根頭癌腫病(Crown Gall)/病菌名 Agrobacterium tumefaciens


症状

主として根頭部(地際部)の柔組織が増殖し瘤状の腫瘍を形成する。瘤の表面はでこぼこで、大きさは5mm程度から数センチにおよぶ。瘤の表面は老化にともない崩れていく。腫瘍の発生により、成長が停止したり、花つきが悪化したりすることがあるが、これらの影響の大小は腫瘍の発生場所に大きく依存する。

 

感染経路・条件

病菌の活動性は夏期が最も高い。病菌は、各種の原因でつけられた傷から侵入する。病菌は自分のプラスミドDNAを、宿主細胞の遺伝子に侵入させ、宿主細胞を「腫瘍細胞」に変化させる。腫瘍細胞は自己増殖を始め、腫瘍が形成される。したがって、自己増殖している二次細胞には病菌自体は存在しない。なお、感染が秋に生じた場合は、通常、春になってから発症する。

病菌密度は、腫瘍の表面細胞付近が最高で、これを切除したナイフ等は汚染される。二次感染を防ぐために、道具の使用には注意が必要で、園芸用の殺菌剤では消毒できないと考えた方が安全。医療用消毒薬で消毒するほうが確実。

病菌は土中では最低2年以上生存できる。

 

防除 (→関連事項)

根頭癌腫病に耐性のある品種は知られていない。確実な予防法も確立していない。以下の消極的対策が一般的。

1)病気を持っていない苗を購入する
しかし、これは空論に近い。上に記したように、地堀苗が掘り上げた時点で感染しても春まで発症しないので、見極めようがないのが普通。それよりは、最初からポット育苗しているナーセリーから購入するのが確実。私の経験では、癌腫病が発症した株はすべて地掘り苗でした。

2)植え付けや手入れの際、地際部を傷つけない

3)清潔な土に植える
これは、土を薫蒸消毒しろと言っているのではない。不適切な土壌消毒により土壌菌のバランスが崩れる結果、かえって癌腫病菌の勢力が増す場合があるらしい。そもそも、根頭癌腫病菌は土中ではもっとも普遍的に存在する菌と言われており、富士山の五合目でも見つかるという人もいる。「清潔」な土とは製造段階で加熱されている赤玉土くらいのものでしょう。鉢植えならともかく、地植えの場合には現実味のないアドバイスとなりましょう。

4)病変が発見されたら、直ちに株を焼却し、周辺の土も取り除く

5)剪定道具は常に清潔にしておく
通常は石けんで洗浄。頻繁に消毒を行う。

器具の消毒法

a)器具を消毒用エタノールに浸けたあと、表面のアルコール分を燃やす

b)器具を0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に数分間浸けたあと、熱湯中で洗い流す(器具の腐食予防のため)。

6)植えかえのときに単子葉植物を植える
この病菌は単子葉植物には感染しない。

7)拮抗微生物を用いる

癌腫病菌に拮抗する微生物(Agrobacterium radiobacter strain K84)が、あらかじめ宿主となる植物の感染候補部分に、病菌数と同等数以上存在していると、癌腫病菌が腫瘍を形成できなくなる。この方法は予防的にだけ意味があり、感染後に接種しても無意味。プロの苗生産者はともかく、アマチュア向けではない。

8)塗り薬(^^;)

2-4キシレノール(防腐剤の一種)とメタクレゾールの混合液を患部に塗ると、時間はかかるが、これで病菌は一掃できる。しかし、前記のように二次細胞の増殖は止まらないことがある。

塗り薬は、自然農薬系でいくつか報告されている。私は木酢液でよい結果を得ています。

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