Movie Review 2012
◇Movie Index

ライク・サムワン・イン・ラブ('12日本=フランス)-Sep 17.2012
[STORY]
デートクラブのバイトをしている明子(高梨臨)は、客のヒロシ(でんでん)の頼みで84歳の元大学教授タカシ(奥野匡)の家に行く。明子はタカシの亡き妻や娘によく似ており、タカシは明子とゆっくり話をしたかったが、明子は疲れて眠ってしまう。翌日、大学に明子を送ったタカシは、明子の恋人だというノリアキ(加瀬亮)に話しかけられる。ノリアキはタカシを明子の祖父だと勘違いし、タカシに明子のことを相談する。
監督&脚本アッバス・キアロスタミ(『桜桃の味』
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キアロスタミによるイラン国外での製作映画第2弾。実は2009年にアフマディジャネド大統領が再選された際、不正があったとして市民デモが起き、そのデモをイラン映画協会が支持したことで、イラン政府は映画製作に厳しい規制をかけたという。キアロスタミのほかモフセン・マフマルバフら、イランを代表する監督たちは国外で映画を作らざるを得なくなったそうだ。
だからなのか。前作2010年の『トスカーナの贋作』はフランスとイタリアの製作だったけど、私は単純に海外進出だと思ってた。まさかそんなことが起きていたとは。・・・無知でした。

本作は撮影はすべて日本国内で行われ、セリフも日本語、インターネット上で資金調達も行われたという。タイトルの『ライク・サムワン・イン・ラブ』は歌のタイトルからきており、劇中でも流れる(意味は「まるで恋をしてる人みたい」)第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された。

日本人が日本語で演じている映画だけど、脚本もキアロスタミ自身なので、セリフのやりとりで違和感を覚える箇所がかなりあった。むしろイラン人同士が会話してたらしっくりくるなぁと。もちろんイランだからデートクラブなんかないし、若い女の子を1人で男のところに向かわせたりなんてしないけど、ヒロシが明子をタカシのところへ行かせようと説得するが、明子がいろんな理由をつけて行きたくないと繰り返すシーンなんてもろにイラン人同士のやりとりみたい。そのほかにも明子の祖母(窪田かね子)やタカシの隣人(鈴木美保子)も饒舌でクドイ。日本人監督ならここまで喋らせないだろう。

しかしキアロスタミらしい映画を日本語で見られたというのは新鮮だった。本作ほどショッキングなラストは今まで私が見た中ではなかったけど(笑)
・・・恋するゆえに爆発してしまったんだなぁ。登場人物全員行動がオカシイんだけど(おい)愛していること、恋をしていることだけは本物。妻に似た明子に恋したタカシ、束縛したいほど明子を愛しているノリアキ、明子のことが心配で1日中駅で待ち続ける祖母――みんな明子に対して真っ直ぐだ。しかし当の明子は嘘つきで言い逃ればかり。見ていて舌打ちしたくなるほどイラつく女だったが、自分でもどうしていいか分からないからつい逃げてしまうんだろう。最後に起こる騒動は、明子もタカシもノリアキもみんなそれぞれが悪くて、それぞれ被害を受ける。こういう修羅場は誰か1人だけが悪いのではなく、いろんな因果関係の上に起こるのだとキアロスタミは言いたいのではないか、と私は解釈しました。しかしビックリした(苦笑)
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白雪姫と鏡の女王('12アメリカ)-Sep 15.2012
[STORY]
ある王国の国王が亡くなり、再婚した女王(ジュリア・ロバーツ)が国の実権を握っていた。しかし女王の散財で国の財政は悪化。そこで女王は隣国の王子と自分が結婚することを計画する。一方、国王の娘スノーホワイト(リリー・コリンズ)は、父が亡くなってからは継母の女王によってずっと城に閉じ込められていた。しかし18歳の誕生日の日、スノーホワイトはこっそり城を抜け出してしまう。森にやってきたスノーホワイトはそこで盗賊によって縛られた王子(アーミー・ハマー)を見つけ、彼を助ける。2人はすぐに恋に落ちるが、その時はまだお互いが誰なのか知らずにいた。
監督ターセム・シン・ダンドワール(『落下の王国』
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原作はおなじみグリム童話の『白雪姫』で、少し前に公開された『スノーホワイト』よりはまだ原作に近い。
衣装デザインの石岡瑛子はターセム監督の長編映画すべての衣装を担当しており、本作が遺作となった。

予告を始めて見た時は、スノーホワイトのあまりのゲジ眉っぷりに「これはないわ!」と思ったし、見始めた時も「眉毛整えてから出てくれ」なんて思っていたのだが、いつのまにか慣れてしまった(笑)というのも、登場するキャラクターがみんな個性的かつどっかズレていて衣装も奇抜なので、ゲジ眉も特殊メイクの1つみたいに見えてきちゃったみたい。それにゲジ眉でも可愛いんだ、この子がまた。明るくて素直で健気で、特に城を追い出されて小人たちと生活するようになってからが良い。剣術を習う時のブルーの衣装が白い肌と漆黒の髪によく似合っていて、ブルーにもいろんなトーンがあるけど、一番似合うブルーをチョイスした石岡瑛子は最後までいい仕事をしたんだなぁとしみじみ。ご冥福をお祈りします。

内容ははシュールなメルヘンにラブコメ要素を盛り込んだごった煮みたいな感じ。ズレたキャラクターも上手く噛み合えば面白くなるのに、生かし切れずにズレたまんまで進んでいくから、見ていて居心地が悪い。笑えるところもあるんだけど、全体的にスベってる時のほうが多いという(笑)今までのターセムの映画ってみんなシリアスでグロテスクな面があって、それが彼の撮りたい映画だと思ってた。だから本作はなんか無理に明るくしようとしてない?と訝しんでしまった。最後にインド映画ばりの歌とダンスで締めたところも違和感バリバリ。彼インド人なのに(笑)
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バイオハザードV:リトリビューション('12アメリカ)-Sep 14.2012
[STORY]
洋上で敵の襲撃を受けたアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、気がつくとロシアにあるアンブレラ社の実験施設にいた。そこで洗脳されて敵になってしまったジル(シエンナ・ギロリー)から拷問を受けるが、突然セキュリティが停止し、 エイダ・ウォン(リー・ビンビン)に助けられる。今やアンブレラ社は人工知能レッド・クイーンが全実権を握っており、アンブレラ者側にいたウェスカー(ショーン・ロバーツ)は反旗を翻し、アリスを施設から救い出そうとエイダやレオン(ヨハン・アーブ)ら工作員を施設に派遣していた。
監督ポール・W・S・アンダーソン(『バイオハザードIV アフターライフ』
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シリーズ5作目。本作は前作が終わったところから始まっている。前回はウイルス感染したところまでだった中島美嘉がアンデッド(しかも口が食虫植物状態)になってアリスに襲い掛かる。

パート5ですが、全く話が進みません(笑)アンブレラ社に捕らえられたアリスが基地から脱出するだけで映画終わっちゃった。しかも、どーすんのこれ?さらに収拾つかないんですけど。もうね、ほとんど普通の人間がいません。生き残ってるのはゲームの登場人物かクローンだけ。アンデッドになっちゃったほうが仲間が多くて幸せかもしれません(泣)どうみても普通の人間を殺し過ぎた。ハッ!もしかして、これって現実の世界での終わらない紛争への警告なのかも?!いや、違うな〜。そんな真剣なテーマを持った映画じゃないわな(笑)単に風呂敷広げすぎてたためなくなってるだけだ。撤回撤回(←失礼だろ)

今回もまた3Dで見たんだけど、前作みたいなペカペカしたところがなく立体感が自然。やっぱり技術って日々進歩してるんだねー。これなら3Dで見ても損した気分にならない。むしろ刃物が飛んできたりするところなんか臨場感があって驚いた。

さて、いよいよ次回で完結する、らしい。ホントに頼むからもう終わって下さい(悲痛な叫び)頼むよ〜。
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踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望('12日本)-Sep 9.2012
[STORY]
サミットの会場で誘拐事件が起こり、その後被害者が射殺される事件が起きた。殺害に使われたのは、警察が保管していた拳銃だった。捜査本部は湾岸署に設置され、管理官として鳥飼(小栗旬)が指揮を執るが、青島(織田裕二)ら所轄には情報を全く開示しないという捜査体制がとられていた。そんな中、第2の殺人が起き、さらに真下(ユースケ・サンタマリア)の息子が誘拐されてしまう。
監督・本広克行(『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』
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シリーズ完結編。今回は前作のパート3から2年後とスパンは短く、これまでのシリーズに警察官役で登場した人物が再集結し、前作では出演しなかった水野美紀も出演。また、すみれの上司を演じた小林すすむの遺作であり、エンドクレジットではメッセージが表示された。
公開日前には携帯動画『係長 青島俊作2 事件はまたまた取調室で起きている!』が本作の2ヶ月前の出来事、スペシャルドラマ『踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件』は1ヶ月前の出来事が描かれており、映画と繋がっている。

一番最初のTVドラマが1997年、そして2012年に完結ということで15年間、寂しいけどこのあたりが潮時なのかなぁと本作の最後のほうに出た青島の生年月日(昭和42年12月13日)を見て思いました。そして、終わる前に室井さんを結婚させてあげたかったなぁ(泣)と思った。恋愛ネタをほとんど盛り込まないところが私は好きだったし、青島とすみれは将来どっかでどうにかなるだろう(笑)と思ってるんでいいんだけど、室井さんはねぇ・・・。青島が45だから室井さんはもうちょっと上でしょ。初老じゃないスか。『サラリーマン刑事と最後の難事件』で急に室井とすみれのお見合い話が出てきて思わずTVの前で「遅いよ!」と叫んだもんね。しょうがないので室井さんはこの事件の後始末が終わったらきっといい出会いがあるんだ、と妄想しておく。

さて本編だけど、パート3から2年しか経ってないということは、最初から本作とセットで構想していた作品だったんだろう。実は見てきた後にTVでパート3をやっていたのでもう1回見たんだけど、ある人物が執拗に言っていたセリフの意味がやっと分かった。ここからもう伏線が張られていたんだね。なるほどなぁ。
全体としては、このシリーズを通してのテーマや伝えたいこと(警察の隠蔽体質、法律に縛られた捜査体制、所轄と本店の差別など)に対しての一応の決着もついたと思う。これで警察が変わるのかというと、やっぱりそうでもないんだろう(苦笑)でもタイトル通り、希望は見えたんじゃないかな。

SPドラマがふざけすぎて映画大丈夫なのか?と心配だったけど、本作は事件発生後はかなりシリアス。でもビールのくだりはイライラするし、何でそこで都合よくバナナに繋がる?、とか相変わらずツッコミどころは多い。さらに私が青島の臭いセリフ回しがあんまり好きじゃないんで、最後の演説ぶったところはムズムズしたけど、それも含めて踊るだからなぁ。あ、1つ「おおっ!」と思ったのは、犯人の顔がPCの隙間からちょっとだけ見えるカット。これ、全然誰だか分からなかった。事前情報入れてなかったので、誰だか分かった時にはビックリしたわ。喋ると残念なんだけど(おい)黙ってのっそり立っている時はちょっと怖かった。あの隙間はすごいー(笑)
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夢売るふたり('12日本)-Sep 8.2012
[STORY]
貫也(阿部サダヲ)と妻の里子(松たか子)が小料理屋を始めてようやく軌道に乗った矢先、火事で全てを失ってしまう。すぐに立ち直りバイトを始めた里子と対照的に、貫也はいつまでも立ち直れず、とうとう常連客だった玲子(鈴木砂羽)と寂しさを埋め合うように一夜を共にし、さらに玲子から大金を受け取ってしまう。それを知った里子は激怒するが、結婚詐欺で金を騙し取る事を思いつく。店を再開するため、貫也は次々と女性たちを騙していく。
監督&脚本・西川美和(『ディア・ドクター』
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西川美和のオリジナル脚本で、長編では初めて女性が主人公の作品。第37回トロント国際映画祭のスペシャル・プレゼンテーション部門に出品された。

毎回毎回惜しい!と思ってしまう西川作品。またしても惜しかった(笑)いや、今回は今まで見た作品の中では一番グッとくる場面が多かったよ。とにかく出演者の演技が良かったから。でもやっぱり脚本なんだよねー。前作『ディア・ドクター』では、主人公が医者として村に来た理由がはっきりしないから全体的にぼやけてしまったと書いたが、本作も1つめの不満はそれに近い。店を失って貫也が浮気して里子にバレる。そこまではいい。でも次のシーンでは貫也がもう結婚詐欺を始めている。その途中がすっぽりと抜け落ちて描かれていない。2人がどういう心境から詐欺をするという考えに至ったのか、そして2人でどう話し合ったのか、どう折り合いをつけたのか、一番大事な部分がないわけ。夫婦喧嘩の途中で里子の気持ちが明かされ、貫也は里子への罪滅ぼしから決意したようだが、でもそうなると最初に詐欺を始めたときの貫也のちょっと楽しそうな顔は何なのよ。自分から進んでやって罪悪感なんてまるでないみたいだったよ。整合性が取れないなと違和感がぬぐえなかった。

そしてもう1つの不満。不満というかこちらは全否定だけど、最後の修羅場がどうしても私はダメだ。それまでは多少違和感あっても引き込まれてた。でもあの子どもの行動ですっかり冷めてしまった。子どもを使わなくても他にもっといくらでもやり方があったろうに。はっきり言う。胸糞悪い!

とはいえ、最初に書いたように出演者の演技は良かった。特に松の演技は私が今まで見た中ではベスト。浮気をして帰ってきた貫也を熱い風呂に入れて問い詰めたり、貫也と口論になった時の演技は凄まじく、彼女の後ろに炎が見えるような瞬間が何度もあった。火事の時の火が、彼女の中ではまだ消えてないんだって思った。対する貫也はすっかり火が消えてびしょびしょ(笑)店を復活させるという意欲も消えてしまった。浮気している最中にシャワーをガンガンあてているのはそういう意図もあったのかな。見る前までは「サダヲが結婚詐欺って(ぷ)」なんて失礼ながら思ってたけど、びっくりした。見た目だけならモテるタイプじゃないんだけど、逆にそれが警戒心を起こさせず、貫也が本来持っている優しさやダメさが女心をくすぐる。時々出る方言もちょっと可愛くて、あれは女は惚れちゃうわ。見事だった。詐欺に遭う女性たちもみんなよかった(他が芸達者すぎて田中麗奈はあともう少しだったが)

というわけで、また次回作に期待(笑)
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