Movie Review 2012
◇Movie Index

ヴァンパイア('11日本=カナダ)-Sep 23.2012
[STORY]
高校の生物学教師サイモン(ケヴィン・ゼガーズ)は、アルツハイマーの母ヘルガ(アマンダ・プラマー)と2人暮らし。彼はネットで自殺願望のある女性を見つけては血を抜いて、穏やかな死に導いていた。そしてその抜いた血を飲んでいたことから、ネットでは“ヴァンパイア”と呼ばれていた。
監督&脚本・岩井俊二(『花とアリス』
−◇−◇−◇−
カナダで撮影され全編英語の作品だが、一般公開は日本のみ。撮影地のカナダでは第16回ファンタジア国際映画祭、アメリカでは第34回サンダンス映画祭のワールドシネマ部門で上映されただけだった。

久しぶりの岩井俊二長編映画ということで見てきた。美しさとグロさの両方併せ持ったファンタジーという感じで、場所と言語は変わっても作品スタイルは変わらない。

前からこの監督はお気に入りの役者を綺麗に、そうでない役者をそれなりに撮る分かりやすい人なんだか、今回もそれがよく出ていた。とにかく主演のゼガーズを繊細で美しく撮っていて、歳を取ったせいもあるけど『トランスアメリカ』『ジェイン・オースティンの読書会』に出演していた時の生意気なガキの雰囲気は全くなく、その儚さに思わず見とれてしまうシーンがいっぱい。
逆に女性キャストは数多く登場するものの、お気に入りの蒼井優以外はあまり綺麗じゃない。自殺願望の女性ばかり出てくるから憔悴した顔をしていて当然だけど、それにしてもやる気ないだろ(笑)って感じ。かろうじてサイモンと心を通わせるようになるアデレイド・クレメンスが可愛らしく見えるところがところどころあるなぁ、程度。

あ、そんなところばかり気にして見ていたわけじゃないよ(笑)内容も私の好みのタイプの映画だった。セリフは少なく説明もほとんどないけどちゃんと内容が理解でき、バックグラウンドを想像させるところがいい。おそらくサイモンは昔から血を欲していたわけじゃなく、母が自分のことを分からなくなってしまってから始まったのではないだろうか、とかね。その恍惚の人は、サイモンの窮地で我に返り、彼の母として彼の名を叫ぶ。このシーンは一番グッときたなぁ。たった一言なのにすべて詰まってた(泣)全体的にフワッフワした映画なんだけど、この一言から急に重たくなって、サイモンは地に足がついてないような人間だったけど、最後は彼もいろんな意味で地に足がつく。ここで終わっていれば引き締まった作品になったのに、最後のオマケ映像みたいなのは蛇足だと思った。こんなのDVDの特典映像にでも入れておけ(厳)
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イラン式料理本('10イラン)-Sep 22.2012
[EXPLANATION]
監督の母、母の友人、伯母、妹、友達の100歳になる母親、そして監督の妻と義母。彼女たちが料理をしながらインタビューに応えるドキュメンタリー。
監督モハマド・シルワーニ(『7人の目の見えない女性映像作家たち』)
−◇−◇−◇−
イラン料理を初めて食べたのは私の友人の自宅でだった。友人のご主人がイラン人で、手料理をご馳走になったのだった。床に結婚祝いで貰ったというペルシャ絨毯が敷いてあって、その上にビニールのクロスを敷き、大皿の料理がドーン。1人1枚皿を渡されて、好きなものを好きなだけ取るという食事スタイル。ちょっとピクニックみたいな感じ。料理は以前からよく食べていたトルコ料理に似ているなと思った(陸続きだからね)

後で作り方を教えてもらったんだけど、余計な調味料は入れず、素材の味を生かしたシンプルな味付け。そのかわり手間と時間はけっこう掛かる。茄子も焼いた後に皮をむくまでは和食の焼き茄子と一緒だけど、そこからまた潰してペースト状にするとか、めんどくさがりな私のリピート料理にはなりませんでした(笑)

というわけで映画の中の女性たちが料理をしているのを見て、作るのが大変なのはよく分かる!とちょっとしか作ったことないくせに大いに共感しながら見た。慣れた手つきで料理をする監督の母や伯母、小さい子どもたちの面倒をみつつ、手際の悪さもあって料理に何時間もかかる妹、「何で私が?」という怒りを隠しもせずレトルトを使う監督の妻、ベテランと若い女性との対比はかなり日本と共通するところがあるなぁと思って面白かった。

主婦歴の長い女性たちの、料理をすること=主婦としての誇り、みたいなところはカッコイイ。ただ、昔は結婚も早く(本作に登場する100歳の女性は9歳で結婚だって!)世間を知らないうちから主婦業を叩き込まれたから、それが当たり前だったんだよね。それに対して、妻や妹は外で働きながら結婚して主婦業も、だから負担は大きい。専業ならまだしも、兼業でベテラン主婦と同じように作れというのは酷というものだ。だから夫が協力しなきゃいけないんだけど、男のほうはベテラン主婦の母親の姿を見てきたから同じものを求めちゃう。1人で料理し、1人で片づけをする妹が気の毒でならなかった。監督の妻のように「片づけはあんたがやりなさいよ!」と言わんばかりに食器を放置できる性格なら良かったのに(笑)

しかし最後のオチにはビックリした。思わず「ええっ」って声があちこちからしたもん(笑)まさかこの映画が原因?!だとしたら何て怖い映画なんだ・・・。
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人生、いろどり('12日本)-Sep 22.2012
[STORY]
徳島県の上勝町。名産のミカンが全滅したため、何か他のものを作らなくてはいけないと考えた農協職員の江田(平岡祐太)は、料理の彩りとして添えられる「つまもの」を売り出すことを思いつく。そして町の人々に提案するが、男たちは馬鹿にする。そんな中、花恵(富司純子)は親友の薫(吉行和子)をけしかけ、葉を売ることに賛同する。 監督・御法川修(『世界はときどき美しい』)
−◇−◇−◇−
徳島県上勝町に実在する「株式会社いろどり」が軌道に乗るまでを描いた作品。料亭などで使われる料理の“つま”である葉類の販売を行っている会社で、葉の採取を行うのが高齢の女性たちということで、メディアなどで取り上げられるようになり話題となった。

私がこの話を知ったのは2009年に放映されたTV番組『カンブリア宮殿』だった。おばあちゃんたちが楽しそうに葉っぱを採りながら「お小遣いになる」とか「孫へのプレゼントが買える」と話していたのが印象的だった。目のつけどころが良かったんだなぁ〜と感心したし、これが商売になるのかいいなぁ〜と羨ましくもなった。その当時はFAXでやりとりをしていたが、現在はタブレット端末でやりとりしているらしい。おばあちゃんたちスゲー(笑)

映画と実際の話とどれくらい違うのか分からないけど、この映画を村の男性たちが見たらどう思うのかな・・・とちょっと心配してしまった。頑固で馬鹿に描かれているからね。まぁ確かに葉っぱが売れるか!っていう気持ちは分かる。一家の大黒柱として家族を食べさせなきゃいけないし、プライドもある。それにしてはウナギの養殖に貯金を叩くだなんて博打みたいなことを始めるところがアホ過ぎるのだが。
その点、女のほうが臨機応変だし、いつまでも同じことに固執はしない。これがダメなら次!っていう切り替えは上手いと思う。一度に多く稼げなくても、コツコツと貯まればいいって考えるし。女たちが手を挙げなければ、この事業は始まらなかっただろう。

なんか、映画の感想というより一般論みたいになっちゃったけど(笑)映画としては、セオリー通りというか取り立てて書くことはないんだよね。悪くないけど特別いいというわけでもなく、という。
出演者については、吉行和子は農作業の服にメイクをしないと農家のおばあちゃんって感じになるんだよね(77歳だから当然か)でもメイクしてきちんとした服を着るとやっぱり綺麗で、やっぱ女優だなぁと感心する。若い平岡祐太と村川絵梨は下手でわざとらしい演技だけど、まぁしょうがない。個人的には息子の嫁を演じた粟田麗が、控え目でホントに農家の若奥さんという雰囲気を出していてとてもよかった。
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鍵泥棒のメソッド('12日本)-Sep 21.2012イイ★
[STORY]
売れない役者の桜井(堺雅人)は、銭湯で高そうなスーツを着ていた男(香川照之)が風呂場で転倒して頭を打ち気絶するところに出くわす。どさくさに紛れて桜井は男のロッカーの鍵と自分の鍵を取り換え、彼のスーツや荷物を盗んでしまう。思わぬ大金を手に入れた桜井だったが、実はその男は伝説の殺し屋でコンドウと呼ばれる男だった。一方、婚活中の香苗(広末涼子)は入院している父親の見舞いで訪れた病院で、銭湯から運ばれてきて記憶喪失となったコンドウと出会う。
監督&脚本・内田けんじ(『アフタースクール』
−◇−◇−◇−
前作から3年ぶりの長編映画。第15回上海国際映画祭で脚本賞を受賞、第32回ハワイ国際映画祭ではコンペティション部門作品賞を受賞した。

寡作な監督なので、いつも新作を首を長くして待っているんだけど、今回のメインが堺・香川・広末って知った時には軽くショックだった。堺はいい時もあるけどあのニヤニヤですべて演じてるのがズルイなぁと思うことが多く、前作は主役じゃなかったからまだよかったけど今回主役なのかーって。香川は見飽きたし、広末は出るだけで作品をぶっ壊す。何でこの3人なのよ・・・とぶっちゃけ思ってました。

しかし、まさか香川と広末にキュンとさせられるとは!自分が信じられません(笑)いや、さすが内田けんじ様!と言うべきだな。映画で浮いてしまう広末に、あえて周りから浮くキャラクターを与えることで広末色を見事に消してしまった。そしてその風変わりな香苗の結婚願望を、彼女の部下たちもバカにせず真摯な態度で協力する。それは普段、香苗がきちんと仕事をして周りの信頼を得ているからだろう、って想像できるんだよね。内田は3人が書く文字にもこだわったようだけど、文字に彼らの性格がにじみ出ていて面白かった。セリフや構成ももちろんいいんだけど、こういう細かい作りが堪らない。

でも、その細かい作り込みが今回は少し裏目に出たかなぁと思う。整合性を取ろう、広げた風呂敷はきちんと畳もう、という意識が強すぎたのか、終盤で勢いがなくなってしまった。ヤクザとのシーンはもう少し派手にできなかったのかな。多少「あれ?」と思うところがあったとしても、盛り上がっていると気にならなくなる。流れはちゃんとしていたけど地味すぎた。

ただラストの伏線の回収はやはり鮮やか。コンドウが書いてたノートには、こっちが心臓をキュッとつかまれちゃった(うふ)車の盗難防止サイレンは音もぴったりだけど、心を盗難された!って意味も込めてるのかなとふと思ったり。前作までのトリッキーな映画ではないけど、やっぱり好きだわ。次回作までにはまた数年待たなきゃいけないけど気長に待つし、どんなに苦手な役者でも、もうショックは受けない(たぶん)
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ロック・オブ・エイジズ('12アメリカ)-Sep 21.2012
[STORY]
1987年。歌手になるためにロサンゼルスにやってきたシェリー(ジュリアン・ハフ)は、来た早々に荷物を盗まれてしまう。困っているシェリーをライブハウスでバイトしているドリュー(ディエゴ・ボネータ)が助け、彼女もライブハウスで働きはじめる。このライブハウスでは伝説のロックスター、ステイシー・ジャックス(トム・クルーズ)のライブが行われようとしていた。
監督アダム・シャンクマン(『ヘアスプレー』
−◇−◇−◇−
2005年初演のミュージカルの映画化。80年代に大ヒットしたロック・ナンバーが使われている。

『ヘアスプレー』の監督なので「映画だからって自然に見せようなんて気はないぜ!ところかまわず歌わせるぜ〜!」なミュージカル映画だった(笑)何でここで歌う?!とビックリしても、勢いがあって楽しいからどうでもよくなるってパターン。演じてる役者たちもみんな楽しそうで、特にロス市長の妻パトリシアを演じた(キャサリン)ゼダ姐さん(ジョーンズ)が上品なスーツ姿で大胆に踊る姿に惚れ惚れ(笑)あとトムさんはいつものギラギラした主役より、こういうダメなところがある役のほうが魅力的だなと思った。ボロボロでもスターオーラが全く消えてないのはさすがでもグッタリ寝てるシーンでもどっか力が篭ってるのはトムさんだからしょうがない(笑)

シェリーがドリューと恋人になるところまではテンポがよくてサクサクと進んでいくが、2人が別れたあたりからモタつく。ストリップでの歌とダンスはちょっと長いし、クラブのオーナー、デニス(アレック・ボールドウィン)が経営危機になるところ、パトリシアがクラブを閉鎖させようとするところも話が進まない。あとドリューがステイシーのマネージャ、ポール(ポール・ジアマッティ)にスカウトされて、ロックからポップスシンガーへ転身させられるエピソードも微妙だった。ロック最高!っていう映画だからしょうがないけど、ポップスだってバカにされるようなものじゃないんだけどなぁ。確かにラップはアレだったし、髪形やファッションも激しくダサく、ダンスも「うわぁ」っていう・・・結局バカにしてるのは自分か(笑)

「Don't Stop Believin'」を男女で歌うといえば『glee』のほうを思い浮かべてしまうが、元々はミュージカルのほうが先で、『glee』のスタッフがこのミュージカルのファンだったため、『glee』でも男女で歌うことにしたらしい。やっぱりいい曲だなぁ。あと他の曲でやっぱりいいなぁと思ったのは「I Wanna Rock」と「Any Way You Want It」「We Built This City」って、並べてみると朝のワイドショーで使われてる曲が多いなぁ。なんか耳に残ってるみたいで悔しいな(笑)
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