Movie Review 2012
◇Movie Index

恋のロンドン狂騒曲('10アメリカ=スペイン)-Dec 1.2012
[STORY]
アルフィ(アンソニー・ホプキンス)は、40年連れ添った妻ヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)を捨てて若い女と婚約する。ショックを受けたヘレナはインチキで有名な占い師の言うことを信じるようになってしまう。一方、彼らの娘サリー(ナオミ・ワッツ)は作家の夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)に愛想を尽かし、ギャラリーのオーナーであるグレッグ(アントニオ・バンデラス)を好きになってしまう。ロイもまた、向かいのアパートに住む若い女に夢中になる。
監督&脚本ウディ・アレン(『ミッドナイト・イン・パリ』
−◇−◇−◇−
ロンドン三部作後にふたたびロンドンを舞台にした作品。ただ、邦題には『ロンドン』とあるけど、原題は『You Will Meet a Tall Dark Stranger』でロンドンはタイトルに入っていない。なので本作と『それでも恋するバルセロナ』と『ミッドナイト・イン・パリ』で都市名三部作と私が勝手に括ってたんだけど、違ったようだ(これから公開される『トゥ・ローマ・ウィズ・ラブ』で三部作なんだろう(なぜそんなに必死に三部作にしたがるんだ私は(笑))

ちなみにYou Will Meet a Tall Dark Strangerという言葉は占い師がよく使う言葉だそうで「あなたは背の高い色黒の誰かと出会うでしょう」って意味なんだって。日本の占い師の常套句「当たるも八卦、当たらぬも八卦」みたいなものかな。その占いを聞いて信じるか信じないかはその人次第。本作の場合はまさに「信じる者は救われる」っていう話で、皮肉の利いたいいタイトルだ。邦題をつける時にかなり悩んだと思うけど、このタイトルはちょっとね。

というのも、見る前はもっとコメディ色の強い話だと思ってたんだ。もっとドタバタの多いものかと。確かに笑いが起きた箇所もあった。でも私は全然笑えなかった。逆に痛々しくてキツいなぁと思った。恋には勘違いがつきものだけど、勘違いで恥ずかしい思いをしている人を見ると、こっちまで恥ずかしくなっちゃうんだよね。サリーは身勝手で自業自得な部分ももちろんあるけど、彼女のエピソードは最後まで見てて苦しかった。アルフィやロイに対しては「ざまぁ」の一言(笑)若い女にうつつを抜かすとこうなるのさってこと?アレン本人も自戒を込めてるのか?もしかして。
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ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!('11アメリカ)-Dec 1.2012オモシロイ★
[EXPLANATION]
世界最高峰のバレエコンクール、ユース・アメリカ・グランプリに出場することを目指す6人の少年少女を追いかけたドキュメンタリーこの大会に出場して入賞すると世界の名門スクールへの奨学金を得ることができたり、バレエ団からスカウトされるのだ。カメラは練習風景や、私生活、彼らをサポートする親たちを映し出していく。
監督ベス・カーグマン(初監督作)
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監督のカーグマンは14歳までバレエをやっていたという。トロント国際映画祭をはじめ、各国の映画祭で観客賞を受賞している。

映画は主に6人の少年少女の私生活や練習風景、本番までを見せていく。イタリアに住む11歳のアラン、アメリカに住むイギリス人の父と日本人母の間に生まれた12歳の少女ミコと10歳の弟ジュールズ、アメリカ人の17歳金髪美少女レベッカ、アフリカのシエラレオネ出身でアメリカ人夫婦の養女になった14歳のミケーラ、そしてコロンビア出身でアメリカでバレエを学ぶ16歳のジョアン・セバスチャン。私は予告でジョアン・セバスチャンの踊りがキレキレだったのでこの映画は見なきゃ!と行ったんだけど、本編を見たらアランが凄かった!私はバレエはおろか踊り全般ド素人だけど、彼が他の子と全く違うことだけは分かった。実力はもちろんだけど、何ていうかそれだけじゃないなと。彼はまだ今回はジュニア部門での参加でバレエ学校への推薦などはなかったんだけど、数年後の上の部門に出場した時、争奪戦が起こるかも。

映画では子どもたちだけじゃなく、彼らの親たちやコーチたちもクローズアップされている。ミケーラを養女にした夫婦には頭が下がるよなぁ。最初はミケーラの妹だけを養女にするはずだったのを姉も一緒に引き取り、彼女がやりたがったバレエを習わせて、衣装も作ってあげる。なかなかできることじゃない。ミケーラの肌の色に合った肌襦袢を染めてあげるところなんてウルッときちゃったよ。

一方、ミコとジュールズの母サトコは元ピアニストだったそうで、たまに日本語で子どもたちに話しかけるシーンがある(子どもたちは日本語は理解しているけど話せないみたい)私はサトコの行動はよくいるステージママって感じでごく普通に見てたんだけど、外国人から見るとちょっと異様なんだろうか。ミコのバレエの先生にサトコが怒られているシーンを見て、そういえば他の子たちはステージのすぐ傍までついてきてないなって。みんなそれぞれ1人で出番が来るまで集中してる。確かに先生が言うことは正しい。本番直前まで近くでゴチャゴチャ言われたら集中できないし、みんなこの日のためにしっかり練習してきてるんだから、いちいち言われなくたって全部分かってる。劇場には、見るからにバレエをやってますっていう女の子たちをたくさん見かけたんだけど、彼女たちの親もこれを見て子どもに構いすぎないようにしてほしいと思う。

アランはもちろんだけど、今回登場した子たちの名前はちゃんと憶えておこうと思った。いつか超有名ダンサーになっていることを願って。ジュールズは、あの人を和ませるチャーミングさを別の道で活かしてほしいなぁ。役者方面とかダメかしら。
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人生の特等席('12アメリカ)-Nov 24.2012
[STORY]
大リーグのスカウトとして長年やってきたガス(クリント・イーストウッド)だったが、年齢のせいで目が見えにくくなっていた。そんな彼を心配した一人娘のミッキー(エイミー・アダムス)は、自分の仕事を休んで父のスカウトに付き合おうとする。だが、喧嘩が絶えず衝突してばかり。ミッキーは幼い頃に父から離れて親戚の元で育ったため、父に捨てられたと感じていたのだった。
監督ロバート・ロレンツ(数多くのイーストウッド監督映画でプロデューサーを務め、本作で初監督)
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イーストウッド4年ぶりの主演映画であり、彼が監督していない映画での主演は何と19年ぶりとなる。監督のロレンツは『マディソン郡の橋』からイーストウッド映画に関わっており、彼の唯一の弟子と言われているそうだ。イーストウッドももう80超えてるし、生きているうちに自分の持っているものを誰かに伝えたいっていう気持ちがあるのかもしれないな。でも、映画の内容が「まだまだ若い者には負けないぜ!」っていうのがちょっと面白い(笑)

しかしMLBの選手のスカウトの仕方ってのがよく分からなかったな。ガスとミッキーが訪ねたのは田舎の独立リーグか何かだったんだろうか。一応、ドラフト会議もあるようで指名がどうとか言ってたけど会議のシーンはないので、選手がいきなり入団したように見えてしまったりして、MLBのことを知っていないと理解しにくいんじゃないかなと思った。

そういえばブラッド・ピットの『マネーボール』にも老齢のスカウトマンたちが登場したのを思い出した。ガスたちが視察に行った先でも同じくらいの爺さんがいっぱいいたし、実際の球団もこんな感じなのかな。彼らが全米を飛び回って長年の経験や勘をたよりに選手を探してくるっていうのは凄いことだけど、確かに今の世の中では効率的じゃないし高齢になったスカウトマンたちをどこまで信じていいのか、って疑問に思われてもしょうがないと思った。球団側としたら大金を出して選手を買うわけだし、半分博打みたいなもんだ。だから、ガスを切り捨てようとするサンダーソン(マシュー・リラード)にムカついたけど、オーナーのヴィンス(ロバート・パトリック)の、ガスを信用してるけど他の方法も試してみてもいいかな、という態度は大いに理解できた。

ストーリーはこの手のドラマのお手本のような展開だった。紆余曲折を経るが最後は爽やかに〆るという、ちょっと出来過ぎじゃない?なところもあるお話。イーストウッドが監督した時のような味わい深さは出せてはないけど(あれは音楽の力も大きいが)素直に正しく撮ってて悪くはない。ただ“イーストウッドの弟子が師匠を主演にして撮った映画”っていう触れ込みがなければ、作品としてはちょっと弱いなと思ってしまった。
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綱引いちゃった!('12日本)-Nov 23.2012
[STORY]
大分市役所の広報課に勤める千晶(井上真央)は、大分市の知名度を上げるため、かつて大分にあったコスモレディースという綱引きの世界チャンピオンのような綱引きチームを作るよう花宮市長(風間杜夫)から命令される。しかしなかなか人が集まらない。そんな時、千晶の母・容子(松坂慶子)が勤める市の給食センターが民間委託となりクビになりそうになる。そこで千晶は職員たちでチームを結成し、全国大会出場を決めたら委託を取りやめる約束を花宮から取り付ける。
監督・水田伸生(『なくもんか』)
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綱引きといえば大分コスモレディースだ。TVの某感謝祭に登場してはマッチョなレスラーたちに完勝して「カッコイイ!」と拍手したものだ。そのコスモレディースが解散していたなんて。女だけのチームだからいろいろあったんでしょうが、なくなってしまったのは残念でならない。この映画で再び綱引きチームが結成されたら嬉しいけど、どうかねぇ。

というのも、映画の中で綱引きの面白さはほとんど描かれないのだ。何となく集まったメンバーが綱引きを通じて団結していくという話なんだけど、綱引きが纏まるためのアイテムの1つになっちゃってる。綱引き自体が楽しい!っていうわけじゃないんだよなぁ。出場選手の体重の話と、綱引き用の靴の話のくだりがすごく面白かったんだけど、それだけ。綱を引く時のテクニックや駆け引きやら、そういう話も知りたかったのに、あとはトレーニングシーンばっかり。何度も試合をして勝ち進んでいくという達成感も与えてくれない。

そういう爽やかな感動じゃなくて、お涙ちょうだい話で感動させるのが好きなんだよねぇ邦画ってやつは。絵美(西田尚美)と息子のエピソードはそりゃ泣いたけどさ、和枝(浅茅陽子)や美香(渡辺直美)の家族話まであったもんだから、何だかクドく感じてしまった。ヘビスモな沙織(中鉢明子)の謎のプライベートのほうがよっぽども興味が沸いたわ(笑)

興味といえば、千晶とコーチの公雄(玉山鉄二)の恋の行方ですよ。公雄は田舎のお見合い番組のリーダーをやって一番人気になりそうな、岐阜のしいたけブラザーズに紛れてても分からないかも(笑)って感じの絶妙なキャラクターだった。ちゃんとすればかっこいいのに何故かいつもジャージで「え?それ、よそ行き用おしゃれジャージなんですか?」と聞いてみたくなるような珍妙なファッションも披露してくれる。千晶といい感じになった時は応援したくなったし、最後はもう少しでいいから2人のことを描いてほしかったな。
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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q('12日本)-Nov 23.2012
[STORY]
シンジ(声:緒方恵美)が綾波レイ(声:林原めぐみ)を助けた行為は、実はサードインパクトを引き起こすためにネルフが仕組んだシナリオだった――。
あれから14年後、助け出されたシンジは反ネルフ組織のリーダーとなったミサト(声:三石琴乃)から真実を聞かされるが信じられず、綾波の声に導かれ1人ネルフへ舞い戻る。そしてシンジの父ゲンドウ(声:立木文彦)から渚カヲル(声:石田彰)とともにエヴァ第13号機に乗るよう命じられる。
総監督&脚本・庵野秀明(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
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新シリーズ3作目。次回作『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で完結する。

東京都現代美術館で上映された特撮短編映画『巨神兵東京に現わる』の劇場版(約10分)も同時上映された。これは見たかったけど美術館に行く時間がなくて見逃してしまい残念に思っていたんだけど、一緒に見られて良かった。巨神兵によって大都市が破壊されていくという映像で、まるで壊されていくさまを愉しんでいるかのようだなと感じた。渋谷の街がぶっ壊されてるのが見て気持ちいいなと思ってしまったんだ。で、これとエヴァ両方見終わった後、この2作品ってちょっと似てるところがあるなぁと思った。今までゲンドウのやりたいことって全く理解できなかったけど『巨神兵』を見た後だとちょっと分かるような気がする。

さて本編のほうだけど「あ、もしかしてこれは旧劇場版(『THE END OF EVANGELION』)のラストと対比させてるのかな?」と思った。あの作品は映画そのものもだけど、作ってる人たちの心がやられちゃったのがよく分かる作品だった。本作はその轍を二度と踏まない、きちんとしたエンディングに繋げようっていう意思が感じられた。ちょっとネタバレになるけど(ここから)旧作ではシンジに首を絞められてアスカは無抵抗だった。本作では同じような場所で、アスカはシンジの手を引いて歩き出すところで終わる。(ここまで)この先がどうなるのか全く想像がつかないけど、前作のようなラストにはならないと思う。きちんと決着をつけるんじゃないかな、たぶん、きっと(笑)

『序』『破』の2作に比べて、単体としての面白さはあまりない。出てくる人物全員「ウゼー」って感じだし、全員他人の話聞いてねぇし(笑)最終作への繋ぎとしてなら何とか納得できるけど、本作単体だけでも面白いっていうところがあると良かったな。これで次回作が良ければ本作の評価も上がるかも。あ、でも次回作がアレだったら本作はもっと下がっちゃうな(笑)
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