Movie Review 2008
◇Movie Index


ラスベガスをぶっつぶせ('08アメリカ)-Jun 1.2008
[STORY]
マサチューセッツ工科大学の学生ベン(ジム・スタージェス)はハーバード医科大に合格したが、30万ドルの学費がなければ入ることができない。奨学金を貰うためにレポートを書こうとするも、何を書いたらいいのか分からなかった。そんなある日、ベンが授業で発言したことでミッキー・ローザ教授(ケヴィン・スペイシー)に目をつけられる。そして彼をブラックジャックで儲けるためのチームに勧誘する。一度はためらうベンだったが、憧れのジル(ケイト・ボスワース)から誘われ、学費のためだと割り切り参加する。そして練習を積み、ラスベガスへと乗り込むが・・・。
監督ロバート・ルケティック(『キューティー・ブロンド』
−◇−◇−◇−
原作はアメリカの作家ベン・メズリックのノンフィクション『ラス・ヴェガスをぶっつぶせ!』で、主人公のモデルとなったジェフリー・マーは本作でディーラーの1人を演じている(そういえばアジア系のディーラーがいたような気がするのだが忘れた)
ケヴィン・スペイシーは自ら本作の映画化権を取得して、製作にも携わっている。

ブラックジャックといえば手塚治虫のマンガか「よろしく」のマンガ(笑)としか答えられない私だが、トランプの数字が21により近い数なら勝てるゲームと聞いて、そういえばやったことがあると思い出した。あれがブラックジャックだったのか。確かやった時はゲームの名前はこの映画の原題である『21』だったような気がする。
というわけでどういうゲームかは見てる途中で思い出したが、カードカウンティングについては説明を聞いてもさっぱり分からなかった。仲間がベンにサインを出して、そこから数えたり予想したりするらしいのだが、もう何が何やら・・・。普通はそこで飽きてしまいそうだが、カードの見せ方が上手く撮り方も上手いので見とれてしまい、なんかもう深く考えなくてもいいやと(笑)分からなくてもじゅうぶん楽しめる映画だった。

ただ、ストーリーは途中まではありがち。真面目な苦学生がヴェガスで贅沢を覚えてしまって欲に溺れ、友人も金も一度失ってさてどうする・・・?!ってやつ。そしてクライマックスは意外だったけど、自分としてはちょっと不満。せっかく頭のいい登場人物を揃えたんだから、カードを使って頭脳で勝負してほしかったよ。これでは単なる騙しだ。
それと不正監視をしているコール(ローレンス・フィッシュバーン)は、ハードロックホテル専任で監視をしてるのか?それともヴェガスのいくつかのホテルを見てる警備会社の人なのか?そこが分かりにくかった。なんかベンたちもいつも同じホテルでギャンブルをしてるように見えてしまい、もう少し変化をつけてほしかった(撮影できるホテルも限られていただろうけどね)

スペイシーはいい人なのかそうじゃないのかが全く読めない役で、彼がブラックジャックを真面目にやってるシーンも是非見たかった。かつてコールと戦っていた頃の話を、ヅラをつけて(おい)やってくれないだろうか。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

幻影師アイゼンハイム('06アメリカ=チェコ)-May 31.2008
[STORY]
19世紀末のウィーン。街ではイリュージョニストのアイゼンハイム(エドワード・ノートン)の興行が人気を集めていた。ある日、評判を聞いた皇太子レオポルド(ルーファス・シーウェル)が観覧に訪れる。その隣には、アイゼンハイムの幼なじみで愛し合っていたソフィ(ジェシカ・ビール)がおり、彼女はレオポルドの婚約者となっていた。
監督&脚本ニール・バーガー(『Interview with the Assassin』)
−◇−◇−◇−
原作はアメリカの作家スティーヴン・ミルハウザーの小説『バーナム博物館』の中の短編『幻影師、アイゼンハイム』(私は読んでません)
アメリカでは2006年のほぼ同じ時期に、同じくイリュージョニストが主人公の映画『プレステージ』が公開され、第79回アカデミー賞では撮影賞で両作品ともにノミネートされた(どちらも受賞はできなかったけど)

日本では公開時期をずらして正解だったと思う。『プレステージ』は奇術師の性(さが)をこれでもかと見せつけられ圧倒された。本作も悪くはないけどそれよりは平板な印象。主な登場人物はアイゼンハイムとソフィ、レオポルドとウール警部(ポール・ジアマッティ)だけ。見せるイリュージョンのバリエーションは少なく、見せ方もCGを多用しているのでイリュージョンというより魔法みたいになっちゃったのも面白くなかった。

だが、最悪なのは劇場予告とチラシを見ただけでほぼ結末を知ってしまっていたこと。見終わった後に改めて公式サイトの予告編を見たけど、あの予告、ほぼ全部ストーリーの説明してる。本編見なくたっていいくらい(笑)しかもコピーもひどい。某映画を見た人なら誰でも結末が分かるっての。配給会社は何を考えているんでしょうか。アイゼンハイムが観客をも騙す一番のイリュージョンを堂々とネタバレするんだから。これを知ってしまったおかげで面白さの8割は持ってかれてしまった。さらに続きの文章もアホ丸出し。

“貴女へと、想いよ届け…究極の愛のイリュージョン。”

書いてて恥ずかしくなった(笑)唯一良くやった!と思うのは前売券の特典に、ソフィがアイゼンハイムからプレゼントされるロケットと似た作りのキーホルダーを付けてくれたこと。これは嬉しかった。

ノートン先生主演の映画は久しぶりに見たけど、今回は演技にあまり心を動かされなかったな。イリュージョン中の気張った顔ばかりで、「おお!」と思う演技はなし。一時の凄みをまた見せてほしいのだが。
ソフィ役のビールも、少女時代を演じたエレナー・トムリンソンの可憐さと比べるとゴツいし品がないし、ドレスも髪型も似合ってなくて、どう見ても皇太子と結婚するような女性には見えなかった。一番似合っていたのは最・・・おっと私までネタバレするところだった(笑)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

アフタースクール('08日本)-May 29.2008ヤッパリオモシロイ★
[STORY]
母校の中学校で働く教師の神野(大泉洋)の元に、同級生の島崎(佐々木蔵之介)と名乗る男が訪ねてくる。島崎は行方不明になっている神野の親友・木村(堺雅人)を探しているのだという。そして今朝撮られたという写真を見せる。そこには木村と若い女性が写っていた。島崎は強引に神野を車に乗せ、木村捜しを手伝わせるのだが・・・。
監督&脚本・内田けんじ(『運命じゃない人』
−◇−◇−◇−
感想は後日。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

山のあなた 徳市の恋('08日本)-May 25.2008スキ★
[STORY]
按摩の徳市(草なぎ剛)と福市(加瀬亮)は、山の温泉場へ向かっていた。そこへ馬車がやってくる。勘の良い徳市はその馬車に東京から来たいい女が乗っていたと言う。やがて温泉場の按摩の宿屋に着いた2人にさっそく旅館から呼び出しがかかる。何と徳市の客は、東京の女・美千穂(マイコ)だった。美千穂は何か悩みを抱えているようで、徳市は次第に女に惹かれていく。
監督・石井克人(『茶の味』
−◇−◇−◇−
1938年の清水宏監督&脚本の映画『按摩と女』のリメイク・・・ではなくカヴァー作品とあえて言うのだそう(1999年版『サイコ』もリメイクというよりカヴァーだわね)本作の脚本も清水宏の名前のみ。といっても元の脚本は現存していなかったため、映像から台詞起こしをしたらしい。いくつか今使うといけない言葉は削ったようだが(私はオリジナル未見)

『茶の味』を見た時には方向性を考えあぐねてるように見えたんだけど、本作を見て「なるほど」と思った。美しい自然の風景と、温泉場に集まった人々が起こす他愛のない出来事やほのかな恋。 『茶の味』は不自然なアニメ的ギャグシーンを作っていたが、本作は人が生み出す茶目っ気やいたずらに思わず笑ってしまうシーンがたくさんあり、 本当はこういうのが撮りたかったのかな?って。でもCMや『鮫肌』みたいなCGたっぷりのナンセンスギャグを求められて、 それに応えなきゃいけないジレンマと戦っていたのが『茶の味』だったのではなかろうかと。いや、ああいうギャグもきっとすごい好きなんだろう。 でもCMでは有効だけど映画でそれをやってどうする?と私は思うので、本作を経て、見てホッとするようなオリジナル映画を撮ってくれたらいいな。

リメイク作品が多い中で、これは徹底してるところがすごく良かった。リメイクすることに私は反対じゃない。特に古い作品って、音が割れていたり映像が見難かったりしてそれだけでイヤだなーと思ってしまったりする。『七人の侍』なんか面白いんだけど、もっと綺麗な映像と音で見れたらいいのにといつも感じる。一番いいのはオリジナルをクリアにできる、それこそ絵画を修復するみたいな技術があればいいんだろうけどね。それが難しいから(あとネタがないから)リメイクになっちゃうわけだが、その際に中途半端にリメイクしたり、妙な味付けをするからリメイクはダメだと言われてしまうのだ。変えるなら大胆に変えろよ、と。
本作は台詞そのものもだけど、言い回しもちゃんとオリジナルを見て練習したのだろう、昔らしさが出ていて、もうそれだけでこの時代にタイムスリップした感じ。研一(広田亮平)の喋りなんて「昔の男の子だー」と妙に感動。「ちぇっ!」とか「やだぁ〜い」とかさ。今どき「ちぇっ!」なんて言う子いないよ(笑)懐かしくて嬉しくなってしまった。

今どきといえば、旅館も今どきありえないほど無防備だ。部屋は鍵なんてなくて襖だけ。外から温泉に入ってるところも見えてしまう。障害者に対しても特別な扱いはせず、そういう職業の人たちだという気安さで接している。戦前だったせいか、おおらかな時代だったんだろう。そういう開けっぴろげなところが羨ましくもあり、今のヘンに複雑な世の中に疲れた時に見たくなる映画だと思った。見終わった直後よりも、しばらくたって「あー、またあの温泉に行きたくなったなー」みたいな気分で見たくなってしまった。木々や川にも癒されるが、砂利道を下駄で踏みしめた時の音。あの音があんなに心地よいとは思わなかった。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

アフタースクール('08日本)-May 24.2008オモシロイ★
[STORY]
母校の中学校で働く教師の神野(大泉洋)の元に、同級生の島崎(佐々木蔵之介)と名乗る男が訪ねてくる。島崎は行方不明になっている神野の親友・木村(堺雅人)を探しているのだという。そして今朝撮られたという写真を見せる。そこには木村と若い女性が写っていた。島崎は強引に神野を車に乗せ、木村捜しを手伝わせるのだが・・・。
監督&脚本・内田けんじ(『運命じゃない人』
−◇−◇−◇−
前作から3年。本当に待ちわびた新作だったので、頑張って初日舞台挨拶チケットを取ってしまった。出演者どうこうではなく(いや、皆いい役者さんだが)前作も初日舞台挨拶を見たからという理由なだけだったんだけど(しいて言うなら監督目当て)会場はほぼ大泉ファンで圧倒されてしまった。私も「けんじぃ〜!」とか言えば良かったかも(笑)

上映前の挨拶だったために出演者も監督も歯切れの悪いコメントばかりで、後で一緒に行った友達が気付いたのだが(ネタバレ)「○○役の○○さんです、と出演者を紹介しなかったね」(ここまで)と。そういえばそうだった。そこまで徹底してたのか〜。全てにおいて慎重な舞台挨拶だった。上映後の挨拶のほうが面白かったかもしれない。

さて本編だが、出演者たちが「何も考えずボーッと見て下さい」と言っていたのでその通りにしたかったんだけども、初っ端から何か引っかかってしまい、ひょっとしたらこうなのでは?とつい考えちゃったことが当たってしまったのだ。そのおかげで完膚なきまでにやられた〜という感動は味わいそこねてしまった。結局、当たったのはその1箇所だけだったんだけどね(笑)そのほかについては見事に騙された。観客の思い込みを巧みに利用した構成力に舌を巻き、膝を打ち、最後は脱帽(かぶってなかったけど)身体のあらゆる場所を使って感心しまくりだった。

キャスティングも上手い。大泉や堺が演じるキャラってこういうのだよね、というこれまた観客の先入観をうまく利用し、ミスリーディングさせている。モジャモジャとかで笑ってる場合じゃなかったよ(笑)

近々、2度目の鑑賞をする予定なので、内容に突っ込んだ感想は次回にします。
home