Movie Review 2007
◇Movie Index

その名にちなんで('06アメリカ=インド)-Dec 29.2007
[STORY]
1974年インド。アショケ・ガングリー(イルファン・カーン)は列車での旅の途中で、親しくなった男から海外に出たほうがいいとアドバイスされる。その直後、列車が事故に遭いアショケは大怪我を追う。3年後、ニューヨークの大学で学んでいたアショケは故郷で見合いをし、アシマ(タブー)と結婚する。彼女を連れてニューヨークで生活を始める2人。やがて男の子が生まれ、名前をゴーゴリと名付ける。作家ニコライ・ゴーゴリから取ったものだ。しかし成長したゴーゴリ(カル・ペン)はこの名前を嫌がり、大学生になるとニキルと改名してしまう
監督&脚本ミーラー・ナーイル(『カーマ・スートラ』
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原作はイギリス生まれでアメリカ育ちのベンガル人ジュンパ・ラヒリの同名小説。本人も映画に出演している(といっても私は全然分かりませんでした)

ベンガル人青年がある“きっかけ”からアメリカに渡り、インドで結婚して夫婦でアメリカ生活を送り2人の子供をもうけ、子供たちが成長して独立する約30年を描いた物語。インドで育ちインドの習慣を大切にし、アメリカでもベンガル人の友人ばかりの両親と、アメリカ生まれアメリカ育ちの子供たち。世代間で考えが全く違うため、すれ違いが生じていく。けれどゴーゴリの人生のターニングポイントはいつもインドに触れた時なのだ。そこが良かったな。自分のルーツを誇りに思い、両親が育った国でアイデンティティを見出せたゴーゴリは幸せだと思う。

最初はアショケ、見合いのところからはアシマ、大学生になるとゴーゴリ、とカメラの中心が移っていく。主人公を1人に絞らず、ガングリー一家を見つめた映画になっているのだ。それはそれで面白かったんだけど、それならばなぜ娘のソニアは完全無視されたんだろう。はっきり言って単なる脇役扱いだった。原作がどうなっているのか分からないけど、私は彼女が末っ子として何を考えていたのか知りたかったし、結婚相手にベンガル人じゃない人を選んだ過程をしっかり見たかったな。そういうところが中途半端に感じた。それなら最初からアシマの視点中心で描いたほうが、見てるこっちも納得できたのに。感動して泣いちゃったし、いい映画を見たなぁとは思ったけど、見たいところを見せてくれないもどかしさもあって満足感はあまり得られなかった。
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魍魎の匣('07日本)-Dec 29.2007
[STORY]
昭和27年。探偵の榎木津礼二郎(阿部寛)の元に、映画女優だった柚木陽子(黒木瞳)から依頼が舞い込む。娘の加菜子が失踪したので捜索してほしいというのだ。同じ頃、作家の関口巽(椎名桔平)は少女バラバラ連続殺人事件の記事を書くことになり事件を調べ始める。一方、刑事の木場修太郎(宮迫博之)の後輩・青木は駅のホームで加菜子が電車に轢かれた現場に遭遇。搬送先の病院に駆けつけた陽子は医学教授の美馬坂(柄本明)の研究所へ転院させてしまう。それぞれの事件の謎を解くべく、関口たちは古書店「京極堂」の主人で陰陽師の中禅寺秋彦(堤真一)の元へ集まるが――。
監督&脚本・原田眞人(『金融腐食列島・呪縛』
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原作は京極夏彦の同名小説で、『姑獲鳥の夏』の続編。1作目の監督だった実相寺昭雄が他界したため、本作では監督が交代。キャストも関口役が永瀬正敏から椎名桔平になった。

前作では京極堂が受け入れられなかったと書いたけど、本作では見慣れたのか薀蓄が短めだったせいなのか、それほど気にならなかった。いや、今回はもっとヒドイ奴がいたからだろう。それはズバリ椎名桔平。どういう役か全く知らないまま現場に来ちゃいました、という雰囲気丸出しで緊張感のない演技。どう見ても関口ではない。しかも声質や喋り方が堤と似ているので、映ってない時の掛け合いではどっちが喋っているのか分からなくなったりする。本作での関口が前作ほど大きな役割を担っていないのが唯一の救いかもしれない。キャストの交代はやむを得ないけど、せめて前作の関口を引き継いでよね。

関口・敦子・榎木津・木場――それぞれが関わることになった事件が実は1つに繋がっていた!ということを見せていくシーンは悪くなかった。加菜子が失踪した理由が全く謎になってなかったのが気になったけど、映画ならこういう見せ方もアリかな。バラバラに行動していた関口たちが行き詰まって京極堂の元に集まるところもワクワクさせてくれたし、美馬坂近代医学研究所の外観も劇画っぽくていいじゃない。しかし中は首都圏外郭放水路ってすぐ分かっちゃいました(笑)

前作ではラストの京極堂のセリフで椅子から落ちそうになったけど、今回もラストがやっぱりひどかった。京極ファンが大好きな(笑)加菜子の「ほう」がまさかあんな・・・。思わず「なんじゃこりゃあああああー!」と叫びたくなってしまった。あのシーンはもっと幻想的で美しくして下さいよ。しかも匣に入ってないし(泣)ちょっとでも期待してしまった私が愚かでした。
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