Movie Review 2003
◇Movie Index

陰陽師II('03日本)-Oct 13.2003
[STORY]
近頃、平安京では鬼が出没し、身分の高い者たちが食われるという事件が立て続けに起きていた。右大臣・藤原安麻呂(伊武雅刀)は、娘の日美子(深田恭子)が夜な夜な夢遊病者のように徘徊することとこの事件に何か関わりがあるのではないかと心配していた。そして源博雅(伊藤英明)に頼んで、陰陽師・安倍晴明(野村萬斎)に相談を持ちかける。
監督・滝田洋二郎(『陰陽師』
−◇−◇−◇−
前作があんなにヒットするとは思わなかったなぁ。意外だった。で、当然作られたパート2。今回も脚本に夢枕獏が加わっているが、前作のようにいくつかの短編を挿入したものではなく、1つのオリジナルストーリーになっている。陰陽師ってどんな人?とか、呪って?蜜虫って?なんていう説明もなく、いきなりストーリーに突入(こういうところがパート2のいいところではある)話に纏まりがあるし、映画にするのに相応しいスケールの大きな物語だ。ワタシ的には、前作よりもストーリーは好きだ。でも役者の演技、演出、CGとか特殊メイクなどが、それについていけてない。てゆーか最初から無理だって誰か気付けよ(笑)

役者については日美子を演じた深田恭子がA級戦犯。そして須佐役の市原隼人。いや、しかし彼は半分可哀相ではあったけど、この2人の学芸会レベル演技には正直参った。前作もそうだったけど、何でこんなに女優選びが下手なんだろう。蜜虫(今井絵理子)は本当に踏んづけて飛べなくしてやりたいくらいだし(笑)

そして今回のヒール中井貴一の中途半端さ。前作の道尊のような完全なる悪役ではないところや、晴明との直接対決がないところで損をしてる部分もあるが、見てるこっちが何も感じない無難な演技に飽き飽き。過去を振り返る場面は臭かったし、怒るシーンは迫力不足だった。

萬斎は前作と変わりないが、前作がヒットしたのは彼の力が大きかったのだから、もっと彼の見せ場を作るべきだった。ただ彼を出せばいいというのではない。あの綺麗な所作をきちんと見せなきゃ意味がない。物足りなかったなぁ。
ビックリしたのは伊藤英明だ。すっかり博雅という人物を自分の物にしてるじゃないの。演技が上手いというわけじゃないんだけど、下手なところが純朴に見えてしまって好感を持ってしまった。みったん恐るべし(笑)
あと山田辰夫と螢雪次朗もおバカで好き。この2人、楽しんで演じてるね。

あと気になったんだけど、晴明と博雅の友情を超えた(笑)部分を今回は強調しすぎじゃありませんでしたか。制作側が知ってしまったんだな、前作で特殊なファンがついたことを。『踊る大捜査線』もそうだけど、制作側がわざとそういう見せ場やセリフを作ってしまった途端につまらなくなってしまう、そのことも知ってほしいと思う。って私は別にそっちの気はないんですけどね(笑)こういうことに限らず、ファンのための過剰なサービスはかえって作品を駄目にしていくのだが、さて3作目(ホントにやるのか?)はどうなることやら。
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マッチスティック・メン('03アメリカ)-Oct 5.2003
[STORY]
詐欺師のロイ(ニコラス・ケイジ)相棒のフランク(サム・ロックウェル)は善良な一般人を騙して金を稼いでいるが、一方で酷い潔癖症で広場恐怖症だった。そんなある時、フランクの薦めで精神科医に診てもらったロイは、病気の原因が別れた妻と当時お腹にいた子供にあるのではないかと思い当たる。医者が元妻に連絡したところ、子供は14歳の女の子でロイに会いたいのだという。ロイは最初は拒否するものの、結局会うことになり、彼の前にアンジェラ(アリソン・ローマン)が現れる。
監督リドリー・スコット(『ハンニバル』
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マッチスティック・メン(マッチ棒男)というのは詐欺師とかイカサマ師という意味だそうな。主人公ロイは神経質で、ツナ缶しか食べなかったり部屋が土禁だったり、ドアを3回開閉させないときちんと開けることができない。この時の掛け声が「イチ・ニ・サン」という日本語だったのにビックリした(スペイン語?の時もあったが)日本での予告CMのために撮った声だとばかり思っていたので、本編で2度も出てきたことに驚いた。フランクと「カンパイ」なんて言ってるシーンもあったし。やっぱり監督がリドリーだから?(笑)

そんなわけでロイというキャラクターは非常に面白かったのだが、これだけは言わせて。部屋を土禁にしてるくせに何でタバコはOKなんだよ!ありえない!壁も天井もヤニでドロドロになっちゃうよ。信じられない。せめて空気清浄器の前で吸え!と、喫煙シーンのたびにイライラしてしまった。私が嫌煙家だからだろうか。

ストーリーに関しては(ネタバレじゃないけど先入観を与える文かもしれないので)“絶対にキレイに騙される”なんてコピーのおかげで逆に身構えて見てしまったせいか、途中で何となく話が見えてしまったのが非常に残念だった。先入観ゼロで見てたらキレイに騙されたかもしれないなぁ・・・残念。でもこの映画の一番の見せ場はそこじゃないからね。私はラストのロイの顔が何よりも印象的だった。失うものもあったけど、もっと素晴らしいものを得ることができた。うまくできすぎた話かもしれないが、この映画はこれでよかったと思う。(ここまで)

ところでアリソン・ローマンって1979年生まれの24歳?!マジかよ!それが一番の詐欺じゃないですか(笑)
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ドッペルゲンガー('02日本)-Sep 27.2003
[STORY]
人工人体の開発に携わっている早崎(役所広司)は、研究に行き詰まりストレスを抱えていた。そんなある時、自分とそっくりの男が早崎の前に現れる。彼は早崎の分身─ドッペルゲンガーだった。早崎は最初は分身の存在を否定するものの、汚い仕事を引き受ける分身を次第に頼るようになる。
監督&脚本・黒沢清(『アカルイミライ』
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東芝、ワーナー・ブラザーズ、日本テレビの3社の頭文字を取った株式会社トワーニ製作映画の 第3弾(ちなみに第1弾は『さくや妖怪伝』第2弾は『天使の牙』)

ドッペルゲンガーの出現に戸惑う主人公・早崎をここではAとし、ドッペルゲンガーの早崎をBを書くことにします。
ただ研究だけに没頭したい早崎Aは、早崎Bの出現に頭を悩ませる。この早崎Bという男は悪事に手を染めるということに全く躊躇しないヤツで、欲望のままに行動を起こせる男なのだ。口も悪いしうるさいし、私は最初このBが鬱陶しくて仕方なかったのだが、そのBを嫌って消えて欲しいくせに、研究資金を受け取ったり場所を提供してもらうAのほうがよっぽども汚らしいヤツだく思うようになった。でもどちらも同じ早崎なんだよね(笑)双子じゃないんだから、どっちが好きとか嫌いなんて考えてみればおかしな話なのだ。見てる途中でそれに気付いて思わず苦笑してしまったんだけど。
それに研究に対する情熱を差し引けば、早崎という男はごく普通の人間なのよね。人間の持つありとあらゆる感情を、ドッペルゲンガーという現象(?)を使って表現する。人間の感情を表現するやり方としては安易な方法と言えるかもしれないが、AとBを追った映像が2分割するところが笑ったし(デ・パルマ?!)、正反対に思えたAとBが次第に似通っていくところが面白かった。

見る前はもっとホラーな話だと思ってたんだけどね。キャッチコピーも「分身、見たら死ぬ!」だしさ(笑)前半の由佳(永作博美)のアパートのシーンなんてすごく怖かったのに、後半は早崎が開発した人工人体を巡って元上司(柄本明)や、早崎の助手(ユースケ・サンタマリア)が争奪戦を繰り広げるドタバタ不条理コメディという感じだった。しかし人の落下シーンや、頭を金槌で殴るシーンなどが多用されていたのは何か意味があったんだろうか?『カリスマ』や『大いなる幻影』など過去の作品も落下や殴打シーンは多いんだけど、そろそろ理由が知りたくなってきたな。

後半の展開についてはいろいろ解釈できると思うんだけど、とりあえず私の解釈はこちら。
(ここからネタバレ)工場でAとBが取っ組み合いの喧嘩をし片方がやられるが、実はこれがBではなくAだった。その後、新潟へ向かう車の中で早崎は口笛を吹くが、これはいつもBがしていたこと。そしてBは君島に轢かれて死亡。後から車でやってきた早崎は、工場で死んでいたと思われていたAのほう。Bがあの車をまた東京まで取りに行ったとは考えにくいし、鼻の傷を治療する時間的余裕もなさそうだ。Aはドッペルゲンガーの呪縛から解放され、自分が本当に欲しいものだけを手に入れた・・・でおしまい。どうでしょうか?(ここまで)
でも上にも書いたけど、AもBも結局は早崎なんだから、こういう風に説明つけるのはやっぱりおかしいのかもしれないな、と今気がついた。もう一度苦笑い。
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トゥームレイダー2('03アメリカ)-Sep 20.2003
[STORY]
地震によってアレクサンダー大王の“月の神殿”が海底に姿を現した。世界中のトレジャーハンターが集まる中、ララ・クロフト(アンジェリーナ・ジョリー)がいち早く神殿を発見し、黄金の玉を見つける。しかし後からやってきた男たちに玉を奪われてしまう。この玉には“パンドラの箱”の地図が描かれており、この箱が開けられれば世界中に疫病が広がってしまう恐れがあるのだ。そして細菌兵器を売りさばく科学者ライスは、パンドラの箱を手に入れるために玉を奪ったのだった。ララは玉を取り戻すため、元恋人とともに男たちのいる中国へ向かう。
監督ヤン・デ・ボン(『スピード2』
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前作『トゥームレイダー』の続編。ララと助手&執事は前作と同じだが、監督や脚本家が違うので作品そのもののカラーが違うといった印象。アクションシーンで「おおっ!」っと思う個所が前作よりも多いと思ったけど、それ以上にガッカリするシーンも多かった。なのでプラスマイナスゼロ。いや、やっぱマイナス(笑)

まずこれは前作でも書いたことだが、出てくる男がやっぱりショボ過ぎ。特に元恋人、なんだありゃ(失礼)A・ジョリーより目立っちゃマズイけど、それなりにワイルドかつセクシーな人じゃないと釣り合いが取れないっつうか、ララ本人までショボく見えそうになるってことにいいかげん気付け。しかもそんな男の前で涙を見せちゃうララ・・・ダメダメダメ!もったいない。
同じくショボいけど執事のヒラリーは今回もかわいいなあ。エプロン姿とか剣道着姿とか、何気にコスプレしてるのよね、いつも。弱いんだか強いんだか分からないところもいい。でも出番が少なすぎた。どこかでララの役に立ってほしかったなぁ。

それからララの性格というか行動もずいぶん変わったように思う。世界遺産である万里の長城の上でバイク走らせる?出土した兵馬俑を叩き壊す?敵は容赦なくぶっ殺す?トレジャーハンターなのに・・・。 玉を得るためだったらなりふり構わないっていうところに違和感があって、最後までしっくりこなかった。兵馬俑を1つも壊さずに相手をやっつけたら惚れてたんだけどな(笑)ワタシ的に一番の見どころは乗馬シーンでした(って敵と戦ってないじゃん)

アクションでは高層ビルからのダイブシーン。これが一番良かった。香港のタイムズスクエアに行ったこともあるせいか、他の場所よりなじみがあったし。しかしあのビルの地下にあんなものがあったとは・・・(笑)
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リード・マイ・リップス('01フランス)-Sep 20.2003
[STORY]
両耳に補聴器をつけないと耳が聞こえないカルラ(エマニュエル・ドゥヴォス)は土地開発会社で秘書をしている。ある時、忙しさのあまり倒れてしまったカルラは、上司からアシスタントを雇うように命じられる。そして若くて感じのいい男を希望したカルラの前に現れたのは、ポール(ヴァンサン・カッセル)という刑務所から出てきたばかりの男。しかしカルラはポールを採用してしまう・・・。
監督ジャック・オディアール(『天使が隣で眠る夜』)
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2001年度のセザール賞主演女優賞・脚本賞・録音賞を受賞。

話は面白いし、カルラという難聴の主人公は素晴らしい。でもカルラが希望したアシスタントの条件に全然当てはまってない男っつうのはどうなんでしょう?まずどう見たって25歳じゃないじゃん(笑)『憎しみ』の頃のルックスならともかく、今のカッセルにこの役は無理があったのでは。カルラとの年齢差が一目で分かるキャスティングじゃなきゃダメだったんじゃないかなぁ。2人が普通にお似合いに見えたんだけど。原作は読んでないから分からないけど、25歳を希望したのに来た男が30過ぎだったっていう設定ではないんだよね?カッセル自体は嫌いじゃないけど、この役にはもう少し若い人に演じて欲しかったと思う。

しかし話は面白かったし、カルラは素晴らしかった(何度も同じことを書くなよ〜)ストーリーは想像してたのと違う方向へどんどん行ってしまったけど、サスペンスとしても十分面白かった。前半はちょっともたついたような感じもしたけど、後半の展開はハラハラしたなぁ。カルラの障害が思わぬところで役に立つシーンがとても良かった。耳が聞こえないからこそ、音に対しては聞こえる人よりもずっと敏感で、何の音だったかを聞き分けることができる。そして、遠くからでも人の唇を見て何を喋っているのか読むことができる、タイトルにもなっている読唇術だ。変な言い方になっちゃうけど、カルラは自分の耳をうまく利用していて、一人になりたい時は補聴器を外して音を遮断するのだ。凝っているのは、カルラが登場しているシーンの音はすべてカルラの耳に聞こえている音と同じになっていること。つまり彼女が補聴器を外していればそのシーンは無音で、補聴器を付ければ音は聞こえ、付ける時の雑音も観客に聞こえるのだ。だから録音賞も取れたんだろうなぁ。

ポールの保護監察官の話も、本筋とは関係ないし、正直何でこの話が挿入されるんだろう?って今でも疑問なんだけど、でもこの話もこの映画には必要だったと言いきれる。いいアクセントになってるんだよねー。でもやっぱり何でこの話が(だから何度も同じことを書くなって)
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