ままはいやに意気揚々としている。
テレビで時々やっている、「初めてのお買い物」ではないけれど、
ままにとってはきっとそんな感じなんだろうね。
僕は掛け声と同時に、いつものように、いつものバッグに
ポンと飛び乗った。
しかし、それと同時にままがサンルームの方から持ってきたバッグを
見て、僕はどうもいやな予感がした。
「ハッピー、今日はそのバッグじゃなくて、このバッグでお出かけよ。」
電車はね、頭が見えちゃあいけないのよ。
だから、窮屈でいやだろうけど、我慢してね。」
そういえば、ままはひなママさんに、電車でのお出かけの心得を、
聞いたってパパに話していたけど、きっとこのことだったんだね。
僕はいつものバッグが慣れているせいか、軽井沢の時にも使った
あの、黄色いバッグの中に入るのをこばんだ。
勿論、お散歩では、ちゃーんと、う○ぴは出たし、快適さ!
お台場へ行くのに、どういうふうに行こうかしら?
行き方は色々ある。
ネットで調べて、一番早くて電車の料金も一番安い方法の@番を
採用した。
ままは、電車でどこかへお出かけする時は、ジャル○ンという会社の
乗り換え案内でよく調べている。
乗り換え案内もたくさんの会社が提供しているけれど、
一番使い易いようだ。
ひなママさんからのメールには「マリンビル向かいのデックスの
2階あたりでどうでしょうか? 時間は11時30分で・・・・」と
書かれていた。
15分くらい前に着くように設定したようだ。
さあー、電車の時間も調べたし、ハッピー、出発よ〜♪
平成17年9月17日の土曜日。
今日はねえー、僕はままと二人っきりで、しかも電車に乗って
お台場まで行くんだよ。
なんだか、ままの手前、僕は嬉しそうに言っているけど、実はとても
朝から不安だった。
ままはそそっかしくて、おっちょこちょいだからね。
大丈夫かなあー?
だから、ごはんを食べる時だって、どうにも落ち着かず、いつもより
残してしまった。
まあ、最近又ちょっと食欲が落ちてきているから、ままはきっと
気が付かなかったに違いない。
ごはんを食べた後、ままは僕をお散歩に連れて行こうとしたけれど、
アレッ!
パパが起きてからすぐに連れて行ってくれたのに、又、今度ままが
連れて行ってくれるのかなあ?と嬉しくなってしまった。
そうしたら、パパが「僕が起きてからすぐに連れて行ったから、
いいんじゃないの?」と言う。
「でも、パパー、もう僕はその気になっているよー!」と
叫ぼうとしたけれど、すぐに「でも、もう一度くらい連れて行った方が
安心だね。ねっ、ハッピー」って、
言ってくれたからほーっ!とした。
良かったあー!だから、パパって好きだよ。
お台場って、どれくらいの時間がかかるんだろうか?
松戸という所で、乗り換えるらしいけど・・・
僕のお隣に座っている、小さな3歳〜5歳の男の子と女の子が僕を見つけた。
子供達は「わあー、ワンコだ!可愛い〜♪」と言って、僕の顔の
真前まで、顔を寄せてきた。
その子供達のお母さんは「家はネコを飼っているんですよ。
すみません、ちょっと見させてくださいねえー」とままに済まなさそうに、
言っているのが聞こえた。
いいけどさあー 僕って子供が苦手なんだよね。
お散歩していても、小さい子供って、急に寄って来て、ビックリさせたり、
いきなり、頭や耳毛を触ったりするでしょう。
だから、ごめんなさい!
僕は苦手になったみたいなんだ。
でもね、今日は僕は網で遮られているから、触られないし、
見られるだけだから、大丈夫だったよ。
そうかあー そういう意味では、このバッグというのは安全圏なんだね。
でも、そう思って慰めてみても、僕はやはり、少しでもいいから、
上のほうにあるチャックをジーッと開けてもらって首を出したかった。
でも、ままは「ハッピー、我慢してね。」と言うばかりだった。
うん?電車を降りたようだけど、もうお台場という所に着いたのかなあ?
そんなことないよね。
だってまだ乗ったばかりだもの・・・やっぱりねえー
「ハッピー、松戸に着いたわよ、今度は上野で乗り換えよ、
頑張ってね。」
又、僕は励まされた!
もう、仕方ないよ、まま、大丈夫だよ!僕はこのうっすらと見える
網の窓から、見える光景を楽しむことにするよ。
歩いている人の脚しか見えなかったけどね、でも、時々ままは
バッグを持ち上げては、僕の顔をチラチラと覗き込んでくれたから、
それで、少しは安心できた。
次は山の手線に乗り換えた。
今日は空いているようだね。
いつもは大勢の人でラッシュなんでしょう?
だって、座ることが出来たものねぇー。
お隣に座っているオジサンが、僕の顔をチラッチラッと覗いている。
僕も上目遣いで、チラーッとオジサンを見た。
そうしたら、にっこり僕に笑いかけてきたんだ。
僕も、笑おうかと思ったけれど、ダメだ!
僕はやっぱり正直者なのだろうか?
「新橋ー 新橋ー」
又、乗り換えのようだ。
お台場に行くには随分乗り換えるんだねえ。
お隣のオジサンはまだ座ったままだ。
「さあー、ハッピー、入らないの?
じゃあお出かけしないの?」と言われ、僕は慌てて中に入った。
・・・ああー、もう出られないよー・・・観念した。
バッグの中から見える光景は、いつもとまるで違っていた。
ままが歩いて行く方向の前方と、あの狭いバッグの中で、
回れ右をして、逆方向の後方しか見ることができない。
僕はお家では、そりゃあ狭い所が好きだよ。
例えばピアノの後だとか、テーブルの足と壁の間に入り込んだり、
ソファーとソファーの間によくいたりするけれど、このバッグは狭すぎるよ。
居心地の悪さといったら最悪だ。
ほんの少ししか見えない光景は、しかも網越しだった。
今日はままと僕と二人っきりでお出かけだからって、
僕は朝から二度もお散歩に連れて行ってもらったんだ♪