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潜行者

レビュー

『決断の3時10分』のデルマー・デイヴスによるフィルム・ノワール。妻殺しの無実の罪を着せられた男が脱獄して、見知らぬ若い女性の家に潜伏する。彼は自分の無実を証明しようとするが、彼の行く先々で人が死んでいき、状況はますます不利になって行く、という内容。原作は『ピアニストを撃て』のデイヴィッド・グーディス。主役の男女を演じているのが、ハンフリー・ボガートとローレン・バコール。残念ながら、『脱出』の黄金コンビをもってしても、映画は傑作にはならなかったが、見るべきところはいろいろある。

サンフランシスコでの屋外撮影、フィルム・ノワールには珍しいハッピー・エンドなど注目すべき点は多いが、何といってもこの映画を有名にしているのは、冒頭の長い一人称キャメラだろう。主人公が追跡を逃れるために整形手術で顔を変えるまで、主人公の顔が一度として画面に映らず、ひたすら彼の目線からすべてが撮られているのである。たしかに、この手法によって主人公が顔を変えることの衝撃度が増しているとは思うが、いま見ると珍しい実験だという感想しか浮かばない。当然ながら、最初、ジャック・ワーナーがこの手法に反対したため、この企画はいったん没になった。デイヴスがこの話をロバート・モンゴメリーにし、モンゴメリーが全編この手法を使ってMGMで『湖中の女』を撮ることになった、といういきさつがあったらしい。ワーナーはMGMがそういう大胆な企画を試みたのを見て、考えを変え、デイヴスにゴーサインを出したというわけである。

前半の一人称キャメラのシーンでは、誰もかれもがキャメラをまっすぐ見て話しかけてくるので、道行く他人までもがこちらを知っているかのような陰謀めいた雰囲気がかもし出され、不思議な効果を上げている。

データ

『潜行者』Dark Passage
1947年/アメリカ/35ミリ/モノクロ/106分

監督・脚本:デルマー・デイヴス 撮影:シド・ヒコックス 音楽:フランツ・ワクスマン
出演:ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール、ブルース・ベネット、トム・ダンドレア、アグネス・ムーアヘッド

潜行者

 
画質: 非常に良い
字幕・音声: 英語・スペイン語、その他多数
特典映像: オリジナル劇場予告編/映像付き作品解説/アニメ「Bugs Bunny」の一編(ボギーとバコールをパロディにしたもの)
その他:

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