■■■痴呆5カ条■■■   2004年11月17日

 呆け老人をかかえる家族の会 長崎支部の例会に参加した時に 「痴呆性高齢者の介護の原則」を聞きました。介護をする上で、してはいけないことが5つあるそうです。 それを紹介します。

  1. しからない
  2. 否定しない
  3. 説得しない
  4. 強制しない
  5. 軽んじない

こんなこと、わかってる・・・と思っても、介護する立場になると、なかなか難しいものです。


1.しからない
 痴呆という病気は、様々な知的機能の低下から私共が予期せぬ言動に出ることがあります。
そして、痴呆性高齢者は、その言動が好ましくないことであっても、好ましくないと自覚することが出来ません。
 つまり、彼らは決してわざと好ましくない行動をしている訳ではないのです。そのような状況にある人が、突然しかられたらどう感じるでしょうか。まさに晴天の霹靂(へきれき)、しかられるのは納得がいかないはずです。
 当然の結果として、しかった人に悪い感情を抱くのです。そして、しかられた内容はすっかりと忘れて、その悪い感情だけが頭の片隅に残ります。
 それでもあなたは、しかりますか? back


2.否定しない
 
痴呆性高齢者は、記憶障害や見識障害があるために、もやがかかったような混沌とした世界に生きているのです。
 本心では、毎日毎日、不安と恐怖にさいなまれ、不安定で 落ち着かない 気分になっているはずなのです。「本心では」といったのは、周りの者からは そのように見えないことが多いからです。
 長い人生の中で 修羅場をくぐってきた経験から、不安や恐怖は表に出さず、興奮や攻撃性に置き換わることがあります。
 また、自分への内向性(抑うつ)や 身体的不調の訴えに 置きかわることもあります。
 この様な状況に置かれた者に、不定的な言葉を浴びせたらどうなるでしょうか。
彼らの前に広がる混沌とした世界がさらに混沌となり、不安は増大し、場合によっては錯乱(極度の不安)が生じるのです。
 それでもあなたは、否定しますか?back


3.説得しない
 説得とは、わたしたちが相手に働きかけること、納得とは、相手の立場に上手く応じることなのです。
 痴呆性高齢者が住む世界は、我々の住む世界と次元(土俵)が違います。
 説得とは、自分の達の(痴呆性高齢者世界から見ると身勝手な)考え方や理屈を 押しつけることなのです。
 一方、納得は彼らの世界を認めて尊重し、彼らの考え方や行動原理に 寄り添うことなのです。
 自分たちの土俵(考え方や価値観、正義や正論)で相撲を取ろうとすると、必ず独り相撲になります。独り相撲には、勝敗もなく疲労困憊するだけなのです。
 それでもあなたは、説得しますか?back


4.強制しない
 強制してしまう場合の多くは、私たちが痴呆性高齢者に対して、こうして欲しい、こうあって欲しいという願望を強制することが多いように思います。
 痴呆という生き方を認め、受け入れていないから、強制してしまうのでしょう。
誰も無理強いを好む者はおりません。「痴呆という生き方」、そんな生き方があっても良いと受け入れられるようになると、強制することが減ると思います。
 強制することがないように心がけてみてください。back


5.軽んじない
 痴呆性高齢者は知的機能の障害を持ちながら、残された機能で賢明に努力して生きているのです。障害を持って生きていくという難しさは、経験しないとわからないでしょう。
 私たちは、普通に生活できることの幸せを忘れてしまっているのです。
 また、痴呆性高齢者の世界は、理解しようと努力しないと決して理解できないものです。痴呆についての知識を増やし、理解を深めていきましょう。
 痴呆性高齢者を大切な存在と感じ、敬い、愛することが出来れば、きっと何か大切なものをあなた自身も得られると思います。

 私たちも痴呆性高齢者とともに輝きましょう。back