昭和24年生まれの青春に捧げる詩 花 飾 り    2002年3月完成

 

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「花飾り」は、昭和44年に遡った、20歳の青年、武司の青春物語である。武司が50歳になり、姪の結婚式の日に、30年前の出来事を回想する形で物語は進んでいく。姉と恋人、そして妻が一つに重なり合い、それぞれが全く違った愛の形であったが、運命的な縁を見出し、人生の不思議を感じ取っていく。昭和44年は、時代の移り変わりが激しく、学生運動を中心に、過激な集団が社会を揺るがしていた。時代背景を描写しながら、不器用な若者たちが懸命に生きる姿を浮き彫りにする作品である。

 

別離 (Web)

 両親を失って、姉と弟の二人きりになり、互いに無くてはならない存在になっていた。姉弟であると同時に、親子であり、恋人であり、幼馴染で、心はどこまでも満たされていた。二人でいつまでも一緒にいたいとの思いが強まるが、許されるはずも無く、別離を意識していく。

 

死の遊戯 (Web)

 姉の結婚がきまり、最後の思い出旅行に出るが、姉は死を決意し、死に場所を見つける旅になっていた。武司は姉の心を知り、懸命に姉の気持ちを翻そうとするが、自分自身が陶酔した世界に入り込み、どこまでも危うい死の遊戯となっていく。

 

一人旅 (Web)

 武司は、姉が嫁いで一人暮らしになると、どうしても無気力になり、気持ちを新たに、見えない何かを求めて一人旅に出る。列車の旅は、新潟を皮切りに、山形、秋田、青森へと北上していく。それぞれの場所で、生きている証を感じながら、少しずつ成長し、姉への思いを断ち切っていく。

 

出会い (Web)

 武司は高校時代の仲間と再会し、同人雑誌を作るようになる。同人の一人、美里との出会いは、武司の新たな人生へ強く引き込んでいく。どこまでも純粋な思いは、どこまでも不器用となり、手放しに青春を謳歌することができなかった。

 

 (Web)

 武司は、美里との関係が夢の出来事に感じられてならなかった。二人を包む背景が、とても現代とは思えない、セピア色をした、古びた写真の世界だった。互いに心が深く結ばれていくが、美里を思えば思うほど、色恋として形作っていくことができなかった。

 

花飾り (Web)

 二人の関係は恋人同士に他ならなかったが、武司は、「好き」という言葉が破局を迎えると分かっていた。しかし、「好き」と言わずにはいられず、花飾りを携えて、美里と待ち合わせる。花飾りは美里に渡すことが叶わず、持ち帰って、嫁いだ姉に渡すことになった。30年後、姪の結婚式の日に、姉が、「あなたの最も大切な人に渡しなさい」と、花飾りを差し出してくる。