Movie Review 2013
◇Movie Index

真夏の方程式('13日本)-Jul 7.2013
[STORY]
夏休みに1人で親戚が経営する旅館「緑岩荘」で過ごすことになった小学生の恭平は、玻璃ヶ浦というところへ電車で向かう途中、物理学者の湯川(福山雅治)と出会う。湯川は玻璃の海底にあるという鉱物資源開発の説明会にアドバイザーとして出席するために来ており、同じく緑岩荘に宿泊する。翌日、宿に泊まっていたもう1人の客、塚原が海辺で死体となって発見される。塚原が元刑事だったことから警視庁でも捜査することになり、湯川にいつも協力を依頼している岸谷(吉高由里子)が担当することになる。
監督・西谷弘(『容疑者Xの献身』
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原作は東野圭吾の同名小説で、物理学者のガリレオこと湯川学が主人公のシリーズ長編3作目で映画化2作目。2013年4月から6月まで テレビドラマのシーズン2も放映され、長編2作目『聖女の救済』を9話と10話で放映した。

前作『容疑者X』は原作では柴咲コウ演じる内海薫が登場せず映画には登場した。そして『聖女』と『真夏』では原作で内海が女の勘と地道な捜査で事件を進展させていくストーリーだったが、映画では登場しなかった。何でいつもこうチグハグなんだか(苦笑)『聖女』と『真夏』の内海はカッコよくて、これなら映像でも見たかったよ。代わりの女刑事はうるさいだけの甘えた女で、映画では少しはマシだったけど、ドラマは見続けるのがキツイなぁと思うほどだった。シーズン1の時は、何で草薙(北村一輝)じゃなくて女刑事なんだよーと思ったけど、これなら内海のままのほうがよかった。

『X』は湯川の出番が少なく、主人公はほぼ別の人物だった。しかし本作の湯川は最初から事件に関わっており、いつもなら依頼があるまで動かないのだが、この事件については自分から動いていく。殺人事件の謎とともに、湯川が動く理由についても謎として小説では読者の興味を引いていった。しかし映画では映画の冒頭から何となく事件の背景や犯人が分かるようになっていて、そこが面白さを削いでしまっているなと思った。が、じっくり読める小説と違って2時間程度でストーリーを見せなきゃいけない映画では、ある程度最初から説明しておかないと難しいのかもしれない。それに映画はミステリ部分より人間ドラマに重心を置いていたしね。

ただ、湯川と犯人をあそこで会話させたのはどうなんだろう。警察だって見てるわけじゃん。じっくり話をすることで泣けるシーンになっていたし、私も泣いたけどさ(笑)一方で「このシーンはおかしいよなぁ」と思いながら見てたし、邦画の泣かせようとするしつこさに苛立ちを感じた。

小説より良かったなぁと思ったのは、玻璃ヶ浦駅や玻璃の海を映像で見られたこと。駅は愛媛県、海は西伊豆で撮影したらしいけど、こんなところがあるんだね。あの岩場や洞窟のようなところに行ってみたくなった。
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アンコール!!('12イギリス=ドイツ)-Jun 9.2013イイ★
[STORY]
ロンドンで暮らすアーサー(テレンス・スタンプ)は気難しく、病弱な妻のマリオン(バネッサ・レッドグレイブ)が町の合唱団で歌うことが気に入らない。ある日、合唱団がコンクールに出場することになりマリオンはソロを任されるが、ガンが再発してしまう。歌を教えるエリザベス(ジェマ・アータートン)はアーサーにも歌うことを好きになってほしいと願うが・・・。
監督&脚本ポール・アンドリュー・ウィリアムズ(『London to Brighton』)
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脚本も手掛けたウィリアムズの祖母が癌になり、祖父が介護をして看取った出来事を元に描かれた物語。合唱曲にはスティーヴィー・ワンダーやシンディー・ローパーの曲が使われている。

中盤からラストまでほぼずっと泣いてました(笑)夫が病の妻を気遣い、妻が遺される夫を気遣う。そんな2人の映像を見ただけで涙。マリオンもアーサーも決して歌が上手いわけではない(演技なのか素なのかは分からないが)でも歌の歌詞に自分の思いを込めて歌っているので、ちょっと音程が外れてもそれにまた泣いてしまったり。彼らの歌っている姿を見て、最初は「どうなの?」と訝しんでいた観客や審査員が感動していくシーンを見てさらに泣いたりもした。泣き過ぎて頭がボーっとなってしまい、途中で字幕を追えなくなってしまったりして勿体ないことをしてしまった(笑)もうちょっと落ち着いて見られればよかったのだが。テレンス・スタンプは確かにいい声だったなぁ。

ボーっとしつつも、冷静に物足りないところもあるなと感じていた。それは登場人物の少なさだ。アーサーとマリオン夫妻、夫婦の息子と孫、そして講師のエリザベスだけ。コーラスメンバーもいるんだけど、エキストラっぽいというかたまに賑やかし要員として働くほかはホントにコーラスするだけ。マリオンが亡くなってからアーサーが交流するのはエリザベスだけで他のエキストラとの絡みがない。そこが単調だなと感じた。歌の本番でもアーサーはソロで後ろの老人たちはコーラスとして歌うだけだったので、他のジジババとも仲良く歌ったり談笑するシーンもあればよかったのに、そこが残念だった。アーサーのキャラを崩さずに話を進めた結果こうなったのかもしれないけどね。

もう1つ残念だったのは本編じゃなくて邦題。『アンコール!!』だなんて何てインパクトのない埋もれてしまうような邦題を付けたのだろうか。本編見たってアンコールするシーンなんてねぇし(笑)原題は『SONG FOR MARION』だから例えば『ソング・フォー・マイ・ワイフ』とか、日本語だったら『妻に捧げるラブソング』とかさ。某歌手の歌のタイトルみたいですが(笑)こんなつまらないタイトルで見るのをスルーされたらもったいないわ。
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ハングオーバー!!! 最後の反省会('13アメリカ)-Jun 29.2013
[STORY]
バンコクでの騒動から2年後。アラン(ザック・ガリフィアナキス)が騒動を起こし、激怒した父親は心臓発作でそのまま死んでしまう。アランの義理の兄ダグ(ジャスティン・バーサ)は、大人になりきれないアランを入院させて治療を受けさせることを決意。親友のフィル(ブラッドリー・クーパー)とステュ(エド・ヘルムズ)を呼び、4人で病院へ向かうが、途中でギャングに拉致されてしまう。
監督&脚本トッド・フィリップス(『ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える』
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1作目『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』2作目『ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える』に続く3作目でシリーズ最終作。

前2作はバチェラー・パーティーでラリって一切記憶ナシ!というところから始まり記憶を辿っていく物語だったが、本作はガラリと変わって前2作で大暴れした“ツケ”を払わされるという内容だ。
パート2で逮捕されたミスター・チャウ(ケン・チョン)が刑務所から脱獄し、その行方を探すギャングにアランたちが取っ捕まり、チャウを見つけ出してこいと脅される。今回は素面だしギャングはマジだし、見てるほうもあまり笑っていられない。

しかしこのチャウという男は本当に頭がいいと言うか、狡猾っていう言葉のほうがしっくりくるかな。フィルたちが必死に彼を捕まえてもすぐに彼に騙され、逆に利用されてしまう。前2作のおバカな面白さとは質が違うけど、こういう展開のストーリーも面白いなと思った。ただ、をつけるほど面白かったかというと、それは微妙なわけで。やっぱり前のパターンのほうが好きだったからね。でもて私が以前予想した通り、アランにも恋が訪れたのは良かった。アラン相手に上手くいくのか?と不安になったが、エンドクレジットのハチャメチャを笑い飛ばしている彼女を見て、これなら大丈夫って安心した。そのエンドクレジットはやっぱり本編で見たかったわー!スチュあんた一体どうした?!(爆笑)

終わり方としては完璧だったけど、完結してしまったのはやっぱりちょっと寂しい。フィルはやっぱりボロボロになったほうが素敵で(萌)ずっと見ていたかった。しかし同じように萌えてるアランが謎。同性愛的な意味じゃなくて単に憧れてるんだろうけど、ちょっとキモい(笑)今後はフィルを見習って、やんちゃするけど子煩悩な父親になってほしいな。あ、子どもといえば1作目で登場した赤ちゃんが大きくなって登場してました。やっぱ可愛い。
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ローマでアモーレ('12アメリカ=イタリア=スペイン)-Jun 22.2013
[STORY]
アメリカ人のヘイリーは1人でローマ観光をしている時にミケランジェロという現地の男性と出会い結婚を決意。そしてヘイリーの両親ジェリー(ウディ・アレン)とフィリス(ジュディ・デイヴィス)をイタリアへ招待する。
アントニオと妻のミリーは親戚に会うために田舎からローマにやってくる。ミリーは美容室へ行くと言い出し、1人でホテルを出るが道に迷い携帯も無くしてしまう。一方、ホテルで待つアントニオの元には手違いでコールガールのアンナ(ペネロペ・クルス)がやってきてしまう。
レオポルド(ロベルト・ベニーニ)は妻子ある平凡な男。ところがある日突然、彼は有名人としてマスコミに追い回されるようになってしまう。
建築家の卵であるジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)は恋人とローマで同棲中。そこに恋人の親友モニカ(エレン・ペイジ)が会いにやってくる。有名建築家のジョン(アレック・ボールドウィン)はジャックにモニカには気を付けるようアドバイスをするが、ジャックは次第にモニカに惹かれていってしまう。
監督&脚本ウディ・アレン(『恋のロンドン狂騒曲』
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『それでも恋するバルセロナ』『ミッドナイト・イン・パリ』に続き今回の舞台はローマ。しかし原題が『To Rome with love』なのに何で邦題が『ローマでアモーレ』なんだよ。ダサ過ぎ。まるで劇場公開されないビデオスルー作品みたいじゃん。ウディ・アレン映画だと気が付かず危うく見ないで終わるところだった。

『バルセロナ』も『パリ』も短く感じたが(どちらも95分くらい)本作は見てる間から長いなぁと感じてしまった。実際それらより15分ほど長かったわけだが、4つもあるエピソードを代わる代わる見せていく形式だからそりゃあ長くもなるわな。アレン本人が出演した話、アントニオとミリー夫妻の話、ジャックとモニカの話、この3つのエピソードはどれも面白くて、この3つだけだったら『バルセロナ』『パリ』と比べても一番好きだ。

一番笑ったのはアレン本人出演のエピソード。舞台演出家のジェリーが娘婿の父親ジャンカルロの歌声に惚れ込み、人前で歌わせようとするが風呂場でしか上手く歌えない。そこで舞台に移動式のシャワー室を作らせて歌わせてしまう。ジャンカルロ役のファビオ・アルミリアートは本物のオペラ歌手なので歌には惚れ惚れしてしまうのだが、裸で身体を洗いながら歌うわけよ。よく受けたなぁこの役(笑)面白かったけど見てるほうがちょっと恥ずかしくなっちゃって、映画なのにあまり直視できなかった(笑)

ジャックの話も、モニカの小悪魔的トラップにどんどん嵌っていくところが面白く、ジョンの助言というかツッコミも最高だった。昔さんざんこの手の女で痛い目見たんだろうな(笑)こういう恋愛の話を書かせるとホントにアレンは上手いなぁって思う。
アントニオとミリー夫妻の話も、ペネロペ・クルスが産後なのかムッチムチで目の保養になったし、ミリー役のアレッサンドラ・マストロナルディも笑顔の可愛らしくてこちらも目の保養。しかし男のほうはアントニオも人気俳優役もどこが素敵なのかさっぱり分からなかった(ヒドイ)

残りの1つ、レオポルドの話はさ、これ筒井康隆だよね。『おれに関する噂』じゃないか。『世にも奇妙な物語』でドラマ化もされているから日本人なら知ってる人も多いのでは。そのせいか、この話はこの映画にいらなかったんじゃないかなーって思ってしまった。でもベニーニとアレンの相性は悪くないと思ったし、むしろこの映画のエピソードの1つに組み込まれてしまったのは勿体なかったんじゃないかな。今度はベニーニをメインにしたウディ・アレン映画を見てみたいと思った。
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二流小説家−シリアリスト−('13日本)-Jun 16.2013
[STORY]
ポルノ雑誌に小説を書いて何とか生活している赤羽一兵(上川隆也)の元に、15年前4人の女性を殺害した死刑囚・呉井大悟(武田真治)から手紙が届く。呉井には熱狂的な女性ファンがおり、彼にファンレターを送ってくる3人の女性と呉井とのポルノ小説を赤羽が書いてくれたら、事件の真相を彼に話をしてもいいという話だった。殺人犯からの依頼に迷う赤羽だったが、呉井の告白本を書けばベストセラー作家になれると考え、依頼を引き受けることにする。
監督&脚本・猪崎宣昭(『ジェームス山の李蘭』)
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原作はデイヴィッド・ゴードンの同名小説で2012年の「このミステリーがすごい! 」などで1位を獲得している。
映画では舞台や登場人物などはすべて日本に置き換えられている。

原作は読んでないんだけど、ミステリ好きだし面白いかもと思って見てみたが、なんか昔のテレビドラマという感じでやたら映像が暗いシーンばかり。そこが効果的だと感じるところもあったけどね。特に写真の撮影場所特定のシーンは、逆光を上手く使って明るい屋外にもかかわらず暗くて、犯人の暗い闇を表現できていた。でも全体的には古臭いなと。タイトルが『二流小説家』で映画も二流映画――って言ったら辛口すぎるかな。

ストーリーはなかなか面白かった。15年前に起きた連続殺人事件の犯人は既に逮捕されて刑務所にいるのに再び同じような事件が起きてしまい、主人公が巻き込まれてしまうというもの。私は犯人の見当を違うところにつけてしまっていて、そちらばかり気にしていたので本当の犯人をロクに見てなかったらしい。真相が分かった時には実はちょっと驚いた(笑)よく考えれば順当?というかその人しかいないのに、私は何を見ていたんだろう。ちなみに私が見当をつけていた人物はこちら→(ネタバレ)赤羽と呉井との面会で立ち会う警察官。会話を聞いて犯行に及んでたんだと推理していた。よく見えないけどきっと顔を上げると有名な俳優が演じているんだろうと目を凝らして見ていた私のバカ(笑)(ここまで)

しかし騙されてた私が言うのも何だけど、怪しい人物はもう少し何人か作っておいてもよかったんじゃないかね。思わせぶりな人物は多少出てきたけど怪しいとまでは言えなかったし、だから私は無意識のうちに自分で意外性のある人物を作り出していたんだ!きっとそうだ!ということにしといて下さい(笑)

弱気な巻き込まれ主人公を上川は上手く演じていたけど、対する呉井は過去に見たことあるようなサイコパスっぽい演技で目新しさがなく、古いと感じたのはこのせいもあったかも。原作のダリアン・クレイも(クレイが呉井ってのはちょっと笑った)ありがちなサイコ野郎だったらしょうがないけど、せめて見せ方に工夫があればよかった。
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