参考にならないことは百も承知の、俺流小説の作り方。以前メイキングしたものは例題が思いつきSSSな上に、メイキング自体も手抜き感が否めなかったので改めて。過去メイキングはこちら
◆例題
ビロード革命 (テニスの王子様・柳SS・2013/2/14)
◆とっかかり
書くきっかけというかネタの種は、ツイッター妄想アカウント(@betobetosan1)での「柳は本命がバレンタインの日に風邪引いて休んでたりしてもわざわざ見舞いに行くなど静かなガッツを見せる」 というバレンタイン妄想ツイートの一部。
日頃から考えなしに思いつきや盛り上がりで、その場限りのネタや呟きを落としますが(行きずりの男女関係のよう)たまに心に引っかかって、むくむくと自分の中で膨らんでいくことがあります。今回もそんな感じで、乗り込んでくる諦めの悪い柳が日に日に存在感を増してきて、よっしゃ書くか、となりました。
◆プロットについて
ほとんど脳内で行います。紙やPCメモ帳などでしっかり立てることはほとんどありません。なので書き始める前にすることは、ある程度のストーリー展開、雰囲気、台詞、主人公の人となり、関係性などを頭の中で練る、です。かといって記憶力に自信があるわけではなく、振り返った瞬間に忘れたりするので、絶対これは確実に使おうと決めた言い回しや台詞はメモるように最近しています。
※ただしこれは一話完結の短編の場合で、伏線や設定など細かい配慮が必要になっていく長編であれば、こんなことやってるとめでたく破綻すると思います。
◆脳内プロットの中身
ネタの核となる、最初から決まっていた部分は以下三つ。
・バレンタイン当日休んでしまう主人公
・自宅にまで押しかけてチョコの回収をはかる柳
・「俺に託すものはないか」という台詞
これを土台に、キャラクターと物語を形作ります。
・主人公が当日休む理由→本番に弱いから
・二人の関係性→そこそこに親しいクラスメイト程度、毎年義理のようなバレンタインとホワイトデーのやり取りをしていた
・今年本命を用意した理由→柳側に変化があった
という風に、自分の中で何故そうなったかの辻褄を合わせていきます。
それから、自分の中でテーマをふわっと決めます。決めますっていうか大体ネタが浮かんだ時についてきます。テーマというと大げさ過ぎてしっくり来ないんですが、なんというか作品全体の輪郭や印象といった曖昧な感じです。雰囲気やテンション、色や感触、そういうものを下敷きにして文を作っていきます。
例えば日吉夢のたぬきとたぬきの場合「ほんのりアホ」とか「静かに騒がしく」とか、東京恋愛専科の熱烈歓迎タイフーンの場合「とにかく楽しく」とか「ロックでポップ」とか「明るい暴力」とか(恋愛専科はだいたいそう)
今回は「少し真面目に」、「じんわり熱っぽく」、「切実な」といったような手触りを下敷きにしました。
この段階で6〜7割固まれば書き始めます。不完全ですが、書いてる内に自然と入れたいエピソードや台詞や設定などが出てくるので、書きながら整理していきます。出たとこ勝負です。
◆注意点
過去メイキングでも書きましたが、小説を書く上で私なりに気に留めていること
・説明しすぎない
・エンディングやエピソードの隙間、など想像の余地を残す
・難解すぎる漢字や言葉を用いない
・読んでいてリズム良く読めるように
・説得力を持たせる(短編はとくに)
最後のは気に留めてるというより理想です。説得力という言葉がふさわしいのかもわからないんですが、読んでいてスッと納得できる読み物に、ということです。数多のエピソードや事件がふりつもっていくごとにキャラ同士の信頼や情が少しずつ培われ、物語の厚みや深みが増していく長編とは違って、短編は一場面の切り取りに近く、長編では多く語られるいろいろなことが省かれています。短編のそういう余力のある部分が好きなのですが、すっ飛ばしすぎてホップする前にジャンプみたいな唐突さで読んでる側を置いてきぼりにする危うさもあります(私がよくやることです)(驚異のジャンプ力で)
さらりと読める短編の良さを壊さず、かつ話の中に過去や関係や感情の前後左右を感じさせる材料を置いて、どうしてこの相手を好きになったか、この二人の間にどういう時間が流れていたのか、今どうしてそう行動する気になったのか、という直接描かれていない様々な物語の隙間を、自然と想像で埋めてしまえるような力、それが説得力のある小説だと思っています。
◆書き始めから完成まで
最初から終わりまでとりあえず書きます。途中で詰まったり、納得いかない箇所があっても、まあそこは空欄にしておくでもなんでも良いので、強引でも一度終わらせてしまいます。
ビロード革命で詰まったのは、柳こいつどういう口実で押しかけて来たんだよ…ということでした。まあまあ仲良しとはいえ、男子が女子の家に風邪の見舞いに来るにはそれなりの理由が必要だ……よし、あとで考えよう。ということでここはすっ飛ばして書きました。
穴だらけでで不揃いでも、一通りラストまで書くことによって全体が見えます(見える気がします)
そこから足したり引いたり、パズルのように構成を入れ替えたりして自分の理想に近い形に持っていきます。きちんとプロットを立てればこういうことにならないかもしれないんですが、とりあえず書けば何とかなるだろの癖は治りません。
◆本文解説
昔から本番というものにてんで弱い。
(中略)
だからほら。ご覧なさい。このとおり知恵熱が出た
折しもインフルエンザ大流行のさなか、母は私を病院のかつぎ込んだが、検査は陰性。風邪による体力低下だろうと診断された。(中略)
瞼にぶら下がっていた眠気はさすがに成仏し、熱の名残か気だるさだけが置き土産のごとく四肢に残るのみ。
→いきなり読み手に主人公がどういう人間なのか、を伝えます。話の初めなので、情報をいっぺんに詰め込まず、とにかく本番に弱いこと、そしてそれに近い緊張状態がここ最近彼女の身に起きたいう内容だけに絞って、それから現在の状況に持っていきます。この段階では何故知恵熱が出たのかは明かさず、同時にただの風邪で体調を崩したのではないことを示します。
厚ぼったい毛布から手を伸ばして、枕元の携帯を引き寄せる。画面に示された時刻から、授業はとうに終わっている頃と想像できた。春も間近なこんな時期だ。三年生は部活もない。みんな校舎を後にしてばらばらと帰ってゆくだろう、帰ってしまうだろう。今日という日が、幕を閉じてゆくのだろう。私が輪に入れないまま。
(中略)考える内に、いいようのない無念さに襲われ、寝返りと呼ぶにはあまりに激しい動きでベッドの上を転がり尽くした。微妙な線とはいえ、一応病の身の上。すぐにぜえぜえと息が上がってベッドに突っ伏した。
→ここで季節や時刻など、時間に関する説明を。いつ柳が来訪してもおかしくない前フリです。更に、「今日という日が、幕を閉じて〜」や「いいようのない無念さに〜」で、ぼかしつつも今日が特別な意味を持つ日だということも匂わせておきます。
その時だ。扉の奥から母のものと、そうではない声がしたのは。 息を整える間もなく、母の手によってドアは開けられた。
(中略)
顔を見るまでもない。枕に顔面を預けたままでも、その声だけでお友達とやらが一体誰なのか、薄々ではなくはっきりと私は察することができた。
(中略)
丁寧な物言いとは対照的に、柳はからかうように口角を持ち上げた。
→間髪入れずに柳来る。お見舞いに来た柳が玄関先で帰ってしまっては話にならないので、母がいきなり上がらせたという流れにしました。声だけではっきりと柳とわかる=主人公の中の柳への意識の強さ、の現れ。柳が笑っているのはバカにしているのではなくて、びっくりしたり呆然としてたり寝起きっぽい主人公が微笑ましかったからです。
(中略)
突然あれよあれよと思わぬ状況に放り出されて、内心戸惑っているせいもある。
柳とはこうして頻繁に互いの家を訪ねるような間柄ではない。(中略)今更風邪で病欠なんて、珍しくもないことなのにどうして、わざわざこんな日に。
私は柳の鞄に寄り添うように置かれた白い紙袋から視線を逸らした。袋の中身がなんなのか、今日に限っては実に想像するにたやすい。壁にかけられたカレンダー、それもご丁寧に印をつけた日付がすべてを知らせてくれる。
→仲良しではあってもそこまでの親しさはない、とここで二人の関係を提示しつつ、これまでにないことが起きた、という事実を強調するターン。柳が持ってきた紙袋の中身を主人公はチョコレートだと予想していますが、まだここでバレンタインについて触れていないので、歓迎できない雰囲気の表現にとどめます。「わざわざこんな日に」は希望と不安の両方が混じった戸惑いを込めて。印のついたカレンダーを出すことで、いかに彼女が気に留めていたか、そしてその日がなんの日であるか、という次の段落に繋げていきます。
(中略) 今日2月14日は私にとっていわゆる本番だった。
柳とクラスメイトとなってから、(中略) 「日頃のお礼」という体のいい口実を包装紙にくるんで、群れに潜ませるようにして贈っていた。義理か本命か区別のつかない曖昧な好意は、相手に選択を迫らない。意味を持たない。(中略)勇気と覚悟が整うまでの予行練習にほかならなかった。
今年は違う。今年は練習じゃない。
友人の枠からはみ出さない、ほどほどの見た目と価格に徹する必要はない。(中略)高級なブランドにメッセージカードまで添えて、リボンなんてビロードだ。準備は万端、整った。
→ここでようやく本題に触れます。語りたいのは、過去のバレンタインと今年のバレンタインの差異。「口実を包装紙にくるんで〜」で想いをひた隠しにしてきたこと、「選択を迫らない」「意味を持たない」で臆病風にふかれている心理を表現したつもりです。無難なチョコが、下手に踏み込んで関係を壊したくない怯えだとしたら、気合の入った本命チョコは勝負に打って出る勇気の証。「友人の枠からはみ出さない〜」はバレンタインの度に好意が負担にならないよう「友人」に自分を押し込めてきた主人公の想いの解放でもあります。タイトルのビロード革命のビロードは言わずもがな、チョコを飾るビロードのリボンからです。
だけれども、蓄積した三年分の意識は思いのほか手ごわく、更に私は本番に弱い。
(中略)当日、私に高熱を与えた。
「勉強のしすぎか?」
(中略) 「そんな台詞一度くらい言ってみたいね」
(中略)
「高等部への進学準備も控えている。この時期は油断しないほうがいい」 「それは勉学? それとも体調のほう?」 「両方だ」 どちらも落ち度が目立つ私は黙って肩をすくめた。
→冒頭で示した、本番の弱さがここに戻ってきます。柳との会話は気安い関係性を示すためのもの。ほんのわずかですが、お説教ではなく、主人公に対する柳なりの気遣いを表しています。あんまり意味のない会話や流れも、クッションとして役割を果たすかな…と思ったり思わなかったり。
「 ○○はよく理解している割に重要な一点を見落とすからな。回復したらもう一度テキストをやり直すといい。自習室もいいが図書室もなかなか捗るぞ。今日は少し騒がしかったので寄らなかったが」
柳の声は凪いでいて、空気に溶けてしまう滑らかさで流れていったが、最後の文言だけが私の中に溶け残った。(中略) それだけたくさん受け取っているのにも関わらず、柳は次の月、必ずお返しをしてくれた。(中略)もちろん他の子達にも平等に分け与えられていて、意味は込められていないのだろうけど、私の好きなものばかりなのが少し嬉しかった。
――
今年で最後にするつもりだ。 ――
来年のお返しは一つだけ用意しようと思う。
去年のホワイトデーの日、私に沢山の包みの内のひとつを手渡しながら柳は呟いた。私が贈ったような、勘違いや深読みをさせる余地のない挨拶みたいなラッピングだった。
→実は、柳の台詞の「〜はよく理解している割に重要な一点を見落とすからな。」は勉学についてだけに向けられているものではなく、別の意味も含んでいます。平等に配られているはずのホワイトデーのお返しが、いつも主人公の好みの品なのは勿論偶然ではありません。柳が意図してそう選んでいます。挨拶みたいなラッピングは、主人公が無難なチョコを選ぶ理由と同じで、簡素な包装に柳の想いが秘されています。重要な一点=柳の真意。なかなか気づかない察しの悪さを、彼女に気付かれないようにさりげなく詰っているわけです。柳はストレートな物言いより、回りくどく(褒め言葉)意味深な言葉をぽつぽつ零すイメージなのでそういう台詞を入れました。ついでに柳の声について「凪いでいる」という表現を挟むことによって、主人公には彼がいつもと変わらないように見えるとチラリと出しておきます。のちに柳の様子が変わった時の為の小さな布石です。そして「今年で最後にするつもりだ」の言葉、これが主人公にとってこれまでのバレンタインを繰り返せなくなった原因でもあり、柳にとってはいつまでも友人でいるつもりはないという意志のあらわれでもあります。ただ、柳の気持ちなんざ知る由もない主人公には非情な宣告としてしか響いていないので、割とすれ違っています。
ベッドと床の高低差をもってしても、誰かによる柳への好意が、その紙袋におさまっているのかはここからはうかがい知れない。
チョコもらった? いくつ? 誰から? 柳にとってお返しをしたい相手から?
(中略)本当に何を思って柳は見舞いになんて来たのだろう。
柳はそれをすくい取るように私に短く眼差しを向けた。閉じられた瞳は洞察力の塊だ。私なんぞの心の内に触れるのはたやすかろう。(中略)
→バレンタイン、モテる柳、チョコの重みがこれまでとは異なる状況、と主人公をとりまく事情が明らかになった後で、「その紙袋におさまっているのかは〜」「チョコもらった?〜」の言葉を使い、紙袋に入っているかも知れないチョコレートに対する不安を顕にします。昨年の柳の一言で、単なる行事としてのバレンタインではなくなったので、気になって仕方がないけれど聞くのも躊躇われる、という葛藤の段落です。「柳は見舞いになんて〜」と、最初の疑問が再び戻ってきたところで、次の展開にパス。
細い目もとがすっと横の方へと逸れる。その視線の方向に、私は一瞬身を固くした。
「○○が来ないとは思ってなかったから、貸すつもりで持って来ていたんだ。体を休めてるところ申し訳ないと思いつつも、様子見ついでに寄らせてもらった」
(中略)
ダイオウイカ、等と書かれたDVDの表面に目を落としたまま、いささか呆然と言葉を発した。 「それ、これ入ってたの……」 「ああ。何かがっかりさせたか?」 頭をゆっくりと振って応える。この拍子抜けの感覚は、たぶんがっかりではなくて。同じカタカナ表記でも、もっと違う甘いものが入っているものとばかり。ダイオウイカ……
→柳が訪れた理由(という名の口実)と紙袋の中身が明かされます。ダイオウイカはこの時世間的に大ブームだったのでいそいそ使わせてもらいました。ホッとしつつも脱力な主人公の不安の一部はここで消えます。「がっかりさせたか?」と柳は言っていますが、彼女の反応が「がっかり」ではないことを知っています。こういうところ柳は性格が悪いと思います(褒め言葉)
明日の登校はまだ判断できないな? そう尋ねられ自分で額に手を当ててみるものの、やはりなんとも言えず、私は曖昧に頷いた。柳はゆっくり頷き返す。 「もし何か託すものがあれば引き取るが」 「あ、じゃあ図書室で借りた本を」
柳の一言で返却期限が迫っていることを思い出し、(中略)だから柳の目にこの引き出しの中身は見えないだろう。図書室のバーコードが貼られた書籍と並んで、ひっそりと出番を待つ高級で上等で特別な箱菓子。私を試すように、リボンの光沢が瞬いている。
予行演習は終わった。柳の平等さも期限切れだ。逃したはずのチャンスは、弱気のたてがみを追い立てて、目の前でぶら下がっている。鼓動に合わせて瞬きをしたとき、背中に声がした。
→柳が真の目的に向かって始動開始します。ここで柳は「託すもの」と言いました。「託す」は預けるだとか代理だとかの意味を持った言葉なので、主人公としては柳に預けるもの(提出物や図書室の本など)しか連想しません。引き出しにあるチョコレートを目にすることによって、バレンタインが終わっていないこと、今まさに渡せる状況にあることに気づきます。「予行演習〜」「柳の平等さも〜」「弱気のたてがみを〜」は、機会を前にして竦みそうな気持ちを、奮い立たせようとする描写のつもりです。もう平等にお返しはもらえない、という恋の怖さと主人公の戦いです。
「今日は全国的に特別な日だそうだ」 特に、思うところのある女性にとっては切実な行事と聞く。が、実を言うと、もらう側にとってもそれは同じことでな。 「……まさか欠席とは、考えに入れていなかった」 空気をとんとんと叩くように柳は語る。この部屋に入ってからずっと、柳はなんでもないような顔をしていた。少しの動揺も感情の波もなく一定の温度を保って。けれど、いま投げられる声には、上擦った息遣いが時折混じっていた。 「病人の家にまで押しかけて、あきらめが悪いと笑うか?」 振り向かずにいる背中を、体温ではない熱がじりじりと炙る。見てもいないのに柳がどんな眼差しをしているのか、わかるような気がした。もう一度、聞かせてくれ、と覚悟を飲み込む呼吸が響く。
「○○、俺に、託すものはないか?」 練習が終わったのは私だけじゃない。勇気を必要としたのも私だけじゃない。本番を迎えたのは私だけじゃない。本番は、まだ終わっていない。
心の中で振りかぶるように、私は思い切ってビロードの結び目に手を伸ばした。
→柳がついに心の内を晒す、読み手さんに盛り上がっていただきたい場面(ポップコーン片手に) 「今日は全国的に〜」「もらう側にとっても〜」「病人の家に押しかけて〜」など、柳らしく、直接的な物言いは避けつつも内なる熱を感じさせるような台詞を自分なりに選んだつもりです。特に「病人の家〜」は、そうまでしても欲しかったと言っているようなものなので、ほとんど告白です柳的には。「……まさか欠席とは〜」の「……」の間で、本当に柳にとって予想外だったという感情を、「上擦った息遣いが〜」で常に余裕綽々だった柳のらしくない緊張や真剣さを匂わせました。前述した「凪いでいた」ように見える柳との対比です。繰り返された「託すものないか?」の台詞は今作の核のひとつで、一度目では特に重要な台詞に見えませんが、二度目で意味を持ちます。「託すもの」=「想いを託したチョコレート」になるわけです。最初それに気づかなかった主人公にも、常にない柳の様子と二度繰り返された台詞によって伝わります。同時に、柳も自分と同じく恋の怖さと戦っていたことを察し、それが「練習が終わったのは〜」「勇気を〜」「本番を迎えたのは〜」のくだりになります。そして最後「心の中で振りかぶるように〜」主人公が勇気の全力投球をするその直前で、エンドという形です。おしまいおしまい。
◆完成に向けて
完成したら、不自然な展開はないか、矛盾はないか、キャラとして破綻していないか、確認のために一応5回以上は読みなおししていると思います。語尾を少し直したり、セリフを変えたりします。それでも誤字脱字は私の目を通り抜けて、webに乗っかったりします。多分魔法。タイトルはリボンの「ビロード」と、一歩踏み出したことで「革命」。後で知りましたが、実際ビロード革命という民主化の事件があったらしいです。流血沙汰のない平和的革命だったようで、なんとなくほっとしました。タイトルは基本的に作品の内容に沿った、わかりやすいものをつけるように心がけています。後で自分が見たときに、わからなくなるからです。毎度苦しめられる、スーパー苦手な作業です。血文字で「ネーミングセンス」とダイイングメッセージを残す勢いで苦手です。
◆まとめ
書いてる時は深く考えずに書いてる気がしてたんですが、こうしてじっくり紐解いていくと自分なりに頭フル回転で書いてるんだな……と他人事のように思います。結局、下敷きにした「少し真面目に」「じんわり熱っぽく」「切実な」は生かされているのだろうかという疑問は常に浮かぶところですが、そこはフィーリングなので細かいことはいいっこなしです。ちなみに、ハッピーエンドを予感させる終わり方にとどめて、はっきりその後を描かないのは、たぶんその方がロマンがあるだろう、という個人的嗜好からです。このあとどんな風に受け取ってうまくいって言葉を交わすのかな、と想像する楽しみもまた良いではないか……という方針。
今回は台詞もネタも決まっていたので、割とスムーズな仕上がりでしたが、どれかか抜け落ちてるともう少し難航します。ラストを決めずに書く、中盤を決めずに書く、書き始めを考えに書く、とそれぞれあるのものの、大体の場合書きながら決めるので手順はそう変わらないと思います。メイキングとして機能しているのか甚だ怪しいですが、書き手の方のヒントの切れ端にでもして頂けたら幸いです。読み手さんに向けて、メイキングついでに作品解説などしてしまいましたが、読み方に決まりなどないので、読んだ方それぞれの感じ方で受け取ってくれたらいいなと思います。全く別の受け取り方でも、それはそれで嬉しいことです。私の意図は関係なく、感想や解釈、噛み砕き方は読んだ方のものなので、印象や色合いや感触を自由に感じて自由に読んでください。長々と戯言にお付き合い下さって、ありがとうございました。
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