Movie Review 2006
◇Movie Index

嫌われ松子の一生('06日本)-Jun 2.2006スゴイ★
[STORY]
平成13年。荒川の河川敷で女の他殺体が見つかった。身元は川尻松子(中谷美紀)53歳。松子の甥である笙(瑛太)は、松子の部屋を片付けながら、その生涯に興味を持つようになる。
昭和22年に福岡県で生まれた松子は教師となるが、ある事件をきっかけに辞職し家を出る。その後、次々と不幸が彼女を襲う。作家志望の男と同棲するが自殺され、妻がいる男に捨てられ、トルコ嬢となり、同棲していた男を殺して服役、出所後はヤクザとなった元教え子の龍(伊勢谷友介)と同棲を始めるが・・・。
監督&脚本・中島哲也(『下妻物語』
−◇−◇−◇−
原作は山田宗樹の同名小説。映画化が決まる前、本屋で平積みされているのを見つけて手に取ってみたことがあるんだけど、あらすじを読んですぐに本を置いてしまった。次々と酷いことが主人公の身に起こる話は苦手なのだ。子供の頃、病院の待合室にあった『あゝ無情』をどんな話か知らずに読んでしまってものすごいショックを受けたことがある(途中で読めなくなってしまい、話の続きは大人になってから知った(笑)) だから『松子』も読んだら同じように落ち込むに違いないと思ってやめたのだった。
そんなわけで中島哲也が映画化すると聞いて、好きな監督なのに映画見られない!とガッカリしていたんだけど、『下妻』を一緒に見た友人から誘われて見てしまった(誘われなくても結局見たと思うんだけどね)

カラフルでポップな映像と個性的な役者、小ネタなどを挟み込みながら松子の転落人生を見せていく。真面目にジットリと描いていたら身構えて見てしまっただろうが、見やすい映画に作って丸ごと観客に食わせるなんて、何て意地悪な監督なんだろう!って思った(もちろん褒め言葉)口当たりがいいからパクパク食べてしまうが、しばらく経ってから毒だと気付いて痛み出す、そんな映画だった。

転落のキッカケとなった盗難事件は正直今でも違和感があって、松子の行動が全く理解できない。そこから先もすべて選択を誤っていて自業自得で、ホントにこんな女いるのか〜って思うんだけど、ワイドショーを賑わせる女犯罪者を見ると、昔は松子のような道を歩んでいたのかな、なんて考えてしまうようになったり。理解できない行動を取るからこそ、こういう人生を歩んでいるわけで、別に共感を求めているわけではないんだよね。だから全く共感できない部分はわざとポップな映像や歌を盛り込んだのだろう。

しかしその中で、共感できる部分、共感してほしい部分は真面目に演出していて、破天荒な松子を引き気味に見てても要所要所でグッと心を掴まれてしまう。例えば父親に愛されてないと感じて妹に嫉妬するシーン。父の愛情を理解するシーン。結婚している親友と距離を置いてしまうシーンも良かった。
そして一番印象に残ったのは、松子が仕事を辞めたのを心配した親友が松子を訪ねるシーンだ。実はここ、同じシーンが2回出てくるんだけど、1回目に見た時は「やっぱり松子ってバカ」としか思えないんだけど、2回目は泣けてしょうがなかった。詳しくは書かないけど是非見てほしいな。演出上手いわ、やっぱり。

また、1人だけで暮らす10数年間の松子はリアルで恐ろしかった。街の片隅にいる浮浪者風の方などを見かけて、この人も昔は松子みたいに・・・なんて考えている場合じゃなく、ひょっとしたら自分もTVでしか会えないアイドルに夢中になること以外、ただ惰性で生きていく人間になる可能性があるんじゃないか(酒にも溺れそう)って想像して寒気がした。そして落ち込んだ(ここが一番毒のシーンだわね)精一杯生きなきゃダメだね。松子はどんなに不運で不幸でも、誰かと一緒のほうが綺麗で輝いていたなぁ・・・。

『下妻』の時も書いたけど、この監督は映像は奇抜だしネタありまくりだけどそれだけに終始せず、ストーリーにちゃんと1本筋を通している。CGもネタとしてだけじゃなくて効果的に使っている。例えば刑務所に入った松子が、島津に会うのを楽しみにするシーンで、彼を演じた荒川良々の顔がだんだん美形に変わっていくのだ。ここは大笑いしたと同時に「分かる分かる」と頷いてしまった。島津とは1ヶ月しか同棲してなかったから余計に顔が美化されちゃったんだろうね。こういうところもやっぱり上手いわ。

すごい作品が2作続いて(『下妻』の後『Beautiful Sunday』を見たけど面白くなくて『濱マイク』は良かった。)どんどんこちらの期待が大きくなっている。次回作ももちろん楽しみなんだけど、次はコケちゃうかも・・・という不安もあったりして(今から心配しすぎ)個人的希望なんだけど、この監督にいつか『ルパン三世』の実写版を撮ってほしいな。
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ダ・ヴィンチ・コード('06アメリカ)-May 27.2006
[STORY]
講演会のためパリを訪れていたハーバード大学宗教象徴学教授のロバート・ラングドン(トム・ハンクス)の元に、突然フランス司法警察がやってくる。ルーブル美術館の館長ソニエールが殺され、ラングドンに協力してほしいというのだ。ソニエールはダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』を模した形で横たわっており、ラングドンに何かメッセージを伝えようとしていたようだった。しかし警部のベス・ファーシュ(ジャン・レノ)はラングドンが殺したのではないかと疑っていた。そこへ暗号解読官のソフィー・ヌヴー(オドレイ・トトゥ)がやってきてラングドンを逃がし、一緒に暗号を解いてほしいと懇願する。
監督ロン・ハワード(『ビューティフル・マインド』
−◇−◇−◇−
全世界で5000万部、日本だけでも1000万部を突破したダン・ブラウンの同名小説の映画化。ちなみに小説の読後感想はこちら

原作を読んだのがかなり前で、読み返すことなく映画を見たので、新鮮な気持ちで見れた。原作を読んだ時ハリウッド映画みたいな話、と思ったけど、映画はそれよりさらに軽い仕上がりだった。とはいえ読んでない人が見ると駆け足すぎて分からないところが多いだろうな。

改めて見てみるとメインはダ・ヴィンチではなく、イエスとキリスト教のタブーにまつわるサスペンスミステリーなんだよね。ポスターなどに使われているモナ・リザはほとんど関係ないし、ダ・ヴィンチが全く出なくても問題ないかもしれない(笑)ダ・ヴィンチについてはテレビの特番のほうが詳しかったし面白かった。あ!映画では、ラングドンの講演会の後ろのスクリーンの映像が面白かった。あれ全部見たいなぁ(笑)

さらに登場人物も誰が演じても問題ないだろうと思ってしまった。見る前はラングドン役にハンクスなんてイメージが全然違う!と思ったけど、実際見てみてほとんど気にならなかった。原作のラングドンも知識はあるけど個性は感じなかったので、見た目のイメージは確かにハンクスとは違ったけれど、物語を進行させる役としては何の問題もなし。だからかえって彼が閉所恐怖症というエピソードが余計に感じてしまった。本編に関わってくるわけでなし、そのシーンを入れるくらいなら謎解きにもっと時間を掛けてほしいと思ったり。

ただ、シラスを演じたポール・ベタニーは頑張っていたし役にピッタリだった。シラスの過去も描いていたし、彼が自らに鞭を打つシーンなどもあり、登場人物の中では一番時間を割いていた。が、アリンガローサ司教(アルフレッド・モリーナ)との関係が簡単にしか描かれていないので、司教にいいように使われる可哀相な悪役にしか見えなかったのが気の毒だった。

小説ではソニエールが守っていたものは何か?ということと、ラングドンらを狙う黒幕“導師”は一体誰なのか?という2つの謎で読者を惹き付けた。映画でも前者は(ところどこ端折ってはいるものの)崩さずに描いていた。けれど“導師”のほうの演出はダメだった。小説ではラングドンとソフィー以外の登場人物がみな一様に怪しく描かれているが、映画ではそういう描写が足りない。そして“導師”が誰か分かるシーンが最もおかしい。
(ここからネタバレ)執事のレミーが“導師”に毒を盛られて死ぬシーンがあるのだが、その時はレミーが誰と話しているのか観客には見せない。ここまではいい。だが、彼が死んだ後すぐティービングだとバラしてしまうのだ。これはないよ。だってそのあとのシーンで、ラングドンとソフィーの前に現れて初めて“導師”はティービングだったのか!って驚かさなきゃいけないじゃない。ひょっとしてレミーを殺したのが誰か分からなくなる人のためにわざわざ見せた?(ここまで)
想像力の働かない観客もいるからそうしたのかもしれないけど、ちょっと親切すぎないか?幅広い客層を狙ってのことなのかねえ。ここが一番謎だった(笑)

映画そのものよりも、公開前のお祭り騒ぎ(本屋では原作や関連書籍が平積みだし、テレビはダ・ヴィンチ特集ばかり)のほうが印象に残る作品でしたね。
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アンジェラ('05フランス)-May 14.2006
[STORY]
アルジェリア系アメリカ人のアンドレ(ジャメル・ドゥブース)は一儲けしようとパリにやってきたが、多額の借金を背負ってしまい、借金取りから逃れるのに嫌気がさしアレクサンドル三世橋からセーヌ川に飛び込もうとする。しかしいつの間にか隣に1人の女が立っており、先に川に飛び込んでしまう。咄嗟にアンドレは自分も飛び込み女を助けてしまう。女はアンジェラ(リー・ラスムッセン)と名乗り、アンドレの言うことは何でも聞くと言い出した。
監督&脚本リュック・ベッソン(『フィフス・エレメント』
−◇−◇−◇−
ベッソンの6年ぶり10作目の作品で、監督作品としてはこれが最後かもしれないらしい(今まで10本撮ったらやめると公言していたそうなので)で、見る前は「やめないで」と思ったんですが、見終わった後は「うん、やめていいよ」と思ってしまいました(笑)ベッソンだから映画化できたけど、これが無名の人ならボツになっていたのでは?というストーリーだった(映像はいいんだけどね)
ブサイクで運がなく借金まみれのダメ男の前に、モデル体型の娼婦みたいな女が現れ、男の言うことを何でも聞いてくれる。その女の正体は・・・って、まるでマンガかアニメですよ。てゆーか、ベッソンさみしいの?

上映時間90分と短めの割には長く感じ、展開がヌルいなぁと思いつつも、きっと(ネタバレじゃないけど以下のような話ではないという意味でネタバレ)アンドレは実は川に落ちた時に意識不明になり、アンジェラと出会ってからの出来事はすべて彼の夢の中のことで、彼は最後はアンジェラとともに天に召されるのだ――という、陳腐だけど(ここまで)悲しいストーリーなんだろう、だからわざと甘めの話にしてるんだ、と思って生暖かい目で見てたんだけどクライマックスのクドさと脱力するラストにガックリ。見終わったあと、なんかもうどうでもいいや〜という気分になった(笑)もうどんな映画だったか半分くらい忘れました。

そんな中、鏡を見ながらアンジェラがアンドレを励ますシーンだけは良かった。私はずっとアンジェラが全く魅力的に見えなかったんだけど(足長っ!なところくらい)このシーンでの彼女は素敵だった。そしてアンドレの涙は、女性の涙よりピュアで美しかったかもしれない(笑)
うーん、褒められるところはこれくらいだなぁ。これ以上は・・・もう書くのやめます。
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戦場のアリア('05フランス=ドイツ=イギリス)-May 12.2006
[STORY]
1914年。第一次世界大戦中、フランス北部でフランスとスコットランドの連合軍とドイツ軍とが熾烈な戦いを繰り広げていた。ソプラノ歌手のアナ(ダイアン・クルーガー)の夫でテノール歌手のニコラウス(ベンノ・フユルマン)も従軍していた。 夫に会いたいアナは戦地にいる皇太子にクリスマスのコンサートを開きたいと申し出る。願いが叶い、2人は再会を果たす。しかし夫は最前線にいる兵士たちが気がかりだった。2人はドイツ軍の塹壕に向かい、兵士たちのために歌いだした。すると彼方からスコットランド軍のバグ・パイプの音がニコラウスの歌に合わせるように響いてきた――。
監督クリスチャン・カリオン(『Une hirondelle a fait le printemps』日本未公開)
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第78回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。フランス映画祭2006でも上映された。
正式には記録されていないが、兵士たちの手紙などによって明らかとなったクリスマス休戦の物語。監督がイブ・ビュフトーの『フランドル地方とアルトアの戦い1914−1918年』の中の「1914年の驚くべきクリスマス」という章を読み脚本化したそうだ。

映画は、従軍するオペラ歌手とその妻、厳しいホルストマイヤー中尉(ダニエル・ブリュール)のドイツ軍と、身重の妻が気がかりなオードベール中尉(ギョーム・カネ)と明るい部下(ダニー・ブーン)のフランス軍、仲の良い兄弟と2人を見守るパーマー神父(ゲイリー・ルイス)がいるスコットランド軍、それぞれの目から見た戦闘と奇跡の一夜を、どの国にも肩入れすることなく描いている。あまりドラマチックにせず、粛々と描こうとする姿勢が見える。だけどストーリーの運び方はあまり上手ではないと感じた。重要なシーンは力が入っているが、繋ぎの部分がダラダラしていたり妙に駆け足だったり。特にオードベールと部下の最後のシーンは酷いなぁと思った。監督2作目だからしょうがないけど、ベテランの人が撮ったらもっとメリハリをきかせた作品になったんじゃないかなーと。この監督がいなければ作られることはなかった(かもしれない)映画というのはもちろん分かってはいるんだけど・・・。

クリスマスの奇跡の夜が始まるシーンと、パーマーのミサのシーンはとてもいい。音楽って国や人種を超えて人を結びつけるものなんだなぁと歌を聴いているだけで素直に感動し涙が出てしまった。ミサのシーンはそれより少し複雑な気分で見ていた。確かに同じ宗教の信者であれば国や人種を超えて人が集まるし、特別な日は戦いをやめることができる。それはすごいことだ。でも宗教の対立によって戦争は起きてきたし、戦闘意欲を掻き立てるために宗教の訓えが使われることもある。映画でもクリスマス休戦が軍部にバレてパーマーは役を解かれ、後からやってきた司祭は聖書の一節を取り上げて「悪魔(ドイツ兵)を殺せ」と説くのだ。同じ宗教の聖職者が同じ聖書を取り上げても、ここまで違ったものになる。監督が一番見せたかったシーンはここだろう。別の戦地へ旅立つホルストマイヤーたちが歌うシーンも、クリスマスの夜の歌とは違った響きがあって印象深い。思い返してみると、いいシーンもいっぱいあるじゃん(笑)

脚本もただ事実を伝えるだけじゃなく、コミカルなシーンがあったり、オードベールと上官の関係が後に明らかになったりと工夫がある。クリスマスをすべての兵士が楽しんだわけではなく、参加しなかった者がいたことや、参加しながら抜け目なく敵の武器を調べる者を登場させている。また、第二次世界大戦では迫害の対象だったユダヤ系のドイツ人も、この時代では国のために兵士となっていたんだね。

日本版のポスターはアナを大きく写し、その後ろにホルストマイヤーやオードベールを配置し邦題の通り“アリア”をフィーチャーしているが、海外版の3カ国の上官3人が並んで歩いているポスターのほうが私は好きだ。映画の中でも3人が普通に歩いたりお茶するところがとても良かった。
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ブロークン・フラワーズ('05アメリカ)-May 6.2006
[STORY]
若い頃から女性にもてていたドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)の元に、ある日ピンク色の手紙が届いた。20年前、ドンと別れてから妊娠に気付いたその女性は男の子を出産し、現在19歳だという。しかし手紙には名前が書いてない。手紙を読んだ友人のウィンストン(ジェフリー・ライト)は、20年前に恋人だった4人の女性たちに会いに行けと旅の手配をする。ウィンストンに言われるままドンはピンクの花束を持って彼女たちに会いに行くが・・・。
監督&脚本ジム・ジャームッシュ(『コーヒー&シガレッツ』)
−◇−◇−◇−
第58回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。実はジャームッシュ作品を見るのは『デットマン』(大好き)以来だ。

『ロスト・イン・トランスレーション』では虚無感に襲われたハリウッド・スター、『ライフ・アクアティック』では突然現れた息子に戸惑う海洋冒険家、そして本作と、監督は皆違うけどビル・マーレイによる“中年男の悲哀三部作”と勝手に名付けたくなる繋がりがあるような作品だった。

コンピュータ関連の仕事で一財産を築き何の不自由もなく暮らしているが、恋人に去られた後で深い虚無感に襲われた男。隣の家はエチオピア系の家族が住んでいて、主人は忙しそうだが世話好きで、美人で料理上手の奥さんがいて子沢山。たぶんドンはそんな隣人を羨ましいと思ったこともない、と思っているだろう。思わないように意識の外に置いてきたという印象だ。そんな彼の元にあなたの息子がいるという手紙を受け取り動揺する。もし彼が本当に何も思っていなければウィンストンに手紙を見せたりしないだろうし、いくら旅の手配をされても行かないだろう。誰かがお膳立てしてくれれば乗っかってやってもいいよ、という男なのだろう。女性と別れる時もおそらく自分からは言わない。女性から別れを切り出すまで待っているような奴なんだわ(想像しすぎ)

嫌々ながら(を装って)ドンは4人の女性と会う旅に出て懐かしく思いながらも、一方で今の彼女たち生活をシニカルに観察している。また行く先々で20年前の彼女たちと同じかそれより若い女性にもつい目が行ってしまう。と、最初はそんな余裕もあるのだが、旅先で痛い目に遭い、亡くなった恋人の墓参りをして弱気な面が出てくる。自分の歩んできた人生が正しかったのか迷いが出てしまったのだ。さらに息子探しが空振りになればなるほど会いたいという気持ちが強くなり、年頃の男の子を見ると自分の息子なんじゃないかと思うようになる。ぶっちゃけ妻や恋人は他人だけど、子供は自分と血が繋がった存在だ。その子に会ってみたい。今まで斜に構えて生きてきた男が焦り、本能が露わになっていくのだ。そんなドンを見て、あと15年ほど経ったら『アバウト・シュミット』の主人公ウォーレンみたいになってしまうのかな?なんて思った。ウォーレンのような痛々しさは今はないけれど、チクチクする。開き直るにはまだプライドが許さない。見栄っ張りのほうが勝ってしまう、ドンはそんな年齢を迎えているようだ。
自分は女だからけっこう冷静に見てしまったけど、男性が見たら(特にドンと同じくらいの年齢の人は)共感してしまうのかな。

ところでラストシーンに出てくる人物は(ここからネタバレ)ビル・マーレイの息子ホーマー・マーレイだったのね。このキャスティングに答えというか意味があるんだろうな(あ、母親も息子も誰だか分からないという結末は私はいいと思いましたよ。ラストのドンの顔もすごくいい)しかし息子かもしれない男の子3人の中で一番目つきが悪くてブサイクに見えたけど、父親に似てたかなぁ?(ここまで)もっとちゃんと顔を見ておけばよかった。このシーンは一体何だ・・・と呆然としてる場合じゃなかった(笑)
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