Movie Review 2007
◇Movie Index

情痴アヴァンチュール('05フランス=ベルギー)-Apr 4.2007
[STORY]
ビデオライブラリーで深夜に働くジュリアン(ニコラ・デュヴォシェル)は、ある晩マンションの外で裸足の女と出会う。女は向かいのマンションに住んでいるガブリエル(リュディヴィーヌ・サニエ)という子持ちの女であることが分かった。彼女にはルイ(ブリュノ・トデスキーニ)という恋人がいるが同居はしておらず、夜になるとルイはどこかへ帰っていくのだった。その後、再び深夜にジュリアンは裸足で歩くガブリエルと出会う。思わず彼女の部屋まで追いかけたジュリアンは、部屋で気を失っている彼女を見つける。彼女は夢遊病者だった――。
監督&脚本グサヴィエ・ジャノリ(『加速する肉体』)
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フランス映画祭2007上映作品。サニエとデュヴォシェルは2002年の『Les Freres Helias』という短編映画以来2度目の共演で、本作の時にパートナーとなり2人の間に娘が生まれている。

ちりばめられた素材は文句なし。冒頭は銃声と血にまみれたベッド。部屋から運び出される遺体。そこから数ヶ月前に遡り、こうなった経緯が語られる。
雨の夜に街を彷徨う女、女の部屋から盗んだビデオ、泊まらずに帰っていく女の恋人、そして一体誰が誰を撃つことになるのか?と興味を引かれる謎がたくさん出てくる。けれど冒頭の事件の結末も衝撃を受けるようなものじゃなかったし、謎も分かってみれば謎と言えないようなものばかり。思わせぶりな映像の積み重ねを最後まで見せられたみたい。ビデオの中身だって、ガブリエルに関する何かが分かるのでは・・・と期待して見ていると、単にみんなが遊んでるシーンしかなく「これだけ?」とガッカリさせられる。見どころはサニエの裸くらいなんじゃないでしょうか(笑)

ガブリエルが夢遊病になった理由も分からないし(彼女の母親が登場した時に、これで分かるのかもしれないと期待するも、やっぱり何もなし)ジュリアンが本気でガブリエルを守り通すのかと思えば出て行く恋人を引き止めたりするし(それはフランス人だからしょうがないか)←おいおい

映像は悪くないのだから、脚本は別の人に書いてもらって(今回も2人で書いてるが)監督に専念して撮ったのが見てみたいな。
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アンフェア the movie('07日本)-Mar 26.2007
[STORY]
警視庁公安部に異動した雪平夏見(篠原涼子)は、父が関わっていた極秘文書について調べていた。そんなある日、自家用車が爆発し、乗っていた娘の美央が大怪我を負ってしまう。美央は警察病院に搬送されるが、何とその病院がテロ集団に占拠されてしまう。彼らは来院中の警察庁長官を人質に取り、警察庁の裏金80億円を要求。警察は要求を受け入れずSATを突入させようとする。一方、雪平は娘を助けるため単独で病院内に乗り込もうとする。
監督・小林義則(TV版の演出を経て映画初監督)
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関西テレビ製作の2006年1月から放映された全11回の連続ドラマ(10月にスペシャル放映)の映画化。原作は秦建日子の『推理小説』(ドラマの中盤以降はオリジナル)脚本は『エコエコアザラク』などを監督した佐藤嗣麻子。

TVシリーズは初回から全部見てるけどそれほどハマっていたわけではなく、とりあえず犯人が気になるので最後まで見て「ああやっぱりそうだったのね」という予想通りなドラマだった。だからまさか映画化されるとは思ってなかったし、しかもさらに続編(映画?)を作る気とは恐れ入った(笑)

映画はとりあえずお金はかけてみました、ということで爆破シーンがあったり大勢のエキストラ使ってみたりといろいろやってるんだけど、演技やアクションはTVと変わらないのでかえってしょっぱい出来になってしまった。
TVでは背があまり高くないのに似合わないロングコートを着せられ、カッコよく走らせようとするもお嬢さん走り、という情けない雪平だったが、映画ではコートを脱いで白いシャツで行動。途中水に濡れて黒い下着が透けて見えるというサービスショットもあり。走り方は相変わらずだがTVの時のようなヒールの高い靴ではないらしく、TVよりもシャープに見える。えと、良かったのはこれくらい(えー?!)

ひどいところは挙げていったらキリがないのだが、一番ひどかったのは雪平と美央のシーンが長いこと。邦画のダメなところがこの映画でもたっぷり出てしまった。TVならCMも入るし映画ほど集中して見ていないので多少演出がタルくても気にならないが、映画では集中して見ているので勿体つけた演出はものすごく苛々させられるのだ。娘が一刻を争う病原菌に感染したのだから、もっと急いで行動しなければならないのに、娘に謝ったり泣いたりといつまでもウジウジしている。見てるほうが焦ってしまうので、2人が涙を流し合ってもちっとも心に響いてこない。「いいから早く行けー!」と何度心の中で叫んだか。でも美央が助かったシーンがさらに輪をかけて陳腐なものだったので、本気で心配した自分がバカみたい・・・と後悔しました。あぁ(←2本続けてため息)

なんかもう次は映画館じゃなくてDVDが出るまで、いやTV放映まで待とうかなーなんて思ってます。どうせ次は三上(加藤雅也)と対決するんでしょ〜。

パート2『アンフェア the answer』の感想はこちら
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デジャヴ('06アメリカ)-Mar 21.2007
[STORY]
巨大ハリケーン、カトリーナによる被災直後のニューオリンズで、フェリーが爆破され500人以上もの犠牲者が出る事件が発生する。ATF《アルコール・タバコ・火器取締局》の捜査官ダグ・カーリン(デンゼル・ワシントン )はすぐに爆破の原因を解明し、事件より数時間前に発見された女性の遺体が事件の鍵を握っていると確信する。彼の捜査能力を買ったFBIのプライズワーラ(ヴァル・キルマー)は、ダグに特別捜査班へ入るよう要請する。
監督トニー・スコット(『ドミノ』)
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デジャヴとは、実際は一度も体験したことがないのに既にどこかで体験したことのように感じることで、フランス語のdeja vuが語源。映画の冒頭で、ブラッカイマーフィルムのロゴ(あの道路脇の木に稲妻が落ちる映像)が2度繰り返されたり、キャストのクレジットが一旦消えてもう一度出たりと、デジャヴを体感させるような面白い演出で本編への期待が高まる――。

※ここからネタバレを含むので読みたくない方は飛ばして下さい。

が、見てビックリ。というかガックリ。これってタイムトラベル映画じゃないですか。予告でクレア(ポーラ・パットン)がダグに「あなたのことを知ってるわ」と言うシーンがあるんだけど、これホントに最後のほうのシーンなのね・・・。意外な映画は嫌いじゃないけど、この映画はなぁ〜。ひどいなーとしか・・・。私が予告から受けた予想では、爆破事件が起きた時からダグはデジャヴを意識するようになって、事件とデジャヴの謎を追ううちに真相に辿り着くという映画だと思ってたわけ。でもそうじゃなかった。とりあえず予告を作った人、出てきなさい!(笑)

タイムウィンドウという装置を使って、衛星から送られてくる4日前の映像を見ながら犯人を探すというアイデアは面白かったし、探している最中のシーンはこの映画の中で一番良かったところだ。しかし、4日前の映像のはずなのにクレアが監視されていることに気が付くのはおかしいし、4日前の映像にモノや人を送ることができるって、それはいくらなんでもありえないでしょ。しかもタイムパラドックス(タイムトラベルに伴う矛盾や変化のこと)をどうするのかと思いきや、爆破で誤魔化し、みんな助かって良かったー!そしてダグとクレアも〜で終了。こんなんで良ければいくらでも映画が作れるんでは?
ここまで開き直られるといっそ清々しい気分にすらなるけどね(笑)あいかわらずカーアクションもやりすぎで、犯人を捕まえるためとはいえこれ何人か死んでるんじゃない?とツッコミたくなるのもお約束か。ブラッカイマー映画だってことを忘れないようにしなければいけなかった。あぁ。
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ルネッサンス('06フランス=イギリス=ルクセンブルグ)-Mar 18.2007
[STORY]
2054年パリ。巨大企業アヴァロン社の研究員イローナが誘拐される。彼女の救出を命令された警部カラス(声:ダニエル・クレイヴ)は、彼女の姉ビスレーン(声:キャサリン・マコーマック)から話を聞くが、何か隠しているようだ。そんな時、イローナがアヴァロンで不老不死の研究をしていたことが分かる。
監督クリスチャン・ヴォルクマン (『Maaz』)
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モーション・キャプチャーを使用したモノクロ・アニメ。フランス映画祭2007上映作品。アヌシー国際アニメーションフェスティバル2006の長編部門グランプリ受賞。

ビジュアルは『シン・シティ』みたいだったが、『ブレード・ランナー』や『甲殻機動隊』、あと『バイオハザードU アポカリプス』のアンブレラ社のCMのような予告とアヴァロン社のCMもかなり似てるなぁと思った。
実際に見てみてやはりストーリーに目新しさはなかったが、苦いラストが印象的だ。カラスが警察を辞めるとは思ってなかったし、イローナも想像とは違う女性で・・・。思い返せばフランス映画らしさもよく出てたんだけど、英語吹替だったので見てる間はそれを忘れていたのだった。フランス語で見てみたらまた違って見えてきそうだ。

映像はやはり見る価値あり!モノクロだけど奥行きがあって、ガラスや雨もリアル。特にガラスに人の顔が映るところは「すごい!」と思わず声を上げそうに。どの映像も切り取って額に入れたくなってしまう。グッズでフィギュアよりもポストカードがあればよかったのに。

ただ非常に残念なことに映画祭での鑑賞だったため座席が選べず、前から2列目の右端という普段なら絶対に座らない席になってしまい、建物など直線で描かれている映像はまだいいのだが、人の顔などは歪んで見えるし動きが早いシーンでは気持ち悪くなってしまった。なので途中で何度も深呼吸したり目を閉じたりしてしまい、見逃した場面もあるかもしれない。DVDが出たらもう1度きちんと見たい。また感想を書き足すかも、です。
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逃げろ!いつか戻れ('06フランス)-Mar 18.2007
[STORY]
2000年パリ。ある時、アパートのドアに数字の4のような印が次々と書かれる事件が発生する。単なるいたずらではなく、大事件へと発展すると睨んだ警視のアダムスベルグ(ジョゼ・ガルシア)は調査を開始する。するとアパートの中で、一部屋だけ印が書かれなかったドアがあることが分かる。その部屋を調べてみると、真っ黒く塗られた全裸の男が死んでいた・・・!
監督レジス・ヴァルニエ(『イースト/ウェスト 遙かなる祖国』)
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フランス映画祭2007上映作品。
原作はフレッド・ヴァルガスの『Pars vite et reviens tard』(この映画の原題)で、アダムスベルグが主人公の小説は10作あり本作は5作目。日本ではまだ1作目の『青チョークの男』だけしか翻訳されていない。

『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』みたいな、宗教がかったトンデモ映画(おい)みたいなものかと想像してたんだけど、いい意味で予想を裏切られた。かなりしっかりしたサスペンスミステリーだったよ(笑)始まりはとっつきにくくて不可解だったけど徐々に引き込まれていったし、動機も犯人もきちんとしてたし、どんでん返しもあって見終わった後はちゃんと納得できるストーリーだった。フランスが作ったミステリーとしたら上出来だ(褒めてんのかそれ)

ただタイトルがどうにかならないのかなぁ。一般公開しても申し分ない作品だけど、このタイトルじゃどんな映画か全然分からないよね。原題を直訳しただけだから。この原題はペストを避けるための最良の方法をラテン語の副詞であらわしたものだそうで、映画の中で語られている。昔は治療法がないからペストが発生したら、すぐ逃げて(病気が沈静化した頃に)ゆっくり戻って来い、ということらしい。そこまで意味を知ると悪いタイトルじゃないんだなぁ。ただとっつきやすさを考えると分かりやすく『ペスト殺人事件』で・・・ダメだ、これじゃコケるな(笑)

シリーズ化されている作品だし、フランスでは有名だから細かい説明はいらないのかもしれないけど、初めて見る日本人からするとアダムスベルグのキャラクターが分かりにくい。いきなり恋人が出て行ってしまうし、本人は何を考えてるかよく分からないしエキセントリックだし。 もう少し導入部で彼の人となりを描いてくれればよかったな。それよりも彼に振り回される部下のダングラー(ルカ・ベルヴォー)や、『サン・ジャックへの道』に出演していたニコラ・カザレのほうが印象に残っている。この映画の小説も翻訳されたら読んでみたいな。
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