Movie Review 2005
◇Movie Index

歓びを歌にのせて('04スウェーデン)-Dec 17.2005
[STORY]
ダニエル・ダレウス(ミカエル・ニュクビスト)は世界的に活躍する指揮者だったが、心臓病で倒れてしまい、すべての仕事を捨てて幼い頃を過ごしたスウェーデン北部の小さな村に帰ってくる。村の人々はさっそく彼に聖歌隊の指導を頼んでくるが、穏やかな生活をしたかったダニエルは一旦断る。しかし彼らの熱意に負けて指導を始める。
監督&脚本ケイ・ポラック(『LoveMe!』)
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第77回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。その時のタイトルは『AS IT IS IN HEAVEN』(ちなみに受賞作品は『海を飛ぶ夢』
本作で夫から暴力を受けるガブリエラを演じているヘレン・ヒョホルムはスウェーデンを代表する歌手だそう。彼女の歌声は素晴らしくて聞いてるだけで涙が出た。いや、彼女だけじゃなくて合唱っていうのがいいんだね。『コーラス』も歌で感動したけど、人の声が重なって1つの美しい歌声になるのがいいんだなぁ。

聖歌隊の練習風景もこの手の映画の面白いところなんだけど、特にダニエルは変わったやり方で皆に教えていく。ただ集まってそれぞれが歌っているだけの聖歌隊が、ダニエルの指導によって1つに纏まっていくところは見てて楽しい。実際にこういうやり方ってあるのかな。でも歌声は1つになっても歌っている人はそれぞれ悩みを抱えていたりして、ダニエルの影響で皆変わっていくんだけど、それがいい方向にばかりではなく、家族との関係が壊れてしまう者も出てくる。壊れたところに希望を持たせて終わりはするが、今後どうなるかは分からない。美しい歌だけでなく、苦味もきちんと残していて良かった。

私だけかもしれないけど、ダニエルは心臓が悪いのに無理しすぎだと思った。自分が幼少時代を過ごした村に戻ってくる気持ちは分からないでもないが、あんな寒いところじゃ危ないだろうとまず心配し、走ったり自転車に乗ったり泳いだりするところでも無理すんなよーとハラハラしてしまって気になって気になって。それにラストシーンが(ネタバレ)トイレで彼らの歌声を聞く(ここまで)というのはいいと思ったんだけど(ネタバレ)自転車でノンキにブラブラしてたら時間がなくなり慌てたことで心臓発作っていうのがマヌケすぎだろう。だから私があれほど無理すんなと何度も何度も言ったのに(いや言ってない言ってない)母親が車に轢かれるシーンもコントっぽかったし(ここまで)必要以上に湿っぽく描く必要はないけど、もっと普通に見せることはできなかったんだろうか。これらに引っかからなければすごく好きな映画になったと思う。
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ブレイキング・ニュース('04香港=中国)-Dec 10.2005
[STORY]
香港。銀行強盗団警察との銃撃戦が発生し、現場に居合わせたテレビ局たち警官のミスを映され批判されてしまう。組織犯罪課指揮官のレベッカ(ケリー・チャン)は逆にマスコミを利用し、犯人逮捕をTV中継しようと考える。一方、重犯罪特捜班のチョン(ニック・チョン)はレベッカの指示を無視して犯人グループのアジトである高層マンチョンを突き止める。しかし犯人たちは人質を取ってマンションに立て籠もった。
監督ジョニー・トー(『PTU』
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タイトルのブレイキング・ニュースとはニュース速報のこと(実際の香港では大事件があっても速報は出ないらしいが)
警察の失態をたまたまマスコミに撮られてしまった警察は、名誉挽回と機動部隊に小型カメラを持たせて犯人逮捕の瞬間を視聴者に見せようと計画。だがそれは生中継ではなく、警察の失態などはカットした作られたものだった。TVを見た犯人たちは携帯や住人のPCを利用して逆に警察の失態を流す。すると警察は失態した警察官を1人の人間として取り上げ同情を買う作戦に出る。銃撃戦ももちろん見ごたえたっぷりで面白かったが(特に冒頭の路地での銃撃戦は本当に凄かった)情報戦も現実にありそうで面白かった。

ただ『PTU』の時も思ったんだけど、上映時間90分程度と飽きない程度の長さでちょうどいいのだが、端折り過ぎたり説明不足と感じてしまうところもたくさんあった。TV中継するというアイデアを、レベッカは一体いつから考えていたことだったんだろう?広報担当のグレース(この役でのマギー・シュウはいまいち)との連携もいつのまにかちゃんと取れていて準備良すぎ(笑)
また、レベッカと副総監(サイモン・ヤム)とのやりとりが不倫関係っぽいような、思わせぶりな雰囲気を漂わせていたのに、それだけで続きはなし。気になるじゃん!(笑)だったら最初からそんなシーン入れなければ良かったじゃないのー。

でもそれもなかったら本当に魅力のない主役だったろうな。それでなくても表情はしかめっ面で命令口調なセリフばかりで、見ててちっとも面白くなかった。せめて弱気になるところや笑顔でも見せてくれたら良かったのに。彼女よりも、年上の部下に甲斐甲斐しくされるチョン警部補や、意外と料理が上手い犯人グループのユアン(リッチー・レン)、父親のくせに子供をほったらかして逃げようとする人質イップ(ラム・シュー)のほうが面白くて印象に残るキャラクターだった。脚本のない香港スタイルの作り方をしている作品なので、レベッカよりも彼らのほうが撮ってて面白くなり、つい軸がシフトしてしまったのかもしれない。レベッカも見せ場はあるけれど割を食ってるな、と感じた。
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ノエル('04アメリカ)-Dec 10.2005
[STORY]
ニューヨーク。クリスマスイブの朝、ローズ(スーザン・サランドン)は、アルツハイマーの母を見舞っていた。警官のマイク(ポール・ウォーカー)と結婚するニーナ(ペネロペ・クルス)は嫉妬深いマイクに怒りケンカしてしまう。14歳の時に病院で過ごしたクリスマスが忘れられないジュールズは、わざとケガをして入院しようとする。カフェで働くアーティ(アラン・アーキン)はマイクに親しげに声を掛ける。しかしマイクは見覚えがない。――そんな人々の一夜が過ぎていく。
監督チャズ・パルミンテリ(初監督作)
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パルミンテリは『ユージュアル・サスペクツ』や『悪魔のような女』などに出演している俳優で、TVシリーズの監督は務めたことあるそうだが、本作が映画監督としては初の作品となっている。また、本作に少しだけ出演もしている(と後から知った。あの役が彼だったのかー)

クリスマスイブから翌日の朝までの出来事をアンサンブル形式で描いていく。ローズ、マイクとニーナ、ジュール、それぞれの人物は赤の他人で友人でもないのだが、物語の途中でローズとニーナ、マイクとジュールズが知り合って話をするシーンがあったりする。

面白いと思ったのは、アーティがマイクのことを妻の生まれ変わりだと告げるシーンがあって、もしかしてこれファンタジー映画だったの?!とビックリしてしまったが、後のシーンでアーティは誰にでもそういうことを言う人だということが分かる。何だ、やっぱりファンタジーじゃないんだ・・・と油断していたら、後で本当にありえない展開が待っていた。アーティの前フリ(笑)があったもんだから、より強烈に印象に残る。しかもこのエピソードによって他のご都合主義的な展開もまるごと一緒に受け入れることができてしまう。思い返すとなかなか上手い脚本だ。

それと某有名俳優(ノンクレジットなのでここでも名前は書かない)がチャーリーという男を演じているのも面白かった。少し前なら無条件にいい人認定してたけど、最近はストーカーやら殺人犯をやっているのでどこか不気味に見えたし、ローズが警戒するのも頷けた。しかしノンクレジットなのはどうしてだったんだろう。

ラストがああなるなら、最初に出てきた若い男マルコは必要なかったんじゃないかなぁと思った。逆にもっとクリスマスは嫌い、というエピソードを入れたほうが後のシーンが活きてきたのでは。しかもマルコはデートの後は全く出てこないし話題にもならない。ローズも彼のことをすっかり忘れてしまったように嬉しそうにしてたし。彼のことはもういいのか?というか、彼も後のシーンの前フリ要員(笑)だったのね。かわいそうなマルコ・・・。
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Mr.&Mrs.スミス('05アメリカ)-Dec 4.2005
[STORY]
南米で恋に落ちジョン(ブラッド・ピット)とジェーン(アンジェリーナ・ジョリー)は帰国後すぐに結婚。しかし実は2人ともプロの殺し屋で、それぞれ別の組織に所属していた。互いに素性を隠し生活してきたが、あるとき正体がバレてしまう。この稼業では素性を知られたら48時間以内に相手を殺さなくてはならないルールがあった。こうして夫婦の戦いが始まった!
監督ダグ・リーマン(『ボーン・アイデンティティー』)
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ウワサの2人の共演作品という話題以外はこれといって・・・いやむしろ・・・という評判を聞いていたので期待せずに見たけど面白かった。倦怠期を迎えた夫婦が互いの素性を知って、秘密がなくなって前よりアツアツになるという微笑ましい(笑)お話。ただその素性がとんでもないのでケンカをすれば過激で破壊力抜群。そのくせ2人とも妙に可愛らしいところを見せたりして笑わせてくれる。

スミス夫妻以外ではエディを演じたヴィンス・ヴォーンしか有名な役者は出てないし、エディという役だってヴォーンがわざわざ演じるまでもない役だ(過去のリーマン作品に出てるよしみかね)シーンのほとんどがスミス夫妻ばっかりなんだけど、それでも2時間ちゃんと飽きずに見ていられるんだから、やっぱり存在感のある2人なんだな。というかジョリーの力が大きいと思った。強くて美しくて、個人的に『トゥームレイダー』のララ・クロフト役よりこっちのほうが魅力的だと思う。ピットだけならやっぱり飽きちゃいそうだ。だからヴォーンがついた?(失礼)

しかしストーリーは中途半端なところで終わってしまって何だか気持ち悪い。やっぱり続編を見越して全部は見せないのかな。組織がどうなったのか分からないし、ボスも出てこないまま。調べてみたら、ジョンのボスはアンジェラ・バセットが声をやってたのね。てことはやっぱり続編アリ?ちなみにカウンセラーの声はウィリアム・フィッチナーだった。実は彼が黒幕だった――というのでも面白そう。2人の弱点を知ってたり、2人が疑心暗鬼になるよう巧みな話術で翻弄したりして。
ついでに赤ちゃんも誕生して、今度は育児について夫婦ゲンカするが赤ちゃんが誘拐されて2人で大暴れして赤ちゃんを取り戻し、最後は赤ちゃんも立派な殺し屋になりそうな予感?!・・・という話はどうでしょうか(妄想しすぎだ自分)それもこれも2人の今後の仲によるんでしょうなぁ。
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ハリー・ポッターと炎のゴブレット('05アメリカ)-Dec 2.2005
[STORY]
14歳になったハリー(ダニエル・ラドクリフ)、ロン(ルパート・グリント)、ハーマイオニー(エマ・ワトソン)たちが新学期を迎えた。今年は100年ぶりに“三大魔法学校対校試合”がホグワーツで行われることになり、それぞれの学校から代表者が1名ずつ選ばれ1年をかけて魔法の力を競い合う交流戦だ。参加資格は17歳以上で、立候補した生徒の中から“炎のゴブレット”が代表選手を選び出すしくみだ。ところが3名の代表選手が選ばれた後、なぜかハリーの名前が告げられる。辞退しようとするハリーだったが“炎のゴブレット”が選んだという理由で出場が決まってしまう。
監督マイク・ニューウェル(『モナリザ・スマイル』)
−◇−◇−◇−
『賢者の石』『秘密の部屋』『アズカバンの囚人』に続くハリー・ポッターシリーズ第4作。3作目までは原作を読んでから映画を見てたんだけど今回は未読で臨みました。今までは「これはあのエピソードね」とすぐに分かったけど、今回は全く分からないのでそのシーンの状況を把握するまでに時間が掛かったし、いまだによく分からない箇所もある(笑)今からあのハードカバー上下巻を買う気にはならないので、携帯版が出たら読みます。

けれど映画は前作よりずっと楽しめた。相変わらず仰々しいわりに警備が隙だらけのホグワーツや、ダンブルドア校長以下先生たちのボンクラぶりに呆れるが、対抗試合の競技内容が過激で驚いたし、ヒントから謎を解いていくところが面白かった。そしてハリーたちの恋、ダンスパーティーのパートナー探しに必死になるところなどはニヤニヤしまくり。前作登場したシリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)が意外なところから顔を出すシーンも爆笑モノだ。

CGもだんだん良くなっているし(モンスター系はアレだけど、馬車と船がとても綺麗で好きだ)ハリーたちが大人になってきているせいか、子供っぽい演出が減ってきているので受け入れやすいのかもね。監督のカラーの違いも大きい。今更クリス・コロンバスがやっても違和感が出てきそう。
だけどハリーがドラゴンと戦う場面では、ドラゴンから逃げまくっていたかと思ったら、いつのまにかハリーだけ戻ってきて勝利。あれはドラゴンをやっつけるシーンが残酷になりレイティングを上げなきゃいけないからやめたのかな?それとも尺の問題?他の唐突なシーンはあまり気にならなかったけど、このシーンだけは省略のしかたが気になった。

相変わらず出演者は豪華。マギー・スミスやアラン・リックマンもどんどん出番が減っているのに降板せずにちゃんと出演し続けてて偉い。オールドマンもね(笑)やっぱりファンをガッカリさせちゃいけないって思うんだろうなぁ。ダンブルドアはマイケル・ガンボンが頑張ってはいるけど、恐いばっかりで茶目っ気がない。本作では特にそう感じた。やっぱりリチャード・ハリスがベストだったんだな。個人的にレイフ・ファインズが苦手なので、彼をあの役にキャスティングしたのは大正解だと思ってます(笑)
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