Movie Review 2011
◇Movie Index

幸せパズル('10アルゼンチン=フランス)-Oct 2.2011
[STORY]
専業主婦のマリア(マリア・オネット)は夫フアン(ガブリエル・ゴイティ)と2人の息子とともに平凡な生活をしていた。そんな時、50歳の誕生日にプレゼントされたジグソーパズルに夢中になったマリアは、パズル専門店で見つけた“パズル大会のパートナー募集”に応募する。その相手はパズル大会に何度も出場している富豪のロベルト(アルトゥーロ・ゴッツ)彼はマリアのパズルの才能を認め、マリアは家族に内緒でロベルトの家に通って練習することになる。
監督&脚本ナタリア・スミルノフ(初監督作)
−◇−◇−◇−
第60回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品(このときの金熊賞が『蜂蜜』
監督は『オリンダのリストランテ』でアシスタントを務めていた女性だそうで、私はこの映画を劇場で見そびれてDVDで見ていました。アルゼンチン映画は本作が初めてだったかな、と思ったけど違ったんだ。けっこう忘れてるなぁ。

最初に気になったのは物語ではなく、カメラがやたら登場人物に近いことだった。オリジナリティを出そうとしたかったのか、プライベート感を出したかったのか。主役のマリアなんてドアップばっかりで、映像に慣れるまでが大変だった。でもこのマリアを演じたマリア・オネットって確かにオバチャンだけど(実年齢は45歳)よく見ると美人だしスタイルも崩れてないし、若い頃は相当綺麗だったろうなぁと思わず画像を検索しちゃたほど(この映画の画像ばっかり出てきたわ(笑))

映画の冒頭では夫や息子たちから蔑ろにされてるのか?と思うほど酷い扱いをされていて(自分の誕生日なのに誰も手伝わず黙々と料理と片付け)だからパズルに夢中になってしまうのかな?と予想したほどだったが、その後のシーンでは夫がちゃんとマリアに「愛してる」と言うし夜の生活もあるしで、あれ?違うの?となったが、アルゼンチンでの妻の立場ってこんなものなのかもしれないと何となく納得。愛されてはいるけど家事以外ではさほど必要とされてないというか、毎日の生活に便利な存在というか。だから生活に全く関係のない、完全に趣味であるパズルに夢中になり、そのパズルで人から必要とされることに喜びを感じてしまったのだろう。

ここからネタバレになるけど(ここから)息子の身勝手さと、それを咎めない夫にキレたマリアは出場を迷っていたパズル大会に出場して優勝する。世界大会には出ないと明言し、チケットを仕舞い込んで映画は終わるが、私はこれ彼女が切り札として取っておくつもりなのではないかと思った。次にキレたらチケットを持って家を飛び出してしまうんじゃないかと。(ここまで)そういう想像をさせる面白いラストだった。

パズルの組み立てについてはもうちょっと詳しく見せてほしかった。マリアのパズルの組み立て方は独特で、普通は一辺が直線になっているフチのパーツを集めて外枠を組んでいくが、マリアはいきなり目に付いたパーツを拾って組み合わせてしまう。そんなやり方でも早く作ってしまうらしいが、映像の中ではその早さを見ることはできなかった。観客が見ててもスゴイ!と思えるシーンを1つでもいいから入れてほしかったのにな。でもこれ見てたらちょっとジグソーパズルをやりたくなっちゃった(笑)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

リミットレス('10アメリカ)-Oct 1.2011
[STORY]
作家志望のエディ・モーラ(ブラッドリー・クーパー)は文章が一行も書けずに毎日怠惰に過ごしており、恋人リンディ(アビー・コーニッシュ)からも別れを告げられる。そんな時、元妻の弟ヴァーノンとばったり出くわし、彼からある薬を1錠プレゼントされる。その薬は通常は20%ほどしか使われていない人間の脳を100%活性化させるというものだった。追い詰められたエディはその薬を飲んでみたところ、たちまち頭が冴え、小説もあっという間に書けてしまった。もっと薬がほしくなったエディはヴァーノンの家に向かうが、殺人事件に巻き込まれてしまう。
監督ニール・バーガー(『幻影師アイゼンハイム』
−◇−◇−◇−
原作はアラン・グリンの2001年に刊行した『ブレイン・ドラッグ』で、原作の原題は『The Dark Fields』だが、映画化にあたりタイトルが『Limitless』に変更された(日本語タイトルも『リミットレス』)
主演のブラッドリー・クーパーは製作総指揮にも名を連ねている。

オープニングタイトルの、薬でトリップしている状態を表現した映像が面白いと思ってジッと見ていたらクラクラして吐き気に襲われた。本編中もエディが薬でトリップしている時に同じパターンの映像が使われてたんだけど、あの薬を飲んだらこうなるのかーなどと身をもって体験(笑)しかしこれはヤバイ。なるべくスクリーンの中心を見ないようにして深呼吸を数回。面白い映像でも気持ち悪くなるのはやっぱりイヤだな。これから見る人は注意が必要だ。

細かいところが気にならなければ面白い映画だと思う。脳が100%使われるという薬のおかげで一気にリッチになったエディだったが、一方でその薬のせいでトラブルに巻き込まれ絶体絶命のピンチにまで追い詰められる。実は映画はこの絶体絶命のところから始まるのだが、どうしてこんなことに?そしてこの後どうなる?!ということでヒヤヒヤハラハラ。大ピンチを乗り切るところは上に書いた映像とはまた違った気持ち悪くなるシーンだったが、スカッとするラストはお見事。オチも笑わせてもらった。薬と頭は使いよう、ってことね。

逆に細かいところが気になると何て荒い映画だと思う。最初に薬をくれたヴァーノンの事件はウヤムヤ、エディがトリップしている間に起きた事件も解決しない。2つの事件の犯人はひょっとしたら(ここからネタバレ)アトウッドの部下かなぁと思うんだけど確かじゃない。アトウッドが死んだ後にエディが部下を脅していることから、2人の殺人を黙っててやるから言うことを聞けと言ったのではと想像。(ここまで)それから、そもそもこの薬を何故ヴァーノンが大量に持っているのか?どこが開発したのか?これを商品化するつもりなのか?などなど、薬にまつわる謎もそのまんま。原作ではちゃんと書いてあるんだろうか。エディのモノローグがちょいちょい入るのだから、いくらでも説明を入れられただろうに。そこが不満だった。

本作のクーパーもやっぱりイケメン過ぎでした。特に調子に乗りまくってるところのドレスシャツ姿が最高。Tシャツ姿はずんぐりして見えていまいち。あと最後の髪型には吹きそうになりました(笑)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

はやぶさ/HAYABUSA('11日本)-Oct 1.2011
[STORY]
2002年夏。大学卒業後、博士号取得を目指す水沢恵(竹内結子)は、宇宙科学研究所の的場泰弘(西田敏行)の講演に感銘を受け、彼に宇宙に対する熱い思いを語ったところ、研究所のスタッフとしてスカウトされる。研究所では小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトが始まっており、プロジェクトマネージャーの川渕幸一(佐野史郎)を中心に2003年5月の打ち上げを目指していた。
監督・堤幸彦(『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』
−◇−◇−◇−
日本の小惑星探査機「はやぶさ」プrジェクトをテーマにした作品の1本目(20世紀FOX製作)このほかに2本公開が決まっており2012年2月に『はやぶさ、遥かなる帰還』(東映)、3月には『おかえり、はやぶさ』(松竹)の公開が予定されている。
本作は水沢恵という特定のモデルのいない架空の人物を主人公に、実際にプロジェクトに携わったJAXAの的川泰宣氏や川口淳一郎氏をモデルにした人物たちが登場し、打ち上げ準備から帰還までを、実際の映像を交えて描いている。JAXA相模原キャンパスやカプセルが着陸したオーストラリアなどでもロケが行われた。

はやぶさプロジェクトについてはNHKのドキュメンタリーや動画なんかで既に見ていたので概要は分かってるんだけど、佐野史郎の川口先生(劇中では川渕)がそっくりだったのに驚いて、ほとんどそれ目当て(笑)で見た(来年公開の2作の川口先生は渡辺謙と大杉漣だからそっちは期待していない)ポロシャツとかチェックのシャツとか再現率高ぇ!(笑)他のモデルとなった人たちは詳しく知らないんだけどやっぱり似せてるんだろうな。
そんな中、架空のキャラという恵は作りすぎてて浮きまくっていた(ここで「そういえばこれ堤幸彦の映画だった」と気がついたんだが)あんな挙動不審で対人恐怖症みたいな人に対してJAXAの人たちみんな普通に接しててスゲーよ(笑)ここまでしなくても、普通に頑張り屋さんの女性じゃダメだったの?あと齋藤潤氏をモデルにした坂上(高嶋政宏)と恋愛に発展するのか?みたいな妙な間とか空気をたまに出してたけど、あれは何だったんだろう。私の思い違いですかね。

打ち上げ前は各部門が軽量化に腐心したりアイデアを出し合ったり、的場は的場で打ち上げ場所の漁協と交渉したりと、それぞれがミッションを成功させるため難題をクリアしていく展開はやっぱり面白かったし、ワクワクさせられた。特にお手玉と、打ち上げ後の「こんなこともあろうかと」のところはニヤニヤしっぱなし。劇場内でもクスクス笑いが出ていた。それと行方不明になったはやぶさに根気よく電波を送り続けるところも改めて凄いことだと感心。このとてつもなくスケールの大きなプロジェクトは、言葉は悪いけどこんなちっちゃなことをコツコツと積み重ねたことで成功したのかと・・・やっぱり諦めちゃいけないんだなぁ。私はすぐ諦めちゃうけど(笑)これ見た子どもたちは諦めないことを学んでほしいわ。

そういえば恵が、子どもたちにも理解できるようにと絵を描き、はやぶさ君というキャラクターに仕立ててミッションの説明をしていくんだけど(本物はこちら)これは子どもたちや、私のような理解力のない大きいお友達にも分かりやすかった。これを見たのちに「はやぶさ君最後のお仕事」と大気圏突入を見せられてごらんなさい、涙腺決壊するしかあるまい!ここはどちらも本物の写真と映像が使われている。やはり本物に勝るものなし。これもCGだったらここまで感動しなかっただろうな。映画としてはそれってどうよ?って感じだけど(笑)

いくつか首をかしげるところもあったけど、まずまずの映画だった。後続作品を見るのはどうしようかなぁ。3Dも気になるところだけど・・・。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

さすらいの女神(ディーバ)たち('10フランス)-Sep 24.2011
[STORY]
パリのテレビ業界を干された元プロデューサーのジョアキム(マチュー・アマルリック)はアメリカへ渡り、ニュー・バーレスクの興行でそこそこ成功していた。そしてダンサーたちを引き連れフランスでの凱旋ツアーを開始するが、パリ公演はTV時代にトラブルを起こした相手からの妨害が入り、大きい劇場で公演ができなくなってしまう。
監督&脚本マチュー・アマルリック(『ウィンブルドン・スタジアム』)
−◇−◇−◇−
『潜水服は蝶の夢を見る』や『007/慰めの報酬』に俳優として出演しているマチュー・アマルリックが監督、脚本、出演した作品。監督作品としては短編やTV映画を含めると12作で、本作は10本目にあたる。日本で一般公開は初。第63回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で監督賞を受賞した。

クリスティーナ・アギレラ主演の『バーレスク』が面白かったのと、本作も予告で少し流れたショーのシーンが面白そうだったので見てみることにした。本作に登場するダンサーたちはみな現役のニュー・バーレスクのダンサーだそう。アギレラのを見ていたせいか、ショーに出る女性たちってみんなモデルみたいなスタイルの人たちばかりだと思ってたけど、意外とデ・・・いや、ふくよかなお姉さまたちが多い。でも逆にそれがエロかったりキュートだったりで何とも魅力的だった(男性は太ってなくて筋肉質のいい身体してました(笑))特にジュリー・アトラス・ミュズという女性のショーは生で見たくなってしまた。大きな風船に全身入ってしまうパフォーマンスと、切断された手首が勝手に動いてしまうパフォーマンスは見てて楽しい上にその技術力の高さに驚かされる。他のダンサーたちのショーは一部分を切り取って映していたが、彼女のショーはできるだけ観客に見せようという意図が見え、監督も工夫して挿入していた。そうだよ、もっと見せてくれよ(笑)

ジョアキムが過去に何をやらかしたのかは具体的な説明はないのだが、今現在の彼の言動を見ているとだいたい想像がつくようになっている。被害を受けたらしい人たちの反応を見ると、相当ヒドイことをしたと思われ(笑)フランスの恋愛映画によく出てくる、沸点が低くてすぐカッとなって怒鳴り散らす、まさにそんな男。たぶん奥さんとも何度も下らない喧嘩をしまくってて、その過去の事件が決定打となって別れたんだろう。そういう男なので、今はバーレスクショーを取りまとめているが、チャンスがあればいつでもパリの中心に返り咲いてやるという野心アリアリで、ショーやダンサーたちへの愛情はそれほど感じられない。ミミ・ル・ムー(ミランダ・コルクラシュア)に対しても恋愛というよりは、その場の勢いって感じだし。今の仕事のほうが自分にぴったりで誇りを持ってるのかと思ってたんだけどなぁ。それでも最後はちょっと目が覚めたか?いや、コイツのことだからまだどう転ぶか分からないなぁ(笑)ショーや、ショーの出演者は良かったけど、主人公がダメすぎてプラスマイナスゼロだわ(笑)誠実で前向きなフランス人てのも気持ち悪いが(スマン)今の彼の人生を支えてくれるショーとダンサーたちをもう少し大事にする気持ちは見せてほしかったな。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

アンフェア the answer('11日本)-Sep 20.2011
[STORY]
元警視庁捜査一課の刑事・雪平夏見(篠原涼子)は、警察病院占拠事件後、北海道の西紋別署刑事課に異動していた。上司の一条(佐藤浩市)とは恋人同士となっておりプロポーズもされていたが、機密事件がまだ解決していないため答えを保留にしていた。そんな時、東京では、連続殺人事件が発生し、雪平の元夫でジャーナリストの佐藤和夫(香川照之)が容疑者として指名手配されてしまう。無実を信じる雪平の前に佐藤が現れ、彼女に大事な証拠品を手渡すがその直後に佐藤は殺され、今度は雪平が容疑者として逮捕されてしまう。
監督&脚本・佐藤嗣麻子(『K-20 怪人二十面相・伝』
−◇−◇−◇−
2006年にフジテレビで放映されたTVドラマ『アンフェア』と映画版『アンフェア the movie』の続編。テレビシリーズと映画1作目では脚本のみ担当だった佐藤嗣麻子が、本作では脚本だけでなくメガホンも握っている。

前作はドラマの延長って感じだったけど、本作はTV放映して大丈夫?ってな残酷シーンもあり『セブン』や『羊たちの沈黙』のようなサイコサスペンス色も強い。あのさ、もういいかげん1人きりで敵の家に潜入とか国際法で禁止しようよ(笑)怖くてたまんないよ。絶対捕まるんだしさ〜。
それはさておき、ストーリーはよく考えるとちょっと辻褄合わないんじゃないの?とか、都合良すぎるだろ・・・とかあるけど、元々そんなに緻密なドラマじゃなかったし、私は1作目よりずっと面白く見れた。エンドクレジットで細かいネタばらしをしていくのも面白かったし、分からなかった人向けな親切設計。本編でやっちゃうと映画の流れが悪くなったりするしね。アンフェアならぬフェアに見せてますな。

これは私の勝手な憶測だけど、今まで脚本だけに携わってきた佐藤が「雪平の本当のカッコよさを分かってない。カッコいい女ってのはこれだ!」って見せ付けているように感じた。女が描く理想の女刑事の決定版!みたいな(笑)タフで誰に対しても気を許さず、脅しにも屈しない。お嬢さん走りも見せません(笑)前作まではウェットなところがあったが、本作はひたすらドライ。私は1作目の娘とのお涙ちょうだいシーンがかったるくてしょうがなかったので、本作で娘が海外にいるという設定だけで喜んじゃったもん(笑)その分、かどうかは分からないが篠原のメイクが今回すげー怖かった(笑)ほらあれ、ウルトラマンの敵、ダダ、あれに見えてしょうがなかった(ごめん)

一応、これでドラマからの一連の事件には決着がついたが、2011年9月23日に放映されたスペシャルドラマ『アンフェア ダブル・ミーニング 二重定義』では新たに望月陽(北乃きい)というキャラクターを登場させ、彼女がかつて誘拐され犯人が捕まっていないという新たな謎を作り出すあたり、まだまだこのシリーズを続ける気満々のようだ(ホント言うとちょっとうんざり)でもドラマでも映画でも始まれば見ちゃうんだよなぁ〜。
home