Movie Review 2007
◇Movie Index

キサラギ('07日本)-Jul 7.2007オモシロイ★
[STORY]
アイドルの如月ミキが自殺してから1年後、彼女のファンサイトで一周忌のオフ会を開催することになった。集まったのは、サイト管理人の家元(小栗旬)、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)、スネーク(小出恵介)、安男(塚地武雅)、いちご娘(香川照之)という5人の男。最初は明るくミキのエピソードを語ったりお宝グッズ自慢で盛り上がるが、オダ・ユージが突然ミキの自殺の真相について話し出した。
監督・佐藤祐市(『シムソンズ』)
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『12人の優しい日本人』や『アベック・モン・マリ』あたりが好きな人はこの作品もおそらく好きになるだろう。少ない人数で場面転換が少なく会話だけでストーリーがどんどん変わっていくという、舞台のような作品だ。元々舞台作品だったのを映画化したのかな?と思っていたら、舞台は2003年にすでに上演されているけど映画化も見越して書かれた脚本だったのね。しかも落語でも上演もしたのか〜。

B級アイドルの自殺を巡り、ファンだった5人の男たちが真相を突き止めていくストーリー。最初はどういう風に話が転がっていくのか分かっていなかったので、男たちの思い出話が面白く感じられなかったり、演技がちょっとわざとらしいなぁなどと乗れずにいた。が、自殺の話が進むにつれて、今までの無駄っぽい会話のほとんどが伏線になっていたことに気付くのだ。そこからは頭の中でパズルのピースがどんどん嵌まっていって、5人よりも見てるこっちのほうが早く答えが出てしまう場面も(笑)5人が考え込んでいるシーンで思わず観客席から「ほら、○○、○○」と答える声まで出たほどだ。他の映画なら観客の私語など言語道断だが、この映画についてはそんな声まで自然と楽しめてしまった。やっぱり舞台っぽい作品だからかなぁ。

ただ回想シーンや想像シーンにはCGを使った映像でコミカルに仕上げてあり、こういうところは映画らしい、というかゲームっぽい映像だったな(むかし『街』っていうサウンドノベルゲームがあったでしょ。あれみたい)舞台ではこういうシーンはどうやって演出したんだろう、なんてちょっと気になったりして。
役者は4人は良かったけど、小出だけちょっと無理してるというか上滑りしてるという印象。あと如月ミキは最後まで顔を出さないほうが良かったんではないかな。顔を出すなら最初からちゃんと出せばよかったのに。なぜあのような出し方をしたのか分からないなぁ。
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ボルベール <帰郷>('06スペイン)-Jul 1.2007ヨイ★
[STORY]
ライムンダ(ペネロペ・クルス)と娘のパウラ(ヨアンナ・コボ)、そしてライムンダの姉ソーレ(ロラ・ドゥエニャス)は火事で亡くなった両親の墓を掃除するため故郷ラ・マンチャにやってくた。その帰りに伯母(チュス・ランプレアベ)の家に行くが、年老いて家のことなど何もできないはずの伯母がきちんと生活しており、さらに伯母は亡くなったはずの母イレネ(カルメン・マウラ)に世話をしてもらっていると言う。伯母と一緒に住みたいと願うライムンダだったが、夫は許しそうにない。隣人のアウグスティナ(ブランカ・ポルティージョ)に伯母を頼み家に帰るが、家では夫が失業し酒を飲んでいた。ライムンダは仕事を増やすが、何と彼女の留守中に夫はパウラに乱暴しようとしたのだ!そして抵抗したパウラは夫を刺し殺してしまった・・・。
監督&脚本ペドロ・アルモドバル(『バッド・エデュケーション』
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『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥー・ハー』に続く女性讃歌3部作の最終章。第59回カンヌ国際映画祭正式出品。女優賞と脚本賞(アルモドバル)を受賞。女優賞はクルス、コボ、ドゥエニャス、マウラ、ランプレアベ、ポルティージョの6人に贈られた。
個人的にはライムンダの家の近所に住むカクテル作りが上手いレジーナ(イザベル・ディアス)にも賞をあげてほしかったな。ライムンダが頼みごとをした時に、ワケありと知りつつも何も聞かずに手伝った彼女が良かったんで。

殺人、死体遺棄、放火、近親相姦、不法営業と犯罪のオンパレード(笑)な作品にもかかわらず笑いたっぷり最後にホロリ、な作品だった。オープニングクレジットで女たちが墓掃除するシーンを見ただけで、この映画は絶対に素晴らしいに違いない!って確信が持ててしまった。あのシーンだけで女って強い生き物なんだってことを強く観客に印象付けている。このセンスが凄いんだな。

ストーリーは意外にも謎が多く、ライムンダの夫はなぜパウラを襲ったのか?父と一緒に焼死したはずの母がなぜ生きていたのか?ライムンダと母はなぜ仲が悪かったのか?行方不明のアウグスティナの母はどこにいるのか?と複雑だが、観客が途中で気付きやすいように作られている。凝った話なのに分かりやすく尚且つ面白いって、映画として最高だよね。今までは『トーク・トゥー・ハー』が一番好きだったけど、本作も甲乙つけがたいなぁ。『オール・アバウト・マイ・マザー』だって、見た当初はピンとこなかったけど、いま見たらまた感想が変わるかもしれない。

ただ1つだけどうしても気に入らないのが、ライムンダがむかし母に教わったという歌「ボルベール」を歌うシーン。エストレージャ・モレンテというフラメンコ歌手の吹替らしいんだけど、声質がクルスと全く違うので「ああ、口パクだ」とガッカリしてしまった。いくらでも機械で調整できるんだからクルスにちゃんと練習させて歌わせるか、声質の似た人に歌ってもらえば良かったのに。せっかく歌っているのを見たイレネが涙を流す良いシーンなのに、私は口パクが気になっちゃって全く感動できなかった。DVDにはペネロペ歌唱バージョンを入れてくれないかな。下手でも許す!(何様)
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ハリウッドランド('06アメリカ)-Jun 27.2007
[STORY]
1959年6月16日、人気テレビ番組『スーパーマン』の主演俳優ジョージ・リーブス(ベン・アフレック)がハリウッドの自宅で死亡した。警察は銃による自殺と断定したが、リーブスの母は私立探偵ルイス・シモ(エイドリアン・ブロディ)に真相究明を依頼する。シモはリーブスの婚約者レオノアをまず疑い、不倫関係にあったトニー(ダイアン・レイン)と彼女の夫でMGMの重役マニックス(ボブ・ホスキンス)のことを調べはじめる。そしてスーパーヒーローに祭り上げられた自分と本当の自分とのギャップにリーブスが苦悩していたことも明らかになる。
監督アレン・コールター(TVドラマ『シックス・フィート・アンダー』等を経て長編映画初監督)
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実在の俳優ジョージ・リーブスの死の真相を、探偵が調査するというドラマ部分とを織り交ぜた作品。2006年ヴェネチア国際映画祭でベン・アフレックが最優秀男優賞を受賞した。

『ブラック・ダリア』のようなハリウッド暗黒史を描いた作品か、はたまた『ゾディアック』のようにノンフィクション色の強い作品かと楽しみにしていたが、つまらなくはないけど面白くもないという中途半端な作品だった。

黄色みがかった映像は昔のアメリカらしさが出ていて雰囲気は悪くない。そしてシモの元妻ローリー(モリー・パーカー)は顔も髪型もメイクも服装も完璧で、まるでこの時代から抜け出てきたみたいで、事件とは直接関係ないし出番も少ないが印象的だった。逆に事件の鍵を握るトニーを演じたレインが冴えなかった。一番最初に登場した時は悪くなかったが、リーブスと会っている時も彼女の気持ちが伝わりにくかったし、彼の死後は出番が少ない(笑)シモとトニーが顔を合わせることなく終わってしまったのには驚いたもの。彼女の口から何か語られるとばかり思っていたからなぁ。

リーブスについても、彼の死後に回想シーンのようにエピソードを綴っていくため、一歩引いた感じで彼がどんな人物だったのかが分かりにくい。彼の死が事故なのか、自殺なのか、他殺なのか、がいわゆる“藪の中”なため、明確な演出ができなかったのだろう。アフレックの演技は確かに悪くなかったが、ワタシ的にはさして良いとも思えず。とにかくすべてにおいて見せ方がいまいちだった。

離婚して母子家庭となったシモの息子はスーパーマンに憧れていて、彼の死に大きなショックを受けている。そんな息子に戸惑うシモ。シモはスーパーマンとは対極なルックスで(笑)やっていることもヒーローとは程遠い汚れ仕事だ。この設定は良い。子供の理想の父親像だったスーパーマンと現実の父親とのギャップ。そしてスーパーマンとジョージ・リーブスとのギャップ。この2つが上手い具合にシンクロしてこちらに伝われば面白かったかも。結局、リーブス側とシモ側どっちも描ききれずどっちも中途半端になってしまったんだろうな。なんか感想も中途半端ですが(笑)もうやめとこ。
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ダイ・ハード4.0('07アメリカ)-Jun 23.2007
[STORY]
アメリカ独立記念日の前夜。FBI本部のシステムにハッキングを仕掛けてきたという情報が入り、ハッカーたちの一斉捜査が開始された。NYPDのジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)にも、マット・ファレル(ジャスティン・ロング)というハッカーをFBIまで連行する任務が与えられる。新人警官でもできる仕事を言いつけられたジョンはやる気のないままマットのアパートへ行くが、そこで武装した男たちの銃撃を受けるハメになる。
監督レン・ワイズマン(『アンダーワールド』)
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12年ぶりにジョン・マクレーンが帰ってきた。監督は大の『ダイ・ハード』ファンで(ギャグじゃないぞ)、1と3の監督だったジョン・マクティアナンは今回製作に回っている。主演のウィリスも製作に名を連ねている。

私はパート1はもちろん、評判があまり良くないパート3が好きなので(同じ監督だし敵もイイのだ)本作はまた違う監督なのでどうかなぁと不安だったけど、予告で見た、飛んでくる車を避けるシーンとヘリを車で打ち落とすシーンを見て、思いっきり期待してしまった。実際本編を見ると、見どころがその2つくらいしかなかったわけだが(笑)

行動を共にするファレルと娘ルーシー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)のキャラクターは良かった。あとオタクといえばやっぱりケヴィン・スミスね(笑)ルーシーは父親に反発しているが、やはり心では信頼し尊敬しているのだろう。犯人に連れ去られても怯まず、絶対に助けに来てくれると信じている。犯人に羽交い絞めにされるも、父と同じやり方で反撃するのを見た時には拍手喝采しそうになった。ファレルが「そっくり、髪の毛はあるけど」と言うセリフが最高。将来NYPDに入るべき!というか、彼女を主人公にしたスピンオフが製作されそうな予感(笑)
他には、今までと比べて敵もFBIもアジアやオセアニアなど多民族な顔ぶれが目立っていたが、実際のFBIも同じような感じなのだろうか。

CGと合成する際に違和感がないよう見せるためか、映像は粗くて彩度が抑えられていて、今までの『ダイ・ハード』とは明らかに違う。これ一体どうやって撮影したんだろう?という驚くほど迫力あるシーンもたくさんあったし、粗さがサイバーっぽい雰囲気が出ていると良いように解釈もできるが、もう少しクリアな映像で見たかった。
粗いのは映像だけじゃなく脚本も。全米のライフラインを狙ったサイバーテロリストVS自分の勘と体力と経験で切り抜けるアナクロ刑事、という対決はありがちだけど、まあいい。20世紀フォックスのライトが消えてしまうオープニングから(FOXは『X-MEN』シリーズでも面白いことしてる)テロリストたちが電波ジャックし、ホワイトハウス爆破の映像を国民に見せるところまでは緊張感があって引き込まれた。でもそこから先がね・・・。敵がマクレーンにビビリ過ぎ(笑)一番の強敵はマイ・リン(マギー・Q)だったかも。

今回のマクレーンはついに自分がこういう星の元に生まれた人間だということを受け入れたようだ。最初の事件から20年だもん。しかも映画内の事件だけでなく、その間もこまごまと(笑)いろんな事件に巻き込まれたんでしょう。宿命と書いて“さだめ”と読むってやつよ(何だそりゃ)離婚して1人になったことで、ますますそういう思いが強くなったのかもしれない。ファレルとその話をするシーンで胸が痛くなった。若い頃の熱いマクレーンも良かったけど、今のちょっと枯れた彼も素敵だ。抱きしめてあげたくなってしまう。ぜひ次回作(あるのかな?)では彼を支えるような新しい女性と出会ってほしいなぁ。
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ゾディアック('07アメリカ)-Jun 17.2007
[STORY]
1969年7月4日アメリカ独立記念日。カリフォルニアで若いカップルが銃撃され女性が死亡し男性が重症を負った。それから約1ヶ月後、サンフランシスコの新聞社に一通の手紙が届く。それは7月の事件を含め2件の殺人事件の犯行声明だった。犯人は自らを“ゾディアック”と名乗り、暗号文も添えられていた。記者のエイブリー(ロバート・ダウニーJr.)と漫画家のグレイスミス(ジェイク・ギレンホール)、そして事件を担当することになったサンフランシスコ市警のトースキー(マーク・ラファロ)とアームストロング(アンソニー・エドワーズ)は、まるで取り憑かれたように事件を追いかけるようになる。
監督デヴィッド・フィンチャー(『パニック・ルーム』
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実際に起こった未解決事件をテーマに、事件に取り憑かれた男たちを描いた作品。原作は本作に登場するロバート・グレイスミスが1986年に出版した同名ノンフィクション。第60回カンヌ国際映画祭正式出品。

作品のカラーは違うけど、展開が『殺人の追憶』に似てると思った。浮かんでは消えていく容疑者、事件にのめり込み神経をすり減らす男たち、最有力容疑者のDNA鑑定の結果がシロ――等々。ただ、あちらの映画は創作部分も多く迷宮入りで終わってしまうが、こちらの映画は遺留品も多く目撃者も命拾いした被害者もいるため(湖で被害に遭ったカップルの男性ブライアン・ハートネルが本作にカメオ出演している)できるだけ当時と同じに見えるよう頑張ったそうだ。そして映画の中でさりげなく犯人についてある仮説を披露している。これが正しいかどうかは分からないけど(ちょっと無理がある気もするが)うやむやで終わらせるよりはハッキリしてて良い。

上映時間が2時間37分と長いが、それでもずいぶんカットしたんじゃないだろうか。何せ最初の事件が今から30年以上も前で、事件と事件の間が数年空いていたりするので、ぶちぶち切れて映画らしい流れがない部分もあり、事件のことをあまり知らなかった自分にとっては不親切だなぁと思う部分もあって消化不良。もう少し長くても飽きずに見れただろう。
そして当時は科学捜査もプロファイリングもなく捜査は杜撰。頼みの綱は筆跡鑑定と指紋照合だけ。容疑者に自白を強要しないだけマシという程度。現在の捜査方法と比べると何とももどかしくなる。でも科学が発達した現代でも未解決事件はあるわけで、いまゾディアック事件が起きたら解決できるのか?というと・・・やっぱり解決できないかもしれない。

この事件に深く関わった男たちについても同じことが言える。ゾディアック事件に関わったからエイブリーはアル中になり、グレイスミスは妻子に家出されたのか?いやそうじゃない、他の事件にのめり込んでやっぱり身を持ち崩したかもしれない。事件前からそういう傾向があることをちゃんと描いていることに私は感心した。ダウニーJr.はこれ以上ないくらいのハマリ役です(笑)この役をオファーしたほうも受けた本人も素晴らしい。ギレンホールは今回いまいち。もっとグレイスミス中心に物語が動いていくと予想していたんだけど、思ったより出番がなくて逆に驚いた。ラファロは元々好きではないしトースキーより相棒のほうが気になる思ってたら、グリーン先生だったとは!髪の毛あるから分からなかった(おい)あと妙に印象に残っているのがグレイスミスに資料を見せてあげるジャック・マラナックス巡査部長(イライアス・コティーズ)でした。
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