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伝説の旅 ◆宗谷村のヤマセ石 |
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北海の最北端がオホーツクの荒波に向かって突き出ている宗谷岬の近くに、オラムナイという小川がある。この沖と磯に散らばっている岩に残された伝説がある。
昔オラムナイよりも宗谷の町によったところ、ピリカタイというところに住んでいた若いアイヌの夫婦があった。或る年その夫が酋長の魚場に雇われて働いているうち、酋長の娘と恋仲になり、二人はしめし合わせて樺太へ渡ろうとして小舟に小さな帆をつけて逃げ出した。ところがピリカタイにいた妻がそれを発見して、夫の名を呼びながら磯づたいにオラムナイの方へ追っていったが、舟と陸ではなんとも追いつく方法がなく、悲しみのあまり子供を抱いてオラムナイの海に投身してしまった。すると今まで吹いていた追風の東風がぴたりとやんでしまい、舟は思うように動かなくなってしまったので、「ヤマセ、ヤマセ」と二人は東風を呼んだが、逆に西の烈風が激しく吹き出して大波が逆巻き、小舟の姿はたちまちその波間に呑み込まれてしまった。その翌朝、オラムナイの河口の沖に二つの大きな岩が現れ、海岸にも子供を抱いたような石が現れた。そして沖の石は風が吹き出すと「ヤマセ、ヤマセ」と呼ぶことがあるという。それで沖の二つの岩は身投げしたメノコの夫と酋長の娘が岩になったのだといい、「ヤマセ」と呼ぶ声がするので、一つを東風(ヤマセ)石といい、一つを女郎岩と呼び、磯にある石を子持岩と呼んでいる。(北海道庁編「北海道の口碑伝説」)
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