Movie Review 2008
◇Movie Index

ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛('08アメリカ)-May 24.2008
[STORY]
テルマールのカスピアン王子(ベン・バーンズ)は、叔父のミラース(セルジオ・カステリット)に息子が生まれたことから暗殺されそうになる。追っ手を振り切り森へ逃げるが追い詰められてしまい、危険な時に吹くようにと言われていた角笛を吹き鳴らした――。
ナルニアからイギリスに戻って1年。ピーター(ウィリアム・モーズリー)、スーザン(アナ・ポップルウェル)、エドマンド(スキャンダー・ケインズ)、ルーシー(ジョージー・ヘンリー)の4人は角笛の音に導かれ再びナルニアにやってくる。だが、そこは4人が知ってるナルニアではなかった。あれから1300年、ナルニアはテルマール人たちに侵略され、生き残った者たちは森の中で暮らしているというのだ。4人はドワーフのトランプキン(ピーター・ディンクレイジ)とともに森へ向かう。
監督&脚本アンドリュー・アダムソン(『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』
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原作はC・S・ルイスの『ナルニア国ものがたり』の7つからなる物語のうちの第2作『カスピアン王子のつのぶえ』
続編も決まっているようだが、『朝びらき丸 東の海へ』と『銀のいす』をまとめて3章にして、そこで映画化は終わりという噂もある。
(私は原作未読だからよく分からないけど、この7作は時代があちこち飛ぶので映画化しにくいのかもね)

本作はカスピアン王子を前面にフィーチャーして、日本でも王子様ブーム(?)に乗せようと必死な感じだけど、どうなんでしょう?そんなにかっこいいかな、この人。顔は整ってるかもしんないけどどこか間延びしてるっつーか、早く老けそうっつーか、うっすらケツアゴで(おい)ワタシ的には微妙だったのだが、本編を見てより微妙だと思いました。実際、王子はそれほど活躍しません(苦笑)思っていたより言動が子供っぽく、存在感もそれほどなかったのでした。

むしろピーターが大きく成長して凛々しくなったし、私は彼のほうが顔も好みです(笑)ミラースとの一騎打ちは戦闘シーンの中で一番迫力があり、手に汗握りながら見守った。おそらく次回作は出ないと思うので最後の勇姿だったかも。しっかり目に焼き付けた。
前作では反抗期だった次男エドマンドも自分のポジションを確率し、普段は兄たちに従いつついざという時はやる!というステキな男になっていた。ちなみに長男と同じく次回作は出ないであろう長女は色気づいて、次女はフケ専のヒゲ専だったことが発覚!タムナスさんに続き今回もヒゲのおじさまと親しくなりつつ、本命はアスランというなかなかの渋い好みでいらっしゃる(おいおい)

ネタっぽくしてしまったけど、映画は前作と同じくディズニーらしいヌルさがあり物足りないのでついネタに走りたくなっちゃうのだ。血は全く出ないし、すぐ生き返るし、戦いも投石器も飽きたし(おい)それと聖書を下敷きにしている物語なのに、自分が聖書の内容をよく知らないので、物語の根幹やアスランの存在をいまいち理解できてないというのがある。前作のアスランはイエス・キリストになぞらえて、罪を犯した者に代わって一度死に復活した、というわけよね。では本作のアスランは?テルマール人が攻めてきた時、アスランは何をしていたのか、そして何故姿を消したのか、そこが分からない。ナルニアの民が平和ボケして信仰心を忘れたためにアスランも消えたということなんだろうか?宗教と直結してるわけじゃないから深く考える必要はないのかもしれないが、アスランの登場を勿体つけるものだから、考えざるをえなくなってしまった。
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ミスト('07アメリカ)-May 10.2008
[STORY]
郊外の小さな町で嵐が起き、ポスター画家のデヴィッド(トーマス・ジェーン)の家が壊されてしまった。翌日、息子ビリーと隣人の弁護士ノートン(アンドレ・ブラウアー)とともにスーパーへ買出しに出かけたデヴィッドだったが、店の中で警報の音を聞く。そして血を流した男がスーパーへ駆け込んできて叫んだ。霧の中に何かがいて襲われた、だから外へ出るんじゃない、と。外を見ると濃い霧が駐車場を覆っていた。中にいた人々が外へ出ることを躊躇する中、デヴィッドと店員たちは霧の中に不気味な生物がいることを知る。そのことをノートンに話すが信じてもらえず、彼は外に出るという。一方、普段から信仰心の強いカーモディ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は狂信めいた発言をし始める。
監督&脚本フランク・ダラボン(『グリーンマイル』
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原作はスティーヴン・キングの短編『霧』で、ダラボンがキング作品を監督したのは『ショーシャンクの空に』と『グリーンマイル』、そして本作で3本目になる。

キングとダラボンという組み合わせと、予告では感動作であるかのように宣伝していたので、わざわざ前売券まで買って楽しみにしていた作品だ(前売の特典はキーホルダーになるライトだったんだけど、これ使うと巨大虫が寄ってくるのか?!)いやーそれが見終わって相当落ち込みました。まさかこんなストーリーだったとは・・・。ラストが原作と違うということは知っていたので、そのあと慌てて本屋に駆け込み、原作本を読んでみた。・・・なるほどね〜。落ち込みはしないけど、このまま映画にすると中途半端な感じがするし、インパクトはないなぁ。キングがこの映画のラストを気に入り、自分が執筆していた時に思いついていたら使っていただろうと言ったそうだが、その気持ちも分からなくはない。

とは言ってもねー。確かに、どんなに危ない目に遭っても最後はハッピーエンドだったり、強引でも主人公たちだけは助かるという映画ばかり見て、そんなご都合主義作品に嫌気が差した時期もありました(遠い目)でも見たあとは気持ちよく映画館を出ることができて、そのあとの遊びや食事も楽しくできたわけだ。それがこの映画は、見た日も悪かったのだが1日雨で寝るまで気持ちがどよ〜んとしたままだった。あ、でもワタシ的にこのラストはアリ!です。

少し前に見た『クローバーフィールド/HAKAISHA』と似たところが多い作品でもあり、2本纏めて見ると面白いかもしれない。巨大虫なんかそのまんまじゃない?というくらい似てたし、人を噛むところもそっくり。『ミスト』で発生したアレの一部がニューヨークまで行っちゃって大暴れという設定でも納得できる。NYの米軍が事情を知って対処してる感じに見えたので、ひょっとしてあっちの米軍から情報を得てるのかと(膨らむ妄想)

また、『クローバー』では描かれていなかった人間同士の軋轢、宗教に縋ってしまうところなど、敵も怖いが人間も怖い!というところをしっかりと描いていて見ごたえがある。カーモディ本人も怖かったけど、彼女を信じてしまう人々のほうが怖かったなぁ。でもノートンの人物像が雑な感じがしたし、シャッターを早く閉めればいいのにグズグズしていたり、虫が出てきた時も早く電気を消せばいいのにいつまでも見ていたりと、わざと危ない目に遭わせるために迂闊な行動を取らせているように見えてしまい残念だった。この手の映画にはありがちなことだが、全体的に出来の良い映画なだけにわざとらしい演出が気になってしまった。
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湖のほとりで('07イタリア)-May 2.2008
[STORY]
北イタリアの小さな町はずれにある湖のほとりで、少女の死体が発見される。彼女はアンナという17歳の高校生で、ボーイフレンドのロベルトがいたものの、ベビーシッターをしていた赤ん坊の父親コラードとも関係していたと噂されていた。だがサンジオ警部(トニ・セルヴィッロ)らの捜査によってアンナが全く違う少女であることが分かっていく。そんな時、ロベルトの家からアンナの鞄が発見され、ロベルトは逮捕されるが・・・。
監督&脚本アンドレア・モライヨーリ(長編初監督)
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感想は後日。
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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド('07アメリカ)-May 1.2008スゴイ★
[STORY]
20世紀初頭のカリフォルニア。鉱山採掘者のダニエル・プレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、あるとき石油を掘り当てたことから息子H.W(ディロン・フレイジャー)を連れて石油採掘で成功を収めてきた。そんなある日、彼の元にポール(ポール・ダノ)という青年が現れ、自分の村に石油が染み出ているという情報を持ってきた。さっそくダニエルはリトル・ボストンへ向かい、ポールの家族と交渉を始める。だが、ポールの兄弟イーライ(ポール・ダノ)が教会を建てるためだと金額を吊り上げてきた。だがダニエルは彼の言葉を無視し、次々と土地を買占め、採掘を始める。
監督&脚本ポール・トーマス・アンダーソン(『パンチドランク・ラブ』
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原作はアメリカの小説家アプトン・シンクレアの『石油!』
第80回アカデミー賞で、作品賞・主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)・監督賞・脚色賞・撮影賞・美術賞・音響賞・編集賞の8部門でノミネートされ、主演男優賞と撮影賞を受賞した。

凄まじい映画を見た、という感想。主演がダニエル・デイ=ルイス(以下DDL)じゃなかったら、ここまで圧倒されはしなかっただろう。ストーリー展開は独特だし、耳障りな音楽も作品にピッタリ合っていた。出演者抜きにして作品だけ見ても面白さはあったが、やっぱりDDLの力は大きかった。

演技は『ギャング・オブ・ニューヨーク』の時とそれほど変わりはないので、新しいDDLを見た!という感動はないが、どちらの役も靴職人をやっていた時期がいい影響を与えてたんじゃないかと私は思っている。一見、やってることが無茶苦茶なんだけど、彼の中では1本筋が通っている。職人気質なのね。自分の直感を信じて、自分の気持ちに正直だ。そして偽善的なヤツ、嘘をつくヤツ、言い訳するヤツ、取り繕うヤツが大嫌いで、相手が誰だろうが関係ない。何年経とうがキッチリ落とし前はつける。彼の側に立ってみると驚くほどに真っ直ぐなのだ。H.Wへの感情も傍から見たら非情なのかもしれないが、彼は心から愛してたんだと分かる。こんな正直な男はいないなぁ〜と見終わった後で笑いがこみ上げてしまった。最高だよダニエル。
(関係ないけど、ダニエルと『ノーカントリー』のシガーを戦わせてみたいなと一瞬思いました。武器はボウリングとボンベで。)

わざとかもしれないけど、観客がポールとイーライを混同してしまう見せ方は良くないと思うし(2役が悪いと言ってるのではない)、ダニエルの弟だというヘンリーが現れた時のカメラアングルもいかにも・・・という見せ方なのも好きじゃない。ほかにも気になるところはあったけど、彼の作品の中では1番好きな作品になった。今までは評判いいけど自分にはしっくりこない・・・と思っていたので。
あとタイトルが素晴らしい。いろんな意味を持たせているだろうから、訳さないほうがいいだろう。
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つぐない('07イギリス)-Apr 26.2008
[STORY]
1935年イングランド。官僚の娘ブライオニー(シアーシャ・ローナン)が休暇で戻ってくる兄のために劇の脚本を書いていると、姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)と使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)が言い争う場面を目撃する。2人の関係を誤解したブライオニーは、嫉妬心から行き過ぎた行動に出てしまう。さらに屋敷で従姉妹のローラが襲われる事件が起き、現場に居合わせたブライオニーはロビーが犯人だと告発する。ロビーは逮捕され、セシーリアは彼を待ち続けるが・・・。
監督ジョー・ライト(『プライドと偏見』
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原作はイギリスの作家イアン・マキューアンの『贖罪』。マキューアンは1993年の映画『危険な遊び』で脚本を書いており、小説『愛の続き』は『Jの悲劇』の邦題で映画化されている。
第80回アカデミー賞で、作品賞・助演女優賞(ローナン)・脚色賞・撮影賞・作曲賞・美術賞・衣裳デザイン賞の7部門でノミネートされ、作曲賞を受賞した。

世間では評価の高い監督だけど、私は『プライド〜』と本作の2作を見て、やっぱり演出があまり好きじゃないと思った。映像は美しいのだけれど、演出で余計なことをやってダメにしてるなぁと。現代の作品なら面白くなりそうだけど、時代モノでは合ってるとは思えない。本作での違和感は特に、ロビーが手紙を出し間違えたところで映像が逆回転するところ。やりすぎ。ブライオニーから見た出来事と当事者から見た出来事を繰り返し見せるところも、それほど効果的には感じなかった。
でも、作曲賞を受賞しただけあって、音楽の使い方が面白いと思ったし、いつまでも耳に残るものだった。タイプライターを打つ音や蜂の羽音といった、気に障る音に音楽をかぶせることで場面の緊張感をより高めていたと思う。

そして13歳のブライオニーを演じたローナンも強烈な印象を残した。ブライオニーは13歳、18歳、77歳のシーンがありそれぞれ別の女優が演じているのだが、歳を取っても13歳の彼女が透けて見えた。18歳の彼女は姉に謝罪しようとするがなかなかできずにいた。まぁあれから5年しか経っていないし、まだ未熟な18歳なら仕方ない。だが、77歳になっても彼女は謝罪できていなかった(不幸な出来事があったが、それは今となっては言い訳にすぎない)小説で真実を告白してもそれは償いにはならない。小説の中ではセシーリアとロビーが結ばれたことにしたが、それも償いにはならない。単に小説の中に逃げただけだ。3つ子の魂100までとはよく言ったもので、77歳になっても何にも変わってないわけだ彼女は。
・・・と、偉そうに書いてしまったけど、ブライオニーの一連の行動は理解できるし共感できるところもあった。それにそう簡単に罪は償えるものじゃない。たとえセシーリアとロビーに謝罪して真実が公けになったとしても、それで償ったことにはならなかっただろう。贖罪はできないものだということを描きたくて、著者はわざとこのタイトルを付けたのかもしれない。
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