Movie Review 2008
◇Movie Index
バンク・ジョブ('08イギリス)-Dec 2.2008
[STORY]
1971年ロンドン。中古車販売店を経営するテリー(ジェイソン・ステイサム)は、なじみの女マルティーヌ(サフロン・バロウズ)から銀行強盗を持ちかけられる。借金に苦しんでいたテリーは、仲間とともに準備を進めていく。だが実はこの計画には、ある目的のために仕組まれたものだった・・・!
監督ロジャー・ドナルドソン(『ダンテズ・ピーク』
−◇−◇−◇−
1971年にロンドンで実際に起きた“ウォーキートーキー(携帯用無線電話)強盗”事件と呼ばれる銀行強盗事件。事件が起きて連日トップニュースで扱われていたのが、突然、一切の報道がされなくなってしまう。なぜかというと政府が“D通告(国防機密報道禁止令)”を出したから。なぜD通告が出たかという理由は映画を見れば分かるんだけど、これはイギリス人なら誰でも知ってる公然の秘密ってやつなのかな。映画はこの事件の関係者から証言を集めて、それを基に作られた作品だという。事件の真相は2054年まで機密とのこと。

劇場でステイサムを見るのは久々なんだけれども、すっかりイギリスのブルース・ウィリス化してますな。マルティーヌからの依頼に裏があると踏んで予防線を張っておく頭のいい男の役なんだけど、クライマックスではやっぱりアクションシーンを披露している。せっかくいつもと違う役どころで、テリーという男として見れていたのに、急にステイサムに戻っちゃったって感じ。ここのアクションだけ浮いちゃってたと思う。

あらすじや予告の感じではドンデン返しもある軽快な映画かと思ってたんだけど、意外とハードな作品だった。マフィアが絡んでくるせいか「この人、殺されちゃうの?!この人も?」というシーンがいっぱい。おかげでハラハラ度が増したけど、ラストの能天気なシーンとのギャップが・・・。いまいち統一感のない映画だなぁという印象だ。この事件について知ることができて良かったけどね。

ポルノ王を演じたのが、あのTVドラマ『名探偵ポアロ』のデヴィッド・スーシェだったとは、全く気付きませんでした。ポアロの時は吹替で見てるから地声を知らないってのもあるんだけど、見終わってキャストを見てビックリ。もっとちゃんとお顔を拝見しておくべきだった。あとカメオ出演のミック・ジャガーも見逃していました・・・残念。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

DISCO ディスコ('08フランス)-Nov 23.2008
[STORY]
フランスの港町ル・アーヴル。無職の40男ディディエ(フランク・デュボスク)は、ディスコを経営するジャクソン(ジェラール・ドパルデュー)からダンスコンテストに出場しないかと誘われる。かつて“ビー・キング”というトリオで毎日踊っていたディディエは、優勝の副賞がオーストラリア旅行と知って、息子を連れて行きたいと出場を決意し、メンバーだったウォルター(サミュエル・ル・ビアン)とヌヌイユ(アベス・ザーマニ)を誘う。そしてダンスを新たに習おうとバレエ教室へ行き、講師のフランス(エマニュエル・ベアール)にレッスンを依頼する。
監督&脚本ファビアン・オンテニアンテ(『Camping』など。日本公開初)
−◇−◇−◇−
この映画の予告を見た時、そういえば最近ディスコって言葉を聞かなくなったなぁ、今はクラブって言うもんなぁ〜となんて思ったわけだが、元々ディスコっていう言葉はフランス語であり、フランスがディスコ発祥の国だと知りました。1つ勉強になりました。

かつてディスコで踊りまくっていた青年も今は四十を越え、バツ1で無職で母親と2人暮らし。そんな中年男がダンス大会に出場するというストーリーで、私がすっごい好きなタイプの映画なんだけど、正直言って期待はずれ。こういうのはさー、ハリウッドやイギリスのほうが断然上手いよね(ま、ハリウッドにやらせるとウィル・フェレル主演の濃いものができそうだが)

もっとダンスをちゃんと見せてくれるのかと思いきや、特訓シーンはただ走るだけ。バレエの先生に教わるシーンはないし、披露する場面でもどこがどう変わったのか全く分からない。3人のうちデュボスクとル・ビアンはそれなりに踊れていたけど、ザーマニは下を向いて自分のステップを見ちゃってるシーンがバッチリ映ってるし(苦笑)役作りなどもしっかりやらないんだろうなぁ。英米映画ならマスターするまでレッスンさせたり、ダメならCGを駆使したり徹底的にやりそうだが、リアリティを追求する気がないところがフランスらしいのかもしれない。

劇中で使われる歌はどれも馴染みのあるディスコ・ナンバーなので、そこは楽しめる。あとディディエとフランスが恋に発展しそうでしないところが良かった。その時はいいかもしれないけど、2人の性格や生き方からいって後まで続くとは思えないからね。ダンスにリアリティは求めてないみたいだけど(まだ言うか)こういうところは現実味を持たせたみたいだ。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

GSワンダーランド('08日本)-Nov 19.2008
[STORY]
1968年。GSブームの中、高校生のマサオ(石田卓也)は偶然出会ったシュン(水嶋ヒロ)とケンタ(浅利陽介)に声を掛け、3人で“ザ・ダイアモンズ”というバンドを組む。そして練習を始めたところプロダクション社長の梶井(武田真治)がやってきて、3人スカウトする。だがキーボードがいない。そこで梶井は歌手志望でやってきたミク(栗山千明)に男装をさせてメンバーに加えてしまう。こうして4人はデビューするが全く売れない。そこで白タイツの王子様スタイルに変え“ザ・タイツメン”という名前で歌ったところ、大ウケしてしまう。
監督&脚本・本田隆一(『あさってDANCE』)
−◇−◇−◇−
GS、グループ・サウンズブームの頃は生まれてなくて、物心がついた頃にはジュリーはひとりパラシュートをつけて歌っていた。それでも歌を聞けば何曲かは分かるし、現在もタレントや俳優で活躍している人もいるから、なじみがないわけじゃない。でも見てみようかな、と思ったのはストーリーが面白そうだったからだ。

「ザ・タイツメン」というグループ名でデビューというのがまず面白そうだったし、栗山千明が男装してグループに入るというのも興味を引かれた。それからこの当時、実際に着られていたという衣装を揃えたり、GSグループ「オックス」の曲などを手がけた橋本淳と筒美京平コンビに、タイツメン用の新曲を書いてもらったりと、随所にこだわりが感じられたところもいいな、と。

でも本編を見てみて、演出や芝居は非常に現代的でちょっと残念だった。この年代でこんな言葉遣いや掛け合いはないでしょうに。ストーリー展開も思ったより盛り上がりに欠け、ちっちゃく纏まってしまってるなぁという印象を受けた。
ただ、ライブシーンやタイツメンのニュース報道シーンは(当時のことを知らない私だけど)懐かしい感じがよく出ていて好きだ。『海岸線のホテル』は耳に残るねー。それからミクとメンバーたちに恋愛をさせず、最後まで男同士のさわやかな友情を貫いたのが良かった(ちょっと物足りない感じもしないでもないけど)
それからオチには大笑い。そうきたか〜!

岸部一徳にザ・タイガースの話をさせたり、ザ・ダイヤモンズの衣装にダメ出ししたり、彼をキャスティングしたのもナイスだし、演じた岸部一徳もステキだ。おそらく当時のレコード会社の上層部を思い出したんじゃないだろうか。現場でもアドバイスしたりしたのかな。それと後から知ったんだけど、最初に歌っているのは岸部一徳の息子の岸部大輔だったのね。いろいろ遊んでるなぁ。もっとちゃんと見ておけばよかった。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ハッピーフライト('08日本)-Nov 19.2008
[STORY]
副操縦士の鈴木(田辺誠一)は機長昇格訓練中で、今回のホノルル行きのフライトで昇格できると思っていた。ところが厳しい機長の原田(時任三郎)が鈴木の教官を務めることになってしまう。一方、国際線搭乗初となるCAの悦子(綾瀬はるか)もまた、厳しいチーフパーサーの麗子(寺島しのぶ)と一緒に搭乗するハメになる。そんな中でホノルル行きは出発するが、途中で非常事態が発生してしまう。
監督&脚本・矢口史靖(『スウィングガールズ』
−◇−◇−◇−
予告では悦子たちCAのドジッ子ぶりが強調されていたので、本作も『ウォーターボーイズ』や『スウィング〜』と同じく、延々と失敗やおふざけを見せて最後だけキメる映画なのかと思って、最初は全く見る気がなかった。でも批評や感想によると、1機の飛行機を飛ばす過程で、それに関わる人々の仕事ぶりを描いているとあったので俄然見る気になった。

やっぱり鈴木や悦子のダメぶりに時々イラッとさせられはした。だって鈴木も悦子も初フライトってわけじゃないでしょ。鈴木は副操縦士だし、悦子だって国内線経験があるんだから、あそこまで慌てふためいたりドジなのはちょっといただけない。コメディだからある程度はしょうがないし、ふざけてないだけマシだけど、一生懸命すぎて空回りしているのとは、ちょっと違うように映った。

でもそのかわりベテランにはゾクゾクした。グランドマネージャーの森田(田山涼成)、オペレーションコントロールセンターの高橋(岸部一徳)、ライン整備士の小泉(田中哲司)、そして原田と麗子。この人たちになら怒鳴られてもいい、なんてドMな気持ちになりました(笑)麗子が客を説得する場面では泣いてしまったし。でもこの客はこの後ブラックリストに載るに違いない。

空港・飛行機内の普段見えないところを見せてくれて、監督もよくやったけどここまで協力したANAすごいっ!って思った。ANA的にもそれが狙いだったんだろうけど(笑)好感度上がるよね。同じ空港へ行くフライトがあったらJ社よりANAを選んでしまうかも(あ、値段も同じならね)

専門的な言葉が出たり調査するようなシーンでは意味が理解できず十分楽しめてないので、DVDではマニアックな解説コメンタリーを付けて発売してほしい。特に操縦士がいろんな操作をするんだけど、何をやってるのかさっぱり分からなかったので。是非お願いします。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ブーリン家の姉妹('08イギリス)-Nov 2.2008
[STORY]
16世紀のイングランド。ブーリン家の長女アン(ナタリー・ポートマン)は、父から国王ヘンリー8世(エリック・バナ)に気に入られ愛人になるよう命令される。だが、ヘンリーが見初めたのは次女のメアリー(スカーレット・ヨハンソン)だった。失意のアンは別の男と結婚するが、メアリーが父に言いつけたために結婚は破棄され、アンはフランスに送られる。やがてメアリーはヘンリーの子を身ごもる。
一方、フランスから戻ったアンはメアリーへの復讐のためにヘンリーに近づき、王妃との離婚を迫る。
監督ジャスティン・チャドウィック(TVドラマの監督を経て初映画監督)
−◇−◇−◇−
原作はフィリッパ・グレゴリーの同名小説。私は読んでないんだけど、歴史小説ではなくフィクションという扱いの小説らしい。
アン・ブーリンはエリザベス1世の母で、この映画の後に『エリザベス』『エリザベス:ゴールデン・エイジ』を見ればバッチリだ(笑)

予告を見た時は「なんか微妙だなぁ」と思ったので見るつもりはなかったんだけど、例によって前売特典が欲しくて(またかよ)前売券を買ってしまったので見ることにした(だってagateのチャームだったんだもん。agate好きなんだもん)

本編も予想通り微妙だったわけだが(笑)TVドラマだったら悪くないけど、映画としてはかなり地味で単調な作品だなと思った。お金もそんなに掛かってないのかな。衣装もサンディ・パウエルが手がけた割には目を引くものがない。ストーリーも、軸が姉妹中心だからしょうがないけど、部屋の中でジリジリしてるシーンばかりで動きが少ない。姉妹を取り巻く周りの人々の描写も適当だし、そもそも登場人物が多くないしね。

これで役者たちが上手ければいいんだけど、ヨハンソンがなぁ・・・。元々そんなに上手いほうじゃないけど、こういうコスチュームプレイだと感情表現の拙さが目立ってしまう。口ポカーンで唖然としてる顔ばっかり。ポートマンはいいところもあるけどムラがあったな。嫉妬に狂ったり憤って泣いたり、斬首される前の震えるところなど、大きく演技するところはいい。でもフランスから帰って手練手管を磨いたというけど・・・「どこが?」と突っ込み入れたくなった。これは脚本や演出のせいもあるかもしれないけど、全然変わってませんて。それなのにコロッと引っかかるヘンリーもさぁ・・・。
そんな中、王妃キャサリン(アナ・トレント)と姉妹の母エリザベス(クリスティン・スコット・トーマス)はほとんど動かず座って喋っているだけなのに、しっかりと存在感があって迫力を感じた。さすが。
home