Movie Review 2012
◇Movie Index

逆転裁判('11日本)-Feb 11.2012
[STORY]
近未来。裁判は弁護士と検事が直接対決してわずか3日で結審する“序審裁判”制度が導入されていた。ある時、新米弁護士の成歩堂龍一(成宮寛貴)は、弁護士事務所の先輩・綾里千尋(檀れい)が何者かに殺害されているのを発見する。そしてその傍らには千尋の妹で、霊媒師の卵・真宵(桐谷美玲)がいた。真宵は容疑者として逮捕され、成歩堂は裁判の弁護士を引き受けるが、彼と戦うのは幼なじみの天才検事・御剣怜侍(斎藤工)だった。
監督・三池崇史(『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』
−◇−◇−◇−
ゲームメーカー、カプコンの法廷アドベンチャーゲームの映画化。これまでも漫画、小説、テレビドラマ、宝塚歌劇で舞台化もされている。本作はゲームの1作目の1話が少しと2話と4話が基になっている(エンドクレジットでは2作目の第4話も)

私は今までDSで出た逆転裁判シリーズ(と逆転検事のパート2まで)をすべてクリアしている。大ヒットしているゲームだけど映画まで見に行く物好き、いやファンはあまりいないのでは・・・それなら私が看取って、じゃない、見といてあげなくては!と妙な使命感にかられて見に行ったんだけど意外と人が多くてビックリした。シネコンの小さめのハコだったけど7割くらい埋まってたかな。上映中に笑いが起きるたびに、そこで逆裁ファンの間に連帯感が生まれたようになり、なかなか楽しい時間を過ごしてきた。

ゲームの突拍子もない髪形やコスチュームをほぼ忠実に再現しており、最初は「ええっそこまで!」と引いてしまったのだが、傍聴席にいる人々も同じようにコスプレしているので、その恰好のほうが正しく見えてくる不思議(笑)それと若手はもちろん、ベテランの役者たちもあの恰好で真剣にキャラを演じているので、いつのまにかゲームと同じ感覚で見るようになったというのもある。『忍たま乱太郎』もそうだったけど、演じる役者もスゴイし演じさせる三池もスゴイわ(笑)ナルホド君は見る前からピッタリだと思ってたけど、矢張(中尾明慶)とナツミ(谷村美月)の再現率も高い(笑)合ってないなぁというキャストもいたけど(狩魔(石橋凌)はもっと痩せてる人がよかったとか、ノコちゃん(大東駿介)は照英だろ、とか(笑))大ハズレというのはなかったし、これ1作で終わらせるにはちょっともったいないと思ってしまった。名物キャラであるオバチャンも実写で見てみたいし(笑)

ゲームでは分かりにくいところがあったが映像だと分かりやすくなっていたし、御剣の事件の時は場所も変更されているが、かえってこのほうが自然でよかったと思う。オウムのところや最後の黒幕激白シーンは間延びしちゃったので、ここはもう少し間を詰めるかカットしてほしかったけど。
なんか激甘な感想になってしまったが、逆裁ファンなら楽しめるというものであって、ゲームを知らない人がいきなり見てはいけない映画です。それはご了承下さい。ゲームの新作も今年出るそうなので楽しみ♪
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ドラゴン・タトゥーの女('11アメリカ)-Feb 10.2012
[STORY]
スウェーデンでジャーナリストをしているミカエル(ダニエル・クレイヴ)は、実業家に関する記事で名誉棄損の裁判を起こされ敗訴する。そんな時、国内の大企業グループの元会長ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)から、40年前に姪のハリエットが失踪した事件を調査してほしいと依頼される。ミカエルは調査を始めるが1人では限界を感じ、リサーチャーで天才ハッカーのリスベット(ルーニー・マーラ)を助手にする。
監督デヴィッド・フィンチャー(『ソーシャル・ネットワーク』
−◇−◇−◇−
原作はスウェーデンの作家スティーグ・ラーソンの『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
スウェーデンでは既に2009年に『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』の3部作が映像化されているが、本作は映画のリメイクではなく、原作の映画化なのだという。言葉は英語だけど舞台はスウェーデンのままところがちょっと違和感あり。
第84回アカデミー賞では主演女優賞(マーラ)、音響編集賞、録音賞、撮影賞、編集賞の5部門にノミネートされた。

スウェーデン版の3部作は既を見ているので、それを見てなくていきなり本作を見ていたら「すごい話だな」ともう少しは興奮したかもしれないけど、すでにストーリーは知っているし、フィンチャーにしては映像がフツーというか・・・。オープニングクレジットを見た時には「これはスウェーデン版を超えたかも!?」と一瞬期待させられたんだけど、超えたのはここだけだったな。後から考えればあれは本編とは関係ないハッタリ映像だったわ(笑)

スウェーデン版のリスベット(ノオミ・ラパス)は原作の24歳(見た目14歳くらいにしか見えない)の若いリスベットとイメージが違うと当初は賛否両論あったようだけど、迫力ある演技で批判をねじ伏せた。本作のリスベットのほうが若くて幼い感じはするものの、存在感が薄く物足りなさのほうが大きい。パート2、3ではリスベット中心のストーリーになるが、そこでどれだけの演技を見せられるのか、ちょっと不安が残るものだった。
あとこれは演出が悪いんだけど、タイトルに『ドラゴン・タトゥーの女』ってあるんだから、もうちょっとちゃんと背中のドラゴン・タトゥーを見せろと。そこの見せ方がよければリスベットの存在感がグッとUPしたかもしれないのに残念でならない。

ストーリーは一度見ているせいもあるだろうけど、スウェーデン版より分かりやすく整理されていると感じた。ハリエット事件に関係する怪しい人物も少なくて混乱しないし(というか初見でもキャストを見ればすぐ分かる人もいるハズ(笑))リスベットの過去もスウェーデン版では何度かフラッシュバックするように映像が出てきたが、本作ではちょこっと本人の口から語られるくらいでほとんど出てこない。スウェーデン版ではよく分からなかったところが本作を見てようやく理解できた部分もあったが、もう少し複雑にしても良かったんじゃないかなと思うところもあり。ただ、パート2と3に関してはスウェーデン版にも不満が多かったので、ミカエルとリスベットがなかなか顔を合わせない部分などは、かえって上手く作るんじゃないかと、そこは期待している。フィンチャーは既に別の映画を撮ることが決まっていて、パート2と3に着手するまで少し間が空くようだけど、撮るなら2作はなるべく間を空けないで製作してもらいたい。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE('11日本)-Feb 4.2012
[STORY]
若き会社社長・市ノ宮行(林遣都)は、荒川地区再開発の仕事を任される。まずは不法占拠者を追い出すため河川敷の調査に行くが、そこでトラブルに巻き込まれ、自分は金星人だと言う少女ニノ(桐谷美玲)に助けられる。行がニノに謝礼をしようとするが“私に恋をさせてくれないか”と言われてしまう。人に借りを作るのが嫌いな行はニノと恋人になるため河川敷で暮らすことを決める。そして河川敷の村長で河童だと言い張る男(小栗旬)からリクという名前をもらう。
監督・飯塚健(『彩恋 SAI-REN』)
−◇−◇−◇−
原作は中村光の同名漫画。2011年7月から10回にわたり1話30分のテレビドラマが放映されたが、その一部が映画でも使われている。
河童役の小栗旬と星役の山田孝之は立候補して決まったキャストだという。

映画はドラマの続編ではなく、映画もドラマもリクが父の命令で荒川にやってくるところから始まる。ドラマ版は荒川の住人たちとのやりとりや生活なども交えてゆったりと語られるが、映画はリクとニノ以外の住人達はほぼ脇役扱い。原作も知らずドラマも見ていないという人が見たら(そんな奇特な人がいるのかどうか)一体何人の住人がいたのかすら分からない映画だったろう。逆に言えば最低原作は読んでおけよ、な映画ということであり、ドラマもできれば見ておいたほうがいいという映画だ。私は既刊の原作はすべて 読んでいるし、ドラマもちゃんと1話から最終回まで見た。ドラマは原作の登場人物の再現率の高さ(河童とか星とか。でもシスター(城田優)がやはり一番のハマり役だろうな)と、それを演じているのがこのキャストとは!という驚き(というか出オチ?)を楽しむ作品という感じ。深夜に見るならこんなもんかというミニドラマ。正直あまり面白くはなかったんだけど惰性で見続けて「続きは映画で」という最終回に対して素直に頷き映画までお付き合いしてしまった(笑)

ドラマは原作のようにシュールなハイテンションギャグはない。けど、漫画の通りにやったらパラノイアやOCDと呼ばれそうな人々が社会からドロップアウトして河川敷に集まっちゃったみたいなリアルに怖い映画になりそうなので(ハッ実はそういう漫画なのか・・・これ)ふんわりほっこりファンタジーにしたのは悪くない選択、だったのかもしれない。映画はドラマのムダ部分を省き、重要なストーリーにウェイトを置いている。だからなんだか駆け足だなーと思った人はじっくりドラマを見ろってこと。リクとニノが真剣に恋をし、リクと父(上川隆也)の間にある隔たりの原因を描き、河川敷再開発を解決。最後はニノの金星人ネタまで片付けちゃう。漫画は完結していないので、どう終わらせるのかと思ったらそうきましたか。これじゃあまるっきり別の作品だよなぁと思ったけど、まぁこれで実写は終わりってことで、あとは漫画がどう完結するのか、そっちを楽しみにしよう。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

麒麟の翼('11日本)-Jan 8.2012
[STORY]
ある夜、日本橋の橋の上にある麒麟像の前で男が倒れた。男の胸にはナイフが刺さっており、どうやら彼は刺された状態でここまで歩いてきたことが分かった。そして事件直後に若い不審な男が現場から逃走しようとしてトラックに撥ねられ、意識不明の重体となる。捜査一課は男を被疑者として送検しようとするが、日本橋署の刑事・加賀(阿部寛)は納得できず、従弟の刑事・松宮(溝端淳平)とともに、被疑者がなぜ橋の上で死んだのか調べはじめる。
監督・土井裕泰(『ハナミズキ』)
−◇−◇−◇−
原作は東野圭吾の同名小説。2010年4月から放映された連続TVドラマ『新参者』と、2011年1月にスペシャルドラマとして放映された『赤い指』の続編にあたる(時系列は『赤い指』の2年後に『新参者』で、その後『麒麟』へと続く)
監督の土井は『新参者』の演出は1本も手がけていないが『赤い指』の演出を担当した。

小説はどれも読んでないけど連ドラとSPドラマは見ていたので私は登場人物たちの関係に特に悩むことなくすんなりと見れたけど、ドラマを見てなかった人がいきなり映画を見て分かるのかな?とちょっと心配になるほど説明が少ない。加賀の後輩・青山亜美(黒木メイサ)や看護師の金森登紀子(田中麗奈)がいきなり出てきて「何者?」なんて思ったりしたんじゃないだろうか。

ドラマの時からそうだったけど、人情ミステリということで事件そのものよりも関係者の過去や私生活、抱えている問題を取り上げて事件の容疑者から外していく展開が続く。連ドラではそれがお決まりのパターンになっていたのでじっくり見ることができたが、映画だともうちょっと寄り道は少なくして本筋に戻ってほしいなと思ってしまった。最有力の犯人がいるのに「なぜ被害者は日本橋まで歩いてきて絶命したのか?」にこだわった加賀が独自に捜査をするシーンが面白かっただけに。容疑者の八島冬樹(三浦貴大)の同棲相手・中原香織(新垣結衣)に時間を割きすぎてイライラしたことも。そういえば余談だけど、三浦は映画の公開日1月28日にNHKで放映されたドラマ『キルトの家』でも、ロングヘアで長身の妻(杏)を連れて上京する無職の貧乏青年という似たような役を演じていたな。偶然とはいえカブりすぎだ(笑)

最後に真相が明らかになるくだりは、はっきり言って無理やりすぎて冷めた。原作ではどう書かれているのか分からないけど、映画では犯人が青柳を刺す動機も弱いし、青柳が刺された場所から日本橋まで歩いた理由も納得できるものではない。歩かなければ助かったかもしれないのにアホかと・・・と思われても仕方ない。
麒麟像の前で人が死んだ設定にしよう→でも人通りが多いからその場で刺される設定はムリ!→それじゃあ人通りのない場所で刺されて歩かせよう→そうしよう!
って流れで書き始めたんだろーなーって感じ。まぁこれは映画じゃなくて原作の問題だからここで批判するのはお門違いかもしれないが、小説では緻密に登場人物の心情が描かれていて説得力があるのだとしたら、映画は脚本や演出で説得力を観客に与えることができなかったということですな。と、強引に映画の感想として纏めてみる(笑)
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

J・エドガー('11日本)-Jan 7.2012
[STORY]
ジョン・エドガー・フーバー(レオナルド・ディカプリオ)は大学卒業後に司法省に入省し、頭角を現す。そして秘書室にいたヘレン・ギャンディ(ナオミ・ワッツ)にプロポーズするが断られ、それからは個人秘書として信頼するようになる。その後、精鋭を集めていたエドガーはクライド・トルソン(アーミー・ハマー)を紹介され、彼を副長官に任命する。
監督クリント・イーストウッド(『インビクタス/負けざる者たち』
−◇−◇−◇−
FBIの初代長官ジョン・エドガー・フーバーの自伝的映画。脚本を『ミルク』の脚本でアカデミー脚本賞を受賞しているダスティン・ランス・ブラックが書いている。

タイトルの『J・エドガー』にはピンとこなくても、フーバー長官と言われれば「ああ、あのFBIの」とすぐに分かるほど有名だ。私もテレビ番組で特集を見たことがあるほど。それなのにこのタイトルにしたのはなぜ?と思ったけど、映画を見たらそれが分かった。

FBIの組織作りと捜査手法を確立した功績や、歴代の大統領のスキャンダルを握って圧力を掛けたりと悪名高い部分も描いてはいるものの、それはあくまでも彼のキャリアを説明するために必要な情報というだけ。メインは彼の性格や母との関係(つまりマザコン)と、トルソンとの関係(つまりホモ的な)なのである。

こういうアプローチは面白いと思ったけど、かといって深く彼のセクシャルな部分を深く描いているわけでもないので、なんか中途半端で社会派が好きな層にも私生活に興味がある層にもどっちにもウケない作品になってしまった。これに加えてヒドイのが歳を取ったエドガーのメイク。ハリウッドのメイクでここまでヒドイのも珍しいんじゃないの。これがモンスターやらクリーチャーならこのレベルでもいいけど、シリアスな映画でチープじゃ浮きまくりだ。

ディカプリオも若い頃と年老いた時で声色を変えることなく一本調子。だから余計に老けメイクが浮いちゃってる。若い時の演技だってスコセッシ映画で何度も見たような、眉間にシワを寄せて神経質に早口でまくしたてるという演技で、目新しさのかけらもない。歳取ったエドガーは別の年相応が演じればよかったのに。ディカプリオがやりたがったとしてもそこは止めて、ね。そしたらもう少し重厚感が出たと思う。

せっかくネタがたくさんありそうな面白い人物を取り上げたのだから、全体的にもっと時間を掛けて製作すればいい作品になったんじゃないかな。これじゃあアカデミー賞から無視されるわ。イーストウッドは毎年監督作品を世に送り出しているけど、ここ最近の作品はインスタント感が否めない。
home