初に皆があの人物に投げかけた視線の意味もそこで分かり「なるほど」となる。

そんな地上での静かだが濃密な世界とは逆に、空では無味乾燥な戦いが繰り広げられる。見始めた時には、どうして戦闘シーンと人が動くところでこんなに違うアニメにしてしまったんだろう?CGで描いた精密な戦闘機に手書きアニメが乗っかってるのが合わない、統一感がなくておかしな感じ・・・と思っていた。でも次第にそれも演出のうちで、戦争は無意味なものだが、戦闘要員として存在するキルドレにも血は流れ心があるということを表現しているのだと分かった。

設定などがちょっととっつきにくいし、一目で分かるメッセージは提示されていない。でも見終わった後に、生きることや死ぬこと、人と関わること――何かを感じ取ることができる映画だと思う。
エンドクレジット後にも話が続いているので最後まで絶対に見るように。
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崖の上のポニョ('08日本)-Jul 29.2008
[STORY]
崖の上の一軒家に暮らす宗介はある日、海で瓶にはまって抜けなくなった金魚を助ける。その金魚にポニョと名付けて家に持ち帰るが、ポニョの父親フジモト(声:所ジョージ)が海に連れ戻してしまう。宗介を好きになってしまったポニョは父の魔法を使って津波を起こし、人間になって宗介に会いに行く。
監督&脚本・宮崎駿(『ハウルの動く城』
−◇−◇−◇−
『人魚姫』を題材にした宮崎駿のオリジナル作品。今回はCGを一切使わず全て手書きで(ただし彩色はデジタルペイント)作画枚数は17万枚にもなったという。

この映画を見る時には常識をすべて捨てて見なければいけないと思った。
元・人間と母なる海の間に生まれた人面魚は受け入れられたし、それが人間になって地上に現れるのも受け入れられた。でも人間になったポニョを大人たちが素直に受け入れていくところは受け入れられなかった(ややこしいぞ)

大人たちはポニョの自己紹介に対して「ポニョ?いい名前ね」とか「そう、魚だったの」とちっとも驚かない。子供2人が船に乗ってても不思議に思わないし、危ないから降りなさいなどとも言わない。みんな素直に受け入れてしまう。
でも、これをおそらく絵本で読んでいたら、私も素直に受け入れていただろうな。絵本じゃなくて動画で見てるから?映画と思って見ているから?理由をいろいろ考えてみたけど、結局どうしてなのか自分でも分からなかった。素直に見れなくなっている自分が悪いのか、素直に見ろよと宮崎駿に言われているのか・・・ま、素直じゃなくても別にいいじゃん。しょうがないんだ(開き直りかよ)

だけど、この映画を見て子供たちが金魚を飼いたくなったら、大人はちゃんと教えなきゃいけない。水道水の中に魚を入れたらダメってことをね。実は私が最も受け入れられなかったのはこのシーンだった(苦笑)

映像については嵐のシーンに驚かされた。真っ黒い魚の群集が波となり、その波の上で赤い服の女の子が全力疾走。可愛いと思う人もいるだろうけど私はめちゃくちゃ怖かった(だから私は人間ポニョより魚ポニョのほうが好きです。思わずボールペンを買ったくらい(笑))他人のことなど考えもせずに自分の気持ちを押し通す。無垢だからこそ加減を知らない。自然の驚異というのは、こんな小さな女の子みたいなものなんですよ、と見せられているようだった。海を舞台にした作品を作りたかったという宮崎駿。やはりただ波がザパーンとなるアニメではなかったか。登場人物を走らせるのが好きな人だなぁ(笑)このシーンを見て、やっぱり見て良かったと思ったけど今までの作品みたいに何度も見返したいとは思わないかな。それでも『ハウル』よりは声優も含めて良かったけどね。
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ハプニング('08アメリカ)-Jul 20.2008
[STORY]
ニューヨークのセントラルパークで人々が次々と自殺する現象が起きる。テロや政府の陰謀などさまざまな憶測が流れる中、徐々に小さな町へ被害が拡大されていく。教師エリオット(マーク・ウォルバーグ)の学校も閉鎖になり、妻アルマ(ズーイー・デシャネル)とともに同僚ジュリアン(ジョン・レグイザモ)の実家に逃げようとするが・・・。
監督&脚本M・ナイト・シャマラン(『レディ・イン・ザ・ウォーター』
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前作では出番多すぎでラジー賞を獲得しちゃったシャマランは、今回はジョーイという声のみで出演している。

『レディ』の時はどうしようかと思ったけど、本作ではちょっと盛り返したかな。『サイン』はミステリーサークルという現実に起きた現象からシャマランが独自の妄想(笑)を繰り広げた映画だった。本作もまたアメリカで蜂が大量失踪している現実に起きている現象から話を作り上げている(といっても、蜂と自殺現象の因果関係は全く説明してないんだけどね)

それから愛情、信頼がテーマというところも『サイン』とかなり似ている。だけど、あんな素敵にミラクルな映画(褒めてます)ではなく、もっとおとなしい。というか批判を怖がってるような感じ?ヘタに原因をクドクド解説しなくていいから、もっとバーンと大胆な展開にしちゃって良かったのに。『宇宙戦争』みたいな気の抜けたオチじゃないか。もうね、周りなんか気にせずガンガン作っちゃいなさいよ(笑)

今回は怖いシーンの演出が冴えわたっていると思ったら、撮影監督がまたタク・フジモトになったわけね。ちょっとしたシーンもやたら緊張するんだ。じわじわ溜めて出す、って感じの映像なのね。シャマランの演出にぴったりなんだろう。あとやっぱり役者さんがエライです。後から思えば「くっだらな〜い」と思ってしまうシーンだって演じる役者が真剣だからこっちも真剣に凝視してビクビクしてしまう。ウォルバーグもよかったけど(デシャネルはちょっと物足りない)ミセス・ジョーンズを演じたベティ・バックリーが秀逸だった。

劇中でエリオットはいち早く原因や予防法について気が付いているが(『レディ』もそうだったけど主人公カンが良すぎ。その気付くシーンがやたら面白かったけど)もう1つ決定的な予防法があると私は思った。それは大切な人と手を繋ぐこと。そうするときっと逃げていくんだ。だからあのホットドッグ夫婦も大丈夫だったに違いない(と思いたい)
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クライマーズ・ハイ('08日本)-Jul 16.2008
[STORY]
1985年8月12日、北関東新聞社の記者悠木(堤真一)は、友人安西(高嶋政宏)と谷川岳の衝立岩に登る約束をしていた。だが会社を出ようとしたその時、社会部記者の佐山(堺雅人)から日航のジャンボが消えたと連絡が入り悠木は登山を断念する。そして翌朝、悠木は日航全権を命じられる。
監督・原田眞人(『魍魎の匣』
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原作は横山秀夫の同名小説。原作を先に読むとどうしても比べてしまうし原作のほうがいいに決まってるので(おい)今回はわざと読まずに先に映画を見ることにした。

原田眞人の作品は数えるほどしか見てないけど『魍魎の匣』より本作のほうが断然合っていると思う。『金融腐食列島・呪縛』も同じ系統になるかな。あのガサ入れシーンもよかったけど、本作での締め切り前にワサワサと忙しく忙しく動き回るシーンを見せるのが実に上手いなと。喧騒と怒号の中で自らのプライドと信念を賭けて戦う男たちの姿が実にカッコイイ。特に遠藤憲一が似合うのよこういうのがまた(『金融〜』の時も書いたけどさ)見てるこっちまで熱くなっちゃうのだ。

地方紙ということで全国紙よりは自由があるみたいだけど、やはり社内で派閥があったり古い世代が上を牛耳っていたり、スポンサーとの兼ね合いやらしがらみがある。組織の中で働いている人ならよく分かるだろう。その中で悠木がやろうとしていることは、正しいんだけど暴走にも見える。そして肝心なところでヘタレ(苦笑)私がもう少し若かったら悠木をめちゃくちゃ応援したかもしれないけど、組織のありようを知ってる今では(はぁ)ちょっとやりすぎに見えてしまった。そんな私が感心しちゃったのが局長の粕谷(中村育二)だ。他の部長たちのほうが偉そうだから(笑)最初は存在感がなかったんだけど、熱くなってる奴らを尻目に「いつものこと」とばかりに1人クールに事の成り行きを眺めつつ最終的に決定を下しているのを見て、リアルだなぁと思った。リーダーシップを取るというより調整役。でもこういう人がいないと成り立たない。追村(螢雪次朗)みたいなウルサイのとか、亀嶋(でんでん)みたいないいおやっさんとか、社内のメンバーはみんないい演技をしていた。でも社長を演じた山崎努は『マルサの女』の権藤かと。原作は分からないけど余計な演技してると思った。この当時ペットボトルなんてないだろうに(それは制作側も悪いわな)

佐山が書いた記事を読み上げるシーンと、遺書を読むシーンでは思わず泣いてしまった。特に記事のシーンでの、自衛隊員が少女を抱き上げてるショットがまた胸を締め付けられた。でも全体的には多く描こうとして薄くなっちゃったのでは?と感じたので、あとは原作を読んで補完しよう。NHKのドラマも気になるなぁ。
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