星条旗は自由の証ではない! 変貌するアメリカ映画の新しいヒーロー ピーター・フォンダが再び叩きつけた 自由への叫び!(公開当時のコピー)
映画が撮られたころ実際に存在した有名な暴走族「ヘルズ・エンジェルズ」を、ロジャー・コーマンがドキュメンタリータッチで描いた映画。マーロン・ブランドとリー・マーヴィンが出演した『乱暴者』(54)で、エンジェルズはすでに取りあげられていたが、この映画はエンジェルズに怯える町の住民の側から描かれたものにすぎなかった。コーマンが『ワイルド・エンジェル』で試みたのは、本物のエンジェルズのメンバーたちを起用し、彼らのなかにピーター・フォンダやブルース・ダーンなどの役者を飛び込ませ、すべてをエンジェルズたちの視点からありのままに描くという、それまで誰もやったことがない映画作りだったのである。 バイクに乗ったナンシー・シナトラが見れるだけで、ファンには涙ものだろう。
警官に撃たれて死んだメンバーの葬儀を行うためにエンジェルズたちが教会に集結するシーンでは、説教をたれる牧師にピーター・フォンダが空手チョップを食らわせると、たちまちあたりは混乱し、葬儀は欲望むき出しの乱痴気騒ぎへと変貌する。エンジェルズたちは死体(ブルース・ダーン)にナチスの格好をさせて椅子に座らせ、代わりに牧師を柩のなかに押し込めてビールを浴びせる始末。手持ちキャメラを使ってなかば即興で撮られたこの場面は、いま見ても鬼気迫る。
当時は組合に入っていなかったからクレジットには名前はでていないが、脚本は若き日のピーター・ボグダノヴィッチが8割方書き直したものだという。撮影時のエピソードは数多いが、詳しくはロジャー・コーマンによる痛快な自伝『私はいかにハリウッドで100本の映画を作り、しかも10セントも損をしなかったか』を参照のこと(この本は、すべての映画好きにお薦めできる、最高に愉快な本です)。ひとつだけ挙げると、この映画の撮影中、警察が盗聴やスパイを使ってエンジェルズたちを監視していたという驚くべき裏話がある。警官殺しの容疑で手配されているエンジェルズのメンバーを逮捕するためだったらしいが、150人ほどの工作員が導入され、街なかの車中の人物を演じたエキストラの女性も工作員のひとりだったというから、コーマンは警察までただで出演させていたことになる。
この映画はコーマン自身が驚いたほど大ヒットし、バイカー映画というニュージャンルを生み出す。『爆走! ヘルス・エンジェルス』など類似品がつぎつぎと作られた。
『ワイルド・エンジェル』Wild
Angel
1966/アメリカ/シネスコ/カラー/83分
監督:ロジャー・コーマン 出演:ピーター・フォンダ、ナンシー・シナトラ、ブルース・ダーン
画質: | 普通 |
字幕・音声: | 日本語字幕のオン・オフのみ |
特典映像: | オリジナル劇場予告編/ポスター集など |
その他: |
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