Movie Review 2004
◇Movie Index

エレファント('03アメリカ)-Apr 10.2004オススメ★
[STORY]
オレゴン州ポートランド郊外の高校。
アル中の父とともに学校へやってきたジョン(ジョン・ロビンソン)は、兄に父を見てもらおうと電話を掛ける。
写真部のイーライは、美大へ応募するための写真を撮りつづけている。
アメフトの練習を終えたネイサンは、ガールフレンドのキャリーに会うために廊下を急ぐ。
内気なミシェルは体育の授業の後、他の子の目が気になってシャワーも浴びぬまま、図書館へ向かう。
そしてアレックスとエリックは、銃を持って高校の中へ入っていく・・・。
監督&脚本ガス・ヴァン・サント(『サイコ』
−◇−◇−◇−
2003年カンヌ国際映画祭パルムドールと監督賞を受賞。1999年コロラド州コロンバイン高校で起きた銃乱射事件をテーマにした作品で、キャストのほとんどが役者経験がない一般高校生で、選ばれた出演者たちの体験したことなどをセリフに盛り込んでいったという。製作総指揮は女優のダイアン・キートン。

見終わった直後は「ボウリングが出てこなかった」(『ボウリング・フォー・コロンバイン』)と、アホみたいな言葉しか出てこなかったんだけど、後からじわじわと映画の映像が甦ってきて、今はあの綺麗な青空がやけに印象に残っている。

この映画のタイトルの意味は“群盲象をなでる”という仏教用語からきているという。盲目の人々が象の一部分にふれた時に、柱だヘビだと勘違いし、象に辿り付くことができなかったという話だ。そのタイトル通り、映画では犯行に及んだ少年たちを見ることはできるが、彼らの心の中は全く見えない。犯人の1人アレックスが同級生からいじめられているシーンが少しあるが(実際の事件の子たちもいじめに遭っていたらしいが)いじめが理由で犯行に及んだとは思えない。それならば彼をいじめていた子を真っ先に探して殺していたはずだ。彼らがやったことは復讐だとか怒りを爆発させたとか、そういう分かりやすい理由ではないんだろう。通常では理解できない事件が起こった時、マスコミたちは専門家やらコメンテーターたちに理由を求め、自分たちが納得できる原因らしきものを見つけたら安心して次の話題に移る。果たしてそれでいいんだろうか。あ、上でいじめが理由ではなさそうと書いたが、いじめが理由なのかもしれない。それは本当に、当人たちにしか分からないのだ。

この映画はTV画面とほぼ同じスタンダードサイズで、カメラは高校生たちの背中をしつこいくらいに追いかけていく。それぞれの日常のほんの数時間を、飽きるほどに見せる。広い学校なのに息苦しいほどに狭く感じるし、高校生たちが喋っている声が雑音となって反響し、それがさらに苦しくなるところも、この小さなスクリーンだからこそ強く感じたのかもしれない。そして、その日常があっという間に崩れていく様を見せられ、言葉を失う。最後は自分にも銃口を向けられてんじゃないかと錯覚するほどだった。

まぁ真面目に書くとこうなんだけど、一方でこんな感想も。高校生たちの日常に飽きて眠くなってきた頃、アレックスとエリックの登場で、急に別の映画を見ているような気分になった。悪いけど「一体誰が殺されて誰が生き残るのか?」って、サバイバル映画を見てるかのようにドキドキしながら見守った。・・・で、やっぱり美少年好きで女の子キライなのかな?などと思ったりもしました(アハ)
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ハッピー・フライト('03アメリカ)-Apr 10.2004
[STORY]
田舎町で家族とトレーラーハウスに暮らすドナ(グウィネス・パルトロウ)は、ある日テレビでスチュワーデスで大成功したサリー(キャンディス・バーゲン)を見て一発奮起!地元のマイナー航空会社に就職する。でもドナの目標は有名航空会社の国際線ファーストクラスのスチュワーデス。そこで同僚たちと大手であるロイヤリティ航空のスチュワーデス養成面接を受けて合格し、初めて町を出る。そしてちょっと変わった教官ホイットニー(マイク・マイヤーズ)の厳しい訓練を受ける。ドナはそこで着実に成長し、最終試験も完璧だったが・・・。
監督ブルーノ・バレット(『N.Y.殺人捜査線』)
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オスカー受賞以降、どうも作品に恵まれない・・・と言われているグウィネスさんのロマコメ。本作でも自分と同じ金髪女優の髪を染めさせたり首にしたりと相変わらずなようですが、私は好きなのよね。やっぱり表情がいい。ちょっと困ったように眉をハの字にしてうふふと笑うところが好き。逆にガハハ笑いの女優は苦手だ・・・。

日本みたいにキャビン・アテンダント(以下スッチー)という職業が花形ではないアメリカで(高卒か高校中退くらいで採用され、飛行機の中にいるウェイトレス――という認識)スッチーが主人公って珍しいなぁと思って、まぁ確かに最初は何だかやっぱりスッチーをバカにしてる?って感じだった。でも自分の夢を叶えるために努力するっていう姿勢がちゃんと描かれていて、気持ちのいいサクセスストーリーになってました。顔が薄いせいかビッチなメイクとファッションもかなり似合う(笑)グウィネスが、次第に洗練されてモデルのようなメイクとファッションに変わっていくところも見どころの1つ。ロマコメの王道だけど、主人公が変わっていく姿は見ててやっぱり面白い。とはいえ、ストーリーそのものは引き込まれるほど面白くないしテンポもよくない。ロマコメだからってなめんなよ〜。同じブロンド娘が成功する『キューティー・ブロンド』(のもちろん1作目)ってやっぱり出来が良かったんだなぁと再確認(笑)最後まで悪い奴がいたのも後味悪かったな・・・。

またドナの相手役がダメ過ぎ。『イン・ザ・カット』にも出ていたマーク・ラファロなんだけど、ただでさえ男前じゃないのにヒゲがないとさらに締まりのない顔で、しかもグウィネスより小さいんだもん(メグ・ライアンと並ぶと普通なんだけどね)私はてっきり最初に出てきたパイロットのロブ・ロウが相手役だと思ってて、彼なら『スチュワーデス物語』みたいな組み合わせだしいいじゃんと思ってたのに、彼はただのゲスト出演だった・・・。で、次に出てきたのがコイツ。はっきり言って、ドナが夢にまで見た職業と天秤に掛けるほどの相手じゃないよ。しかもキャラクター的にもつまんなくて魅力なし。まぁこういう映画に出てくる男はみんなこんなもんだけどね。

かわりに頑張ってたのがマイク・マイヤーズ。彼が出ていながらスッキリまとまってる・・・と思ったら、エンドクレジットではカットされた彼のギャグとNGシーンがいっぱい。さすがMIRAMAX容赦ない。フィルムカットの鬼も今回はGood Job!本編外だと思うと、彼のしつこさも許せるもんだね(笑)本編でもしつこい演技があったものの、『愛と青春の旅立ち』のフォーリー軍曹のように、ドナに希望を託して空へと送り出す、いい教官でした。
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殺人の追憶('03韓国)-Apr 4.2004
[STORY]
1986年。ソウルから南へ50キロほどにある農村ファソンで、若い女性の変死体が発見される。地元の刑事パク(ソン・ガンホ)が捜査にあたるが、数日後、同様の手口の新たな犠牲者が出てしまう。事態を重く見た警察はソウル市警のソ(キム・サンギョン)を派遣する。しかし犠牲者はさらに増え、容疑者も次々と浮かびあがるが一向に解決には繋がらない。
監督&脚本ポン・ジュノ(『ほえる犬は噛まない』)
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2003年度韓国NO.1ヒット映画。このファソン連続殺人事件は1986年から1991年の6年間に実際に起きた事件で現在も未解決。この事件は映画よりも前の1996年に演劇として上演され、監督はこの演劇に触発され、また実際の事件を調査した上で脚本を書き上げたという。パク刑事の相棒役と焼肉屋の容疑者は映画でも演劇でも同じ役を演じている。音楽は岩代太郎が担当。

映像的には迫力あるし、出演者がみなエンジン全開演技なのでつい騙されそうになるが、結局何を伝えたかったのかよく分からない映画だった。伝えたいことを絞り込んでいればとんでもない作品になっただろうに、非常に惜しい。

80年代当時の政治的背景によって事件が未解決になったというのであれば、政治家たちや警察内部の事情や軋轢をきちんと描けば良かったのに、出てくる刑事はたった4人きり。警察の体質を批判するような描写もなかった。
とにかくの事件の詳細を知って欲しかったのであれば、犯行シーンやオリジナル部分(特にラジオリクエストのところ)は混乱を招くだけなので入れる必要はなかっただろう。
娯楽として、フィクションとして楽しんでもらえればそれでよかった、というのであれば無能刑事たちをとことん皮肉ったり、パクとソという正反対な刑事の対立と協力するまでを描いたり、上に書いたラジオリクエストや証拠や痕跡でサイコサスペンスに仕立てたりと、いくらでもできただろう。小説版を(立ち)読んでみたんだけど、筆者の薄井ゆうじによるオリジナルだというラストも面白いと思った。ただ映画のラストシーンは捨てがたい。というわけで、おこがましいけど私だったらこうする、を書いてみたい。ネタバレもちょいと含みます。

殺人が起きる。刑事たちが容疑者を捕まえて縛り上げて拷問にかける。次のシーンでは縛られて暴行された新たな死体が見つかる。この繰り返し。犯人も警察もやっていることは同じだということを観客に提示する。結局事件は迷宮入りし、パクは刑事を辞めて裕福な暮らしを始める。ラストでは犯人はいまだに捕まらず普通の生活をしている。そして刑事もまた、幾人もの容疑者の精神をズタズタにしてきたにもかかわらず、のうのうと生きている。そこに気づいて愕然とするパクの顔をぜひとも捉えてもらいたい。“追憶”というからには、やはり最後は自分自身にベクトルを向けて欲しい。映画でのパクの顔は犯人のことしか考えてないように見えた。それは映画全編にわたってそうだったが。だから見た後に空虚な気持ちになったのかもね。「それだけかよ・・・」と。そして「何を伝えたかったんだ?」と思ったわけだ。
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花とアリス('04日本)-Mar 26.2004
[STORY]
荒井花(鈴木杏)は、同じ中学に通う親友の有栖川徹子(蒼井優)が一目惚れしたという男の子の尾行に付き合わされる。そして花もまた彼と一緒にいた高校生の宮本(郭智博)に一目惚れしてしまう。
宮本のいる高校に入学した花はさっそく彼が所属する落語研究会に入部し、仲良くなるチャンスを狙う。そしてある日、彼が頭をぶつけて倒れた時、咄嗟に「先輩は私に告白したのに記憶喪失で忘れてしまった」とウソをつく。そしてそのウソがバレそうになると今度はアリスを巻き込んでしまう。
監督&脚本&音楽・岩井俊二(『四月物語』
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チョコレートのお菓子キットカットの発売30周年記念インターネット限定ショートフィルムの劇場版。ショートフィルム版は未見。

事前に情報チェックをほとんどせず、花もアリスも下の名前だとずっと思っていたので「アリスなんて恥ずかしい名前をつけんなよ」なんて苦々しく思っていたわけだ。しかし見始めてすぐ有栖川という苗字からきてることが分かりホッとする。しかもアリスは両親が離婚する前は黒柳という苗字だったようで、そしたらタイトルが『花とタマネギ』になった可能性も?(いや、ないだろうが)
あと駅名に漫画家の名前が使われていたりと小ネタもちりばめられているし、芸能人が多数出ているので(声だけの人もいる)それを見つけて楽しむのもアリ。ワタシ的には芸能人が出るたびに現実に引き戻されてしまってダメだったけど・・・。

物語は花が宮本にウソをつき、それがバレそうになるとアリスに協力を求める。しかし宮本はアリスのことを好きになってしまう。その微妙な三角関係が中心で主役ももちろん花、と思いきやアリスのシーンのほうが多かったし面白かった。花のほうはついたウソがイタくて宮本が気の毒に思えてしまってダメだったな(花は活発な女の子に見えるけど実は・・・という設定のせいでもあるが)

アリスのほうは両親が離婚して自分が家事をやってたり、スカウトされて芸能事務所に入るがオーディションに落ちまくったり、たまに会う父親への想いが切なかったり、といろんな面を見せてくれて飽きさせない。しかも顔の表情が豊かで、ブサイクな表情も可愛いんだ。そして圧巻はバレエシーン。今までさんざんオーディションでの失敗を見せられてきたせいか、彼女のバレエをカメラマンたちが口を開けて見てるのを見て、誇らしい気持ちになったほど。どうよ?アリスは本当はすごいんだからね!と(笑)

しかしこんな女の子2人の間に立つ宮本という男の子は謎な存在だったな。演技力ゼロでOKな覇気のないモゴモゴ喋りなのに、落研に所属して寿限無を暗記しているアンバランスさ。女の子にぐいぐい手を引かれたり、卒倒してしまうあたりは男の子というより乙女扱いだよな。花もアリスも男前なので余計に。こういう男の子がモテるというのは時代が変わったせいだろうか・・・などと年寄りくさいことを言ってみたりして(笑)でもあまりにも彼の内面が見えないせいで、彼の最後の言葉も「ん?どういうこと?」と首をかしげてしまった。その前から彼の気持ちが少しでも出ていれば分かったんだろうけど、あそこでいきなり言われてもなぁ。いいシチュエーションなだけに、説得力のある持って行きかたが欲しかったと思う。

それとシーンによって映像が綺麗だったり汚かったりとムラがあったのが気になった。ショートフィルム版と劇場版とで違いがあったのかな?確認のためにショートフィルム版が見たくなってきたな。映画版とはまた違った味わいがありそうだ。
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きょうのできごと A DAY ON THE PLANET('03日本)-Mar 20.2004
[STORY]
京都の大学院に進学した友人宅に中沢(妻夫木聡)と恋人の真紀(田中麗奈)、そして中沢の幼馴染で真紀の友人けいと(伊藤歩)たちが集まり、引越し祝いが開かれる。そんな中、テレビでは波打ち際に打ち上げられたクジラのニュースや、ビルとビルの間に挟まってしまった男のニュースが映し出される。
監督&脚本・行定勲(『GO』)
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原作は柴崎友香の同名小説。監督にも出演者にもあんまり興味なかったんだけど、映像レーベルGrasshoppa!制作映画第一弾ということで、見に行ってきた。

中沢ら7人の仲間たちのたわいもない1日の出来事と、TVで放送される1日の間に起きた事件。実はそれがほんのちょっぴり繋がっている、というのが面白かった。そして事件のほうも、一方では打ち上げられたクジラをたくさんの人たちが救おうとしていて、もう一方のビルの壁に挟まったマヌケな男には誰も目をくれないという、現実でもありそうな事態になっているのに笑ってしまう。

また、中沢たちのことをたわいもないことと書いたが、彼らにとってみれば一大事なできごとも起きている。例えば彼女から電話が掛かってきたとか、彼女と喧嘩したとか、目をつけていた男の子とおしゃべりできたとか、直しようがないほどに髪の毛を切られてしまったとか・・・(←このシーンは本当に面白いので必見)

とはいえ、主役の中沢が全然活きてない映画だったなぁ。彼的には何か大事件が起きたんだろうか。真紀のことを友達に自慢するほどの男らしいが、ホントか?こう言ってはナンだが、可愛いと連発するほど田中麗奈は・・・(げほげほ)声とか喋り方は可愛いし、中沢と幼馴染のけいとの仲良しぶりに少し妬いてるところもいい。でもはっきり言って顔は・・・(ごほごほ)また中沢という奴は、映画を撮りたいと言ってるワリには何もしそうにない男なので、真紀に対する言葉もウソっぽくて信用できなかった、と思ったのは私だけだろうか?(笑)

個人的にコイツはいいな、と思ったのは仲間の中で一番目立っていない坂本(石野敦士)だった。自分の食べたいものをさっさと食べて、フッ、と姿を消したかと思うと1人TVを見てたりゲームをしてたりと果てしなくマイペース。いるいるーこういう人。顔の普通さもあいまって、一番リアルなキャラクターだと思った。こういう人を配置して、なおかつ彼になにも役割を与えないというのがポイント高い。素晴らしい。

逆に、クジラと制服の女子高生。この組み合わせでポイント急降下。しかも女の子は自殺しようとしているときにクジラに出会うわけ。裸足になって一生懸命クジラを助けようと、男たちに混じって綱を引くわけ。く〜〜!最悪。こんな痒いポエムみたいなシチュエーションは勘弁願いたかった。これさえなければけっこう好きな映画になったのになあ。残念。
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