Movie Review 2005
◇Movie Index

Shall we Dance?('04アメリカ)-May 17.2005
[STORY]
遺言書作成専門の弁護士ジョン(リチャード・ギア)は、妻ビヴァリー(スーザン・サランドン)と2人の子供と何不自由なく暮らしている。しかし変化のない毎日に時々虚しさを感じていた。そんなある時、帰宅途中でダンス教室の窓辺に佇む女性を見かけ、その姿に心を奪われる。そしてついに途中下車をし、教室に足を踏み入れたジョンは佇んでいた女性ポリーナ(ジェニファー・ロペス)に言われるままレッスンを申し込んでしまう。
監督ピーター・チェルソム(『セレンディピティ』)
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1996年の日本映画『Shall We ダンス?』のリメイク。監督だった周防正行は本作では原作者としてクレジットされている。

人気の高いオリジナル版は劇場まで見に行ったけれど、私自身はそれほど面白いと思わなかったので本作も最初は見るつもりはなかった。実はたまたまこの日、時間がポッカリ空いてしまったので何となく見てみたんだけど、想像していたよりもずっと良かった。私はオリジナルよりむしろ本作のほうが好きだな。オリジナルは上映時間が136分と長い上に、過去の周防作品に出演した人たちが顔見せ程度に出てきたりするシーンがジャマでかったるくなってしまった。せっかく面白いシーンがあっても気持ちが長続きしなかったのだ。リメイクは上映時間がそれより30分も短い106分だが、私がつまらないと思っていたシーンがカットされ、見てて楽しくなるシーンがいっぱい。気がついたら映画が終わっていた。あっという間だった。

オリジナルからリメイクまで10年も空いているので、自分の映画の見方も変わっているからかもしれないが。当時、役所広司が演じる杉山という男に共感することができなかった(というか、全ての登場人物に共感できなかった)でも10年経った今、リメイクのジョンの気持ちは理解できる。不況でお金に困っていたり職がないと言われる今、自分はとりあえず何不自由なく暮らしている。毎日同じことの繰り返しに飽き飽きしてるけど、そういう不満は贅沢だと思っているし、何か新しいことを始める勇気もないし、今更この歳で・・・なんて思ったりもする。だからジョンのように夢中になれるものを見つけて熱中している姿を見て、自分の身体も熱くなった。まだ諦めるには早すぎるってことだよね。

確かにギアはカッコよすぎ。もう少し疲れた雰囲気が欲しかったし、最初からリズム感がありそうに見えたのが気になった(『シカゴ』がなければ彼が踊るシーンにビックリしたかもしれないが)
ロペスは・・・なんつーか彼女のマイナス部分が出ないように上手く隠したなぁと思った。喋ると品のなさが出てしまうのでセリフを抑え、髪型や服装でカバーさせようと努力の跡が伺えます(褒めてんだか貶してんだか)でも最後の衣装はヒドイ。せっかくの努力が台無しだった。

中年女性ボビーを演じたリサ・アン・ウォルターは、最初に声を聞いた時に渡辺えり子かと思いました。キャラクターは微妙に違うけど、吹替版は絶対に渡辺えり子がやるべき。ジョンの会社の同僚リンクを演じたスタンリー・トゥッチは竹中直人より抑え気味で良かったし(やっぱり竹中は苦手で)笑いをしっかり取りつつ、同僚たちの前でダンスが好きで何が悪い!と主張するところがカッコ良くてスカッとした。最後はみんなハッピーになるのも気分がいい。けっこう褒めたけど期待してなかったから思ったより良く見えたわけで、オリジナル大好きな人には粗が目立って文句を言いたくなる映画かもしれない。
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バタフライ・エフェクト('04アメリカ)-May 15.2005
[STORY]
7歳のエヴァンは母と2人暮らし。父は精神を患って施設に入っている。エヴァンは時々記憶を失っていて、心配した母は彼を病院に連れていく。医者は忘れないように毎日日記をつけるようすすめる。13歳になったエヴァンと友人たちは大事故を引き起こすいたずらをするが、その時も彼の記憶はなくなっていた。やがてエヴァンは引っ越すことになり、友人たちとも別れてしまう。8年後、大学生となったエヴァン(アシュトン・カッチャー)は心理学を勉強することになり、記憶を失うこともなくなっていた。しかし昔の日記を読み返すうち、エヴァンは意識を失う。
監督&脚本エリック・ブレス&マッキー・J・グラバー(初監督作)
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6年以上かけて書き上げた脚本を主演のカッチャーが惚れ込み、自ら製作総指揮を取ったそうだ。カッチャーといえばあのデミ・ムーアの――という印象しかなかったけど、その意気込みに感心(ヒットして良かったね)今までのイメージが変わりました。演技も良かったな。
見る前までは『ドニー・ダーコ』と似たような作品なのかと思ってたんだけど、本作のほうが面白さも出来も上でした。

“バタフライ・エフェクト(バタフライ効果)”とは「北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起こる」などと例えられるカオス理論(人間の持つ計算手段では予測できない、複雑で不規則な様子を示す現象を扱う理論)の1つで、本作の主人公エヴァンは自分が書いてきた日記を読むと、その日記を書いた時に戻ることができる能力を持っている。そこでそのとき後悔した自分の行動を変えてしまう。変えた後、いつのまにか元の時代に戻るのだが、変えたところから自分や幼なじみたちの人生がガラリと変わっているのだ。ちょうど、このままプレイしていくとゲームオーバーになるという前に途中でリセットしてもう一度やり直す、みたいな感じ。映画の中の規則(?)からすると、タイムスリップとはちょっと違うようだ。

よく考えると辻褄が合ってなかったり、映画の中の規則からは外れてるんじゃない?と首を捻りたくなるところもあるんだけど(ラストが変更になったりしたようなので、そこで辻褄が合わなくなってるのかも)見ている間はエヴァンがどう行動すれば一番よりよい現在になるのか一緒に悩み、深く考えなければ楽しめなぁと思った。また、エヴァンがどんなに過去を変えても誰かしらが不幸になってしまうというところが(彼らには悪いけど)面白かったし、子役たちの暗い目つきが怖くて・・・。イジメや虐待が子供たちに与える影響にに寒気がした。途中、子供たちがD・フィンチャーの『セブン』を見に行くシーンがあって(つい最近の映画っていうイメージがあったけど、もう10年前ですか・・・ちょっとショック)アメリカではR指定だったと思うんだけど、当時は子供だけで見てもうるさく言われない時代だったんだろうか(映画が子供に与える影響について警鐘を鳴らしている?それとも単に同じニューラインシネマだったから?(笑))このシーンについて監督のコメンタリーを聞いてみたいな。

(ここからネタバレ)最後にエヴァンが行った過去の操作は、今までの中で一番小さなことで、まさに“バタフライ・エフェクト”というタイトルにふさわしいものだった。ただ一言ケイリーに悪口を言っただけなんだからね。とどのつまり、ケイリーの不幸の始まりはエヴァンとの出会いだったわけで、そう考えるとなんか切ないなぁ。ラストはすれ違うところで終わったけれども、もしエヴァンが振り返ってケイリーに声を掛け、2人の交流が始まったらどうなるんだろう?やっぱりケイリーは不幸になるんだろうか・・・。(ここまで)

それまではSFサスペンス映画という感じで見てたけど、Oasisの歌(Stop Crying Your Heart Out)が流れるだけで一気に青春映画になる不思議。でもこの映画にピッタリだった。切なさ倍増です。
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レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語('04アメリカ)-May 14.2005
[STORY]
発明好きの長女ヴァイオレット(エミリー・ブラウニング)読書好きの長男クラウス(リアム・エイケン)そしてまだ喋れず噛むことが大好きな次女サニーは何の不自由もなく幸せに暮らしていた。しかしある日、家が火事になり両親を失い、遠縁のオラフ伯爵(ジム・キャリー)に預けられる。ところが貧乏なオラフ伯爵は遺産目当てに3人を殺そうとする。
監督ブラッド・シルバーリング(『シティ・オブ・エンジェル』
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原作はレモニー・スニケットの“世にも不幸なできごと”シリーズ(全13巻(わざと不吉な数字にしたんだとか)刊行予定で現在は11巻まで刊行されており日本語翻訳本は8巻まで)のうちの『最悪のはじまり』『爬虫類の部屋にきた』『大きな窓に気をつけろ』を映画化。第77回アカデミー賞メーキャップ賞を受賞した。
(オラフの変装でスゴイと思ったのは爬虫類の家のエピソードで登場するステファノのとき。このときのキャリーの顔も全然違ったが、声も別人みたいで、これを即座に見破った子供たちスゲー!って素直に感動しちゃっいました(笑))

主人公は3人の子たちだけど、脇を固める出演者は豪華。キャリーをはじめメリル・ストリープやビリー・コノリー、ティモシー・スポールとキャサリン・オハラはそれぞれ『ハリー・ポッターと秘密の部屋』『ホーム・アローン』に出演していたので、お子ちゃまたちにも馴染みがあるだろう。そしてストリープとかつて子供の親権を争ったことがある(笑)あの方もカメオ出演している。また、レモニー・スニケットとしてナレーション(&影だけ出演)をしているのはジュード・ロウ。『アビエイター』の時より出番多いかも(笑)

原作がある作品を映画化したことは知っていたけど、既に完結していると思ってたし、そのうちの3巻までを映画化したということは知らなかった。だから亡くなった両親の秘密やオラフのその後についてウヤムヤなまま終わってしまったのが中途半端に感じた。原作では最終巻で分かるようになってるのかな?映画でもスニケットが一言「どうなったかは次の機会に」みたいに続編を匂わせるナレーションを入れてくれたら良かったのに。ていうか続編は製作するつもりなのかなぁ。やるならあと3本は必要だから子供たちが成長しすぎる前に早く作ってほしいな。別の子になると大抵可愛くなくなっちゃうんだよ(笑)

思えば最初の危機が一番ハラハラしたな。子供たちが特技を如何なく発揮し、連携プレイもバッチリで面白かった。でもエピソードを重ねるごとに尻つぼみになっていって、最後の危機ではヴァイオレットが思考停止状態になってしまったし、オラフももっとコテンパンにやられるのかと期待していたので、もうこれで終わりなの?って感じでそこも中途半端で残念だった。原作通りの展開だったとしても、作品全体のバランスを考えて、ここのエピソードはもっと派手にやってもらいたかった。

しかしエンドクレジットは面白かったな。あそこでもオチがあれば完璧だったけど。
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ライフ・アクアティック('04アメリカ)-May 7.2005
[STORY]
海洋冒険家であり、ドキュメンタリー監督でもあるスティーヴ・ズィスー(ビル・マーレー)は、撮影中に“チーム・ズィスー”のメンバーを失い、やっとの思いで完成した新作映画も酷評されてしまう。そんな時、スティーヴの元に昔の恋人の息子で、ひょっとしたらスティーヴの息子かもしれないというネッド(オーウェン・ウィルソン)が現れる。スティーヴは彼を新しいメンバーとして迎え入れ、冒険に出るが・・・。
監督&脚本ウェス・アンダーソン(『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
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前作にも出演していたマーレイ、ウィルソン兄(今回は脚本は手がけてない)そしてスティーヴの妻エレノア役でアンジェリカ・ヒューストンが出演している。余談だけど、前作ではグウィネス・パルトロウが出てたけど、本作では彼女と同じ系統の顔のケイト・ブランシェットが出演してるんですね。前作を踏まえてるのか、単にこういう顔の女性が好みなのか分かりませんが。ヒューストンもそうだけど、クールな女性が好きなのかもね。

前作はテネンバウム家という家族(血の繋がりはあったりなかったりだったが)の話だった。本作は“チーム・ズィスー”という、血の繋がりはないけど同じ目的を持った人たちが集まり、1つの船に乗って冒険するストーリー。前作より動きがあるので見やすかったけど、スティーヴという人は感情を表に出すことをしない(できない?)ので、必要以上に状況をこじれさせているように見えて歯がゆい。マーレーは『ロスト・イン・トランスレーション』の時もそうだったけど、落ち目になった苛立ちや大事な人を亡くした言いようのない悲しみを顔だけで見せてしまえる人だ。だからコミカルなシーンがけっこうあるんだけど、全体の雰囲気は暗い。

でも“チーム・ズィスー”のメンバー達はそんなスティーヴの指示には従うが、彼の胸の内までは気にすることなく、それぞれ自分の仕事をマイペースにこなしていて(仕事しないで歌ってばかりの人もいるが、この歌が良い)互いを干渉せずうまくやっている。逃げ場のない船だからこそ余計なトラブルを抱えないよう、ストレスを貯めないようにしてるのかも・・・彼らが単なる脇役だからかもしれないが(笑)日系やインド系の人もいて、動いている彼らを見るのが楽しかった。
そんな中でクラウス(ウィレム・デフォー)だけは、新入りのネッドを目の敵にするが、彼の場合は単なるヤキモチなので可愛らしい。身長177cmのデフォーは普段は小さく見えないが、マーレーたちがデカイのでこの中では小柄に見えて、しかもあの赤い帽子をかぶっているので余計に。いつもは悪役や変な役が多いので、クラウスのような役は逆に新鮮だったな。

ま、相変わらずファッションが狙いすぎじゃない?とか、せっかく作った船の内部のセットを見せたいだけじゃないの?なシーンがあって、そこを見て笑える人はいいけど、鼻につく人もいるだろう。私は笑ってしまうほうなので、ワンパターンに陥らなければアンダーソン作品はこれからも見ていくつもり。
ところでラストシーンを見て『サザエさん』の最後の歌で、一家が家に入るところを思い出したのは私だけだろうか(笑)
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ドッジボール('04アメリカ)-May 4.2005
[STORY]
アベレージ・ジョーという古いジムを経営するピーター(ヴィンス・ヴォーン)は、金を払えない客からは無理に料金を取らないので、常連たちには人気があったが借金はかさむいっぽう。銀行に雇われた弁護士のケート(クリスティン・テイラー)がピーターを訪ね、30日以内に5万ドル支払わないとジムは隣にある最新鋭のフィットネスクラブを経営するホワイト(ベン・スティラー)のものになるというのだ。そこでピーターと常連たちはドッジボールの世界大会に出場し、優勝賞金5万ドルで借金返済しようと特訓を始める。しかしホワイトも彼らを妨害しようと自らチームを編成する。
監督&脚本ローソン・マーシャル・サーバー(長編初)
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『ズーランダー』と同じく「うわ、くだらねーーー(脱力&笑)」と言いながら何も考えずに見ようと思ったのだが、思ったより盛り上がれなかった。もともとヴィンス・ヴォーンがあまり好きじゃないんだけど、ピーターというキャラクターがまず好きになれなくて。怖い顔でも表情によって愛嬌ある顔になる人もいるけど彼の場合は怖いだけだし、経営者としてはダメだけどみんなから好かれている信頼厚い男、に見えないのだ。演技は下手ではないんだろうけど、もっとヤル気や喜びをストレートに表現する人のほうが合ってたんじゃないかな。そこでつまづいちゃったんだなぁ。それとやっぱりスティラーと嫁のテイラーが出てるならオーウェン・ウィルソンも出てくれないと!どこかで少しでも出るんじゃないかって期待しちゃいました。ゲスト審査員には笑ったけどね。

一緒に大会に出るメンバーはみんな可愛らしくて応援したくなった。ヘタレだったジャスティン(ジャスティン・ロング)が急にカッコいいこと言ったり、アンガールズの向かって左のほう似(笑)のオーウェン(ジョエル・ムーア)の女性の好みには大爆笑。相手の女性もだんだんキュートに見えてくるのが不思議だ。対戦相手もデビッド・ハッセルホフを崇拝するドイツチームや、日本からはまわし姿のカミカゼチーム(定番)が出場したりと、マンガみたいなキャラクターが次々に登場してはあっという間に敗れていく様に笑わせてもらった。彼らの作戦やボールの扱いはもうちょっと見たかったな。もったいない。ま、そもそもドッジボール目当てだと物足りない映画かも。ルールを知ることができて良かったけどね(笑)

スティラーはやっぱり好き(笑)『リアリティ・バイツ』を監督した頃は好きじゃなかったけど、今の彼の突き抜け具合がステキだ。始まっていきなりキメ顔(ブルースティールかマグナムか)いっぱいのポスターが出てきた時には思わず「待ってました!」拍手しそうになった(笑)テイラーとの下品なやりとりも、2人が夫婦のせいかかえって仲良しに見えてしまったし(それは作品としてはダメなんだろうけど)
ホワイトという男は確かに性格的にはイヤな奴だけど、彼は肥満を克服して大きなフィットネスクラブを経営するまで努力してきた人。ピンチになって一発逆転を狙ったギャンブル男ピーターとは違う。ピーターみたいなのが映画的にはヒーローなんだけど、個人的にはホワイトのような男が報われないのは可哀相だと思ってしまう。だから余計にピーターが好きになれなかったのかもしれない。ま、そういうところにこだわらずに普通に楽しめた人が勝ちだったな。
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