いわゆる小説(とはいってもSSS)メイキング
自分の思考の整理の為にも記録 


自分の基本的な作業としては、
A・設定や台詞やシチュエーションなりが浮かぶ→その場面に無理なくたどり着くようにストリーを練りつつ書き始める→書いている内にキーとなる言葉や行動が固まってくる→それをいくらか意識しながら、話が着地するしないくらいの瞬間でエンド
B・全体的なストーリーが浮かぶ→クライマックスとなる場面を決めて、その前後をゆるく肉付け→あとはAと同じ
※だいたいエンディングは書きながら決める、もしくは書く前から決まっていたけど最終的に変わることが多い

絶対的ルールというほどの強さはないけど、なんとなくの決め事としては
・説明しすぎない
・腹八分目くらいでピリオドを打つ(余韻を残す)
・難しすぎる漢字や言葉を用いない



【柳の人外SSS】(http://www7.plala.or.jp/t-chance/dr/001.htm
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 早く大きくなりたいと私が言うと、「柳」はいつもほんの少し寂しそうな顔をした。風のない空に薄い雲がかかるような、ほんとうにかすかに。きっと私しか気づかないし、少し前の私なら気づいていなかった。
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■主題をいきなり切り出したつもり。主題が「人外の柳」というより「人外である柳と人である少女の差の憂い」なので、人外であることなどの二人の背景を挟まず、とりあえず「表面上の現在」を差し出した。

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 「柳」は、神社の境内でしか会えない私の友達だ。
(中略)
 私を慰めて励まして柔らかにたしなめる。柳はいつも、どんな時でも、変わらず。
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■過去を振り返るターン。二人がどういう風に出会い、どういう時間を重ねて、お互いにとってどういう相手であるのかということを読み手に伝える。SSSのつもりであるので、端的にさらりと。感情的にならずに淡々と記憶をめくる。これはただの好みだし場面にもよるけど、感情を大きくはさまず静かに事実だけを語ってゆくと、読み手側それぞれの思い出や経験や想像によって喜怒哀楽が寄り添ってくる気がします。その人が持つ感受性に話しかけるイメージ。

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 そう、柳は変わらなかった。
  (中略)
 子供の目線でなく、真正面から見る神殿はとても小さくて、宮司さんなんてこの神社にいないこと、私は多分とうに知っていた。
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■柳が人ならぬものであると明かすターン。とはいえ柳は主人公の前で変身したわけでも妖術を使ったわけでもなくて、絶対的な確信はない。なんとなく察している、という程度。その認識に合わせて「彼は人外だ」的な直接的な言葉は使わず、匂わすような表現にとどめる。
<宮司さんなんてこの神社にいないこと、私は多分とうに知っていた。
↑直接的な物言いを避けつつ、柳が人ではないことを主人公が察していることを示す、一応私の精一杯の表現です

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 スカートの裾が膝を撫でる。
 人生の節目を、私は神社のこの不思議な友達に報告してきた。今日は、春から進学する高校の制服を、見せるために訪れた。(中略)
 もう手のひらに収まらない私の靴を見下ろして、柳はいつもと同じ台詞を口にする。
 (中略)
 もう隠そうともしない雨の気配が柳のまぶたの上に浮かぶ。
「……願わずとも時はあっという間にお前を攫う」
この世のものとは思えない美しい微笑みに、今度は私が泣きたくなった。

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■結び。長く生きられない人と、置いていかれる柳の寂しさをここに集める。高校の制服で現在の状況を説明し、同時に時の流れを示したつもり。更に一応「靴」がキーアイテムなので、あの頃の小さな靴を思い出させた上で、今のおとなのような大きさの靴を見下ろさせ、柳に時間を実感させる。これまでうっすらとしか現れなかった柳のさみしさが、言葉とともにそこであらわになる。見送る側と見送られる側の心境が被さって終わる。



・まとめ
自分で書いたもののメイキングだし楽勝だろと思ったら、自分で自分の分析は難しく、頭にあるものを説明するのは恐ろしく難しいことがわかりました。あとなるべく短い一文に、言いたいことの全部をつめようとする癖があります。一球入魂。無駄なものを省きたい気持ちと、ごってごてにどうでもいいネタを加えたい気持ちがいつも同時にあるので、バランスが難しい。でも個人的には想像力をかきたてられる、いい意味で隙間のある作品が好きなのでそういうものを書きたいです。