Movie Review 2009
◇Movie Index
ディア・ドクター('09日本)-Jun 27.2009
[STORY]
小さな村の医師、伊野(笑福亭鶴瓶)がある日突然失踪した――。
2ヶ月前、伊野の元に、医大を卒業したばかりの相馬(瑛太)が研修医としてやって来る。最初は困惑する相馬だったが、伊野の働きぶりや村の人々と接するうちに次第にやり甲斐を感じていく。
そんなある日、鳥飼かづ子(八千草薫)という一人暮らしの女性を診療することになった伊野は、彼女から病気のことを知られたくないので嘘をついてほしいと頼まれる。伊野は承諾するが、それが彼自身を追い詰めることになる。
監督&脚本・西川美和(『ゆれる』
−◇−◇−◇−
原作は西川本人が著した『きのうの神さま』で、第141回直木賞の候補となった。

本作も非常に評価の高い映画だけど、やっぱり私には物足りなさが残った。『ゆれる』は脚本に納得いかないところがあっていまいちだったわけだが、本作はストーリーには破綻はなく上手くまとまっているんだけど、まとまりすぎてちっちゃくなったというか、もうちょっとガツッとしたところが欲しかったなぁと。医者が失踪したところから始まるという掴みが上手いだけに、いろいろ期待しすぎたのかもしれない。

突然だけど鶴瓶はよくフォレスト・ウィテカーに似ていると言われている。ウィテカーも人のいい役から『ラスト・キング・オブ・スコットランド』のアミン大統領を演じたりと、人懐っこそうなタレ目の奥が意外と怖いところが鶴瓶と共通していたりする。鶴瓶もTVドラマではヤクザや暴力を振るう男を演じているし、この映画でもいい医者のようで実は黒い部分を覗かせてくれるのではと期待してしまっていたのだ。

それが真相が明らかになるにつれて伊野が人間臭い、やっぱり人情味のある男であることが分かって、医療の問題や伊野を取り巻く人々の心情には引き込まれたものの、伊野本人への興味は徐々に薄れていってしまった。彼が村の医者になった経緯がはっきりしないのも(刑事が報酬の高さを口にするシーンがあったり、伊野の父が医者だったことなど、いくつかのそれらしい理由はあるが)私には残念な箇所だった。そこが欠落していることで全体的にぼわんとした映画になったと思う。伊野を、ふらりとやってきて信頼を掴んだかと思えばパッと消えた男として描きたかったという意図は理解できるのだが。それならラストの登場は余計な気もするし・・・何か小物で来たことを伝える程度でいいような・・・うーん。

またもや厳しいことを書いてしまったが、冒頭の白衣が投げ捨てられているところや、アイスが溶けるシーンなどの演出はやっぱりいいし、余貴美子と香川照之もやっぱりいい演技なのよ。 そして映像の色も改めていいと思った。田舎の明るいところと暗いところのバランスが良くて、この人の映画には街よりも田舎の風景が似合うんだな。そういういいところもたくさんあるから何かもったいないと思っちゃうんだよねー。次回作こそ自分好みの映画だといいなぁ。
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トランスフォーマー:リベンジ('09アメリカ)-Jun 20.2009
[STORY]
前の戦いから2年。オプティマス・プライムらオートボットたちはアメリカ軍とともにディセプティコンの残党を退治していたが、上海で倒したディセプティコンが謎の言葉を遺す。
一方、サム(シャイア・ラブーフ)は大学に入学することになり、引越しの準備を始めていた。すると2年前に着ていたパーカーが見つかり、中からオールスパークの欠片を見つけてしまう。サムはガールフレンドのミカエラ(ミーガン・フォックス)に欠片を預けて大学に向かうが・・・。
監督マイケル・ベイ(『トランスフォーマー』
−◇−◇−◇−
前作と同じスタッフ、キャストによる続編で、今回は60体ものトランスフォーマーが登場する。ストーリーは前作の続きだが、今回新たに分かる事実もある。

1作目で「もういいや」と思っていたんだけど、オートボットがトランスフォームするタブレットケースが前売り特典だったため、つい買ってしまったのだ(いい歳してコドモ過ぎるぞ自分)

前作とよりも映像のクオリティはやっぱり上がっているんだなと感じた。砂煙などで誤魔化していたようなところを今回ははっきり見せるシーンが多いように見えたし、トランスフォームするところがより凝っているなぁと。このCG作っている人はすっごい楽しんでやっているんだろうなぁ(笑)でもトランスフォームするシーンも戦闘シーンも見慣れてくるとワンパターンで、最後は戦うシーンの長さに疲れてしまった。同じようなトランスフォーマーも多くて見分けがつかなくなっていくし。その中で人間に擬態するトランスフォーマーは新鮮だったけれど、これができるならもう無敵なんでは?つーかまるっきり『ターミネーター』じゃん(笑)

前作は冴えないサムが戦いによって逞しく成長してミカエラと恋人同士になったという、王道パターンではあるけどそこそこ楽しめるようになっていた。でも今回はバカップルが勝手にやってなさい、って感じでただウザイだけ。痴話ゲンカとか意地の張り合いとかどうでもいいっス。2人の関係に危機が訪れて再び愛を確かめ合うっていう設定はいいんだけど、薄っぺらく見えてしまったのが残念。あとトランスフォーマーたちの謎もどうでもよかったっス(おいおい)
まぁ私としてはシモンズ(ジョン・タトゥーロ)がこの映画に出てくれたことと、レノックス少佐(ジョシュ・デュアメル)がカッコ良かったので許す(何様)シモンズは今回大活躍したので、パート3では新たに国の重要セクションで働いているかもしれない。そして勝負パンツを見せてくれるだろう。パート3こそ「もういい」と思っているのだけれど、シモンズの行く末は見守りたいなぁ。あと前売り券の特典による(だからいい歳してコドモか!)
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ターミネーター4('09アメリカ)-May 19.2009
[STORY]
2018年。超高性能コンピューター“スカイネット”による核攻撃を受けた後の世界。
レジスタンスの部隊長となったジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)は、スカイネットが人間を生け捕りにしてターミネーターを開発していることを知る。一方、ロサンゼルス郊外でマーカス・ライト(サム・ワーシントン)という男が目を覚ました。彼は囚人で死刑になるところまでの記憶しかなく、荒れ果てた光景に戸惑っていた。そんな彼にターミネーターが襲い掛かるが、カイル・リース(アントン・イェルチン)という少年に助けられる。
監督マッグジー(『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』
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『ターミネーター』シリーズの4作目。当初『ターミネーター3』はなかったことになり、パート2からTVドラマ『ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ』を経てパート4に続くという噂があった。が、れっきとしたパート3からの続編であり、ドラマ版のほうがパラレルワールドということになった。今後もパート5、パート6まで続くという(コナー役のベイルもパート6まで契約したとか。主役のキャストが代わるのはイヤなので良かった)

このシリーズはジェームズ・キャメロンの手を離れた時点で終わってるというファンも多いけれど、私個人としてはパート3のラストシーンにある種感動を覚えたし、最終的にスカイネットと人間との戦いにどう決着がつくのか見届けたいと思っている。パート3で登場したT-Xが2032年製ということだから、そこまでは確実に戦いは続くということだ。T-800やカイル・リースが過去へ向かうところも見てみたい。それにしても本作のカイルを演じたアントン・イェルチンは、パート1のカイルを演じたマイケル・ビーンの面差しを思い出させるルックスでピッタリなキャスティングだ。今後は彼がそのまま演じるのか、それとも別の役者になってしまうのか気がかりだが、すぐ成長するだろうからできれば同じ役者で続けていってもらいたい。

ストーリーについては、私はもう辻褄合わないとかそういうのは気にしないようにしている。ツッコミ始めたらキリがないし(というか、ぶっちゃけ面倒くさい(笑))でもそれらを抜きにしても、それほど面白くなかったなぁ。2018年の世界というのが、やっぱり『マッド・マックス』の世界なのね。あと『バイオハザードIII』と似たようなシーンもあって、本作を見ながら「あれ?このガソリンスタンドのシーン、前に見たことあるような・・・」と既視感。もうちょっとオリジナリティがあってもいいのにね。前作のカーアクションのような「これはすごい!」と言える見どころもないし。あ、あの某州知事が登場するところは見どころかな(笑)

ジョン・コナーもまだこの映画ではカリスマ性がないので、パート5以降に期待したい。見ますよ、これからも。
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レスラー('08アメリカ)-May 14.2009スバラシイ★
[STORY]
1980年代にアメリカで人気レスラーだったランディ(ミッキー・ローク)は現在は落ち目で、スーパーでアルバイトをしながらリングに上がっていた。だがある日、長年ステロイドを使ってきたせいで心臓発作を起こしてしまう。手術後、ランディは医者にリングに上がることを禁じられる。すっかり弱気になったランディは馴染みのストリッパー、キャシディ(マリサ・トメイ)に相談する。彼女から娘に会うよう説得されたランディは会いに行くが、冷たく拒絶されてしまう。
監督ダーレン・アロノフスキー(『ファウンテン 永遠につづく愛』
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当初、制作会社は主演にニコラス・ケイジを起用するよう指示したが、アロノフスキーはローク主演で譲らず、そのため制作費は大幅に削られ、映画祭出品時にはアメリカでの配給会社さえ決まっていなかったという。その映画が第65回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞。主演のロークは第66回ゴールデングローブ賞で主演男優賞など数々の賞を受賞。アカデミー賞にはロークとトメイがノミネートされたが受賞はならなかった。
映画には現役レスラーのディラン・サマーズや、元レスラーのアーネスト・ミラーらが出演している。

『ファウンテン』は「やっちゃった!」だったアロノフスキーですが、今回は「やってくれた!」でした。ロークの起用は大成功。スタジオ側の要求を呑まずに意思を貫き通して本当に良かったね。役者には、役を自分に近づける人と、自分が成りきってしまう人がいるというが、本作の彼は身体作りでレスラーとしての成りきり度を上げ、そしてローク自身の人生をランディに重ね合わせたような絶妙な演技を披露してくれた。オスカーは受賞できなかったけど、個人的には男優賞決定だ!

ストーリーがまためちゃくちゃ切ない。ランディは客観的に見ればどうしようもない男だ。おそらくスターだった頃は稼いだらすぐに仲間たちと豪遊したり、酒やドラッグや女に溺れたり、家族を省みず、翌日またリングに立つという毎日を送っていたのだろう。若いうちはそれでもよかった。けれどプロレス人気が下火になり、怪我や薬物摂取の後遺症が出て、家族が離れ、暮らすだけで精一杯。中には副業で成功したレスラーもいるというのに(車椅子生活の元レスラーもいるが)アリとキリギリスのキリギリスみたいだ。でもそういう生き方しかできないから彼はスターだったんだろうな。ファンの期待には十二分に応えサービス精神も旺盛。そして自分を引き立ててくれたレスラー仲間をねぎらうことを忘れなかっただろう。ひょっとしたら金に困ったレスラー仲間に気前よく金を貸したりした時期もあったかもしれない。だから今でもあんなに慕われているんだと思う。映画の中ではランディの過去については最初に新聞記事で紹介するだけで詳しい説明などないのだが、こうして見てるほうが想像できるということは、それだけしっかりした人物像を脚本家と役者が作り上げたということだ。

同じようにキャシディという女の人物像もしっかりしている。ストリッパーとしてはもう限界を過ぎている年齢だが、息子を育てながら懸命に生きている。ランディの優しさには惹かれるものの、彼の恋人になったら今よりずっと傷ついたり苦労すると分かっている。もう夢や情熱だけで突っ走れる歳を過ぎてしまったのだ。ランディを支えてあげてほしいと個人的には思ったけれど、ためらう彼女の気持ちもよく分かった。トメイの演技も素晴らしかったな。彼女にも個人的に助演女優賞をあげたい。

私はこの監督の『レクイエム・フォー・ドリーム』でも「やってくれた!」と思ったんだけど、あの映画はドラッグに溺れてしまった愚かな人たちを冷静に捉えている理知的な映画だった。でも本作は同じようにダメな人間を描きながらも、そういう人生しか歩めない人もいるんだよ、と優しく言われているような温かみを感じた。前作『ファウンテン』ではまだ半分くらい理性が勝っていたものの、妻への愛という感情も溢れていた。あの映画を撮らなければ『レスラー』もこんな傑作にならなかっただろう、と思うわけですよ(でもあの映画はやっぱり「やっちゃった」だけどね)というわけで、これからさらに素晴らしい作品を撮るであろうアロノフスキーの新作を楽しみに待ちたい。
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ハゲタカ('09日本)-May 12.2009
[STORY]
大空電機の騒動から4年後、芝野(柴田恭兵)は、アカマ自動車に役員として迎えられていた。だが、ブルー・ウォール・パートナーズというファンドの劉一華(玉山鉄二)がアカマ自動車にTBOを宣言する。そこで芝野はかつて“ハゲタカ”と呼ばれた鷲津政彦(大森南朋)に助けを求め、鷲津はホワイトナイトとしてアカマ買収を阻止しようとする。
監督・大友啓史(TV版の演出を担当し、映画は初監督)
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本作は2007年2月からNHK総合で放送されていたテレビドラマ『ハゲタカ』(全6話)の後の物語を映画化したもので、原作は真山仁の『レッドゾーン』(ドラマの原作は同作家の『ハゲタカ』と『ハゲタカU』)ドラマに出演していたキャストが映画でも同じ登場人物として出演している。ドラマはギャラクシー賞など国内では受賞多数、イタリア放送協会主催のドラマシリーズ番組部門賞も受賞した。

評判のドラマということは知っていたけれど本放送の時は見ておらず、その後の再放送も見そびれてしまい、実は今年の5月にやった再々放送でようやく全話を見た。確かにこれはハマるわ(笑)もっとガチガチの社会派を想像していたけれど、かなりエンターテインメントなドラマなのが意外だったな、NHKっていう先入観もあったし。とはいえ、決してふざけてはいない。ちょっと強引で現実にはありえない部分もあるけれど、ドラマだからアリかなと思わせるストーリーだった。登場人物たちのキャラクターもはっきりしていて、その独特の演技も見どころの1つだと思った。

さて映画について。134分という長さでちょうどテレビドラマ3話分くらいだろうか。はっきり言っちゃうとドラマで3話連続でやればよかったじゃん、と思った。ストーリーは置いといて、とにかく映像が全く映画じゃない。顔のドアップばっかりで、でっかいスクリーンで見るにはキツすぎる。カットが変わるたびに「近っ!」「近っ!」「近っ!」と何度心の中でたじろいだことか。ドラマの演出家が映画監督になると張り切ってクレーン使ったりヘリ飛ばしたりするけど、そっちのほうが全然いい!と思った。出来上がった映画を見て、監督は本当にこれでいいと思ったんだろうか。ちゃんと大きなスクリーンで見てみた?そう聞いてみたくなった。

内容については、劉というかつての鷲津を彷彿とさせるという設定のキャラクターを登場させ鷲津と対決するという構成なのだが、如何せん玉山は線が細くて私から見て迫力不足。大森はだんだん父ちゃん(麿赤兒)に似てすごい顔になってきて(褒めてます)そんな鷲津が行動を起こすたびにワクワクゾクゾクさせられた(笑)半隠居状態で勘が鈍っているのか、はたまた何か考えあってのことなのか、傍から見れば不可解かつ不快なのだが、大空電機の件などを経て彼を心から信頼するようになった芝野。そして彼の部下の中延(志賀廣太郎)と村田(嶋田久作)の信頼も揺るぎない。彼らはいつもいい仕事するなぁ。三島(栗山千明)は今回はワタシ的にインパクトなし。西野(松田龍平)については、今さら彼にそんなコネあるの?と違和感しか残らなかった。強引にも程がある。

しつこいようだけど、映像がひどくてかなり損してる作品だったなぁ。マンダリンオリエンタル東京もせっかく使わせてもらってるのに、奥行きのない映像でホントもったいない。あのホテルはすぐ隣が日銀本店なんだよね。ホテルから日銀を見下ろす映像は撮れなかったんだろうか。それとドバイもあれ絶対日本だよね(笑)NHKさんの大好きな中国には本当に行ったようだけど。
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